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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第4章】初代勇者の学園生活►中等部編◄
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Ep.39 入学試験

「今年も、飛行魔法の合格者が手続きのためギルドの外まで並んでいます!」


画面に映る若い女性のリポーターが明るい声でその場の説明を行う。今日は飛行魔法の試験から二ヶ月後。合否判定が出る日だ。

合格を勝ち取った多くの冒険者たちがギルドカードに資格認定の印を貰うため合格証を握りしめギルド前に並んでいた。


毎年、この番組は転移魔法や回復魔法の合格時も似たような現地報道をしている。飛行魔法は他に比べ合格者数がかなり違うのでギルド近くに住んでいる人たちは、今年もこの時期が来たかという一種の風物詩のようなものになっていた。


「近年は合格者数も増えてきているため、役所でも期間限定で申請手続きが行えるように国が調整しています」


国際資格を持っているというステータスは最近ではかなり重要視されている。というのも所持しているだけで就職に有利に働くことがかなりあるからだ。企業側も優秀な人材として見てくれることが多いのだ。

車の免許と立ち位置が若干近い。

何度も言うが転移魔法や回復魔法は難易度が高いので、比較的簡単に合格できる飛行魔法を取ろうとするのだ。


女性のリポーターは並んでいる冒険者たちにインタビューを始めた。

ガタイのいい男性がにこやかな笑顔で質問に答えた。そうとう嬉しそうだと言うことは彼の表情から容易に読み取れる。

そんな調子で、列に並んでいる人に次々とインタビューをしていく。そして、女性リポーターにはスルーされたが列の中に明らかに不釣り合いな男の子が並んでいた。女性リポーターはその子どもの近くでインタビューを始めた。


テレビの画面を眺めていた少女はその少年を凝視した。

そんなとき少女の部屋の扉がノックされる。


「いいよ、入って」


許可を出され、一人のメイドが部屋に入ってくる。このメイドは少女の専属のメイドだ。少女の生後間もない頃からの付き合いで信頼も高い。


「ねぇ?」


「はい、如何なさいましたか?姫様」


「これ、どう思う?」


姫と呼ばれた少女は壁掛けされたテレビを指さす。


「飛行魔法の列ですね…。今インタビューされている冒険者がどうかしましたか?」


「違う違う。この後ろの男の子」


「この少年ですか?…誰かの子どもなのでは?…ッ!もしや姫様気になっているのですか!?」


「違うって!含みのある言い方やめてよ!私と同年代が映ったから興味が出ただけよ。この子、保護者みたいな人は周りにいないし。それに…この子転移魔法のインタビューのときにもいたの。その時も一人で列にいたの」


「…姫様は、この少年が試験を合格したと考えているのでしょうか?」


「ええ、そうよ。その方が面白いじゃない。私と同じぐらいの年齢で魔力操作に長けているってことでしょ?そうだとしたら私一人が特別じゃないってことよ!朗報だわ!私だってまだ飛行魔法しか習得していないのよ?」


「……しかし、姫様。そうと決めつけるのはまだ尚早では?」


「そこで、今からこの少年の情報を集められるだけ集めて頂戴。王族命令よ。あ、その間メイド業務は休みにしておくから安心してね」


「…姫様…こんな時にだけ王族命令出すのやめてください…。………では、行って参ります」


「うん、よろしくねー」


少女は手を振って、メイドを送り出した後インタビューが終わって少年が映らなくなったテレビを消した。











国際資格の試験の結果は非常によかった。見事三つすべて合格することができ、晴れてギルドカードに転移魔法、回復魔法、飛行魔法(国際ver)の証を刻まれた。

転移魔法の合格が決まってすぐにギルドに行ったのだが少し人が並んでいて証を貰うまで時間がかかった。テレビカメラもいたので少しびっくりした。

回復魔法の時はそれを習い、少し日にちをずらして証を貰いに行った。

飛行魔法の時はギルドに野暮用があったので先にそれを済ませ、その後は時間が空いていたので、ギルドに行ったついでに気長に列に並んだ。


転移魔法や回復魔法の証を持っていたら一定数の依頼をこなすことで二つ程度飛び級することができるようだ。

しかし、本音を言うとランクが上がっても多少周りの目が変わりそうってぐらいのイメージしか湧かない。

あぁ、もしかすると就職先を探す時に資格として使えるかもだな。

後は…優遇がよくなるかな。


何にせよ、ギルドカードを所持し続けるためには依頼を受けなければならないわけなんだが、この首都リコアが絡む魔物関連依頼は当然ない。

リコアにある冒険者ギルドというのは他のところとは若干方向性が異なり、ラーテル王国内の依頼の総括所のような役割を果たしている。冒険者たちのメリットとしてはラーテル王国内のリコア以外の場所の依頼を受けることができる点だ。

リコア支部からは例えばナットがやってきたトレーカス周辺の依頼も受注可能である。

ラーテル王国はとにかく広いので、一部人の手が行き渡っていない自然が残った場所が多く存在する。その場所に発生した魔物を討伐するという形が一般的である。

後は、ラーテル王国にいくつか点在する魔物が溢れる洞窟のような謎の『迷宮』と呼ばれる場所の探索などである。


ギルドカードを剥奪されないためにノルマを達成するべく依頼を受けようとしたナツトはリコアのこのような仕組みに少し手間取った。

しかし、最近はそれにも慣れ、列車で日帰りで行ける距離の依頼を受け、薬草回収なりを暇つぶしでこなしていた。








時が過ぎるのは本当にあっという間だ。ラーテル王国に帰ってきていて一年が過ぎ、一応表向きに九歳になり、学園の受験前日となった。


マーヤとオルウェルとの再会はまだ叶っていない。てっきりすぐに会えるものかと考えていた。

なぜ、会えなかったのか。

アルティオがミューカと結託し、今度はこの二人に対してナットをいつまで隠せるかチャレンジを始めたからだ。

…というのは建前で、二人はここ数年大きな問題に取り組んでいる。それがもうすぐ解決しそうな段階まで来ているのだそう。

アルティオの考えは、今は仕事に集中させてそっと見守り、すべて終わった時にサプライズも兼ねてナツトのことを言うつもりなのだ。





それはさておき、明日が受験ということで寝る前に脳内で何度も復習を重ねる。転移魔法などに比べたら遥かに簡単な試験であるだろう。だが、どうにもこういう試験の前日は不安になって何度も見返してしまう。

不安は回数を重ねる度に減っていくがゼロにはならない。こればかりは試験が終わらないとなくならない。


…さて、復習はこれぐらいにして寝るか。試験時間に遅れないようにすることだけは守らないといけないからね。







「始めッ!」


試験監督が大きな声で叫ぶ。その声を合図に一斉に受験生たちは配られた問題を解き始める。


聞こえるのはペンの音だけ。

時間割りは算数、国語、魔法学の順だ。試験時間は一時間。これが終わるとその後は学園のグラウンドなどでいくつかのグループに分かれ、実技テストを行う。社会系や理科系科目のテストは実施しない。


想定通りというべきか、やはり問題は全体的に簡単だった。それもそのはず。受験者の年齢は九歳。日本で言えば小学校三・四年生ぐらいだ。

こちらの世界も同様で、算数の問題を見ると掛け算や割り算なども絡めた問題となっている。

国語は長文問題しかなく、この年齢の子どもにとってはなかなか厳しいのではと感じた。

魔法学は基本的なことをちゃんと抑えているのか問うような問題だった。


しかし、どの科目にも捻った発展問題がいくつか問題の中にサラッと出てきた。こういう捻り系の問題は最後に出るのではなく全体の真ん中とかに紛れて出てくる。

中学生以上になれば難しい問題を飛ばして簡単なところから解答するっていう当たり前の行動をするが、今の年齢層ならそれを知らない子どもがいても不思議ではない。

馬鹿正直に順に解いていこうとして引っ掛かり、そのまま時間を潰してしまう。そうなってしまった子にはご愁傷様とだけ言っておこう。


問題を解きながらアルティオに聞いたことを思い出す。

グラル学園は明確に目に見える形で分けてはいないが、成績順でクラスが決定される。毎年大体四クラス分の合格者を出し、入学試験の高得点を取った者からA、B、C、Dと各クラスに振り分けられていく。勿論入学後いい成績を出せば上のクラスに上がることの可能であり、その逆もまた然り。

ナツトにはアルティオたちとの約束の件があるので、彼らの娘であるチェルーティアが入るクラスに入らなければいけない。

当然、チェルーティアは城で数年先の分まで英才教育を済ませてあるのでAクラスに入るだろう。数年先の内容を知っているならこのテストは余裕で満点取れる。


試験の点数は公開されない。わかるのはただ合格が不合格か、それだけだ。

ということはだ。全力で点数を取りに行けばいいわけだ。

後の心配事は新入生代表挨拶だが、これは実技で調整することにした。王女の実力を伺って、調整が必要かどうか判断する。



と簡単にできるものだと思っていたのだが、周りのレベルがかなり低くて調整がとてつもなく大変だった。


いつもの調子でやったらそれはそれは目立つところだった。

尤も、目立つことを厭わない者もいるが。

王女とはグループが異なったが、バレないように魔力探知で大体の実力を測った。

確かに、あれは九歳の子どもどころか下手な大人の冒険者を遥かに凌ぐほど実力を有している。


それと、王女以外にも気になる人物が数名。その中でも王女には及ばないが、相当技量がある男の子がいた。王女がいなければ首席になれたんじゃないかと思うぐらいだ。身なりもいいからどこかの国の貴族かお偉いさんの御子息だろうか。


気になるのは確認し終えた。後は二週間後の結果待ちだけ。帰るとしよう。










「…今年は優秀ね。満点が三人?」


「はい、まさかこんなに満点を取られるとは我々一同思ってもいませんでした。…あの、学園長、今年度の問題は簡単すぎたでしょうか?」


「…いいえ、気にしなくていいわよ。この三人が特別出来ただけよ。他の子たちの点数は概ね想定内に収まっているみたいですもの」


ミューカは笑顔で教員たちに言った。それを聞いた彼らはどこかホッとしているようだった。


(満点はナツトとチェルーティア、そしてあの国の王子…。この三人に加えてアルティオの推薦枠二人。ふふ、楽しい学年になりそうね)



皆さん、ご機嫌よう。


学園編ですが、そこまで長くするつもりはありません。(大体一〜二章分を想定)


学園編がこの作品のメインではないので、おそらくは飛ばし飛ばしに話が進んでいく予定です。


そんな感じです。


あと、前にも言ったように説明を一回挟みます。


では…。

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