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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第2章】王国に向けて
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Ep.19 冒険者登録

建物内は冷房が効いているのか、外に比べかなり涼しげだった。磨かれた石の床で柱には立派な大黒柱が使われていた。奥まで進むと左右に階段があって二階に行けるようになっていて、そこから一階を見下ろせるつくりになっていた。二階は見た感じ椅子やテーブルも一階より多く設置されているようで入り口から見ても結構の人数がいることがわかる。

入り口から見て、まっすぐ行ったどん突きに受付と思われる窓口が三つあった。


内二つは綺麗な女性が立っていて受付窓口に「依頼受注、新規登録、登録解除等はこちら 登録は無料」と書いてある。

最後の一つは「小物販売所 依頼に使う道具などはこちらでお買い求めください」とある。


視線を右にやると、そこは「素材買取所 いらない素材があれば是非売ってください」とある。視線を左にやると「道具買取所 使わなくなった武器や防具買います」とある。見た感じリサイクル目的だろう。


施設内の把握はこれで済んだ。今度は中にいる冒険者の人たちをちょっと見てみる。

相対的にムキムキ率が一番多いかな。大体四割。武器別にみるとやはり剣が人気なのか、一番割合は高めだ。気になったのは、魔法使いが杖を持っていたりすることかな。千年前はそんなものいらないものだったけど、もしかすると今では杖ありの方が威力を出せるようになっているのかもしれない。それに棒術を鍛えておけば近接でも立ち回れるしな。

後は、そうだな。ここにおいて女性の割合は大体三割と言った具合だ。多いのか少ないのかはわからないが。


先ほど冷房が効いているといったが一階はなぜかムキムキ率が高かったためか温度が受付に進むにつれて上がっているような気がした。これ、登録しようとしてもこのむさ苦しさで諦めるやついるんじゃないか。

当然多少は注目された。このギルド内には自分と同年齢ぐらいの子どもが視界内にはいないし。


トーマスさん、登録できるとか言っていたけど本当にできるのかな。不安になってきた。


そうこう考えているうちに受付に到着する。

「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどんな用事かな?」

受付の女性が夏翔を見るや優しく話しかけてくる。見た目があれなので言葉遣いは子どもにかけるそれだった。

「登録をしたくって」


「まぁ、新規登録ね?ボク、年齢を聞いていいかしら?」


「あ、八歳です」


「なら、大丈夫ね。ギルドの登録は六歳以上なら誰でもできるのよ。ボク、文字書ける?」


そうなんだ。結構年齢設定低めなんだ。文字は、前回の入国審査時で大丈夫なことを確認済みだ。大きく頷く。

「じゃあ、この紙の指示の通りに書いてきてくれるかしら」

と言って、紙を差し出される。

それを受け取り、記入場所に向かった。ペンを取り、スラスラ記入事項を書いていく。


絶対に記入しないといけないのは名前、年齢、性別。ラッキーなことに出身地は任意だった。

名前は、シャック。年齢は八歳。

それより下は、登録するにあたっての目的を選択する欄があった。

最初の質問は主なスタイルはどうするかという質問。狩猟系、探索系、採取系、その他の選択肢があった。主なということなので別に選んだものしかやってはいけないということではない。ここは狩猟系でいいだろう。いや、意外と探索系もいいかもしれない。悩んでいると複数選択可とあった。悩む意味なかったな。

おっと、狩猟系を選択した場合はちょっとした試験あり、と。別にいいか。


次は、どれぐらい魔法を使えるか。今の体がどこまでの魔法を使用できるかわからないからな。でも、飛行魔法も問題なく使えたし、そうだなここは中級程度にしておこうか。


得意な魔法は何か。風や水がそこそこ得意っと。魔法も確認テストあり、と。


収納魔法を使えるかだって?使えるけどなんか使えると書きたくないから使えないにしておくか。


今度はあなたの望むポジションは?という質問。選択肢には前衛、中衛、後衛とある。ぶっちゃけどこでも行けるが、前衛にしておこう。おや、前衛を選んだ場合は次の質問に答えてくださいか。

何々、得意の武器を選択してくださいか。剣ですね。次。


魔物の討伐経験、今世はないかな。


能力を有していますか。…有していませんにしよう。


犯罪歴の有無は、当然無しですね。これ逆に有りと答える奴いるのか。


質問はこれで終わりかな。最後に注意書きがある。冒険者のルールみたいなものか。纏めると、いろいろ書いてあったが要は問題を起こすな、ということだ。他は、低ランク帯では一年以上の更新(=依頼受注や討伐実績)がなければ自動的に削除されるから気を付けてねということだな。


これが最後だな。えーと、冒険者ギルドでは個人の情報を外部に流出しないように厳重に管理するとともに…(中略)…もこの規約を守るものとする。

長ったらしい文章だったので省略させてもらった。要は地球でよく見る利用規約みたいなものだった。ほとんど同じような内容であった。

その証拠に最後の記入欄には上記の内容に対して同意する、しないの選択肢が設けられている。しなかったら登録できないので同意するにチェックする。

おっと、最後に本人確認のサインか。…シャック、と。よしこれで終わりだな。


受付に持っていき、提出する。ありがとうと言って受け取った女性は目を通していく。

「ボク、あと本人確認書類って持っているかな?」

子どもには難しい言葉が飛んできたな。ここは、入国許可証を提示するか。というか頼れそうなものがこれしかない。ドキドキして受付の女性を見ていたが、どうやらそれでいけたらしい。本当によかった。

「じゃあ、ボク。ちょっとだけ確認したいことがあるからこっちに来てくれるかな?」

と言われ、女性が歩きだす。それについていくと練習場と書かれた扉までくる。

恐らくは、先ほど紙にあった確認テストだろう。


扉を開くと外に出た。周囲は壁に囲まれて景色は見えない。地面はグラウンドのような感じで、いかにもザ・練習場だった。

既に何人かの冒険者と思われる人たちがいろいろと練習していたがかなり広い敷地なので全然場所は余っていた。

「あ、いたいた。ギルマス!」

受付の女性は練習場にいた人の中から、とりわけガタイのいい中年の男性に声をかけた。見た感じ、若い冒険者達にいろいろ教えてあげているように見える。

ギルマスと呼ばれた男性はこちらに気付くと、教えていた人達に少し声をかけた後こちらに走ってきた。

「おお、どうした?仕事なら終わっているぞ?…お、その子は…なるほど、登録か」

第一印象は気さくそうな人だなと思った。

「そうです。すいませんお時間取らせてしまい。あ、こちらこの子の記入内容です」


「気にするな、ちょうど休憩を挟みたかったしちょうどよかった。それに確認テストはそんなに時間もかからない。…ふむ、なるほどなるほど。よしわかった。じゃあ、後は任せて君は仕事に戻ってくれ」

ギルマスは紙を女性に返し、女性は「では、よろしくお願いします」と言い残し戻っていった。


「おーい、お前ら!ちょっと休憩しておいていいぞ!」

ギルマスは先ほどまで教えていたと思われる人達に声をかけた。

「さて、シャックだったか?俺はここのギルドマスターのゼプターだ。よろしく」


「こちらこそお願いします」


「じゃあ、早速だが…そうだな剣からいくか。そうだな、お前ぐらいの身長だとこれぐらいがちょうどいいか」

そう言ってゼプターは収納魔法を発動し、そこから夏翔の身長に合う木刀を出す。

あっさりと収納魔法が出てきたので少々吃驚する。この分だったら先ほどの収納魔法の記入欄使えると書いてもよかったかもしれない。聞いてみるか。

「今の魔法は?」


「これか、これは収納魔法と言ってな。俺ぐらいのレベルのやつならそこそこ使えるやつがいる魔法だ。でも、そこそこレアな部類だな」

ふむ、見た感じゼプターの実力は相当高いだろう。ギルマスになるくらいだし、その彼がレアというならレアなんだろう。それでも収納魔法を使える人間はかなりいそうだな。

「ま、そんなことより、これ持てるか?」

ゼプターは夏翔に取り出した木刀を差し出す。受け取って気付く。予想より軽い。もっと重いものかと思ったが片手でも十分持てるぐらいの重さ。注意だが安物ではないはずだ。


「ちょっと、振ってみてくれ」


そう言われ、二、三度振って見せる。

「…なるほど。じゃあ、ちょっと俺が木刀で叩こうとするから防いでみてくれ」

ゼプターは木刀を取り出し、夏翔に向かって振り下ろす。前世は受けメインだったからこの程度なら問題なくいなせる。

数撃やって、ふむ、と言った様子のゼプターは少しスピードを上げて打ち込んでくる。受け流す度、何故かどんどん速くなってくる。ちょっとはたから見たら子どもをいじめる大人に見えそうだが、ゼプターもそこまで本気ではなさそうだった。と思っていたのだが、どんどん速くなる。どんどんキレが増す。視界の端に映る休憩していた冒険者たちが暇なのかこっちを見ていたが剣速が速くなってきた辺りから途端に心配しだした。

魔王やモラゾールの攻撃を経験済みなので全然反応できるが流石に体が疲れてきた。このまま時間が経過すればいつか脳天叩き割られそう。


「よし、剣は終わりだ」

といったところで終了した。ゼプターはなんだかすっきりした表情をしていた。

「いい腕だ。かなり本気で打ち込んだが受けきるとは正直驚いたぞ。剣の腕は申し分ないな」


「ありがとうございます」


「じゃあ、次は魔法だな。確か水と風が得意だったか?」


「はい」


「よし、じゃあ、あそこの的に向かって何でもいいから撃ってみてくれ」

ゼプターが指さした方向の二十メートル先ほどに的が五つならんでいた。

ここは、水でいこうか。

右手をかざし、イメージを固める。そうだな、水を凝縮させて弾丸みたいにしてみるか。

イメージ通りに右手に水の弾丸が出来上がる。それを撃ち、見事的に当たりそのまま貫通する。的は少しすると穴がふさがり、元通りの的に戻った。見た目はしょぼいが、やれと言われた通りのことを完遂する。そういえば攻撃魔法を使うのはこれが今世初だな。

「無詠唱は問題なくできるようだな。じゃあ、今使った方法以外で的を五個とも壊せるか?」

おっと、ハードルが急に上がったな。

でも、できるからいいか。そうだな、鎌鼬のようにするか。

風の刃を作り、全ての的に向けて撃つ。切断音とともに的が崩れ落ちていく。

的は数秒後には元通り修復された。やはり何かの魔道具なのだろう。便利だな。


「よし、問題なしだ。これを受付に持っていくといい」

ゼプターは一枚の紙を夏翔に渡した。見ると、その紙はギルドマスター承認書とあった。


「これで確認テストは終わりだ。これで晴れて君も冒険者だ。お疲れ様」


「ありがとうございました」




受付に戻ってきて、貰った紙を提出する。

それを確認した受付の女性は、入国審査中で見た透明の板を取り出す。

「これに手をかざしてくれるかな?」

言われた通りに手をかざす。例の通り青く光り、それを持って後ろを向き何やら作業を行う女性。


終わったのか再度夏翔に振り向き一枚の白いカードを差し出す。


「これが冒険者ギルドに加入している証のギルドカードよ。あなたの魔力を記録しているから、これがあれば本人確認として十分使えるからね。ただし無くしたら新しく作り直す必要があってそれはお金がかかっちゃうから無くさないように気を付けてね」


冒険者登録が完了した。







本当ならギルドのお話は一話で終わるつもりでしたが、分けることにしました。


次回はギルドのシステムや新たな基準の導入をするつもりです。

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