Ep.36 専属執事・メイドと計画崩壊
朝から話があるとのことで、ナツトはアルティオと話していた。話の内容は家の準備が済んだということで、その確認と移動をお願いしたいということが主な内容だ。
移動と言っている以上、ナツトが買うことは半ば決定事項である。それにその家というのも前々からアルティオが秘密裏に準備してきた家のようだ。
家の下見に行く前に紹介したい者たちがいるということで部屋に二人の男女が入室する。
「え?ゴルマとシュリア…?二人も生きていたの!?」
「はい、ナツト様に忠誠を誓いましたので」
「ナツト様…お久しぶりですぅ」
「こら、シュリアまだ泣くな」
部屋に入室した二人、男性の方がゴルマで女性の方がシュリア。
ゴルマは薄めの金髪で高身長。千年前ではフィディースの扱きを乗り越えた数少ない執事の一人として有名であった。
シュリアは茶髪で身長は平均的。もともとくせ毛がひどく、髪が腰ぐらいまであるのでいくら直しても必ずどこかの髪がはねているのが特徴。二人ともまじめな性格で公私は基本的にしっかり分けるタイプであった。
この二人は千年前ナツトがまだ生きていた時に専属執事とメイドとして仕えてくれていた二人だ。正直現代まで生きているとは思っていなかったので、吃驚した。だが、すぐにそれよりも喜びが勝った。
それに二人とも千年前の時の容姿とほとんど変化がなく、見た目的に二十台に見える。
「久しぶり…二人とも、元気そうでよかった」
二人のそばに駆け寄り、言葉を交わした。
「というわけで、新しい家にはその二人を連れていくといい。二人ともそういう約束だったしね」
アルティオに感謝を述べたが、そのときいや少し待てよと考える。
「じゃあ、紹介も終わったし、行こうか。フィディース」
「はっ」
フィディースが転移門を作り、順に入っていく。
予想はしていた。二人を連れていくという流れから多分、いやきっとこうなっているのだろうと一瞬思っていた。
転移門の先は絶対億邸だろと言える大きな豪邸の敷地内であった。
「ここがナツトの家だ。高い塀が周囲を取り囲んでいるから人目を気にする必要もない。それにここいら一帯は高級住宅街だから人通りもたかが知れている。作ったのも直近ではないから、誰が済んでいるのだろうみたいな詮索も少ない。後は、君がこれを私から購入するだけだ。完璧だろう?」
アルティオが家のよさを語っているが、何も言い返せなかった。
書類にサインしてくれ、と言われ正気に戻る。買うのは決定事項なので今更後戻りはできない。書類を隅々まで確認してからサインを書く。
アルティオが満足そうに受け取り、「お金は勝手におろしておくから気にしないでくれ」と言っていた。
最後に、「部屋の中に城の図書館に繋がる扉をナツト専用に作っておいたから、使ってくれ」と言い残しアルティオは城に戻っていった。
千年前からだがゴルマとシュリアは優秀であった。
この家に来てからは、ゴルマはナツトの教育係も引き受けてくれている。ナツトは能力があるせいで呑み込みが早いことを知っているので、それを踏まえたうえで最適なペースで進めている。
本当に数日で九歳、十歳程度の勉強範囲を終えてしまい、今ではさらに先の内容を学んでいる。勿論本職は執事なのでそちらの仕事で優先すべき点があれば、そうするようにさせている。
シュリアはこの三人でも広すぎると感じる馬鹿でかいこの家を埃を残さないよう毎日掃除してくれている。庭の雑草処理も思いつく限りの家事は息をするかのようにこなしている。ご飯も率先して作り、これがまた絶品であった。ご飯時は三人で食べるようにしている。
勉強以外でも最近やっていることがある。
この家には魔法で強化なり細工された特殊な部屋というより大きな空間が存在し、ちょっとばかり強い魔法を使おうがビクともしないのだ。
入り口付近に操作盤があり、それをいじくることで部屋内の景色を変更したりや岩や的などの簡易的なものを設置したりすることができる。
そんな便利部屋でやっているのは勿論魔法の練習だ。この体になってから簡単な魔法こそ使ったが、難易度が高めな高度な魔法というものは使ったことがなかった。ここなら人目も気にせず思う存分試すことができるわけだ。
目の前に設置した的が綺麗に爆散する。
「魔力の操作性は前よりスムーズだな。でもやっぱり、魔力が必要以上に流れていくな…。簡単な魔法ならこれに慣れたけど強力なものになってきたら無駄が多くなる…。毎日続けて慣らしていくしかないか」
魔法とはイメージから成り立つ。イメージがちゃんとできれば誰でもあらゆる魔法を使うことができる。
…いや、光や闇系統の魔法はそう簡単ではないか。あれは結構ややこしくて上級者向けの魔法だ。光系統は光を灯すだけなら簡単だが、それ以外の攻撃に使うような光系統魔法が扱いが難しいのだ。
今のナツトも完全に御しきれるかどうかわからなかったので、扱うのはもう少し体に慣れてからにすることにした。
魔法の確認をある程度済ました後、今度は能力を試してみることにした。
なんだかんだ言って転生後まともに能力を使ったのは初めてかもしれない。『記憶』の方は試すとかそういうのはなくこれは常時発動している。見たものを勝手に記憶してしまう。現状は、生まれながら見ただけで何でも覚えてしまう人のような感じで『記憶』を使っている感じだ。そういう意味では能力を使っていることにはなるが、意識的に使うという点では初めてだ。
というわけで試すのは『誘導』の方だ。
試す方法は簡単。適当に誘導する道を置いておいてそこに魔法を乗せる。
試してみた結果、一応は思い通りに発動できた。しかし、ナツトには一つ違和感を覚えていた。
「…?操作性下がった…?」
どこか出力が下がったようだ。記憶という能力を有しているため千年経とうが当時の感覚は覚えている。千年前の全盛期ともいえるのか、邪神と戦った時と比べると十中八九今の状態の方が弱い。
どの部分が弱いのか。出力が下がったということは、できることが減ったことを意味する。
原因はわからない。体のせいなのか、はたまた別の何かのせいなのか。
魔法の威力は上がったというのに能力は性能が落ちた。悲しいことである。
それでも使えないということはまったくないのでどの点は安心できる。ゲームでいうとぶっ壊れから普通になったというぐらいの変化だろう。いや、ぐらいじゃないか。とんでもないナーフを喰らった気分になってしまった。
日が経つにつれ、ゴルマから教わる内容も難しいものになってくる。明らかに普通の八歳児が学ぶ領域を逸脱している。算数などとうの昔に数学と化している。だが高度になるにつれ、面白い発見もある。科学と魔法をちゃんと分けて考えてあることに気が付いた。こういう剣と魔法の世界では自然界の法則に魔法を絡めがちだが、そのあたりの区別を明確に行っている感じを本から得られ、思わず感心した。勿論魔物など魔素や魔法が絡んでくるもの生物学的に厄介なものも存在するがそれは今は関係ない。
数多くの知識を教えてくれるゴルマだが、流石に地球でいう高校生までの知識までしか教えることはできない。それ以上先は専門性が高すぎて一人では到底教えきれない。
尤もゴルマが通っていた大学で学んだことは断片的に教えてもらった。
ひと月が経つ頃にはナツトはゴルマとのお勉強会を完結させていた。その膨大な知識を一片たりともこぼさずに。
それが終われば、ゴルマは執事の業務に重点を置いていた。ナツトは自分の興味のあるより専門的な知識を城から本を取ってきて自室で読み漁っていた。自室に置いてある椅子が本を読むのに最適でかつまったく疲れないのでとても重宝している。
魔法の訓練も毎日行い、やっと魔力を完全にコントロール下に置いたのであった。
いつかはギルドに行こうと考えているが、それよりも重要な用事ができてしまいなかなか行けない。現状ナツトは引きこもりと言われても文句は言えない。
その日も本を読んで一日を潰そうと考えていたが、ナツトの自室にゴルマが入室して、一言言った。
「ナツト様、お客様がお見えです」
「…客?アルティオ?いや、アルティオなら事前に連絡を入れるはず…。ゴルマ、お客さんって誰?」
「ミューカ様です」
「……アルティオ、僕らの負けだ…。…わかった、客間に入れてくれ」
「畏まりました」
お辞儀をしてゴルマが部屋を出ていく。それを見送ったナツトは急いで準備をする。
入学までバレなかったら勝ち、か。ひと月しかもたなかったな。いやー、早いな。でも、流石にばれるか普通に考えて。ゲームはアルティオの完敗っと。
ここに子どものような遊びが一つ完結したのだった。
大事なことがまだまだあるのに書けていないという事実。
例えば、なんで千年以上生きとんや、など。いずれ書くので安心してください。
これは4章終わったらまた説明いる予感。まだまだ4章始まったばかりというのに…。
ぶっちゃけ、この作品序章と4章以降を読めば話が分かります笑
4章以降が本編なので、ね。
本音を言えばここから書きたかった。




