Ss.4-2 白き竜<違和感>
「!リーダー!無事ですか!?」
転移してすぐ、こちらに気付いたメンバーの一人が駆け寄ってきた。
「あぁ、俺は大丈夫だ。シヴさん、傷大丈夫ですか?いけます?」
「誰に言っている?そんなものとっくに治っているわ。いけるに決まってる」
「それは心強い」
シヴはすっかり傷を治して立ち上がっていた。流石はSランク。何事もなかったように平然としている。
「初撃でやられなかったら対応しようはいくらでもある。基本的な速さは大体わかったしな。あ、そうだ忘れないうちに俺からも皆に身体強化を施しておこう___ホレ、これでよし」
シヴが全員に身体強化を施した。元々自分でかけたものもあるが、それをいとも容易く凌駕する性能の強化魔法がかけられたことをその身に感じた。
「さて、それでリーダーさん、どうする?」
「…全員聞け!捕獲は、諦める。目的を完全に討伐にする。途中、討伐すら不可能と判断すれば即時撤退命令を出す。全員、そのつもりでいろ。では、作戦を告げる」
俺はみんなに作戦を伝えた。
Bランクの八人は二人一組を作り、生存を第一にお互いのカバーをし合うスタイルだ。彼らは一定の距離を保ってもらい、魔法での攻撃、支援を任せる。俺ともう一人のAランクは前に出て攻撃を抑え、Bランクの彼らに攻撃を届かせないようにする。一人では受けきるのは難しいが、シヴさんの支援と二人であれば、いける。
「うおおぉぉぉ!!」
様子見とかそういうのは一切なしだ。ただひたすらに全力で攻撃を続ける。白いドラゴンは尻尾で応戦してくる。運がいいことにドラゴンはこちらを観察するかのように立ち回っている。攻撃の隙を与えてはいけない。二人で協力して常にこちらから攻撃を仕掛け、ずっとこちらのペースに保つのだ。
そんな中、彼はシヴに一つ頼み事をしていたことを思い出していた。
「最後にシヴさん、あのドラゴンのできる限り詳細な鑑定を頼めますか?」
「ほぅ、鑑定と?」
「はい、失敗した場合の最低限の報告のために」
「…それはわかったが、詳細な鑑定をするのはそこそこ時間がかかるぞ?稼げるのか?」
「………やって見せますよ」
「ほほう、その意気だ」
やってやる。俺は弱くない。どんなときでも落ち着いてやれば、俺は…。
こいつが何を思っているのか、知らない。なぜか、最初に見せた魔法で自身の周囲を纏わせ防御として使うのもしていない。だが、それは今は好都合だ。
「リーダー」
「…あぁ、わかった」
俺ともう一人がドラゴンの傍をバッと離れた。一瞬ドラゴンがきょとんとしたような気がした。だが、その理由はすぐにわかることになる。
四方に分かれたBランクの彼らが彼らの最高打を一斉に放ったのだ。四方の魔法が合わさり、閃光が周囲を包む。
彼らは隠れて魔法を準備していた。隠れて魔法を準備するだけでも相当の技量だ。そしてBランクと言えど、万全の状態でフル詠唱の魔法の威力は驚異的である。しかもそれが四方から。シヴの鑑定より先に準備が整ったので、こちらを先に当てた。これで倒せれば鑑定の必要もなくなる…が、果たしてどうか。
光が収まる。魔法がぶつかり合ったその中心は周囲の木々は完全に吹き飛び、更地となっている。その余波はその周囲にも及び、ちょうど隠れていたBランクの彼らが容易に視認できるぐらいには木々はなくなっていた。
白きドラゴンは、中心でただ佇んでいた。そして、それで防御したと思われる結界魔法がドラゴンを包むように展開されていた。
だが、それを見た俺たちは青褪めた。そんなとき、誰かが言ったその台詞が全員の気持ちを代弁した。
「な、なんで、なんであんな簡単な結界魔法であれを、防げるんだっ!!??」
そう、あのドラゴンの結界魔法、構築が簡単すぎるのだ。そう、子ども達でも使うようなとても単純な魔法。それが、Bランクの彼らの魔法を防ぎ切ったのだ。
一言で言って、あり得ない。彼らの魔法は複雑で、強固で、強力だ。少なくともあんな結界、濡らした紙を破るぐらい簡単に貫通できるはずだ。だが、実際はその逆。しかも、傷一つ付いていないときた。
とても、信じられない、認められない。
「嘘だ、嘘だ、嘘だァァァ!!!」
一人が、叫び出し魔法を撃ちまくる。確か彼は自身の魔法に絶対の自信を持っていた自信家だ。しかし、彼の撃った魔法は悉く結界に弾かれ、ドラゴンには到達しなかった。すると、ドラゴンが動き、彼の方を向いた。
「!?駄目だ!退けッ!!」
ドラゴンの口から赤き一線が出た。それは、恐ろしい速さで彼と傍にいた彼のペアに迫り、彼らのいたところからそのずっと後ろまで一瞬で燃やし尽くした。あまりの熱に木々が、地面が完全に炭化している。
あんな光線を、ほとんど溜め無しで撃てるのか…。
「ど、竜息吹…」
自然と口にしていた。あれこそが、竜が使うという竜息吹。上位の魔法をも凌ぐ威力を誇るという魔法。
「違うわ、あれは熱線照射。ごくごく普通の初級攻撃魔法だ」
後ろから声がした。見ると、シヴがいた。両手には、先ほどあの魔法に巻き込まれて死んだと思った二人が抱えられていた。
「鑑定は悪いが中断させてもらった。人命の方が大事だと思ったからな。ひとまずこの二人は命に別状はないが、あとコンマ数秒遅かったら死んでいた。とりあえず安全な場所に転移させておくぞ」
「ありがとうございます、シヴさん」
「謝るな、手間取っているこちらも悪い。あのドラゴン無意識に鑑定を妨害している。これ以上踏み込めば、気付かれる可能性があって起こるかもしれないが、どうする?」
「続けてください、あとどれぐらいで行けますか?」
「いんや、許可が出たからすぐだ。いますぐにでも__ホレ…んッ!?気付かれた!」
「え!?もうですか!?」
ドラゴンが動いた。ドラゴンのいる地点の地面がボコボコと音を立て、やがて剣の形を作る。
「…ほう、土魔法で剣を摸すか。器用だな」
土で作られた剣の切っ先がこちらに向く。そして恐ろしい速度で一直線に飛んでくる。
舐めやがって、まだ様子見のつもりか。例え恐ろしい速度で向かってきたとしても、あれは土で作っただけの剣。こちらの職人が鍛えた鋼の剣、盾を到底突破することなど不可能だ。
…いや、違う。そうじゃない。
咄嗟の勘と言ったところか。俺は危機を感じ、盾にかけられるだけの強化魔法をかけた。シヴさんも、俺たちを守るため、結界魔法を俺の前に展開した。
土の剣と結界がまず衝突する。
結果は、剣が結界を貫通した。貫通された結界はガラスが割れるように崩れていった。
その直後、俺の盾と土の剣が衝突した。衝突したが、剣は何もなかったかのように盾を破壊し、俺の腹を抉った。しかし、僅かに軌道をそらせることができたおかげで三人纏めて串刺しは避けれることができた。
「がはッ」
出血がひどい。右わき腹が持っていかれた。意識が朦朧とする。立っていられない。重力に従い、俺は地面に倒れる。
近くでシヴの文句が聞こえる。
「はぁぁ?なんだ今のは。貫通?おかしいだろ?こいつもしかして…。ち、あいつこっちに来るな。君、レスタフを回復しててくれ。よくやった。ここからは俺がやる。全員、巻き込まれないように少し離れたところで一か所に集まっておけ、いいな」
もう一人のAランクの冒険者は、首を何度も縦に振った。それを視界の端で見てシヴは飛び出した。その手にはレスタフの剣を持っていた。
「まったく、いつ以来だ?こんな緊張しながら戦いに臨んでいるのは。…行くぞ、怪物め」
番外編ぱーと2です。
あれですね。戦闘書きたい書きたい言ってたのでそれのせいではめが外れたんでしょう。きっと。




