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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第2章】王国に向けて
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Ep.23 隣国へ

時刻はおやつ時と言ったぐらいだろう。図書館にいたせいでお昼をすっかり逃してしまった。この国でできることは済んだのでもう今日からルドバギッシュ王国に向けて、出発してもいいだろう。


朝と同様、出店で何か買って歩きながらお腹を膨らませることにした。

サンドイッチとミックスジュースを購入し、腹の減りはある程度収まる。自分は小食なので今はこれで十分だ。


入国の際通ったあの門に再び向かう。まさか入国翌日に出国することになるとはさすがに予想外だった。


道に迷うことなく門に辿り着く。門の前には兵士が立っていて、出ていく人を順番に確認していく。

夏翔もその列に並び、順番を待った。


兵士に入国許可証とギルドカードを見せる。当然何も問題なく門の通行を許可される。入国許可証はその場で回収された。


門の外に出ると、トーマスが立っていた。お世話になったし、一応声をかけておくことにしよう。

「トーマスさん」


「ん?おお、シャックか。もう国を出るのか?」


「はい、ルドバギッシュ王国に用事ができたので」


「そうか、あの国は造船技術はなかなかのものだから、是非見てみるといい」


「そうなんですか、ありがとうございます」


「楽しんでくるといい」


「はい」


別れの挨拶を済まし、手を振るトーマスに手を振り返す。

そのあと、トーマスは同僚に呼ばれ、走っていった。

さて、ルドバギッシュ王国に行く方法だが、確かバスみたいなものがあったな。気になるしあれに乗ってみようかな。

そう思い、バス停らしき場所に向かったのだが。


「…え?運行中止中!?」

注意書きには何でも今日の朝の点検中に不具合が見られたため、全運行を確認作業のため停止中とのことだった。再開は明後日の見込みであるとのこと。


なんでこのタイミングで…。まさに狙っているかと思うようなピンポイントでの運行停止。夏翔には最早嫌がらせにしか思えない。

頭の中で構成していた、予定が音を立てて崩れていく。

仕方ない。しばらくは街道を歩いて行って、また飛行を使うとしよう。


とぼとぼと、道の隅を歩いていく。地図で見た感じ距離はかなりあって、歩きだと果たして何日かかるのか。つくづく運が悪いなと感じる。


歩くこと一時間ほど。エルトラ王国の壁はすっかり見えなくなり、もう少し行ったら飛行魔法にシフトしようと考えていた時であった。後ろから一台の馬車が来る。

邪魔にならないように道から出て馬車が過ぎ去るのを待とうとしたが、馬車は夏翔の前で停車した。

馬車を動かしていたのは中年の小太りないかにも商人みたいな服装をした男性と剣を持った眠そうな男性、というか寝ている。後者はおそらく雇われた冒険者と言った具合だろう。

小太りの男性は夏翔に声をかけてきた。

「坊主、こんなところで何してるんだ?もうすぐ日が暮れるぜ?早く家に帰らねーと母ちゃん心配すんぜ?」


「お気遣いなく、これでも冒険者なんで。それに家ないし」

そう言って、ギルドカードを見せる。

「そうか、それは悪かった、ってEランクじゃねーか。この街道は比較的安全な方だが、山から魔物が下りてくるときもあるんだぞ。悪いことは言わねえ、エルトラ王国に引き返したほうがいいぞ」


「別に大丈夫です。対処できるんで」


「強情な坊主だな…。よし、わかった。乗ってけ」


「…はい?」


「わからんか?見た感じルドバギッシュ王国に行くんだろ?ついでに送ってやるよ」


「いや、でも…」


「つべこべ言うな。子どもは大人の言うことを聞いておけ!」

馬車から下りた男性は夏翔を抱き上げ、馬車の荷車に乗せる。そして有無を言わさず出発する。


ポカンとしていた夏翔に男性が馬車を運転しながら話しかける。

「坊主、名前は?」


「…シャックです」


「シャックか、俺はロビオンだ。で、俺の隣で寝ているのが雇ったCランクのリュークだ。俺は最近はこのエルトラ王国とルドバギッシュ王国の間で商売をしている商人だ。お前がいる荷車に食べ物やらいろいろ置いてあるだろ?エルトラ王国は加工食品の質が良さげでな。意外と他国でも売れるんだ」


小太りの男性、ロビオンは自分のことを語りだした。

何故自分を乗せたのか尋ねると彼はこう答えた。


「まぁ、もうすぐ夜ってのに子ども一人放っておくのは忍びないと思ったのもある。が、本音を言えばだれでもいいから話し相手が欲しかったんだ。この寝てる奴は腕はいいんだがすぐ寝ちまうんでな。ま、子どもが一人増えた程度何も問題はねえから安心して乗ってな。先に言っておくが運賃とかもいらねえぞ。その代わり、俺の会話に付き合ってくれ」


そこからは、基本的に受けに回って話を聞いた。最初の方はぎこちなかったが、いつの間にかロビオンが喋って、夏翔が質問をして、またロビオンが喋るの流れができていた。

話を聞いていくうちに彼の人柄のよさを感じる。


「俺も、坊主ぐらいの年齢の時になこんな感じで商人に馬車に乗せてもらっていろいろ話を聞いたんだ。その時に見たそいつの顔があまりにも楽しそうでな、いつの間にか俺もそいつと同じ商人になりたいと思ったんだ」


いつの間にか彼の人生の話が始まっていた。周囲は暗くなってきていたが、彼は明るく、懐かしむかのように語っていた。


「おっと、暗くなってきたな。今日はここいらで野宿しようか。おい、リューク起きろ」


ロビオンがリュークの顔をぺしぺしと叩く。

「んぁ、ああ野宿の準備か。あれ?なんか増えてる」


「途中拾ったシャックだ。先輩として優しくしてやれよ」


「了解だ。よろしく、シャック」


「よろしくお願いします」


まだ少し眠そうなリュークと握手をして軽く挨拶をかわす。それが終われば、すぐに火の準備を行う。

周辺にあった木の枝を集めて、周囲に燃え移らない場所で火をつける。

すぐに鉄板や鍋をセットするロビオン。そして、荷車にあった肉を切って持ってくる。鉄板に肉を置いて焼き始める。太めにカットされた肉が香ばしい香りとともに爽快な音で焼ける。

鍋には水を入れて沸騰させスープの素のようなものとカットした野菜を入れる。

肉が焼け、最後に肉をレタスのような葉っぱで包みさらにそれをパンで挟む。お椀にスープを入れ、あっという間に晩御飯が出来上がる。手慣れた動きだ。


「さぁ、食べよう。ほら食え食え」


ロビオンにせかされて、肉サンドイッチパンにかじりつく。嚙んだ瞬間あふれ出る肉汁。そして口の中に広がる肉のうまみ。やばい、旨すぎる。横でいい食いっぷりだな、とロビオンが言っている。


スープも飲んでみる。そこまで煮込んでいないのにびっくりするぐらい野菜のうまみがスープに溶け込んでいて吃驚する。たったあれだけの時間でここまで美味しくなるものなんだ。


「満天の星空を眺めながら、旨い飯を食う。これが最高よ」


ロビオンがにかっと笑い歯を見せながらそう言った。確かにこれは街中ではできない芸当だ。


あっという間に完食し、魔法で使った食器を洗い、片付けを行う。

「坊主、お前器用だなぁ。お前ほどの年齢でそこまで器用に魔法を使うやつは見たことないぞ。それを極めたら十分生計を立てていけるぞ。なあ、リューク?…というかお前より魔法使うの上手いんじゃないか?え?」


「…否定は、でき、ない…」


悔しそうに言うリュークを見てロビオンが盛大に笑っていた。最終的に、夏翔は食器類の後片付けを請け負った。シャックを道中拾って正解だったぜ、とロビオンが口をこぼしていた。


それから少しの間談笑していた。聞けば、ロビオンとリュークは結構前から知り合っていて、予定さえ合えばよく護衛依頼を頼んでいるようだ。

寝る前になって、交代で見張りますと意見を出した夏翔だったが、二人ともにきっぱり断られた。


「護衛を依頼したのはリュークだ。坊主が俺の護衛をする必要はねえ」


「そうだな。それにそうしてくれないと俺が寝ていた意味がなくなる。それにシャックには、ルドバギッシュに着くまでロビオンの話に付き合ってもらわないといけないからな」


「それもそうだな。ガハハハハハハハ!」


ここは大人しく従うことにして、素直に寝ることにした。ロビオンに言われた通りに荷車の開いているスペースで眠りについた。







気付いたときには、既に出発していた。慌てて飛び起きて荷車から顔を出す。

ロビオンはあんまり気持ちよさそうに寝ているもんだから、起こさずに出発することにしたと言った。

それと一緒に、卵とサラダを挟んだサンドイッチを渡される。


「朝ごはんだ、食っておけ」


感謝を述べ、食べる。リュークはじゃあ、俺は寝るからと言い残し荷車に入っていった。


そこからはロビオンと会話を楽しんだ。これからお互いどうすんだ、という質問から始まり、夏翔はルドバギッシュでラーテル王国に行く方法がないか探してみると言った。


ロビオンは、それならばラーテル王国行きの船が出ているからそれに乗るといいと言った。お金は多少かかるがなとも言った。お金は問題ないと言い返すと、ロビオンは夏翔の顔を見て、その様子では大丈夫そうだなと返した。


ロビオンは今後はもっといろいろな国を回って商人をしながら旨いものを食べ歩きたいと言っていた。贅沢な生活は後回しで動けるうちにいろいろ行きたいと夢を語っていた。リュークもそれに付いていこうと言っているみたいでそう言う旅もいいな、と感じた。





話しているうちにルドバギッシュ王国が見えた。

例に倣って入国審査を受け、ギルドカードを提示する。他の二人も問題なく通り、積み荷も問題なしということで入国許可が下りる。門を入り、少し進むと人々で賑わっていた。

ロビオンが言うには、ここはルドバギッシュ王国で指折りの市場で俺はここで商品を売るんだ、とのことだ。


「…ここでいいのか?」


「はい、お世話になりました」


「世話になったのは、俺も同じだ。話に付き合ってくれてありがとよ。またどこかで会ったらまた話そうぜ」


「はい、お気をつけて」


「ありがとな、坊主も気をつけろよ」


二人に手を振り前を向く。さて、港に向かって出発するとしましょうか。



危ない危ない。ルドバギッシュ到着が持ち越しになるところだった。


ここまで二章はすべて予定通り。次で二章最後の予定です。番外編も二章は無しの予定。


基本人名や地名はパッと頭に思い付いたものを採用しているのでかぶらないように注意せねば。

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