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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第3章】ラーテル王国建国祭
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Ep.29 建国祭初日

ギルド内でのお泊りの話は不要でしょう。祭りの日の朝から始まります。


窓の外から聞こえる騒がしい声で目が覚める。騒がしい理由は知っている。今日が建国際初日であるからだ。

時計を見れば、時刻は九時過ぎ。完全に寝坊だ。寝癖がひどかったので魔法で速攻直しながら、窓の外を見る。


夏翔が今いるところはギルドの建物の宿泊エリア。階層で言うと五階にあたる。


窓から見える大通りには沢山の人々が城の方に向かって歩いていた。

昨日ギルドで取ったパンフレットには祭りの中で行われる大きなイベントの大体の開催時刻が記されている。

それによると、国王からの御言葉という名の開催宣言は十時からの予定だそうだ。おそらく表の人だかりは城の近くで開催宣言を聞きに行っている人達なのだろう。

でも、パンフレットには生中継を行うと書いてある。


生中継…じゃあ、外に出て一緒に城まで歩く必要はないな。


夏翔の目には部屋に設置されていた、壁掛けモニターが映っている。昨日、ここに入ったときすぐにこれを見つけて一度つけてみたのだ。すると、ニュース番組や天気予報が延々と流れていた。ギルドの施設内だからか、チャンネルは完全に固定されていた。変更等は一切できなかった。


でも、地球ではないところのニュースを見るというのはなかなか新鮮であった。国内以外のニュースもあり、意外と楽しめた。正直、ニュースを見て楽しいと思ったのは初めてであった。

補足だが、国内のニュースはほとんど祭りの話であった。


そのまま昨日はニュースを楽しむあまり少々夜更かししてしまい、寝坊してしまったのだ。



モニターの電源をオンにする。面倒くさいから以後はテレビを点けるという表現でいこう。

パッと画面が映る。どうやら、昨日行った輪っかの道にレポーターが既に向かっており、そこで現場の生中継が行われているようだ。

「見てください!この人だかり!毎年、国内のみならず海外からも注目されているこのラーテル王国建国祭。アルティオ国王から開催宣言をより近くで聞こうと、このリングロードにたくさんの人が今年も押し寄せています!あぁ!!」

カメラに向かって一生懸命話していたレポーターの彼は次の瞬間には左からやってきた人の波に攫われてどこかにいってしまった。

中継もそこで切れ、スタジオのカメラに戻る。スタジオの人たちは彼に対して何も言わず、淡々とニュースを続けた。彼がどうなったかは誰にもわからない。


ちょっと笑ってしまったのは仕方のないことだろう。

それよりも、彼の言葉には有用な情報が含まれていた。得られた情報は二つ。

一つは、昨日のあの輪っかの道がリングロードという名であること。安直な名前だと感じるだけで特重要ではない。

重要なのはもう一つの方、彼が「アルティオ国王」と言ったことだろう。これでほぼ友があの城にいることが確信になったのだが、一応○○何世みたいに、アルティオという名を継承するシステムであるという線もある。


小さな情報でいちいち考える夏翔であったが、そわそわしていたためか数分後に始まる国王の宣言ですべてがわかることを完全に忘れていたのであった。


ニュース番組が終わり、天気予報が始まった。それによると、祭り中は基本晴れか曇り。気象予報士は目一杯祭りを楽しめるでしょう、と笑顔で言っていた。

この国の技術力を見た感じ、天気もどうこうできそうな気もしなくないが考えないことにした。


天気予報が終わり、画面が切り替わった。場所は城のどこかのバルコニーだろう。白い建物の一部が映っている。

十時になった。どこからともなく演奏が始まり、外面奥に映っている扉がゆっくりと開く。その瞬間抑え込まれていた人々の歓声が鳴り響く。演奏終了とともに扉が開ききり、奥から二人の男女と女の子が出てくる。女性はシンプルだが気品を感じる美しい青いドレスを着て、つばの長い帽子をかぶっている。女の子は薄い桃色のドレスを身に纏い、花を模した装飾が付いている帽子をかぶっている。男性は金色の装飾がたくさん付いたスーツのようなものの上から滅茶苦茶触り心地が良さそうなマントを羽織り前でとめている。


男女を見た瞬間、息をすることを忘れ、同時に心臓が大きくドクンと高鳴る。


しばらく画面を食い入るように無言で見つめる。そして確信する。画面に映っているのは、間違いなくアルティオとミューカであった。


千年以上生きている方法はわからないが、確かに約束を守ってくれていた。涙が頬を伝った。


画面の向こうでアルティオが前に出る。その瞬間聞こえていた歓声は嘘のように消え去る。

「全国民、並びにこの国に滞在中の皆様、私はこの国の国王、アルティオ・オル・ラーテルである。今年もこのラーテル王国建国祭を開催できることを嬉しく思う。こうやって無事に開催できるのは皆のおかげである。ありがとう。…さて、長々と話を聞くのは好きではないだろう?見ると、皆、始まることを今か今かと待ち望んでいるようだな。それでは、今、ここに!第975回ラーテル王国建国祭の開催を宣言する!!!」

アルティオが宣言した瞬間、先ほどとは比べ物にならない歓声が挙がる。テレビは五月蠅すぎで思わず消音にしてしまった。もはや歓声ではなく怒号のようだ。テレビの音を消しても、窓の外からも大きな歓声が聞こえる。まるで国中が騒ぎ立っているようだ。いや、実際そうであるか。


歓声の中、アルティオ達は城の中へと戻っていった。


アルティオ達がいなくなって映像が終わってからもしばらく歓声は続いた。


…で、あの女の子誰なんだ?

いや、予想はつく。二人の子どもだろう。金髪だったし、目はアルティオの碧眼そっくりだった。顔立ちは映像越しだがミューカに似ていた印象だ。しかし、少し不自然だ。千年も時間があったのに子どもが一人だけ。それも見た目はかなり幼かった。中学年と言ったぐらいの年齢だった。


それはさておき、祭りが始まったんだ。楽しまないともったいない。


着替えを済まし、外に向かった。


片手にパンフレットを持ちながら、ウキウキと歩き出す。

自分はこういう祭りは友達と回るのも好きだが、どちらかというと一人で自由気ままに回る方が好きだ。


パンフレットを広げるとリコア周辺の地図が載っているので、それを見て気になる場所を探す。


朝ご飯を食べていなかったことに気付いた夏翔は、まずはご飯代わりになるものを買うことにした。



いやー、食べ歩きこそ祭りの醍醐味だな。

鼈甲飴を舐めながらそんなことを思う。朝ご飯はどうした、と言われそうだがちゃんと買っている。焼きそばがあったので買って収納に入れている。流石に焼きそばは歩きながら食べていたら周囲の邪魔になると思ったので少し落ち着けそうなところを見つけたらそこで食べることにしている。だから今すぐ食べるわけではない。なんなら昼に回してもいいぐらいだ。


だが、せっかくお金があるのだからもっといろいろ買いたいものだ。


出店には既に沢山の人が並んでいるのもある。店の人はとても忙しそうであるがその顔には笑顔が浮かんでいる。

だが、朝から並んでいる店の列には並ぶ元気はないので、スルーする。


買うものは買ったし、いったんここのエリアから離れるか。

このエリアで買ったのは先に言った二つ以外に魔物の肉を焼いた串焼きとドリンクでミルクティーだ。串焼きの方はもう食べてなくなっているが、ミルクティーの方はまだある。焼きそばと一緒に収納の中に入れてある。



…そういえば、武闘大会予選なるものがあったな。

地図を見る。武闘大会会場と書いてある建物はここから意外と近い。ちょうどいいし、見に行ってみるか。


会場は、とても大きなドーム状の建物で既に入り口に向かって人の列が何列もできていた。

人の列と言っても、並んでいるのは腕っぷしの強そうなガタイのいいマッチョや鎧を着ている人などで、見た感じ大会出場者だろう。近くに立ててあった看板には、「大会予選エントリーはこちらです」とあり、締め切りは十二時半のようだ。今は十一時過ぎなのでまだまだエントリー者が来ることだろう。


会場周辺には「第178回ラーテル王国武闘大会」と題されたパンフレットが置いてあったので取ってその場で見る。パンフレットには大会予選の開始時刻や予選、本戦の説明などがまとめて記されていた。

これによると、原則として出場年齢は制限しないが、受付が戦闘を行うのは不可能と判断した場合は出場を断念してもらう。予選は参加者を均等に分けてグループを作りそれぞれで乱闘を行う。各グループで勝ち残った一人を本戦出場とする。

本戦は勝ち残った選手に加え、特別出場選手を加え勝ち残り戦を行う。組み合わせは毎回くじ引きで決める。優勝賞金は千万ソート。

尚、本戦は国王が観戦しに来る。


なんと、本戦にはアルティオが見に来るそうだ。年齢は自由だしこれは、出場するしか…なんて言うと思ったか。出るわけないだろ。

今カミングアウトするが、基本的に僕は目立ちたくない。多分無理だけど、できたらひっそりと生きていたい。そんな僕がこんな目立ちまくる大会に出場するわけがない。世界中が注目するこの祭りの中のイベントならなおさらだ。僕はこういう催し物はやる側でなくて見る側がいいのだ。


それに大会に出場しなくともアルティオがわざわざ来てくれるんだし、観客席からでもきっと見ることができるはずだ。


それに参加したところで勝ち残れるかもわからないし、僕自身祭りをもっと満喫したいしね。



祭り一日当たり一話の計四話を想定していましたが、例によってどうやら無理なようです。


三章も二章同様、十話構成を想定しています。今のところ。


この辺の話は書いていてもそこまで楽しくなるような部分ではないので本格的に秋が来てだらけてしまう前に終わらすため、少し更新頑張ってます。

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