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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第4章】初代勇者の学園生活►中等部編◄
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Ep.43 求めるは学び、経験、知識そして楽しさ

「さて、全員集まったな。それでは、これより、魔法訓練の授業を始める。この授業の目的は、実際に体を動かし魔法を実践することで魔法への理解を深めることと、正しい魔法の使い方を学ぶことである。今から授業を進めるにあたっての注意事項を述べるが、先にこれだけは言っておく。この授業を楽しみにしていた生徒も多いかもしれないが、教員の指示に従えない者は当然参加させるわけにはいかない。わかったな。では、説明を行おう」


この授業、「実践魔法訓練1」は各クラス別、担当教員四人で行うみたいだ。場所は魔法訓練場。学校指定の服装、所謂体操着に着替える。ちなみに授業二コマ分である。

実戦魔法訓練の授業は高等部卒業まで付いてくる超重要な必修科目である。


今、全員が真剣な表情で担当教員から説明を受けている。説明している教員はムッキムキの男性教員。いかにも体育系の先生だ。尤も、この授業の担当ということは魔法を相当扱えるということになるが。


注意事項の説明が続く。

内容をまとめると要点は五つだった。


一つ、『教員の指示を絶対に守ること。従えない場合はその生徒、もしくは生徒達の授業参加を認めない。』


これは、さっきも言っていたことだ。大事なことだから二回言うということだな。


一つ、『魔法を人に向けて撃つな。』


まぁ、当たり前だ。授業が進むと模擬戦を行うこともあるが、そのときは別に指示を出すとのことだ。


一つ、『授業内で学んだ魔法も含め、完全に制御できていない魔法は日常生活で使用するな。』


これも常識。制御できていない魔法なんて危ないだけだしな。攻撃魔法など通常街中で使用禁止されているされているものを使ったときには逮捕案件もありうる。しかもそれが制御できていなかったら、被害は甚大なものになるだろう。


一つ、『慢心はするな。魔法は危険なものという認識を忘れるな。いついかなる時も真剣に向き合え。』


一部、さっきのものに近いものがあるな。初心を忘れるな、ということだろう。


一つ、『魔法に対する正しい知識を常に身に付けようとする姿勢を怠るな。』


大切なことだ。だが、意外と大変だ。何が正しくて何が間違いなのか。九歳の子ども達にはその判断はまだ難しいことだろう。

もちろん、それを解消するための授業が準備されているので大丈夫だ。

まぁ、この先生が言っていることは授業プラスアルファの知識、つまりは自学習のことかもしれないが。


第一回の授業の内容は、基礎中の基礎であり、ときに生死をも左右するとても大事な魔法、「防御壁」であった。

目標は、まず最初は詠唱してもいいからいつでも発動できるようにすること。それができれば詠唱破棄を練習、最終的には反射で発動することができるようになることを目指す。


反射で発動の域に到達するまでには相当時間がかかるが、自身の安全のために是非マスターすべき魔法的技術の一つである。

目標通り、一般的な魔法習得法はまず詠唱型で魔法を使い、イメージ固めを行う。イメージが固まれば、無詠唱に切り替えていく、という具合だ。


詠唱は何でもいい。自分が使おうと思っている魔法のイメージに合うような言葉を繋ぎ合わせるのが普通だ。魔力を込めて、言葉にする。これで詠唱が可能だ。


ナツトも初心に帰って詠唱型の防御壁を行ったのだった。


ある程度全員が慣れたら、次のプロセスに進む。二人一組になり、教員から各組におもちゃの銃のようなものを渡される。今、番号順に五人×六列で並んでいる。そして横の人とペアを組むことになった。つまり、出席番号20のナツトのペアは出席番号15の生徒。誰であろう、王女である。

周りの生徒から羨みのまなざしをとても強く感じる。凄くやり辛い。でも、まったく知らない女子と組むよりマシではあるか。


「各組に渡した銃は内部に入れられた魔石の魔力を使って魔力弾を撃ち出すものだ。もちろん、その魔力弾は当たっても紙を丸めたボールが当たる程度の衝撃に調整しているから安全だ。それを各組どちらかが持って、もう一方目掛けて撃て。撃たれる方は防御壁を使って当たらないように防御する。一つ注意だが、できるだけ顔は狙うなよ。以上だ、何か質問は?……無いな、では始め!」


各自が一斉にスタートした。と同時にチェルーティアはナツトに銃を渡してお先にどうぞと言った。


訓練とはいえ、一国の王女に銃を向ける日が来るとは思いもしなかった。というか、とても撃ちにくい……がやらないといけないので気持ちを切り替え、撃つ。


ポンッという破裂音とともに、白い魔力弾が撃ち出された。

魔力弾はまっすぐチェルーティアに向かって飛んでいく。チェルーティアは無詠唱で防御壁を発動し、問題なく防御する。彼女の発動までの動作は非常に滑らかなもので、まさにお手本と言ったところだ。

まだ慣れていない周囲の生徒を見ても、突出している彼女のレベルの高さがうかがえる。


全然余裕そうなので数を増やす。この銃はどうやらクールタイムというものはなさそうでトリガーを連続で押せば連射可能なようだ。弾数は魔石の魔力が尽きるまでだが、なくなればこっそり自分の魔力を込め直せばいい。


数を増やしても、チェルーティアは防ぎ切った。一度だけ悪戯心で撃ち出した弾を操作して背後から狙ってみたが、当たる前に気付かれて防がれた。反応を見るに魔力感知もマスターしていると確認できた。

チェルーティアから「あれ~?今後ろから飛んできたけど?」と言っている目を向けられたが、そっぽを向いてやり過ごした。


しばらくして、交代の指示が出る。


さて、自分の番だな。チェルーティアが銃を構え、まずは一発撃つ。


魔力弾は大体子どもが全力投球したときくらいの速度で飛んでくる。要は見てから対処が十分可能というわけだ。


そもそも大きな防御壁を展開すれば相手が連射しようとも簡単に防ぐことができるが、それは面白くないし練習にならない。ここはチェルーティアがやっていたように小さい防御壁を作って防ぐのがいいだろう。


というわけで、手のひらサイズの防御壁を作り魔力弾を正確に受ける。チェルーティアも想定通りというような顔でどんどん撃ってくる。


しばらく撃ち続けた後、チェルーティアは一度撃つのをやめた。終わりかなと一瞬思ったが、どうやら違うようだ。先ほどまで片手で銃を撃っていたが、今度は両手で銃を持って構えた。


アイコンタクトの後、チェルーティアはトリガーを押しまくり、ナツトのときの倍ぐらいの量の魔力弾を撃ち出した。それはさながらマシンガンのようだった。先ほどやった悪戯の仕返しということだろうか。意外と好戦的な一面もあるのか。


流石にこれはやりすぎでは、と思って周囲にいるはずの教員達を見る。


が、全員不自然なぐらいこっちを見ていない。他の生徒はこちらに気を取られているというのにだ。絶対にわざとだ。いや別に連射してはいけないとは言ってはいないか。

じゃあ、いいのか?うーん、わからん。何も言ってこないのなら別にいいのか。


さて、二つあれば十分かな。

両手で防御壁を発動する。要領は先ほど悪戯でやった魔力弾と同じだ。防御壁を魔力で操作して魔力弾を一つずつ落としていくだけだ。能力はもちろん使わない。使うのは純粋に自身の魔力操作の技術だ。

飛んでくる速さが目で追えるとはいえ、数が揃うとミスって当たる可能性は高くなる。自身の周囲をかなりの速度で防御壁を駆け巡らせて、近くに来たものから冷静に対処する。


チェルーティアはエイムが阿保みたいによく、ナツトの動きを見て撃つ場所を変えてきた。地味にいいとこに撃ってくるため油断ならない。防御壁がない、撃たれたら嫌だなと思う場所に正確に撃ってくる。

連射しながらというのに、連射速度も落とさず……いやはや恐ろしい腕前だ。一体誰に教わったのか。




少しずつ慣れてきた。魔力弾は防御壁で防ぐと反射し、そこから約二秒ほど残り、そして消える。

その一秒をうまく使おうと考えた。防御壁二つを連携させ、弾を反射させる角度を調整する。

弾いた弾を新たにやってきた弾に当てる。感覚的にはおはじきをやっている感じだ。意外と楽しい。


完全に遊んでいたら、ふいに弾が止んだ。弾切れのようだ。ちょうどいいので自分の番は終わりにしよう。

かなり注目されているし。注目されるのは少し嫌で恥ずかしいが、全員にこいつは魔法が上手いなという印象は植え付けることができたので長期的に見ればメリットに転じそうなので良しとする。

これで今後多少魔法でやりすぎても大丈夫な保険は作れた。


「やっぱり、魔力の扱い方上手ね」


銃を受け取るとき、チェルーティアからそう言われた。「やっぱり」というところが気になるが、素直にありがとうと返した。



そこからは魔石に魔力を込め直し、練習に励んだのだった。

ナツト達の真似をして連射を試した生徒が何人かいたが、ガードが追いつかず弾をその身に喰らっていた。










「最初に核心を言っておきましょうか。教科書に載っている詠唱魔法は便利だから載っているに過ぎません。教科書に書いていることをマスターすることは大事なことです。しかし、真に魔法を自分のものにするには自分に合ったスタイルに落とし込むことです。何も教科書の指示通りに行う必要はありません。やりたいように学べばいいのです」


午後一番の授業は座学の『詠唱魔法基礎』。詠唱魔法のなんたるかを学ぶ授業である。


開口一番、なかなかズバッと言ったなこの先生。

教科書ばかり見てきた固定概念カチカチの生徒はびっくりしたことだろう。


事実、この先生の言う通りだ。教科書レベルの詠唱魔法はたかが知れている。教科書は、一般的な魔法を高い再現度で発動させるためのものに過ぎない。魔法というものはその性質上、つまりは発動者の想像力によって決まるものだ。そのため同じ魔法というものは存在しない。というより作り出せない。少なくとも詠唱魔法だけでは不可能だ。

しかし、それを何とか大衆にほとんど同じ魔法を使えるように落とし込んだものが教科書に載っている魔法というわけだ。

これは詠唱魔法と無詠唱魔法どちらにも該当する話だ。


魔法はイメージが肝なので教科書はそのイメージ固めのために動く写真が多く印刷されている。ご丁寧にカラーなのでよりイメージしやすくなるだろう。

しかし、こればかり見ていたらイメージが固定化されてしまう可能性が出てくる。それを防ぐためにこの先生は初めにああ言ったのだろう。

この授業は少し面白そうだ。




これまでの知識と数年先の分まで学んでいるのに今更何を学ぶことがあるんだ、とか時間の無駄だ、などとは一切思っていない。学ぶことがないなんてきっとない。ないと言うのは、それはきっと傲りだろう。どこに行っても学ぶことで溢れている、そう信じたい。



ありがとう、アルティオ、ミューカ。始まってまだ数日しか経っていないというのに、楽しいよ。まさかこんなにも楽しくなるなんて本当に思ってもみなかったよ。














ある程度感情を結ぶまで、飛ばせない……。


これは、いろいろと長くなりそうな予感がしますね。

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