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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第8章】現代の勇者
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Ss.15-2 現地調査

未開の樹林のとあるエリア。Aランクパーティ「夢の守人」は四メートルはあるであろう巨大な猪の魔物と戦闘を行っていた。


「おおっ!?なんだこの猪!攻撃が届かない!?」


突進後の硬直を狙ってパーティのリーダーであるユルトが勢いよく斬りかかったが、魔物との間にある見えない何かに押し返され、攻撃を与える事は叶わなかった。


すぐさまユルトの援護に入ったバールもユルト同様の結果になる。


仮にもAランクの冒険者達の攻撃だ。

それを防ぐとは、流石は畏怖の三域の魔物である。


「……風の障壁?」


感じたままを口にするバール。


「感触的に。でも、普通猪って言ったら、形振り構わず突っ込んでくるものなんだけどな……?」


ユルトも同様の結論に落ち着いたのか、バールの考えを肯定する。


そう、感触は風だ。強力な風のバリア。

シンプルだが、実に厄介な魔法だ。


「ちょっと二人共!前!前!突っ込んでくるわよ」


リアリーが焦って声をかける。二人の気が一瞬会話にそれたタイミングで、その巨体が爆速で走り出した。

ユルト達との間にある大木すら気にせず、薙ぎ倒して迫り来るその迫力には圧倒されるものがある。


「ノーモーションか、無駄がないな」


どうやら、予備動作を一切行わず、いきなりトップスピードを出せるみたいである。

つまりは、止まっているからチャンスと思って下手に突っ込んだらそのままあの世まで吹っ飛ばされる危険性があると言うことだ。

なんて危ない魔物なんだ。もし、こんなのが人里にやって来たら壊滅的被害を受ける可能性もあるだろう。


「みんな、どいてっ」


取り敢えず回避するかと考えていたら、背後より声がかかる。

三人共振り返ることなく、すぐに左右に散る。

その後直ぐに、一本の魔法で作られた橙色に光る槍が猪目掛けて飛んで行った。


そして、槍は突進してくる猪の風の障壁を難なく突破し、眉間あたりを貫いた。


巨体は、大きな音を立てて倒れた。


「……流石だ、コァ。障壁ガン無視の攻撃力だな」


ユルトは、それを成した人物を褒めた。


「えへへ」


その少女は照れ臭そうにした。

相変わらず、その可愛い見た目からは想像出来ないほど凄まじい威力だ。

能力によるものだと本人は言っているが、この歳で使いこなしているのは驚きの一言である。

彼女曰く、正面衝突になれば大体は勝てるとの事。

実際、今みたいな倒し方も何回かあったし、防御や攻撃による相殺などと言った不確定性を孕む要素を度外視して、こちらの都合を押し付けることが出来るのは非常に大きな強みである。


相手からすれば駆け引きもクソもない理不尽な話だが、彼女が加入してから火力負けした試しがない。

やはり彼女をパーティに引き入れたのは正解だったとユルトは思うのだった。


「……しかし、流石畏怖の三域の一つだ。魔物のレベルが高い。普通に厄介な魔法を使ってくる」


それはそうとして、予想はしていたが魔物の質が高いのは調査を行う上では面倒な話である。


「研究だと、本能で魔法を使ってるって話でしょ?理論を学んでようやく制御できるのが人間なのに嫉妬しちゃうわ」


魔物は本能で魔法を使ってくることがある。

これは、全ての魔物がそうと言うわけではなく、知能が高い魔物が該当することが多い。

理論の下、複雑に掛け合わした人類魔法とは異なり、魔物の魔法は実に原始的なものなのだ。

だが、魔物の魔力量が多ければ、単純な魔法でも非常に強力なものとなることもある。


「でも性質上、複雑な魔法は扱えない」


「普通はね。一部例外がいるのよ、そう言うのは」


「そして、その例外に出会いやすいのが畏怖の三域ってことだ」


「会いたくないわ……」


実に面倒臭そうにメアリーが全員の心の中を代弁してこの話題を締め括った。


「それにしても、なんて言うか……気分が悪くなりそうな雰囲気だわ」


「恐らく……星の魔力の影響だろう。今回はある場所で急に発生した大量の星の魔力の影響を調べることが目的だが、元々未開の樹林全域には星の魔力が充満している。常時保護結界を張る必要がある魔の領域程じゃないが、人に適した環境じゃないのは確かだ」


辺りを警戒しつつも一行は進んでいた。


「そういえば、そうだったわね。あら……」


そして、あるところに到着する。


「崖……」


「ここまでは地図通りだ。ここで周辺の様子を見よう」


未開の樹林というが、ある程度までの地形は調査されている。

一行は歩きながら細かな異変がないか調べながら、この場所を目指し、ここで広範囲にわたって一望して異変の有無を調べようと考えていた。


飛んで調査すると言うのは論外だ。

魔物のテリトリーであるこの場所でキョロキョロしながら飛んでいたら格好の餌にしか見えない。


そのため、地道に歩いて調べるのが一番良いと判断したのである。


「あそこ、霧がある」


「そうだね。方角的には北か……」


「リーダー」


崖から見える景色を隈なく見ていたら、バールが叫ぶ。

彼が何で叫んだのかは、みんな理由を言われなくてもわかっていた。


「わかってる。全員、戦闘態勢!」


歩いて来た方向……つまり崖の反対側に下卑た嗤い声と共にそいつらは姿を現した。


「ゴブリンね…五十はいるわ」


冒険者ならある意味見慣れた相手だ。

だが、見た感じ知能が高いことで知られる種類のゴブリンのようだ。


人間から奪ったのか、ゴブリンが持つには質の高すぎる剣や杖と言った武器、そして鎧を身につけている。


「後ろは崖で、前は大量の魔物という訳か……」


この形になるのを待っていたのだろう。

流石、知能の高い種だ。鬱陶しい事をしてくれる。


「空にも何かいる」


コァが指を指しながら言う。


「たぶん、虫。大きい」


各々が身体は武器を構えてゴブリン達と向き合いつつ、一瞬意識をそちらに向ける。

確かに、黒光りしている巨大な虫が空を大きく巡回している。

形状からして、トンボといったところだろう。

ここから見ても大きいとわかるのだから、相当デカい個体のようだ。


「目立つ場所に居過ぎたね……」


時間にして一、二分だったが、軽率だったらしい。もう少し慎重に立ち回るべきだったかとユルトは少し後悔した。


「ゴブリン達、動かないわね」


ジリジリと距離を詰めて来ているので、全く動いていない訳ではないが、その物量で押し切ろうとする感じではない。


「機を待っているんだろう…虫が攻めてくるそのタイミングで挟み撃ちにする気だ。ホラ、律儀に魔法を準備して待ってくれているようだ」


ユルトは直ぐにゴブリン達の考えを看破した。

このまま押し込もうとすると、ゴブリン達もあのトンボに襲われて無駄な犠牲を作る可能性がある。しかし、トンボに先手を譲る事で、それを回避しつつ、トンボに襲われて崩れたユルト達を一網打尽に出来る……そう言う考えなのだろう。


姑息だが、理に適っている戦法だろう。


「どうする?リーダー」


バールがユルトに問う。しかし、そんな時間は無いようだった。


「来る……虫はわたしが」


コァが短く言った。どうやらトンボが突っ込んできたらしい。

ユルト達はその言葉を瞬時に信じる事にした。

普通ならこんな子どもに背中を任せるなど正気の沙汰では無い。

しかし、そんな常識なんてユルト達には無くなっていた。


乱風式雷之槍(トルトール)


凄まじい速度でコァは魔法を放つ。恐らく魔法自体はさっき猪に放ったものと同じものだと思われるが、風属性魔法で速度を弄っているようだ。


「アレをかわすのか。速いな」


しかし、トンボはその槍を躱してみせた。凄まじい反応速度だ。

だけど、これによりトンボはその軌道を大きく変更し、ユルト達を襲うには至らなかった。


「リアリー!」


バールが叫ぶ。予定が狂って若干動きが止まったゴブリン達だが、こっちが動いたこのタイミングを狙って動き出した。一斉に準備していた魔法を放ち、こちら向けて飛ばして来る。


「ええ、任せなさい。たかが五十匹分の魔法。全部撃ち落としてあげる!大乱射(ガトリング)火炎弾(ヒートバレット)!」


精度には特に自信があるリアリーは、迫る五十匹分の魔法を一人で相手する。

銃弾のように鋭い彼女の魔法は、ゴブリン達の魔法を的確に貫いて暴発させる。


「行くぞ、バール」


「了解」


この機を逃すわけがない。前線役の二人は、武器を構え、爆煙舞い散る戦場を駆け抜ける。

流石はAランクと言うべきか、実に手際良く処理していく。

しかし、ゴブリンの中にもやり手はいるようで、二人の攻撃に反応して受けて来る個体もいた。


「……やはり、賢い個体がいるな……。バール!雑魚から片付けるぞ」


ゴブリンは剣等の武器を持つ前線組と、魔法を撃ち続ける後衛組に役割分担し、前者は迫る二人を相手し、後者はリアリーとコァを集中的に狙って来ていた。


ユルトとバールは強い個体は後回しにして、魔法や弱い個体を優先的に倒していく方針にした。

現状、魔法の対処をしているリアリーの負担を減らすのが最優先である。


「はぁ…はぁ……地味に威力が高い……厄介ね…」


向こうの威力が高いため、こちらも相応の威力でぶつけないと、撃ち落とせない。

前線部隊が意外にも手こずっているので、予想より長く魔法を撃ち続けている。


「リアリーさん、手伝います」


そんな時、喉から手が出る程欲しかった救いの手がやって来た。

だけど、同時に質問が飛び出ていた。


「コァちゃん!?虫は!?」


そう、彼女は今トンボの対応をしているはずなのだ。魔力探知からは、トンボは警戒しているのかこちらの様子を伺っているみたいで、健在なのだ。

あれを放置したらそれこそ被害が……。


「たおしました」


「え?でもまだ、あそこに……」


そんなリアリーの声は轟音にて掻き消される。

唐突にトンボがいた周辺の空が爆発……いや、大爆発した。


「すばしっこくても、こうはんいでぶっ飛ばせばかんけいないです」


様子見していたトンボは格好の的だったのだろう。

逃げ場なんて与えない超広範囲爆発により、トンボは跡形も無く消し飛ばされた。


「そ、そうね」


顔が一瞬引き攣るリアリー。慣れたはずなのだが、相変わらずの規格外っぷりである。


熱線照射(ヒートレイ)


間髪入れず、コァが魔法を放つゴブリン目掛けて魔法を放つ。


コァ参戦により、盤面が一気に傾いた。

変わらず全ての魔法はリアリーが弾き落とし、その間に三人はゴブリン達を殲滅し終えた。


「よし、コイツで最後だ!」


「お疲れさまです」


「やっと終わり」


「お疲れ様。直ぐにこの場所離れましょ」


討伐完了と共に、一行は場所をすぐさま変える。

随分と派手に戦ったので、これに釣られて他の魔物がやって来る可能性がある。

これ以上の戦闘はお腹いっぱいだ。





「この辺りが、星の魔力が異常発生したところだけど……」


一行はようやく該当地点に到着した。

ギルドマスターは調査していると言ってはいたが、一応確認しておこうと言うことでやって来たわけだ。

そこは、これまでとは異なり綺麗な花が咲き誇っている花畑になっていた。ギルドマスターは花の事は何も言っていなかったが……。


それにしても思ったよりも時間がかかった。

日も傾き始めている。


「妙に多くの花が咲いているけど、それ以外特に異変はなさそうね」


「ああ……」


異変……と言うべきかは悩ましいが、この花畑は確かに周りと違い過ぎる。持って来たカメラで周辺の写真を記録しつつ、花も数本根っこから抜き取り、サンプルとして回収した。


「どうする?」


「そうだね、今日はこの辺りで野営しよう。一日様子を見て判断しよう」


「了解」


ユルトは予定通りこの近辺で野営する事に決めた。

晩のメインはバール特製、猪をふんだんに使った料理であった。











「もう、朝か……若干霧がかっているが、特に異常は見られないな……もう少し日が昇ったら出発するか……」


明け方。少し冷え込み肌寒いが、震えるほどではない。昨日の昼が嘘みたいに平穏な夜を過ごせた。交代で見張をしたが、魔物が襲って来る事は無かった。


少し前に周辺の警戒がてら見て回ったが、鳥の声がどこかから聞こえて来るくらいだ。

強いて言えば、近くに最近崩れたであろう崖があったのだが……後で軽く調べてから出発しても良さそうだ。


「おはよぉございます」


考え事をしていたら、寝起きの挨拶が聞こえた。


「コァ、相変わらず早起きだな」


「はぁい、はやおきです……」


まだ眠いのか、瞼が開いていない。

右手で目を擦りながら、短い歩幅でこちらに歩いて来る。


「よし、朝ごはんの準備をしよう」


見慣れた光景だ。コァを設置した椅子に座らせ、ユルトは慣れた手つきで朝食を準備し始めた。












「リーダー」


「リアリー、どうだった?」


日も昇り、霧も晴れ、全員が出発準備を整えたぐらいで、少しの間上空を飛び、周辺を見回していたリアリーが降りて来た。


「空から見た感じ…こっちの方に行くと森が開けてて、こっちだと沼地っぽくなってて、あっちは霧が出てた」


見たままの状況をリアリーは指を指しながら説明する。


「あっちに霧?」


バールが何か引っ掛かったようだ。


「うん。あっち」


「リーダー、あっちの方角わかる?」


「あっちって……北だぞ?……ん?確か昨日も霧がかかってなかったか?」


「……あ」


「気になる」


「ああ。これは調査するべきだ。よし、北に向かうでいいよな?」


偶々かもしれないが、何日も霧が同じところに留まり続けるものなのだろうか。

全員が「北に何かあるかもしれない」という思考になる。

そのため、ユルトの決定には誰も反対する事はなく、すんなり今日の目的が決まったのだった。


「……って言うところまでは良かったんだけどな……」


と言う数時間前の決定をユルトは思い出しつつ、今の面倒な状況を対処していた。


「魔物、多すぎよっ!」


「キリがない」


霧のエリアに侵入出来たのはいいのだが、次から次へとまるで入って来るなと言わんばかりに魔物が襲い掛かって来ていた。

霧ということも相まって一向に進んでいる気はしない上、こうも際限なく襲って来るならいずれジリ貧になる可能性もある。


「霧だけに…だな」


ユルトは偶々頭に浮かんだ言葉を口にする。


「「「……………」」」


しかし、その台詞はこの場の温度を大きく下げることになった。


「ねぇ!君達!」


ここまで露骨な雰囲気を醸し出されたら、悲しくなって来る。

魔物の首を落としながら、誰かコメントしてくれても良かったじゃないかと内心叫ぶ。


「……まあ、いいよ。サンプルは取れたし、余力があるうちに撤退するよ。いくら出てくるかわからない敵を相手にするのは分が悪い」


気をすぐに取り直し、撤退の判断を下す。

他の三人も、賛成だったらしく一行はすぐさま撤退を行い、そのまま情報報告のため獣国へ直帰した。


彼等が持ち帰った情報が非常に重要な物となるのだが、それはまだ先の話。


すみません、なんか投稿出来てませんでした。


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