Ep.1 召喚の儀
(やばい!約束の時間迄あと少ししかない!!)
僕は、夏翔。季空夏翔。高二。絶賛テスト週間中だ。今の状況を手短に述べるとしよう。
事の発端は、今日の朝九時。一人勉強していた時に、友達から連絡が入った。
「なぁ、みんなで勉強会しないか?てか、教えてください!」
僕はこのメッセージを見て、少し悩んだ後、こう返した。
「いいよ」
そして、今に至る。
今待ち合わせの友達の家へ直行中である。高校にもなれば、友達の家までは距離があることが多い。寧ろ近い方が珍しい、と思う。なので電車移動は当たり前。でも、そこまで遠くない距離だから全然問題なし。
そして、時間までもう少しだけ勉強しようと思っていたが、気づいたら夢の中。結果、出発時間予定を大幅に過ぎていた訳だ。だから大急ぎで電車に乗って彼の家の最寄りの駅で降りて今頑張って走っている。
(このまま走ったらおそらく間に合うな。ふう、あぶないあぶない。)
信号待ちをしていたら、れん
(ん?誰か連絡してきた。何々?)
「ワリ、道に迷った!遅れるわ!笑」
おいおい、遅れるわ、じゃねーよ!道に迷ったって、小学生かよ!
思わず心の中でそうつっこんでしまう。
今回のメンバーは自分を含め四人。そのうちの一人が、今脱落した。
てか今更だけど今回集まるメンバー、絶対最後まで我面目に勉強しないよなぁ。まあ、分かり切った事だし、楽しいからいいけど…だからこそ、テストがやばい訳であるのだが。まぁ、僕は比較的余裕がある分類にいるハズなので、大丈夫だろう。多分。
しかし…勉強とは難しいものだ。どうも最近点数伸びない。いや、平均以上は余裕で取れてはいるけど、何か物足りない点というか…。
まぁ、勉強方法があまり宜しくないんだろうな。ちょうどいいし、みんなに聞いてみるのもアリだな。
そんな事を思っていた時だった。
僕は大体十メートル先の道路の一角が強く光っているのを見つけた。だが、他の人はまるで見えていないように、いや実際見えていないのかもしれないと瞬時に思うほどそれに対し無反応だった。
光はどんどん強く発光する。と次の瞬間、その光は一瞬で僕の足元へ移動した。
「…ッは!?」
「どけえぇッ!」
「うっ!」
光が移動するのとほぼ同タイミングに頭の中に物凄い大きな声が直接響いて、僕はとてつもない頭痛がした。そして、ドンッと何かに押された気がしてと思ったら今度は何だかフワッとした謎の浮遊感が全身を包んだ気がした。それは今までの人生の中では感じたことのないものだった。
あの声…どこかで…聞いたことがあるような…。
そして、地面の発光が更に強くなった。
そこで僕の意識は暗転した。
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この星”イストヴィラス”に受け継がれる昔話をしよう。
この星の現在の暦から約千年前、歴史書に十年に渡るあるとても大きな戦いがあった。それは酷い時には大気を揺るがし、まさに世界の終わりのような有様をつくり出した。
全ての 戦いの原因は、当時、元は温厚だったが突如として極悪非道な行為を始めたディタロという名の一人の魔王だった。彼率いる魔族たち魔王軍は過激な思想家が多くしかも好戦的なのが多かった。一部の魔族は危険を感じ早いうちに魔王領を出て避難し、隠れた。そして彼はその強さ故か、世界征服を目論み自分に逆らうあらゆる種族に喧嘩を売ったのがこの戦争の発端である。何故彼が急にこのような行為に及んだかは今でも分かっていない。
喧嘩を売られた人間を含む各種族はこの時だけ結束し連合軍として魔王軍と戦っていた。
だが、当時ディタロの軍隊は他の種族より頭数個分抜けていて連合軍の予想を超える強さを誇った。連合軍の抱える指折りの強者達でさえギリギリの戦いを迫られた。所々勝利を収めた戦場もあったが、全体として見ればジワジワ、ジワジワと押されていた。今はまだ余裕があるが、このまま戦ってもジリ貧なのは、目に見えていた。
各種族各々で民衆には大丈夫だ、と公表しているが、このままでは…。
「ならば!」と当時のお偉いさんは少しでも余裕がある内に先に手を打ち、滅びの未来を打破すべく意見を交わした。だが、現状敵に対する決定打に欠けていた。会議が不安と焦りで埋め尽くされる中、そのうちの一人がこう提案した。
ならば、意図的に民衆の英雄となる者を呼び出せばよいではないか、と。
________そう、つまりは勇者召喚だ。
術者は詠唱を始める。術者の数は三十を超える。だがそれでも足りないので、道具で国民から集めた大量の魔力を使い。術を行使する。だが術が発動しても成功する可能性は限りなく低い。彼らはただ一つの小さな小さな希望を求めた。
この作業ももう何十回目と繰り返してきた。国民も消耗し切っている。頼むから成功してくれ…と、皆が思い祈る。
そして、今回はこれまでではなかった反応が起きた。魔法陣が眩い光を発したのだ。術者は手応えを、その他の者は期待を感じていた。
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最初は何が起きたか分からなかった夏翔だったが、
だんだん脳がクリアになり、ようやく周囲の様子がわかってきた。
「やったぞ、遂に成功した!」
「ええ、やりましたね!これで人類は助かるぞ!」
「うおおー!」
とかを周りで口々に言っている白で統一された暑そうなローブに身を包んでいるいい歳をしたおっさん達と奥にいる王様っぽい人見てなんとなく状況を察した。
(うーん、頭が痛い…。いや、それよりこの状況は…。…って!?裸ぁ!?ふ、ふく!服!)
状況把握どころではない!これは、非常にまずい!こんな大勢の前でこんな醜態をさらすなんて…。
すると、夏翔の焦りが伝わったのか、周囲にいた人の一人大きい布を渡してくれた。夏翔はその人にありがとうというと、その人はにっこり笑って後ろに下がった。
しかし、この恥ずかしい出来事のおかげで、夏翔は冷静な思考をゲットした。これが喜べるかどうかは、微妙なところである。
しかし、落ち着いて周囲を見ることができているので、これは喜ぶべきなんだろう。周囲を見渡して、女性がいなかったのは夏翔にとって最大の収穫であった。夏翔は心の中で大きな大きな安堵の溜息を吐いた。
(足元に…これは何だ?所謂魔法陣ってやつか?ってことは…成程ね。もしかしてラノベとかでよくあるやつ?いや、まさか自分に起こるとは…。てゆーか、そーゆーのは夢の中までにしてくれよ!こんな醜態をさらす羽目になるとか、最悪もいいところだよ!くそ、荷物も携帯も全部無いし。…どうする?)
無意識で再び周囲を見渡す。すると奥にいた小さい子どもと目があった。その隣にはその子の兄と思しき夏翔と同じくらいの男の子と玉座に座るいかにも王様が座っている。何故、兄弟と思ったかは彼はとても似ていたからだ。それに髪の色同じだし…。
(油断するな…ラノベだと、場合によっては隷従を強いられる可能性も考えられる…けど、これだけ兵士に囲まれたら詰んでるか。じゃあ生き残る方法を探すべきか?)
できる限りの思考を行う。こんな時冷静でよかったと実感する。
(でも、意味もなく呼び出したりはしないはず。何か意図はあるはず)
夏翔がそう結論を導き出したとき、ちょうどローブに金のラインが入ったいかにも偉そうなおっさんが声をかけてきた。
「よくぞやってきてくださいました勇者様!魔王を倒し、是非この世界をお救いくださいませ!!」
(...やっぱり。てか言ってること分かるな。日本語ではないよな…。何でわかるんだ?謎だ。)
「ふざけないで下さい。何でですか?」
ここは、とりあえず否定してみて、相手の出方を見てみよう。
「は?え? 何でとは?」
おっさんは素っ頓狂な返事を返してきた。
「勝手に召喚されたのに、戦えと言われてはいわかりましたという奴はいないですよ。こっちには一切の義理はありませんし、論外です」
さぁ、どう出る?口では強気に出ているが、内心はビクビクである。そもそも、数の暴力でボコボコにされたらそれでしまいなんだが…。第三者目線で言ったら、「わー、こいつ完全詰みなのに何してんだろー」だな。向こうもそれには気付いているはずだが…。少なくとも、このおっさんは気づいていないな。いかにも偉そうだが、もしかしてお飾りか?、と内心とても失礼な夏翔であった。
「あ、えぇとそれはですね…」
おっさんは口詰まる。
「勝手に召喚したのは詫びよう。だが我々も今、重大な危機に直面しているのだ」
と言ってきたのは、先程目に入った、後方に座っていた綺麗な金髪と碧眼が目立つ、服装からしておそらくここの王様らしき人物だった。
とりあえず召喚しないと、何も始まらない。




