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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第1章】千年前の戦い
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Ep.4 作戦

「爆発音だ。いったんここで降りよう」

アルティオの指示で夏翔達勇者一行は飛ぶのをやめ地上へ降り立った。アルティオの言った通り、進行方向の先から爆発音が聞こえる。

今、夏翔達が来ているのは起伏の激しい荒原の広がる突破された第三関門付近の戦場である。連合軍は突破されてすぐに後退し、戦力を温存した。そして第三関門につながる戦場で戦線を維持している。連合軍は数だけはあるので数量で何とか耐えていると思われる。それに対し、魔王軍は質が連合軍の平均より高い。数でみれば連合軍約十万で、魔王軍約五万と圧倒的に数で優位なのは確かなのだが、戦いが成立できる魔王軍の強さには恐れ入る。


全体として魔王軍は約五十万の戦力を有している。対して、連合軍は全体としてみれば約百万はあるとのこと。とは言っても、各地で分散しているわけなので一戦場当たりの総数はそこまでといった具合である。喜ぶべきなのかはわからないが、連合軍の人族は軽視されているため、ほかのところよりかは少なめだそうだ。しかし、第三関門が落ちたとなれば、一気に落としに来ることも考えられる。それを阻止するために迅速に勇者一行が派遣された次第である。ちなみに、勇者パーティーの仕事は敵将、要は魔王軍幹部の討伐ある。

しかし、この戦場の敵将は後方でのんびりしていらっしゃる。幹部は血の気が多いやつが多いと聞いていたのでてっきり前線に構えているのかなと思っていたのだが違ったらしい。面倒くさいのか、今のままで十分と考えているのか。いや、前者だったとしたらクズ大将だな。ないな。


剣と魔法の世界だからか、兵器の開発がそこまで発達していないのが今この世界の実情である。よって、白兵戦メイン。しいて言うならば、遠方より魔術師たちの魔法が降り注ぐ程度。だが、魔王軍の魔法士隊の射程がこちら側のものより二、三倍ありぶっちゃけると最初のほうはタコ殴り状態だったとのこと。威力もかなりのもので今はなんとか凌いでいるが、敵が本腰入れたらまたも落とされる。幸いというべきか今は魔王軍がエルフを重点的に攻撃しているようでその他の戦場はこれの邪魔をさせないためにほどほどにダメージを調整していると推測されている。というわけで、この魔法使いらをどうにかしなければ一方的にやられる、ということである。


先日作戦会議に参加したとき、思ったがどうやら未だ三次元的な戦争は現実的ではなさそうな感じ。二次元で展開している。実に原始的だ。

しかし、夏翔自身この世界の戦争事情なんて知らないし、地球でも兵隊の教養など受けているはずもない。下手に発言しても戯言だと言われるなと考えた。

後ほど、アルティオ達に相談すると、三次元的な戦いは現実的ではないと言われた。飛行魔法は魔力の消耗がかなり激しいことに加え、他の魔法を同時に行使することは非常に困難である。一般的な兵士は飛行魔法を使用すると大体三十分で魔力すっからかん。敵地で気絶して死ぬであろうとのこと。そもそも、飛行魔法が高度な魔法なのでそもそも使用可能者が極めて少ないと言われた。

転移魔法?そんな便利なものあるかいな。空想の産物だね。真顔でそう返された。

うーん、そんなんことないと思うけどなあ…。探せばありそうな気がするけど。現状はないらしい。

と転移のことはさておき、ざっとここまで聞いたわけだが、夏翔は「いや、やっぱりこれ、僕たちならできるんじゃない?」と言った。


根拠はある。このパーティーは人族の切り札というだけあって、相当にヤバイ。質も大事なこの世界において、戦闘力は十分すぎるほど。魔王と戦うので当たり前ではあるが。そして、魔力量もすごい。ここ一年で皆の魔力量が急激に増えた。もともと、魔力量が人並み以上に高かった彼らだが、更に増えたのである。これには彼ら自身大変驚いたことであった。魔力量はだいだい二次性徴の時期と同じくらいに増加するが、成長が止まるとその後は一切変化しないことが知られている。


よく、ラノベであるような全部使いきって、貯めて、また全部使いきって、また貯めたら…あら吃驚!魔力量が増えています!…そんなんこと、断じてない。ありえない。実際に一度念のため試してみてはしたが、そんな傾向一切感じられなかったので確信を持って言える。気絶もするし、いいことなしである。

そもそも、定積の容器に入った水を全部捨てて、再び水を注いだとて、量が変わるはずもなし。要はそういうことである。

だが、成長が終わった彼らがこの期に及んで魔力量が増えるなど都合がよすぎる。では、原因は?と考えたら、彼らの魔力量が増えた時期を考えて、どう考えてもやはり勇者、夏翔の影響であると結論づけられた。結論から言うと魔力量が大きく増えたのは彼らだけだった。よく一緒に訓練していた城の兵士たちは多少増えた程度であった。したがって、確定ではないが勇者の影響があると結論づけらた。

それでも、メリットしかないので国王やローブのおっさんたちは喜んでいた。


もう一つある。この勇者一行はまだ実戦に赴いていないのだ。そのため、存在は知られていない、ハズ。であるならば、その利点を活かせる奇襲をかけてみることは意外といけそうだと感じた。


そのことを夏翔はみんなに話す。

「なるほど、確かに行けるかもしれませんね。私たちは固定概念に囚われすぎなのかもしれませんわ」

意外にも。ミューカが賛同してくれる。

「うーん、確かにね…。行けなくは…ない、か」

アルティオも賛同側へ流れてきている。

「質問だけど、魔王って逃げ帰ってくるやつを許すタイプ?」


「ナツト、突然何言って…。…なるほど。それなら敵将を引きずり出せるかもしれないな。それに出てこなかった場合でも敵に大きな損害を与えられる」


「おい、ナツト、アルティオ、二人で完結しないでくれ。俺にも教えてくれ」


「あら、オルウェルわからないのかしら?」


「ああ、生憎さっぱりだ。ミューカはわかったのかよ?」


「ええ、もちろん。マーヤもわかったよね?」


「…っえ!う、うん!もちろん!」


「お前…絶対わかってないだろ」


「そ、そんなことないもんっ!わからないくせにえらそーだぞ!」


「じゃあ、教えてくれよ、マーヤ」


「うぇっ!?えっっとねえ…」


「はいはい、そこまでそこまで。今教えるからさ。ナツトが提案した作戦は考えたら単純なものさ。まず、私たちは常人より魔力量が多い。よって、一般的に燃費が悪いと言われる魔法もかなりの時間使用可能である。加え、魔法構築のレベルも高い。次に、敵将は後方に座していて、動く気配はなし。おそらく、関門を突破して今のままで勝てると思っているからわざわざ自身が赴く必要はないと感じている。実際押しているのは向こうだしね。そして、同じく後方には白兵たちの支援を行う魔術師が多くいる。かれらは攻撃にも防衛にもともに重要な存在である。そして、最後に魔王は逃げ帰ってくる者たちを許すなんてことは到底考えられない性格である。ここまでヒントがあれば、もうわかるはずだ」


「「…そうか!後方攻撃か!」」


「そ」


「そうだよ」


「正解ですね」

アルティオは続ける。

「まず後方の魔術師陣営を崩壊させる。そしたら、混乱のうちにひとまず帰還。そして、攻めと守りの起点を失った敵軍は撤退するのがベストだが、帰っても魔王に消されるから、戦わなければならない。よって、敵将は前に出てこざるを得ない。出てきたところを一斉に叩く。雑兵は味方に託す。仮に出てこなかったとしても、魔術師隊を失った以上均衡が崩壊し、こっちが一気に優勢になる。作戦が成功すればどっちに転んでもメリットしかない。やってみる価値は全然ある」


「おお、いいじゃねえか」

オルウェルがそう口にする、がここで夏翔は口を開く。

「でも、この作戦の問題点は大体三つ。一つは、敵の索敵能力。一つは、敵の対空攻撃手段。そして最大の問題はそもそも成功できるか否か」


「そう。そこだ。まだ誰も試していないため前例がない。失敗したらおそらく二度は通用しない。だが、前の二つの懸念はおそらく大丈夫だと思うよ。先ほど、命令を出していた報告が来たからね」

そう言って、アルティオは一枚の紙を取り出す。

「報告?」


「そう、相手の使用した魔法をまとめたデータだ。これによると、敵の常時発動型防御魔法は攻撃系魔法を感知するものみたいだ。効果範囲は魔術師陣営の半径十キロ圏内。一般的な範囲だね。攻撃魔法は、各属性集団魔法や、爆発魔法であるみたいだ。戦闘開始からかなり日数が経っているから、大体手札はこんな感じだと思うよ」


「なるほど。ありがとう。じゃあ、行けそうだな…」


「うん、で、そこで提案なんだけど…突入するのは、私とナツトで行くべきだと思うんだ」


「「「「…え!?」」」」

アルティオ以外の皆の声が綺麗にハモッた。




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