Ep.50 「ブエムンドラ」にて
呑気にアクセス数見たら偶に跳ね上がってて心臓に悪いです、いい意味で笑
進捗いい感じ&50話目ということなので本日は二話更新です。
ナツトは「初代勇者が帰ってくるという」噂を調査するため、冒険者たちが集う都市「ブエムンドラ」に来ていた。
「ブエムンドラ」は世界的にも有名なダンジョンがあるラーテル王国を代表する都市の一つである。同じく大都市である「キュリオウラ」にもダンジョンが存在するが、この二つのダンジョンの違いは、規模である。
キュリオウラの方は、規模が小さく発生する魔物も比較的弱い。所謂初心者から中級者向けのダンジョンであり、人々からは「初心の迷宮」とも呼ばれている。尤も、キュリオウラ周辺地域は鉱山資源が豊富であり、ダンジョンよりもそちらの方が有名である。
そして、ここブエムンドラのダンジョンは規模が大きく、とても深いダンジョンとなっている。また、このダンジョンは入り口が二十ほど存在しており、その内部は複雑に道が入り乱れている。その様と多くの魔物が生まれることから人々はこのダンジョンのことを「根源の迷宮」と呼んでいる。
世界中にはこれら以外にもいくつかダンジョンが存在する。もちろんそれぞれを区別するために名称が付けられている。そして、当然だがダンジョンごとに出現する魔物に差がある。
魔物は地球にいるような普通の動物が魔素の影響を受けて変化するものであるため、地上で魔物が発生するとすれば、そういった動物たちが魔物化するのである。魔物化した動物は基本的に体格が何倍も大きくなり、力も強靭となり、個体によるが魔法も扱うものが現れる。
そして、ダンジョンに住む魔物の多くが外部からダンジョンに入った動物がダンジョン内の魔素の影響を受けて魔物化するケースが多いというわけだ。ちなみにダンジョンが深ければ深いほど魔素の影響というのは大きくなる。
ここラーテル王国では、地上、つまりダンジョン外の自然環境に動物は生息している。そして、魔物が彼ら野生動物から発生すれば即刻冒険者や騎士団が排除しているため、実質ダンジョン外に魔物の脅威はない。
そして、ダンジョンにそういった動物たちが入らないように常に入り口に監視が付いている。
では、ラーテル王国のダンジョンには一体何が出現するのだろうか。冒険者たちは何を求めてここに来るのだろうか。
「初心の迷宮」「根源の迷宮」ともに出現する魔物は、酷似している。ただ強さのラインが違うだけである。両迷宮とも主な魔物は純魔のスライムである。「濃い魔素あるところにスライムあり」と人々の間で言われるほどダンジョンにはスライムが多い。
初心の迷宮の方は本当に雑魚そのものなのだが、根源の迷宮の方は浅い所だと雑魚だが、深いところになるとそれなりに危険な魔物となってくる。
十数年に一度ほど、とんでもなく強いスライムが出現するので、結構油断ならないのだ。腐っても純魔。過去舐めていて返り討ちに合い、帰らぬ人となった冒険者も数多くいるのだ。
しかし、そんないつ現れるのかわからない純魔より、もっと人々に危険視されている魔物がこの国迷宮にいるのだ。
魔物という大きな括りから、自然から直接生まれる純魔を除き、動物が魔素の影響で変化した中で最強と呼ばれる分類に属す魔物たち。
それらが他のダンジョンより多く出現するのだ。
さて、ここで質問だ。この最強とされる魔物たち、とは一体どんなものだと思う?
虎?熊?狼?
どれも違う。
答えは、"虫"である。
考えるとその理由はすぐにわかる。虫が魔物化すると人並の大きさになるものやそれを超えることが多い。彼らが元来有す外骨格は魔物化の影響で変質し、途轍もない強度を誇るようになる。哺乳類のような毛皮なんて比べ物になりさえしない。
先ほどすべての出入り口を監視していると言ったが、それは人が通れる入り口だけである。より小さな拳大の大きさの入り口までは流石にカバーしきれないのだ。
ただ、すべての虫が魔物化するわけではなく、一部だけなのでその点は少しだけ安心である。
というわけで、虫嫌いの人からしたらまさにこの世の地獄のようなダンジョンであるが、彼らの外骨格からはとても強力な防具や武器が作れるので冒険者たちの出入りが絶えないのである。
幸いにも転移魔法を使える魔法使いや、転移魔法を予め仕込んでおいた魔石等が多いので危険になったらすぐに離脱するというのがダンジョンに入る冒険者たちのイロハである。
「さて、と」
今日は学校は休み。土日みたいなものだ。
列車は使わず、転移魔法で一瞬でリコアからブエムンドラに来たナツトは、噂話を聞くのに一番手っ取り早いであろう、ギルドに行くのがいいだろうという判断のもと、冒険者ギルド「ブエムンドラ支部」に来ていた
ギルド内で、受付の人も含め計三十人。ギルド周辺で計四十人。合わせて七十人に噂を聞いて回った。人によってそれなりの違いはあったが大体似たり寄ったりな内容だったので、ナツトはこれで十分だろうと判断を下し、噂の調査を終了した。
しかし、思ったより早くに終わってしまって困っていた。時刻はまだお昼手前。どうしたものかとナツトは思案していた。
このまま街を観光するのもいいなと考えていた。
ここブエムンドラは、発展しすぎて頭のおかしい首都リコアとは異なり、落ち着いた印象があった。遠くに見えるブエムンドラの中心街は背の高いビルが見えるが、ダンジョンがある一帯はなんというか、建物のその多くが白い石のような石材と褐色の木材で建物が建てられ、並んでいる。
トレーカスは高低差が凄い地形であったが、ブエムンドラの地形は高低差というものはあまりないが、結構凸凹しており、また、人の何倍もの大きさがある大きな岩があちこちに転がっている。建物はそれらの間を縫うように建っている。
やっぱり、観光かな…そうナツトが決定しようとした時であった。
ふと背後から声をかけられた。
「あれ?シャックじゃん」
振り向くとそこには能力の特別訓練を一緒に受けている、ガルノラルク・ノノージアがいた。
「あれ、ガルノ?こんにちは」
「お、おう。奇遇だな。こんなところで会うとは」
ガルノラルク・ノノージア。中等部一年生、クラスはBクラス。普段クラスが違うため今のところはナツトが学園内で関わると言ったら特別訓練のときだけ。たまに学園内で彼を見かけて軽く挨拶するときがあるが、そのときは友達と肩を組んで笑っていたりと、クラスの生徒たちとの仲はよさそうである。訓練が始まってそれなりに経つので、普通に話せる仲にはなったし、一緒に戦闘訓練することも多い。
彼は筋がよく、魔力の扱いが年齢にしては相当なものだった。王族二人とは異なり、そういった教育は経験してないはずだが、推薦二人並、いやそれ以上に魔法や能力に関して理解が深いように感じる。
ガルノラルクという名前は少し呼ぶには長いのでクラスでも、訓練でも早々に省略され、「ガルノ」で固定された。その他のメンバーも名前が長い人は呼び方が決まっていたりする。
ナツトはシャックのままである。
しかし、こうして彼と一対一で会うのは結構珍しいことだ。察するに彼はダンジョンに入るためにこの街にいるのだろう。リコアからここまでかなり距離があるが、列車か、転移魔法か。どちらかの手段でこの街に来たのだろう。
「シャック、今暇か?」
「あ、うん。ちょうど暇だね」
「そうか、じゃあ一緒にダンジョン行かないか?ギルドにいつも一緒に行く人たちが二人いるんだが、バランス的にもう一人欲しいんだ」
「んー、ちょっと待って少し考える」
「いいぜ」
ダンジョンか。ここのダンジョンは、確か千年前にも一度入ったっけな。まぁでもあの時とは状況が違うし、ソロじゃなくてパーティで、か。
「うん、行く」
「よし来た、じゃあ付いてきてくれ。まずは挨拶からだな」
こうして、ガルノラルクと一緒に迷宮に入ることが決定したのだった。
ちょっと話が前後してしまいますが、この話を挟んでおきたくて。このままいけば確実にガルノラルクが息しなくなってしまうのでね。




