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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第4章】初代勇者の学園生活►中等部編◄
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Ep.49 噂話

「…というわけで、ナツトの考えているようにそこまで気にする必要はないね」


今、久々に城に来ている。もちろん、秘密裏に。事前にアルティオにアポを取っておいて、やって来たわけだ。

アルティオはとても忙しい身分なのでこうして時間をとってもらっただけでも感謝しか湧かない。


そもそも、今回城に行くことになった理由は学園でのあることがきっかけであった。







あれは、三日前のこと。少し夜更かししてしまったので、ナツトはウトウトしていた。授業中は意地で起きていたが、休み時間は耐えられなかった。

自教室の机で腕を枕にして少し寝ていた。ふと、目が覚めたとき、近くで結構な人数が集まって会話しているのを声と気配で感じた。

当初彼らが話していた内容は別にどうでもいいからすぐに体を起こそうと思ったが、ちょうど話題が変わり、その内容を聞いたときに起こそうと思っていた体が思わずピタリと止まった。


「ねぇ、チェルーティア様。あの噂って本当ですか、あ、本当なの?」


ある女子生徒がチェルーティアに話しかけたことがきっかけだった。


入学以来チェルーティアは「様」付けを止めてと言っているが、なかなかそうしてもらえなくて苦労している。「殿下」呼びはチェルーティアが頑なに拒否したのでそう呼ぶ者はいなくなった。それにイアノンもいるので殿下と呼ぶのはややこしくなるのでこれでよかったかもしれない。


ナツトが当初驚いた彼らの言葉遣いは実を言うと数日でぼろが出始めた。素の話し方に部分的な敬語が散見されるようになった。王族と関わるにあたって粗相がないように彼かの親から仕込まれていたのだろうか。尤もそんな事情があるのかナツトにとっては知る由もないので完全に推測であるが、年相応と言うべきか、やはり生徒達には敬語というものはまだまだ早かったようだ。

ナツトはこのことに少し安堵していた。貴族制もないこの国で九歳の子どもが標準で敬語を話しているのは、心底気持ちが悪い、いや気味が悪いと内心思っていたからだ。


チェルーティアは、慣れない言葉遣いは止めよう、と呼びかけてきた。入学してから一月ほど経った今、ようやく浸透してきたと言った具合である。

しかし、こうして徐々に普通に会話に混ざるようになっているのは彼女の頑張りの成果だろう。


というか、時々チェルーティアの素と思える言葉遣いが見られるようになってきた。それは、結構庶民寄りな感じで、少し意外だった。


「噂…?どんなの?」


質問を投げかけられたチェルーティアはよくわからないと言った様子であった。


「あ、それ俺も気になってんだ。勇者ナツト様の噂!」


「ナツト様…ああ、初代勇者様のことね。その勇者様がどうかしたの?」


「あれ!ナツト様が実はもう帰ってきているって噂です!」


「…そんな噂があるの?」


「はい!街中では結構有名な噂です!城の中にいるって」


そう話す男子生徒はハイテンションで「ナツト様」のことを語りだした。


それを完全に無視して、女子生徒が問う。


「それで、チェルーティア様。この噂は本当!?」


チェルーティアの周りにわいのわいの生徒たちが集まる。みんな、噂が本当かどうか知りたくてたまらないと言った様子だ。チェルーティアは一呼吸おいてから、答えた。


しかし、その答えは全員が期待したものとは違っていた。


「私は知らないわ。城の中にもそんな動きはなかったわよ」


それを聞いた全員は先ほどまでの勢いが嘘のようにしょんぼりしていた。そのあまりにも大きな差に思わず微笑んでしまいそうだ。


チェルーティアは、みんなに微笑みながら「ごめんね」とだけ言い残し、ナツトの隣を通って教室の外へ出ていった。

そのとき、彼女が呟いていたことをナツトは聞いていた。


「初代勇者…ね。少し調べてみようかしら…」






その日からナツトは放課後、街に噂がどんな感じに広まっているのか調べていた。

まず、手始めにギルドへ向かった。こういいう噂が出回ってそうな場所はここが一番かなと感じたからだ。

しかし、ナツトが向かったギルドのリコア支部は、主にラーテル王国内のすべてのギルドの管理場所という感じが強く、ほとんど冒険者たちがいなかった。確かに思えば、厳重な守りをされている首都のど真ん中付近に位置するギルドは、そもそも魔物討伐等の依頼がある筈もなかった。つまり、それを討伐しに来る冒険者もいないわけだ。


リコアのギルドは役に立たない。街中を歩き回るのも非効率的である。酒場になんて九歳児が入れるはずもない。


ならば、どうするか。考え出した方法は結局一つだった。それ即ち、「人に聞く」である。


手始めに街中で人々に聞いて回る。インタビュー感覚で頑張れば行けると思うし、この見た目なら誰に聞いたって基本的に怪しまれないはずである。それに理由を聞かれたら、学校の宿題と言えば通せる自信がある。


次に、「冒険者に噂を尋ねる」をする。街中の人に尋ねることと、冒険者を生業としている人達からも聞いておきたい。


ここで待ってがかかるかもしれない。リコアのギルド支部には冒険者がいないんじゃなかったのか、と。そう、確かにリコア支部にはいない、がその他の支部にはいるはずだ。この国にはギルドの支部が全部で四つ存在する。四つの大都市にそれぞれ一つずつある。


場所は首都の「リコア」、そして首都を除くラーテル王国の三大都市、ラーテル王国の形である逆Y字のそれぞれの頂点に位置する「トレーカス」、「ブエムンドラ」、「キュリオウラ」である。


そして、ナツトが向かったのは「ブエムンドラ」。ラーテル王国内にて最も魔物討伐を生業とする冒険者たちが集まる場所である。


ラーテル王国には三つ"ダンジョン"と呼ばれるものが千年より前から存在する。「ブエムンドラ」と「キュリオウラ」にそれぞれ一つずつ存在している。共に見た目は完全に洞窟であるが、内部は外部より濃い魔素濃度であり、魔物や純魔が発生する。ラーテル王国は国の頑張りで地上には魔物はまずいない。しかし、ダンジョン内には魔物がいる。ラーテル王国は国の方針で敢えてこれらを残し、冒険者たちが稼げるようにしている。もちろん管理も国が行えるようにしてあり、魔物が大量発生する現象、通称モンスターテンペスト発生時は騎士団も出動する。そして最悪の場合直ちにダンジョンを破壊するシステムも既に構築済みであったりする。決断をするのはもちろんアルティオである。


なぜダンジョンがあるのか。その答えは未だ出ていない、が推測はたっている。ラーテル王国には「星の魔力」と呼ばれる力が湧き出るフラッドポイントが存在する。それの影響でダンジョンが生成する、というのが今の通説である。


とそれはさておき、ナツトは街での聞き込みが終わるとすぐに「ブエムンドラ」に向かっていた。移動はもちろん転移魔法でだ。普通なら行ったことのない場所には転移できないとか言われそうだが、ギルドなどの施設に行けば、座標情報を教えてくれる。知りたい場所の座標がわかれば、後は転移魔法の行き先にその座標を指定すれば終わりだ。転移魔法使える人限定の移動手段になるが、大変便利である。



ダンジョンに一緒に行った冒険者たちや、ギルド内にいた冒険者たちなどとにかく暇さえあれば聞いて回った。


結果、やはり予想通りの「ナツトが帰ってくる」や「ナツトが既にこの国にいる」など言った噂がそれなりに広まっていた。首都の人たちはおよそ五割より多めで、冒険者たちは大体聞いた人数の内四割ほどであった。街の人たちは話しているときの表情から、本気でその噂を信じている人が多い印象であった。一方で冒険者の方はこの国出身ではない人も多かったので、その多くがもしそうだったらとても面白そうだな、というぐらいに受け止めていた。



大体の確認ができた時点で、ナツトとしてはそこまで気にする必要のない噂かなという程度の認識で固まった。

アルティオたちの情報秘匿の件は信頼しているし、彼らが漏らす気にでもならないとまず漏れないだろう。噂も証拠という証拠はないので、時間が経てば徐々に薄まっていくだろうと考えられる。ナツトが死んでから千年というキリのいい年だからこそこうして盛り上がっているわけで、年が経過すれば冷めるはずだ。


実際のところ噂は見事に的中しているわけだが、噂が正しいかどうかなんて今はどうでもいいことだろう。





そして、アルティオに調べたことを一応報告に来た、というわけである。アルティオの結論としても、ナツトと同じで放置でいいだろうというものであり、この件はこれ以上深入りする必要はなくなったのだった。


アルティオは珍しくお酒を飲んでいる。ナツトはジュースである。お酒のせいか、アルティオが滅多に見せない素の状態で話している。


「噂は置いておいて…ナツト、そういえばもうすぐ学園で一年生の大きなイベントがあったね」


「あ~、騎士団交流会かな?」


「そうそれ。一年生たちに騎士団の仕事を紹介する体験型の授業だね」


「…アルティオがわざわざそれを切り出すってことは、何かあるでしょ?」


「察しがいいね。その通り。例年だと四つある騎士団の隊の隊長が顔を見せるんだが…」


ここでアルティオが言葉を切る。その間でナツトは「まさか」と予想がついた。そんなナツトをみてアルティオがフフっと笑いながら続きを言った。


「そう、ナツトの想像通り、今年はスケジュールが奇跡的に合ったオルウェルが参加する!」


「やっぱりか」


「…元々、チェリーがいるからオルウェルも気になってはいたようだが、今の時期は例年忙しいから難しそうではあった。でもマーヤが補助に入ったことで予定がいい感じに進み、参加できるようになったと」


「なるほどね」


「それに学園には可愛い娘もいるからね」


「あ~」


きっと親馬鹿なんだろう。その瞬間ナツトは悟った。


「ふふふ、チェリーとニコレットだけだと思って、内心ニコニコでやってくるオルウェルがナツトを見た瞬間どんな反応を示すのか、とても楽しみだな…」


「ははは、確かにそれは気になる。…ん?ということはここでばらすってこと?」


「そう、五日後の騎士団交流会。遂に再会のときになるわけだ」




ポケモン買いました。楽しいです。

ご飯食べるの忘れちゃいます。

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