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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第1章】千年前の戦い
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Ep.3 戦争に向けて

目の前には夜の暗黒が広がっている。

寝転がっているベッドはおそらく最高級のものであると考えられるが、どうにも夏翔は寝付けないでいた。

今でも自身の身に起きたことが実感できず、いまだに実は夢なのではないかと考えてしまう。


暗い場所で、一人になると人は弱くなるのだろうか。夏翔の心に急に大きな不安が押し寄せてきた。

そうだ、約束に行けなかったな。おじいちゃん、おばあちゃんは大丈夫だろうか。学校はどうなるのだろうか。

夏翔の両親は夏翔が物心つく頃には既にいなくなっていた。その後、成り行きで比較的近くに住んでいた父方の祖父母に引き取られていた。両親がいなくなった理由は何度聞いても教えてくれず、ネットで調べても特にこれといったものは見つからず、結局わからずじまいである。


夏翔は思考がどんどんネガティブなものへなっていることに気が付き、これじゃいけないと思い、別のことを考えることにした。

そうだ、もう一回心に聞いてみよう。

アルティオ達から聞いた、この心に聞くという行為。これを行うと、気分が少し落ち着く気がする。今の夏翔にとって、それはとてもありがたいことだった。

改めて、自身の能力を確認する。そして、ふとある可能性に気が付き、戦慄した。もしも今想像したことができるであれば、それはとても凶悪なものであることに。少なくとも勇者には似合わない系統のものであると言える。夏翔は自身が能力を使いこなせるまで、能力のことは少し偽ろうと決めた。


そして、いつしか夏翔は深い眠りについていた。









城の外は、恐ろしいほどまでに荒れた天気であった。日本にいたときは見たことがないほど空はどす黒く、雷が常時迸り、暴風が吹き荒れていた。天気で気分が左右されるときというのは確かにあるが、ここまでげんなりとした気分になるのは初めてだ。

しかし、たとえどんなに空が荒れようが修行は始まる。とは言っても、夏翔は習い事で武道をしていたが、本格的な戦闘の「せ」の字も知らないような、この世界の者から見ると雑魚そのものである。しかし、幸いにも時間はある。王の手配でこの国の一番の剣士と魔術師が剣と魔法の師匠として知識と戦いのノウハウを叩き込むことになった。最低限の力を習得するまで、旅仲間との合同訓練ではなく、ひたすら夏翔は一対一で教わった。


最初は魔法から。師匠は茶髪の若い男性。役職は第一級宮廷魔導士。

「既にご存じかもしれませんが、細かい分別を端折ると魔法は大きく二つの種類があります。一つは詠唱型。もう一つは魔法陣型です。実線でメインとして使うのは、やはり詠唱型でしょう。当然のことながら戦闘中に呑気に詠唱していたら余裕で殺されます。そのため最低限一つでも無詠唱で発動できる技量は必要です。まず、大体の適性を調べて、その後まずこれができるようになることを目標にしていきましょう」


魔法が一通りすれば今度は剣。師匠は中年の活かしたおっさん。騎士団団長。

「剣を手にするとき、余計なことを考えるな。ひたすらに打ち込め。常に冷静であり続けろ。剣を体の一部として扱え。そうだ、それでいい。いかなる状況かでもぶれない精神力を持ち続けろ。…よし構えろ、軽く目標を示しておこう」


そうして、一日が終わる。毎日これの繰り返しだった。


最初のひと月は本当に大変だったがあっという間であった。余計なことを考えている暇など微塵もない日々であった。


そして、夏翔が召喚されてちょうど一か月が経った。最初のころはとても警戒していたが、城内ではこれといった、悪意のような類のものは感じられなかった。表面上は。しかし、監視の目は必ずあるはずなので少し気を詰めておかないといけないのは夏翔の最近の悩みであった。このひと月で今の自分についていろいろとわかった。一つは魔力が常人の十倍近くあるということ。そして、運動神経が素晴らしくいいということだった。地球にいたころも運動神経は悪くないほうであったが、俗にいう器用貧乏というものだった。どれもある程度はできるが、どれも突出しているわけではないというやつ。

しかし、今はやれば一番取れてしまうのではないか、と一瞬考えて自惚れてしまうほど思い通りに体が動く。アルティオに聞いたら、「まあ、人類の希望だし、それぐらいは欲しいよね」と言われた。



夏翔はいつものように魔法の訓練に向かうとそこには剣の師匠もいた。いったいどうしたものかと思った夏翔だが、その疑問は剣の師匠がすぐに解消してくれた。

「ナツト、本日より他のものと合流だ」


「…いよいよ、ですか。ということは、最低限の実力はついたということでいいですか?」


「ああ、ご苦労だった。では、来てもらって申し訳ないが中庭に向かってくれ。みんなが待っているはずだ。我々も後で行く、先に行ってくれ」


「わかりました、では後ほど」

そう言って、夏翔は魔法の訓練場から退出する。そして、夏翔が出ていったのを見届けた師匠二人は口を開く。

「…まったく、最低限どころではないぞ。騎士団でもタイマンで勝てるやつほとんどいないと思うがな。なあ、やはり早いよな?」


「はい、早すぎです。成長速度が尋常ではない。…まるで赤子だ」


「ふっ、お前の例えは相変わらず独特だな。俺の部下にもあれぐらいの飲み込みのはやさが欲しいものだ。…彼の才能か、はたまた勇者の力か。アルティオ王子から聞いてはいたが、ここまでの性能を秘めているとは。あれは化けるな。いや、化けている途中だな。よく知らんが彼はまだ能力自体は鍛えていないんだろ?あいつがちょっと独学でやった以外には」


「そう、ですね、私は、能力がないので、何とも言えませんが…。末恐ろしいものです。僅かひと月でここまでとは…。私の立場がなくなりそうです」


「…俺は彼が人類の希望になると確信しているよ。一年は、彼にとって十分すぎるぐらいだ」


二人はゆっくりと頷きあった。











「来たね。改めて、これからよろしく」

アルティオはそう言って、やってきた人物、夏翔に対して手を差し出す。

「こちらこそ」

夏翔もそれに応じる。

「でも、予想よりずいぶんと早いわね…」


「だねー」

夏翔とアルティオが厚い握手をしていると、その隣でミューカが思ったことをふと口に出し、マーヤもそれに同意した。

「やっぱり、早いのかな?」


「そりゃ、早いぜ、ナツト。何せあの騎士団長と一級宮廷魔導士の修行だぜ!?てっきり、俺たちゃ、少なくとも三ヶ月はかかるもんだと思ってたんだぜ?」


「なるほど。ま、でも彼らから合格の言質は取ったから大丈夫だよ」


「何でもいいさ。時間があるだけチーム力をより強固なものへできる」


「アルティオの言うとおりね」


夏翔は確かにひと月の間、ほかのメンバーと別れて修行していたわけだが、一切顔をお互いに合わせていなかったわけではない。寧ろ、彼らはわざわざ夏翔の部屋まで訪ねてくることが多かった。その都度、交流を重ね、全員と差支え等が一切なく友として、接することができるぐらいまでには彼ら全員の中はいいものである。今となっては、平民も王族も関係ない。皆砕けた口調で会話している。もっとも、公的な場ではさすがにしっかり丁寧にしている。


「彼らから聞いたけど、能力の特訓はまだなんだよね?だとしたら、まずはそれからやろう。能力に関しては、独学でもいいけど、時間が限られているのであれば、やっぱり所持者から聞くのが一番早い。…ということで早速始めようか」


ついに、始まった能力に関する修行。この一か月で自身の能力のおおよその把握は済んでいるが、実際に思いっきり行使するのは初めてである。

後補足であるが、勇者パーティーとあるだけあって、メンバー全員が能力保持者である。平民出のオルウェルを除き皆二つ持ちという始末。能力の二つ持ちは本当に極々稀な存在であると言われる。まさに人類の最後の希望の塊のパーティーであると言っても過言ではないのであった。






「なるほど、面白い能力だね。攻撃面は少し火力不足だが、それは魔法で補えるな。しかし防御面は素晴らしいな。立ち回り次第では、完封できる可能性を秘めているな」


「うん、防御面でここまで機能するとは思ってなかったよ。それに、結構仲間との連携も取りやすいと思う」


「そうだな、よしこの調子でどんどん進めていこうか」


「了解」


彼らとの修行の日々は戦争のことを忘れてしまうぐらい輝かしいものであった。もちろん、その間能力の修行だけではなく、剣術、魔法さらには言語、歴史、種族など可能な限り、自身の中に定着させていった。その膨大な量の数多くの知識経験を習得するのに、非常に大きな助けになったのは、夏翔の能力の一つである、思考系能力「記憶」であった。その能力は、経験したことの完全記憶である。体を動かすことに関しては、相手の動き、その時の自身の動き、思考などをいつでも思い出せたり、本を読むなど行為に関しては、一瞬しか見なかったページの文字をすべて瞬時に思い起こせるなど、直接的に戦闘には不向きな能力であるが、何度も何度も復習ができる大変素晴らしい能力である。

実際これのおかげで、剣や魔法を約一か月で戦えるラインまで持って行けたわけである。時間の少ない夏翔にとってこのことは非常に好都合であった。





そんなこんなで、もうすぐ一年が経とうとしているとき、火急の知らせが入った。


報せを持ってきた使いの者はものすごい形相でこう言った。

「魔王軍、本格的に全軍を展開!連合軍第三関門が落とされました!」


どうやら、平和な時間はここで終わりのようだ。







「王よ!この未曽有の天気の影響で民たちの家々が大きな被害を受けております!」


「何!やはりか!ならば早急に物資の支援の準備だ!」


「はっ。」


「…すさまじいな、ここまでの災害は経験したことがないわ。もしや神がお怒りか!だがそうならば、世界全土がこの怒りに襲われているやもしれんな。」

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