Ep.55 夕食の誘い
遊んじゃった。
「ホント、何で言ってくれなかったの?言ってくれたら直ぐ帰ってきてたのに」
「確かにな」
マーヤが愚痴り、オルウェルが賛同する。
「それはごめんね、サプライズがしたかったんだどうしても」
それに対し、アルティオが謝罪する。
今、ナツトは王城に来ている。交流会から帰ってくると、アルティオから晩餐の誘いがあったと、ゴルマから伝えられた。断る理由も特になかったので、喜んで参加することにしたのだ。
予想通り、ナツト、アルティオ、ミューカ、オルウェル、マーヤというかつての仲間が全員参加するというものだった。
ナツトの存在は秘密裏にされているので、場所は王城のとある隠し部屋で行われている。
隠し部屋と言っても、かなり広い部屋で本当に隠し部屋かと疑いたくなるぐらいである。
料理は、フィーディースの妻であるヴィヴィアナが作っている。彼女もナツトの存在を知る数少ない一部の人間だ。普段はミューカ側付きのメイドなのだが、料理の腕が達人の域に達している。
今回のような秘密の晩餐会ができるのも彼女の貢献が大きい。
ちなみに、ナツトとの面識もあったので、先ほど簡単に挨拶した。
「オルウェルの剣凄かった。勝てる気しなかったよ」
「はっはっは、そうだろ?」
「実際、剣だとこの中で一番強いわよ」
ミューカが付け足してそう言った。
そうか、予想はしていたけど、やはり剣ではオルウェルが一番なのか。
「あれはが生徒たちがちょっと可哀そうだったね~、ルール決めて何言うって感じだけど、完全にオルウェル勝利の形だったもん」
勝たせる気は毛頭なかったようだ。
「でも、男子は強くなりそうなやつが多かったぞ。ナツトは置いておいて、例えばネララバーグの王子とか…違うクラスの髪の短いやつとかな」
イアノンと、恐らくガルノラルクかな。オルウェルの印象に残っているのはかなり凄いことだろう。
「話変わるけどさ、ナツトのことっていつ発表するつもりなの?」
ふと思いついたように、マーヤが質問する。
「今のところ、ナツトが成人したらかな。…状況次第ではあるけどね」
成人というとこの国では十八歳だな。今九歳だから後九年になるか。
「とりあえず、このままナツトは学園に通ってもらって、国として守る。ナツトの体に関して不明なことも多い」
「不明なこと?なにそれ」
「それはまた今度じっくり教えるとして、今は楽しもう。折角全員揃ったんだ」
それからそれぞれの話をしながら食事を楽しんだ。自分はグルメ家ではないから上手な感想は言えないけど、一言纏めるなら、「最高」であった。
一つ文句があるとすれば、みんなお酒を飲んでる中、未成年ということで飲めなかったということだろうか。
仕方ないんだけどね。
「ご飯も食べ終わったし、みんなでゲームでもしよう」
美味しい晩御飯を食べ終わり皆満足な中、少し酔ったアルティオが提案した。
「いいね、何する?」
ナツトはもちろん、その他もテンションが高めだったので乗り気だった。
「よし、じゃああれでもやろう」
「あれね」
「あれか」
「おっけー」
「え…あれって何?」
周りはうんうん、と頷いているが、ナツトだけみんなの言う「あれ」というのがわかっていなかった。
その後、アルティオが先導して、ある部屋の扉の前に辿り着いた。
アルティオが扉の隣にあるパネルを弄った後、と扉を開けた。中は広くはなく、寧ろ狭いぐらいであり、部屋の中心に五角形のテーブルと五脚の座り心地のよさそうな椅子が設置されていた。
「何この部屋?」
「会議室だよ」
ナツトの質問にアルティオが即答する。しかし、ここは城の隠し部屋に当たる場所であるため、会議室なんて必要あるだろうか、という考えに至った。それを察知したかのようにミューカが続けた。
「という名目の遊び部屋よ」
「そ、そうなんだ…へぇ…」
「とりあえず、みんな適当に座りなよ」
アルティオに促されて椅子に座る。
座った瞬間わかった。この椅子、本物じゃない。魔法で作ったものだ。よく見れば机もだ。まるで、以前乗った列車のような…。
「気付いた?」
アルティオがナツトに対してそう言った。
「この部屋はね、比較的最近に作った部屋なんだけど便利で重宝しているんだ。外にあるパネルで内部の構造を弄れてね、今回は五人だから五人用のテーブルにしたんだ。そして、今日やるゲームは…」
そう言いながらアルティオが机に右手をかざすと、もう見慣れたホログラムのウィンドウが出てきた。まるでスマホを操作するようにウィンドウの画面をスライドするアルティオはあるところで指を止めてタップした。
「これです、ババ抜きです」
机のど真ん中に魔法で作られたトランプが出現した。
記憶違いでなければ、この魔法でものを出すというのは最新技術の一つであったはずであるが、それをここまで遊びのために使うとは、とナツトは一瞬呆れそうになったが、すぐに思考を戻した。
「ババ抜き」、日本ではお馴染みのゲーム。千年前のあるとき、このメンバーで遊んだことのあるゲームだ。今思うと懐かしい。再びこのメンバーでできることもとても嬉しいことだ。
「ルール説明はいらないと思うけど、魔法とかは使ったら駄目だからね。ナツト、シャッフルする?」
アルティオからトランプが渡される。ナツトはそれを受け取り、シャッフルし各々に配った。
「五枚か…まぁまぁ」
ナツトの初期枚数は五枚。多くもなく少なくもないと言ったラインだろう。周りも似たり寄ったりな枚数で、オルウェルだけ少し多いと言ったぐらいであった。
順番は席の座った関係でナツト、アルティオ、オルウェル、ミューカ、マーヤ、この順である。
まずは初手。特に気負うことなくアルティオの手札の一枚を取る。
よし、揃った。残り四枚。悪くない。
その後はオルウェルだけ揃わず進み、二週目に突入。
同様に一枚引くが、手札と一致するものはなかった。
「むぅ」
マーヤも揃っていないようだ。二週目でミューカは揃って残り枚数もかなり少なくなった。順調なようである。オルウェルは今度は揃ったようで少し微笑んで嬉しそうである。
千年前もそうであったがマーヤとオルウェル、表情を隠すのが下手である。
アルティオも揃っており、淡々と手札を減らしていく。そのまま三週目へ。
そしてナツトの元へヤツが来た。そう、ジョーカーである。
ふとマーヤの顔を見ると声こそ出していないが、今にも笑いだしそうな表情をしている。この瞬間、全員がどこにジョーカーがいるのか察した事だろう。
ジョーカーが消えたマーヤはもちろんのことミューカ、オルウェルは迷いなく引いていき、各々揃えていく。
そして、アルティオの番である。
というかよく見たらアルティオは後二枚である。つまりここで揃えたら上がり確実。是非ともジョーカーを押し付けたいところだ。
しかし、流石王というべきか、引きが強く見事ジョーカー以外を引き、しかも揃った。アルティオ勝ち確定であった。
その後しれっとミューカも上がり、残り三人。終盤戦に突入である。ジョーカーは動かずナツトのところに鎮座している。
次にゲームが動いたときはマーヤが上がったときだ。上がった面々は高みの見物でニヤニヤしている。
最後、オルウェルとの本日二度目の一騎打ちである。
手札はナツトが二枚、オルウェルが一枚。正真正銘、ジョーカー以外を引いたら勝ちである。
まずはオルウェルの引きのターンだ。見えないようにシャッフルしたナツトは、さぁ引いて見ろと言わんばかりの勢いでカードを差し出す。
お互いに真剣に睨み合う。ここで下手に視線を落として万が一ジョーカーを気にする素振りを見せれば、負ける可能性も出てくる。
ここは全力でオルウェルが外してくれることに賭けるしかない。
少しの静寂の末、オルウェルが叫んだ。
「これだァァァ!!」
バッと勢いよくナツトの持っていたトランプの一枚をとる。果たしてそれは…ジョーカーであった。
「ぬああぁぁぁ!!」
外野は爆笑、ナツトも内心大爆笑。一つ目の関門を突破した。
さて、勝負だ。確率は二分の一。オルウェルが表情に出やすいから、トランプに指をかけたりして揺さぶりをかける。
オルウェルは、襤褸を出さないようにただまっすぐナツトを見ようと頑張っていた。
「ふっ」
少しの微笑みと同時に右側にあった一枚を引く。
それはジョーカーでは、なかった。ナツトの勝利であった。
昼間のリベンジがこんな形ではあるが果たせた。ナツトはとても嬉しかった。
「負けたぜ…見事だ、ははは」
勝負に負けたオルウェルは燃え尽きていた。
この後、飽きるまで何度も遊んだことは言うまでもないだろう。
こういうどうでもいいことに魔法を使っていくのが、私個人的にすっごく好きです。なんかこう、生活の中に組み込まれているというか。




