Ep.40 始まる新生活
たまに、二度目の人生なのにまた学校行くなんて罰ゲームだ、とかまた宿題があるなんて嫌だという声を聞く。しかし、僕はそうは思わない。
自分が学生のときならば少なからずそう思っていたのかもしれない。
だが、これでもこっちで学校なんて行かずに魔王を倒し、何なら一度成人を迎えたこともある。
学校という場所から離れて初めて気が付く。あの場所はなんて素晴らしい場所であったのかと。宿題が何だ。社会に出ればもっと大変なことだらけだ。それに比べれば宿題など毛ほども苦を感じない。
かけがえのない時間を当たり前のように過ごしていた日々。幼いころはその日々が終わることなんてないとどこか心の中で思っていた。人は失ってからその価値に気が付くと言うが、当時の僕はそんな言葉聞こうとしなかった。信じなかった。
魔王討伐してからというものの、あの時の楽しさを懐かしむこともあった。もう一度学校で楽しい日々を過ごしてみたいと。
…だからこそ、こうして新たに学校という場所に通えることに嬉しさを覚えているのだった。
今、ナツトはグラル学園の入学式に出席している。日本の学校のような制服を身に纏い、上から腰ほどまでのマントを着ている。マントは全体的に黒で前でとめるための金具がついており、どこか軍服のような印象を受ける。また、学年カラーが設定されており、赤・青・緑・黄でナツト達は赤色らしく、制服やマントにも部分的に赤い装飾が施されている。
ナツトの周囲には同じクラス、つまりはAクラスの子どもたちが座っている。入学式の前にスムーズに進めるため、連絡されていた自分のクラスで集合してある。そのため、一応全員の顔は見てある。
彼らの多くは緊張しながらもこれからの生活が楽しみだと言わんばかりに目が輝いていた。
舞台に三十代ほどの眼鏡をかけた焦げ茶色の髪の男性が現れる。
「新入生の諸君。入学、おめでとう。私はこのグラル学園のアーサックだ。これから君達の学年を担当する。皆、よろしく。では、まずは学園長からのお言葉です」
目の前にある舞台に一人の女性が現れる。ミューカである。
子どもたちが少しざわめく。無理もない、そこにいるのは幼いころから親の話で聞いたことのある伝説の英雄の一人なんだから。
だが、そのざわめきもミューカが話し出すことで途端に収まる。
「木々が色づき始め、仄かに暖かい秋の陽光が差し込むこの日、多くの来賓の皆様、ならびに保護者の皆様にご臨場いただき、この第248回中等部入学式を行えること、新入生は勿論、我々教職員、在校生にとりまして大変大きな喜びです。本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
さて、これから新たな環境で多くのことを学んでいく新入生のみんな、入学おめでとう」
そこから少しの間ミューカの話が続く。王妃なのに謙りすぎだと感じるかもしれないがこの場の彼女は王妃としてではなく、一学園長として発言している。
ミューカは新入生全体を見渡しながら話を続ける。途中、ナツトと完全に視線が重なり、彼女は微笑みを浮かべた。その笑みの下には「制服、似合ってるじゃない」という声が聞こえた気がした。
「…国立グラル学園学園長、ミューカ・ハピ・ラーテル」
ミューカの話が終わった。大体3分程度だった。聞き飽きるか飽きないかのギリギリのラインだったと思う。ナツトはもう少しいけるが、他の子ども達はこれ以上は厳しいだろう。尤も前世も校長先生など学校の長の話は長いことが当たり前だったので彼女の話は子ども達に配慮したかなり聞きやすいものだっただろう。
彼女の話が終われば今度は、新入生の代表の挨拶だ。
新入生代表はチェルーティア・オル・ラーテル。王女様だ。
「晴れ晴れとした空の下、私達百二十名がこのグラル学園の門をくぐり、入学できたこと大変嬉しく思います。本日はこのような素晴らしい入学式を開催していただきありがとうございます」
保護者達から見れば、やはり彼女が首席だったのかと思うだろう。満点が三人いたことなんて思いもしないだろう。
ナツトは数週間前にミューカが訪ねてきたことを思い出した。
訪ねてきた目的は、今年首席三人いるけど代表挨拶したいか否か。もちろんナツトはすぐさま拒否をした。彼女もその答えは予想していたらしく、特に驚かずに「わかったわ」と返した。もう一人の方も辞退したらしく、ナツトも辞退したのでチェルーティアで確定したのだった。チェルーティアも別にやってもやらなくてもいいという意見なので何も問題ないとのことだった。
やはり、王族とだけあって立ち振る舞いに他とは違うものを感じる。容姿もアルティオとミューカ、二人の特徴が合わさり、見るものを惹きつけるものがある。幼い見た目も相まって彼女のような人間を可愛いというのだろう。
ただナツトからすれば、アルティオとミューカが幼くなった印象を強く受けるのでそのような魅力はあまり感じず、言うならば、子の成長を見守る親のような心境である。
そんなくだらないことを考えていたら、彼女の話は終わっていた。多少ユーモアを含んでいた聞いていて面白い内容だった。王女ならもっと堅苦しい内容を考えていたが、いい意味でイメージと違ったようだ。
話を聞き終わり、やはりと言うべきか九歳なのに大人びている印象を受けた。王族だから当然か。
入学式は滞りなく進行し、無事終わった。
新入生たちはその後、担任に各教室に誘導され、オリエンテーションを行う。ナツト達Aクラス一同も教室に誘導された。新入生への優しさか、中等部一年生の教室はすべて二階にあるようだ。
ナツトの出席番号は20。そしてクラスは縦長の二人用机が縦に五台並びそれが六列ある。つまり、ナツトの席の初期位置は教室の一番後ろ、最高である。
しかし、問題がいくつかあった。そのうちで最大の問題は王女だ。王女の出席番号は15。ナツトの隣である。
これは最初からガッツリ関わることになるかもしれないと心の中で感じたナツトであった。
「全員席に着いたか?…さて、Aクラスの諸君。私が担任のアーサックだ。よろしく。早速だが、一人ずつ自己紹介をしようか。じゃあ、こっちからいこうか」
担任の指示に従い、順番に自己紹介が始まる。
「ノアラナチア・ハロラです!よろしくお願いします!」
「ウルヴァロ・トーンです。よろしく」
「イアノン・アオ・ネララバールだ。みんな、これからよろしく」
一人ずつ一人ずつ進んでいき、段々自分の番が近づいてくる。この緊張感は随分と久しい。
「チェルーティア・オル・ラーテルよ。よろしく」
ここから新たな物語が動き出す。そしてこれが始めの一歩だ。
「シャック・クルシャウトです。みんな、どうぞよろしく」
そういえば、この作品のあらすじ最早意味ないですね。面倒だから書き換えないけど。
うーん、更新が遅れてますね…。あ、いや読み手からしたら遅れているようには思わないと思いますが、通常、二週間ほど余裕を持って更新しているんですよ。
つまり、いつも通りならこれが投稿されるときには私は二話分先を書き終わっている感じです。
たまに今回みたく投稿される前までに後書きに気分で何か書くことがあります。
で、話を戻して今いつものペースから遅れているわけで。二話分書けてないってことですね。今週が特に忙しかったというのが原因ですが。この影響でもしかすると投稿が今後遅れる可能性があるかも…とだけ言っておきますね。
(更新遅れる言うの何度目だろうかというツッコミは心の中に留めておいてください)




