Ss.4-1 白き竜<遭遇>
「回れ、回れ!いいか、決して一人で先走るなよ、死ぬぞ!」
森の中で一人の男の声が響く。男の名前はレスタフという。最近四十を過ぎたAランク、ベテラン冒険者だ。
「お前らは、右だ。俺はこいつの注意を引いておくから十分な距離を確保して包囲しろ!当たり前だが、常に防護用の結界は張っておけよ。魔力が無駄だからって渋るんじゃねーぞ!」
レスタフは、牽制用の魔法を放つ。放たれた魔法は一直線に目標に向かう。…が魔法は目標に到達する前までに何かにぶつかり霧散する。
(ちッ、幼体とはいえ流石にドラゴンだな。既に魔法の操作もお手の物ってか)
目の前には、純白の他のドラゴンに比べ比較的小柄なドラゴンがいた。小柄、と言っても体長は約二メートルほど。スラリとした細長い尻尾を含めると四メートルぐらいにもなる。小さな前脚と体を支える後ろ脚それぞれ二脚ずつで背に生えている翼を折りたたんで少し大きな岩の上に座っていた。
レスタフたちはギルドからの依頼で定期的な森の調査に赴いていたのだ。
一年ほど前か。東の方で謎の白いドラゴンが発見されたという話は男たちの拠点にしている地域でも有名な話だった。ギルドからも、その存在は通達がされており、当時危険度は星四にされていた。
普通、幼体のドラゴンはそこまで強いとは言えず、寧ろ弱い方であり基本的に親と共に行動する。しかし、この個体はそのような様子はなく、確実に特異個体であるとのことだった。ギルドからは、可能ならば捕獲、無理ならば討伐しろと言われている。
これを聞いた冒険者たちが素材を求めてわんさか東に集まったと聞いたが、結局発見には至らなかったらしい。お疲れ様である。
そしてあれから、一年。たまたまこの森に調査に来ていた時に魔力感知にこのドラゴンの反応が引っかかったのだ。見つけた瞬間、その強さを理解した。これは確かに恐ろしい。向こうもおそらくこちらに気付いているが向かってくる様子はない。ギルドの指定討伐対象に指定されているうえ、今回の調査隊は十一人の少数精鋭。Bランクが八人。俺を含めAランクが二人。そして、昔から知り合いのSランクが一人いる。今回はレスタフがチームのリーダーと聞き、予定が合ったから参加してくれた心強い味方だ。
つまり今、これ以上ない万全の状態であり、これでは流石にギルドからの指令を無視するのはできない。仮に捕獲が無理でも討伐はしたいところだ。
最初は襲ってくる気配はないのなら捕獲できるかもと思い、包囲をしようとしたが、その瞬間恐ろしい殺気が押し寄せてきた。攻撃してこないだけで、こちらの動きに敏感に警戒しているようだ。
というわけで、注意を引かせるように牽制で魔法を撃ったわけだが、効果はなし。威力自体そこそこだと自負していたがどうやら意味がないらしい。
ここは、Sランク魔術師の力を借りるか。俺は後ろにいる中年、になりかけのがたいのいい男に声をかけた。
「シヴさん、出番ですよ!」
「ホイ、きた。任せな。烈風斬牙!__おッ!はえぇ!このドラゴン!」
シヴが十八番の魔法を撃つ。彼がいつも初手で繰り出す魔法、烈風斬牙。彼曰く牽制技だと言っていたがその威力は凄まじい。ドラゴンが座っていた岩など一瞬で微塵切りにし、更にはその奥の木々まで切り刻まれている。しかし、ドラゴンは飛んで回避した。
…これはよくない。
飛ばれたら、包囲が難しくなるうえ、上を取られているのは不利だ。一応全員飛行魔法は習得しているが、ドラゴン相手に空中戦は避けたいところだ。
と思っていたら、ドラゴンの体が宙でピタリと止まった。
「来る」。そう感じたレスタフは手に持った盾と剣を再度握りしめた。
瞬間、風が吹いたと思ったら、白い線が目も前に迫っていた。
(なんて速度だ!?盾、間に合うか!?)
「グっ!」
衝撃で痛みが走る。が、ドラゴンの狙いはどうやら俺ではなかったようだ。
「まったく、頼りないタンクめ!あっさり抜けられてるぞ!」
振り返ると、シヴが持っていた杖でドラゴンの爪を受けていた。
ドラゴンの前脚は小さく戦闘には不向きだが、戦闘時に爪を一時的に伸ばして剣のようにしている。
「なぁ、白い竜よ。なぜ多くの魔術師が素手で魔法を放てるのに杖を持っていると思う?答えは至ってシンプル。近接戦闘するため、だッ!」
そう言ったシヴはドラゴンの爪を自身の後方に流し、杖に魔法を付与して突いた。
「あり?」
流れるように、かつ最速で。前衛が泣きそうになるほど精錬された動き、そして速さで繰り出された必中かと思われた突きは見事に空を突いた。そして次の瞬間、シヴは吹き飛んだ。ドラゴンの長い尻尾で腹を殴られたのだ。
叫び声も聞こえず一瞬にして遠くまで吹き飛ぶシヴ。ドラゴンはとどめを刺すべく爪に魔法を纏わせシヴの元へ飛ぶ。そして、遠くで爆音が轟いた。
それを聞いて、やっとレスタフの理解が追いついた。
「シヴさん!!?」
「焦るな、無事だ。おーいてて。しっかし油断大敵だ。人相手なら当たったが…。やるな。これは真面目に行くか」
レスタフが叫んだ瞬間、隣でシヴの声がした。見たら、受けた傷を回復しているシヴがいた。
「シヴさん!よかった…」
「ん?お前、さては死んだと思っただろ?失礼だな。転移が使えたら逃げれるに決まってるだろう!それよか、直戻ってくるぞ。あっちで遊んでいるBランクの者どもは戦闘を避けた方がいい。勝てる相手ではない。…リーダー、作戦考えな」
「わかってます。ここはあまりよくないので、仲間がいる方にこちらから行きましょう、転移お願いします」
「…人遣い荒いやつめ、ホレ短距離転移」
レスタフたちはその場を一時離れたのだった。
小説のあらすじ、ちょこっと変えました。殆ど大差ないけど。
それはそうと、本来一話で終わらせるはずだった、この番外『白き竜』編。しかしッ!無心に書いていて気付けば、なんと九千字越え。実に三話分!
何故だ!?どうしてこんなに膨らんだんだ?
とまぁ、そういうわけで三つに分けちゃいました。本当は一週で三話更新したいのですが、如何せん一月は忙しいので許してください。
数話同時更新は、世間一般的に春休みと呼ばれる期間に出来たらやる予定、かな?
ま、予定なんてものは私のその時の気分でコロコロ変わるんですがね。では。




