Ep.28 祭の気配
3章結構ぐだっている気が…。ようやく進展があるかも。
列車は、ゆっくり減速していきやがて大きな建物の中に入っていった。
どうやらここが首都リコア駅のようだ。
駅のホームは多く二フロア分に分けられており、今乗っている列車は上の階のホームに止まった。
白い大理石を使ったホームに凝ったデザインの柱が等間隔に並んでいる。天井はドーム状になっていてガラス張りだ。
どうやら上の階のホームは各都市に向かう線が止まるホームになっており、下の階のホームは首都線のようだ。
駅はたくさんの人々が行き来して、一言でいうと賑わっていた。当然改札口も大量に設置されており、その中に一つを抜ける。
カードをかざした瞬間、カードは霧散するように消えていった。
今気づいたが、あのカードも先ほどのテーブルと同じ原理、いや同じ魔法で作られたものだったのだろう。
エレベーターらしきものもあったが、近くにあったエスカレーターを下り、地上階を目指す。この駅のある建物は内部に飲食店をはじめ、店が多くあるようで駅のホームより多くの人が利用している。
建物内にはところでころ地図が設置されているのでとりあえずそれを確認しながら「王城」を目指すことにした。
まだ地上階ではないが、気になる道を見つけた。空中に黒い道がかかっている。その道はさながら渡り廊下のように建物同士を繋げている。見た感じ間違いなく魔法で作った道だ。人々は気にせず歩いているが、自分のように初めて渡るときは少々不安になる。
まぁ、ちゃんと何事もなく渡れたのだが。
次に見つけたのは上下左右果てには斜めにも動いているエレベーターのようなものだった。
先ほど駅でも同様のものは見た。だが先ほどものは上下に動いているだけだった。しかし、今度は違う。
それは大きな円形の床で周囲は落ちないように青い光で膜を作っている。膜は半透明で景色も見える。
それに乗ると、膜が入り口も塞ぎ、完全に落ちないようになる。膜内に行き先を選択するパネルがあるのでそれを押すことで行き先を選択する。複数選択した場合は近い順で向かい止まる。
「地上階」のボタンを押したのでエレベーターはその通りに地上で止まってくれた。降りたところのすぐそこに大きな道があり、道の先に先ほど見た城が確認できた。道は歩道とどこかで見た宙に浮くバスが通る道に区分けされており、人々は左側通行で歩いていた。
少し気になったものを見つけたのは道を歩きながら周囲のビルを眺めていた時だった。
道の両端にテントが所々立てられていたのだ。テントの中にいる人たちは皆一様に何かの準備に取り掛かっているように見えた。
近々、何かのイベントがあるのかと思ったが、王城のすぐ近くまで来たのでそのことはいったん忘れるのだった。
すぐ近くに来た、と思っていたが少し間違いであったようだ。城がでかすぎて若干距離感がバグっていたみたいだ。
もう少し歩くと、道の終わりが見えた。列車で見た通り周囲のビルは城の近くまで来たらある地点からばったりと完全になくなっていている。その代わり、城の周りを囲うように大きな輪っかのような道になっていた。輪っかの道には今夏翔が通ってきた道のような大通りが四つ繋がっている。
ここぐらいまで来ると、もはや角度的に城を見ることは敵わず、城が立っている地面の代わりをしている基盤のような感じのものしか見えない。
その基盤もなかなか特徴的な形をしている。形を言うなら逆ピラミッドだろう。城の下に黒いピラミッドが付いている。また、その逆ピラミッドは首都に入る前に見た黒い壁と同じく青い光が枠を沿うように走っている。
ここで全貌が見えた城の作りについてまとめよう。下から順に行こう。黒い逆ピラミッド、その上に同じく黒い円形の土台。そしてそこから上が列車で確認できた城の本体の部分。周囲にはいくつかの塔、そして中心には平らな建物の上に白いのが乗っている、と。
道の形が輪っかということは、城の真下にはいけないのかと思うだろう。答えを言うと城の真下にはいけない、だ。
なぜか、答えは簡単だ。輪っかの道より内側、つまり城の下は大きな湖になっていた。円形の湖だ。ニュアンス的には溜池というほうが近いかもしれないが、サイズが大きいので湖に見える。
その湖は様子が変だった。湖全体が仄かに光っているのだ。
そして、敢えて言うのを後回しにしていたが、湖の中心から城のピラミッドの頂点に向かって一筋の光が伸びていた。
どこか神秘的な景色だ。
淡い金色の光が城から伸びているのか、はたまた湖から伸びているのか、見ているだけではわからないが魔力を辿ってみるとどうやら湖から城に向かって伸びているようだ。
…というか、魔力反応があるだと?じゃあ、あれは一体何の魔力なんだ?
ラーテル王国に入ってからというもの、心の中のモヤモヤが増えていく一方だ。わからないことだらけで置いて行かれた感をすごく感じる。
…しかし、先ほどの輪っかの道にも何やら準備に取り掛かっている人がちらほらいた。
やはり、近くに何かがあるのだろう。少し調べてみるか。…でも、地形把握すら住んでいない街を適当に歩いても意味はない。一番手っ取り早い手を使ってもいいが…。うん、そうしよう。
一番最速で確実な方法。それは、その何かの準備をしている人に尋ねる、だ。夏翔は準備している人の中で見た感じ優しそうな人を探す。近くに口笛を吹いていた男性がいたので声をかけてみた。
「すみません、ちょっといいですか?」
「んん?なんだボウズ、何か用か?」
「…あの、何の準備をされているのですか?僕初めてここに来たので…」
「何ってそりゃあ、建国祭の準備さ」
「建国祭…?」
「知らないのか?年に一度の世界でも有名な祭りだぞ。ま、知らなくても明日になりゃわかるさ」
「え?明日からなんですか!?」
「おうよ、明日から四日間、祭りだ。知らないんだったら、絶対楽しんだ方がいいぞ」
それから少しの間、男性からいろいろ教えてもらった。最終的には、「もっと詳しく知りたいならギルド
に行ってみるといいぞ」と言われたので、ギルドに向かうことにした。丁寧にもギルドの方向まで教えてもらった。
男性曰く国中を挙げての祭り。いろいろな催しもあるそうで是非見たらいいと何度も言っていた。
ギルドに着いた。「冒険者ギルド リコア支部」と書いているのだが…。
「でっかいビルだなぁ…」
黒い大きなビル。階層も外から見ても相当多い。こんなに高さいるのか?と思いつつ入り口の自動ドアを
通る。もう今更自動ドア程度では驚かない。無駄に広く長いエントランス。
エントランスの余ったスペースにはソファや壁にかかった薄いモニターがある。受付の窓口は八つある。
受付には「泊まる場所あります」という表示もある。なるほど、遂にギルドとホテルが融合したのか。
寝る場所に困ったらここを使おう。
今は、受付には用があるわけではない。エントランス内を見渡すと、パンフレットコーナーがある。これだ。そこに行き、目的のものを探す。すぐに見つかり手に取る。表紙には「第975回ラーテル王国建国祭」とあった。
もうこの時点でその回数に絶句する。さっき話を聞いた男性も年に一度と言っていたし、この回数分祭りを開いてきたことになる。まぁ、建国祭なんて年に何度もあるのはおかしいのだが。
パンフレットの表紙にある説明書きを読む。
975年前から始まった本格的に始まったこの建国祭。建国記念日にあたる6/26からの四日間皆で盛大に祝おうじゃないか!今年でラーテル王国は建国1005周年を迎えます。
1005周年だったっけ。まぁ、死んでから千年で、後はその前の数年分を足すと、そんなぐらいか。魔王を倒してから国と言える形になるまでしばらく時間がかかったしな。
パンフレットをめくると、大きなイベントの詳細が書かれていた。
6/26 国王の御言葉 第178回武闘大会予選 建国記念花火大会
/27 第100回オークション大会
/28 第178回武闘大会本戦
/29 国王より武闘大会の表彰 国王の御言葉
成程、こういうスケジュールか。なかなか楽しそうだ。折角だし、目一杯祭りを満喫させてもらうとしよう。
この後、宿を探したがいいところが見つからず結局しばらくはギルドの宿泊施設を使用することとなった。
対象は、入国後そのままの足で本日6/25のうちに首都リコアに移動。その様子から目的地は最初からリコアだったと推測。城の下まで行き、現在はギルド・リコア支部にて取った部屋の中にいる。
調べによると、数日分予約しており、しばらく首都に滞在する予定である。
また、建国祭のパンフレットを見て顔を輝かせていた。祭りを満喫するようである。
報告は以上。
「……」
男は報告を聞き、少し考えた。
「ご苦労。祭りの最初の三日間は監視は不要だ、休んでいろ。また、連絡する」
傍から見れば男が独り言を言っているだけに見える。
男は席から立ちあがり、窓の方に行き外の景色を見て呟いた。
「相変わらず、狙ったようにタイミングがいいやつだな…ナツト」
これまで、漢数字と算用数字を混同しないようにできるだけ分けて書いてきたのですが…。
統一するのが基本なんですが、第975回とか、漢数字じゃ逆に読み辛いし…。でも今まで漢数字で来たわけだし…。
ということで、勝手ながらこの作品のみに適用するルールを決めておこうかなと。
一つ、文章中は基本的に漢数字を使う。
一つ、作中に出るパンフレットや本に出る(それ以外でも出る)、第何回とか何年何月何日のようなカウントするようなものは算用数字を使う。
以後これで行こうと思います。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
次回からようやく祭りが始まるよ。




