Ep.16 出口と始まり
「ん、んー…」
目が覚める。バッと体を起こす。そうか、魔力が尽きて気を失っていたのか。体は問題なく動く。魔力もそこそこ回復している。まさか、転生早々気絶する羽目になるとは…。
いやはや、調子に乗ったらいけないな。
体の上には気絶する前に引っ張り出した紺色のローブがあった。とりあえず着てみたが、当然サイズは大人サイズなので合わない。肩はどうにかできそうだったが、どうしても余った分が地面をずるずると引きずられてしまう。
収納魔法には子どもサイズの服を入れた記憶はないので仕方なく、長さに合うように切断する。それらしい感じにはなった。
しかし、下着も靴もない。駄目だな。
結局、もう一度収納魔法を使いぶかぶかのパンツとスポーツサンダルみたいな靴をとりあえず装着する。その他の靴は履けたものではなかった。歩きづらいことこの上ないが、まだ許容範囲だろう。
ついでにせっかく収納魔法を開けたのだから、白シャツと、帝の鞘、あと肩から掛けられるように紐も取り出す。多少の食料はあるし、今はいいか別に。収納魔法さまさまだな、本当にあってよかった。
鞘に紐をつけて帝をしまい肩にかける。不思議なことだったが、帝から重さをほとんど感じなかった。帝は子どもにはそこそこ大き目なサイズなので苦労しそうだと思っていたのだが嬉しい誤算であった。なぜ重さを感じないのかは今は考えないようにしよう。
さて、ある程度準備はできた。ここでできることはもうないかな。
よし、では出発しよう。これから確認すべきこととしてここが”イストヴィラス”なのか問題がまだ解決していない。
出口と思われる扉があるところに向かう。どうやら引き戸のようだ。
「ぐっ…うぅぅぅぅぅ…」
固い。扉が固い。石製なので重い。先の痺れも然り、どうやらとことん苦労させたいみたいだ。
格闘すること十分ほど、少しずつ動いてようやく五センチメートルほど扉が開いた。その隙に手を入れて全力で押す。隙間が十五センチメートルほどに達したとき扉が勢いよく開いた。
その勢いのあまり前のめりで転ぶ。顔面を強打し、痛みのあまり鼻の骨がが折れたかと錯覚する。
ジンジン痛む鼻は赤く腫れあがっていたが、折れてはいなかったようだ。
痛みが引きようやく立ち上がる。いちいち足止めを喰らうな、と思う。
遂に小部屋から出る。扉の先はまっすぐ石の廊下が続いていた。例のごとく石には光る苔が付いていたので光源には困らなかった。
やはり、ここはどこかの遺跡なのだろう。それも相当古いものだ。
罠にも一応警戒しながら進む。進んだ先にはまた扉があった。
無意識にムッと顔を顰めたのが自分でもわかった。先ほどのいやな記憶が蘇る。扉の取っ手に手をかけ力を加える。すると今度はさっきのがまるで嘘のように簡単に開けることができた。
どうやら、あの扉だけ固かったのかもしれない。
扉の先は大きな円形の広間のような空間だった。広間には先ほど自分が出てきた扉と同じものが三つと一際大きな両開きの扉が一つと上につながる階段があった。階段の両端に水路があり、そこには綺麗な透明の水が流れていた。
おそらく階段を上るのが出口に向かいそうではあるが、その他の扉が気になる。
とりあえず、自分が出てきた扉と同じものを確認した。三つのうち一つは自分が転生した場所とほとんど同じような長い廊下の先に小部屋。一つは牢屋のような部屋がいくつも並んだ廊下に繋がっていた。最後の一つは階段からの水が溜まっている場所。特にこれと言って変なところはなく出口もなかった。全ての部屋も罠はなかった。
残るは階段と、このでかい扉。他の扉は引き戸だったのにこの扉だけ開き戸であるのも怪しさ満点である。扉を思いっきり押す。見た感じ両開きなので押す方が楽だった。少々重かったが、子どもでも開けられる程度の重さであった。三メートルぐらいあるのに子どもでも開けられるという、少し違和感を感じるがこの際どうでもいいだろう。
今の体では多少の隙間があれば通り抜けられスルッと入ることができた。部屋の中は所謂玉座の間だった。先ほどの広場より少し広い空間に大きな玉座が設置されていた。気付いたことと言えば玉座の前には青い石で作った球形のものが専用の台座に設置されていた。もしかしてと思い、それに魔力を流してみたりしたが何も起きなかった。
あと壁にはぎっしり文字が刻まれていたが、読めなかった。玉座の後ろの壁だけ青い壁になっていてそこにも文字が刻まれていた。多分かなり大事そうなところだと察するが読めないものはどうしようもない。
仕方ない、こういうところがあったということだけでも覚えておこう。結局、部屋中隈なく探索したが何もなかったので部屋を後にした。
階段にたどりつき見上げたそのとき思わず息をのんだ。段数が予想の数十倍多かった。途轍もない嫌気がさしてくる。飛行魔法を使いたくなるが、魔力の回復が十分とは言えないので足で登らなければいけなかった。
勇気を振り絞って一段目に足をかけた。
…おい、マジで何段あるんだ。
体感的にかれこれ一時間ぐらい上っているが一向に終わりが見えなかった。段数を数えてみようとかちょっと思っていた時期があったが、千五百を過ぎたあたりでやめた。一段一段の高さが微妙に低いのも厄介であった。
ふくらはぎが悲鳴を上げている。いくら子どもの体とはいえ限度っていうものがある。
ヒーヒー言いながら追加で三十分ほど進み、ようやく最後の段を踏みしめた。
「終わったぁぁぁ!」
終わったという開放感が自身を柄にも合わず思わずガッツポーズをさせた
階段の先には大きな扉があったが、ひとまずこの場で休憩をすることにした。疲労感がとんでもない。ここ数日、こんな思いばかりだ。
この遺跡は罠こそなかったが、その分のものを持っていた。
少しの間眠りにつき、起きるころにはすっかり体が動くようになっていた。筋肉痛になるかもと危惧していたが杞憂に終わった。
気合を入れ直し扉に手をかける。思いっきり押し、隙間を抜ける。そこは洞窟のようだった。洞窟と言っても一直線の洞窟であったので迷わずまっすぐ進む。
暫く進むと出口と思しきものが見え、うっすら光が見える。
少々駆け足でそこに向かう。出口がだんだん大きくなる。出口の周囲に樹木が鬱蒼と生い茂っており、出口を隠すようにしていた。
その隙間を搔い潜り出口を出る。木々を抜けると少し開けた場所に出た。そこはどこかの山の中腹であった。辺り一面緑に包まれ、空を見上げるとそこには青空と輝かしく光る温かい日があった。
少し短めな気がしますがキリがいいのでここいらで。
まさか遺跡から出るだけで一話分取ってしまうとは…。二章は十話ぐらいで〆たいのにもしかして無理、なのか…。
言ったような言ってないような気もしますが一章の内容は本来は超短くするか二、三話で終わる予定だったんですよ、実は。
もしかして、自分はまとめるの下手…?いやでも、少しでもわかりやすくするためには増えるのは仕方のないことだし…うーん。まぁ、いっか、自分の労力が増えるだけだ。何も問題はない。




