Ep.31 建国祭二日目
二日目だ。今日は昨日より雲が少なく日の光をより一層強く感じる。
今日の大きな予定はオークション大会だったかな。自分は参加するつもりがないので割とどうでもいいイベントだ。
リングロードから伸びる四つの大通りそれぞれに出店がたくさん並んでいる。昨日夏翔が行ったフードエリアは実はこの四つのエリアのものではなく、闘技場に繋がる道にあった出店エリアである。フードエリアというだけあって、ここのエリアは武闘大会の客に向けて観戦しながら食べられるようなものを中心に売っていた。
フードエリアはもういいので、今日はそれ以外のその四つの大通りを歩いて店を見て回っていた。
ある道を歩いていた時、自分と同い年ぐらいの子どもが数人笑顔で走っていた。その後も所々で子どもの姿が見えた。いずれも笑顔をあたりに振りまき、そんな子どもたちを大人たちは微笑ましそうに見守っていた。
道を歩いていたら、開けた広場に出た。そこではテントがたくさん並びなにやらイベントをやっていた。題して「一番の昼御飯はどれだ!」だ。
世界各地から集まった食べ物の数々が一位の座をかけて戦っていた。ここの広場に並ぶ食べ物と道に並ぶ出店の食べ物との違いは、先ほども言ったように世界各地の特色を持った食べ物かどうかの違いだ。道の出店は祭りでよく見かけるようなものがほとんどである。
だが、悲しいかな。必然的にうまいと評判になった店には人の列ができ、その評価が得られなかった店には客足は少ない。
このイベントは祭り初日から二日目までが販売期間で三日目の昼ぐらいまで投票期間となっている。投票は二票までで同じ店に二票入れるのは不可となっている。また店側も売ることができる商品数は一種類と決められている。
世界各地から集まっているだけあって癖のある料理ぞろいであった。
真緑のタレがかかっていたことしか記憶に残りそうにない料理、とにかく見た目も中に入っている具もすべて赤かった辛い料理。うまいと評判だが食べるのを躊躇ってしまうような、揚げたでかい魔物の虫が挟まっているのがわかるバーガーなど、癖の方向性はそれぞれ微妙に異なっていた。
だが、それらは食べるとちゃんと美味しかった。これらを売っていた店はそこまで人気ではなさそうな感じであったため、これらの料理というのは人気店に並ぶ彼らには抵抗があるのだろう。現に人気店の商品を見ると見た目が普通なものがほとんどであった。
確かに見た目から取っ掛かりにくいのはにわかるが、食わず嫌いというのもよくないなと感じる。自分も食べるまでかなり抵抗感があったがいざ一口食べたらその美味しさで抵抗感はほとんどなくなるのだ。彼らはそれに気づかずにこのイベントの終わりを迎えるのだろう。そう思うと少し残念だなと感じた。
一応、人気店のものも一つ買い、収納に入れておいた。今はお腹がいっぱいなので後で食べることにした。
会場から去る際、投票タッチパネルに真緑料理とバーガーに一票ずつ入れておいた。あの店たちが入賞することは無理だと思うが、入れることに意味があるからね。
お腹がかなり膨れたことで、少し散歩しようと考えた。
人通りが多い道を外れ、静かな道に入る。静かな、と言っても治安が悪そうな雰囲気を醸し出している怪しい静かではなく、きれいに整備されているが人通りが周りの道と比べ少なく落ち着いた雰囲気の静かさだ。
ちょうど日の陰になっていることも合わさって静かさの中にどこか寂しさを感じる。こんな印象を抱くのは元日本人の感性のせいだろうか。
いろいろ考えているうちに大きな公園に辿り着いた。緑に包まれたところだった。公園入口の地図から園内を一周するだけで約一時間ほどかかることを知り、食後の運動にちょうどいい場所だと思った。
大都会の中にいることを忘れてしまうほど周囲は緑一色だった。どこか時間がゆっくり進むような感じ。この感じは好きだ。前世で両親が行方不明になったとき、絶望しきっていた自分が偶然にも辿り着いた緑に包まれた場所と同じ感じ。外界から隔絶されているような感覚が心を現実から引き離してくれる。
現実の悩み事を無になって忘れることができる場所。
あの場所があったから、あの場所を見つけたから、当時幼かった自分は無事に立ち直ることができたのだ。
おっと、つい昔のことを思い出してしまっていた。
…また、機会があればここに来よう。そう心の中で思ったのだった。
それから数時間後夏翔はギルドに戻ってきていた。時刻はまだ夕方ぐらいであるが、気が付いたらギルドの前に着いていた。
予定であった、四つの通りの出店は大体見終わったていたので今日はもう他のところに行かなくて充分だと判断した。
部屋のテレビを点けた。今日の朝、ギルドを出るときにある張り紙を見つけたのだ。そこには武闘大会、オークション大会の様子は祭り期間中のみチャンネルを変え見ることができると書いてあったのだ。
夏翔は帰ってきてから暇だったのでオークション大会の様子を見てみることにしたのだ。
この祭りで開催されているオークション大会だからか、結構な額で落札されている。映像に映る落札者たちも見るからにお金持ちだなとわかる服装な人が多い。
このオークション大会は朝から夜までぶっ通しで行う予定なので、安く落札されそうなものは早いうちで終わっていたのかもしれない。
オークション大会で発表されるものはカテゴリーで分けられていた。そのため、例えばカテゴリーが「絵画」だったときは大体似たようなおっさんが何度も画面に映っていた。値がどんどん上がっていくのは見ていて多少面白かったが、値が上がるたび声を上げたおっさんがいちいち画面に映るのは実に鬱陶しいものだった。その映像には華が一切なかった。
早めの晩御飯を食べながらオークション大会を見ていたが、流石に飽きてきたためニュースでも見ようかなと思っていた時であった。ちょうどカテゴリーが「武器」になった。
チャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばしていたのをいったんやめ、もう少しだけ見ることにした。
かなり上等な武器の数々が落札されていき、遂に武器部門の最後の商品となった。最後なのだからさぞ素晴らしいものが出てくるだろうと期待した。
そして画面に映し出される「最後の武器」。
夏翔はそれを見た瞬間、驚いて二秒固まりその後盛大に笑った。
「最後の武器」は見覚えがあった。まさしく数日前に自身が売ったモラゾールの剣がオークション大会の商品としてテレビに映っているからだ。
笑いながら商品説明を聞いた。
「見てください、この模様!解析の結果この剣は千年以上前に失われた技術で作られたものです!これだけでも大変歴史的な価値がありますが、この大粒の宝石は見るものを虜にするでしょう!しかもこれがほとんど当時の状態そのままなんです!これは、買うしかありませんね!ではこちらの商品、二百万ソートから開始しましょう!」
なんと、二百万スタートという衝撃の事実。八十万とは随分低い値段だったようだ。そんな価値を秘めていたとは。また少し悔しくなったが、ここまで値段が異なると逆に清々しく感じる。これの値段がどこまで跳ね上がるか楽しみである。
おっさんたちがどんどん値を上げていく。四百、四百五十…六百、七百…。凄い上がり幅だ。
遂に一人が、一千万と口にする。その言葉で大半が諦めたのか、さっきまであった勢いが急速になくなっていく。それでも対抗する人はまだいた。そこからもチビチビ上げていく。千五百万!と一人が言い、またも急激に値が上がる。しかし、一千万と言った男が今度は二千万と言った。それを聞いてついに諦めたのか、声が上がらなくなった。二千万男は勝ちを確信し、ニンマリと笑う。それが結構ドアップで画面に映るのでなかなかキツイ。
しかし、男の笑顔はどこからともなく上がった「四千万」という声に完全に消された。画面が男のアップからその声の主を映す。
声の主は二十代ぐらいの若い男性だった。サングラスをかけていて顔はわかりづらいがその見た目からお金を持っていることはわかった。
二千万男は四千万男を睨みつけるが、逆にサングラス越しに睨み返されたのか縮こままり、そのまま何も言わなかった。
結局モラゾールの剣はそのサングラスの男に四千万ソートで落札されて終わったのだった。実に五十倍の値段で落札されたモラゾールの剣を見て、本当に一時期あれを持っていた事実がちょっと信じられない気持ちになった。
祭りもこれで半分終了。
次回三日目。短く終わらせるかも。




