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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第8章】現代の勇者
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Ss.15-1 異変調査の依頼

「おー、ナツトー」


パフェを堪能し終わったナツトは集合場所に向かっている途中にガルノ、イアノンと合流した。


「一緒にいこーぜ……って、どうした急に振り返って……」


その時だった。唐突に背筋がゾクリと震え、勢いよく後ろを振り返った。

そのことが気になったのか、ガルノラルクが問う。


「……いや…何でもない」


感じた気配は消えていて、気のせいだったと思いたい。

だが、その存在がナツトの感じた通りなら、こんな街のど真ん中で人に紛れていることになる。

つまりは、人の姿に化けているという事。

でも、所構わず暴れていないという事は、暴れる意思はないのだろうか。

……いや、そうと信じたい。

万が一戦う事になったら、骨が折れる相手だ。


感じた気配が、あの竜のものならば……。





「いた!コァちゃん!急に走り出してどうしたの?」


ある道の角を曲がったところで、その少女は走るのをやめて止まった。


「リアリー……こっちに知ってる人がいたような気がした……のだけど」


後ろから人の間を掻い潜って追いかけてきた女性の問いに答える。


「そうなの!?この国の人かな??」


息を整えながら、リアリーと呼ばれた女性は続けてコァという少女に聞いた。


「……たぶん、ちがう。おっきな耳じゃないから」


それを聞いてリアリーは、コァの言う人物が獣人ではない事を察する。


「みまちがいだったみたい」


そう言うコァは少し残念そうだ。身寄りがないと聞いているこの少女にとって、知り合いという存在は大きいのだろう。

リアリーは脳内でそう解釈して、なんと声をかけようか少し悩んだ。


「そう……でも、いつかきっと見つかるはずよ」


「そうだね」


「さ、リーダーのところに戻りましょう?」


「うん」


リアリーは少女の手を引き、はぐれないようにしつつ、仲間の元へと戻った。







辿り着いた場所は獣国首都のギルド支部であった。施設内は多くの冒険者達で溢れ返り、実に騒がしい。


「おかえり」


人を掻き分け進むと、二人を待っていたのか、一人の青年が声をかけてきた。


「バール、リーダーは?」


「あっち」


バールが指差した方向をリアリーは見る。

確かに視線の先には、探している人物がいて、何やら説明を受けている。

すると、タイミングよく彼はこちらを見て、手を振る。どうやら『こっちに来い』という意味のようだ。





「全員お揃いでしょうか?」


「ああ」


「では、こちらへ」


合流するとすぐに別室へ案内される。

……今回の依頼の内容的に多くの人がいる溜まり場では言えないのだろう。


「リーダー、さっき何の説明を聞いていたの?」


「ん?ああ、未開の樹林の簡単な現状報告さ」


移動中、リアリーはリーダーの青年に合流するまで彼が聞いていた説明の内容を尋ねていた。

パーティ内の情報共有は重要であり、誰かしか知らないなんて事態が起きないように気をつけているのだ。


「後で聞かせてね」


「勿論さ。ま、直に説明があると思うけど」


話していたら、部屋についたようだ。

案内係の女性がとある部屋の扉をノックし、後ろに続く彼らを入室するように促す。


「来たな、夢の守人の諸君」


「では、ギルドマスター。私は失礼致します」


「ああ、御苦労」


案内された部屋には見た感じかなりの歳だが、筋骨隆々な男性の獣人がいた。ソファの真ん中に豪快に座っている。


「まぁ、座れや。今回の件について色々言うからよ」


リアリーは、若干気圧されていた。

本人にはそんな気は無いかもしれないが、覇気というか何というか、強者特有のオーラをビンビンに感じてしまうのだ。

そんな相手に「座れや」と言われても、ちょっと怖いのだ。

何だろう。怒られていないのに、怒られていると感じてしまう。


そんなリアリーを無視して、平然とギルドマスターの向かいのソファに腰掛けた人物がいた。

コァである。

それに続いて、他の二人と腰掛けた。

リアリーは、コァのそんな度胸に感心して、僅かに微笑みながら座った。

さっきまで感じていた僅かな恐怖心も気が付いたら無くなっていた。


「ほぉ……」


ギルドマスターは、四人を見て何か感心しているようだった。


「うむ、流石にAランクのパーティだな。どうも俺には圧だか知らんが、そういうのがあるらしくてな。低級のパーティなら座る事はおろか動く事も出来ない事があるんだ」


「へぇ、そうなんですか」


ある種の選別という訳だろうか。

でも、確かに別室に連れてこられて入ったら圧迫面接さながらのコレだ。さっきのリアリーみたく、気圧される人もいるのだろう。

リアリーの場合は、仲間に助けられたところはあるが、ギルドマスターの反応を見るに一応は合格らしい。


「ああ、全くもって意味がわからないよな。俺はこんなにも老いた老兵だというのにな」


「あはは……」


多分だけど、原因は貴方のその圧倒される体型と態度だよ!……という言葉は呑み込み、愛想笑いでリアリーは返した。


「ま、雑談はここまでにしてだな。本題だ。つい先日だ。日が昇る前、未開の樹林内にて謎の発光が確認された。同時にそのポイントにて大量の星の魔力が検出された」


ソファのソファの間に置かれたガラス製の大きなテーブルの上にギルドマスターは未開の樹林の地図を広げ、ある地点を指差しながら説明し始めた。


「現在、その原因調査がギルドの調査員が行っている。……それで、お前達に依頼したいのは端的に言えばこれの余波の調査だ」


「余波…?」


てっきり、原因調査を頼まれると思っていたが、どうやら違うらしい。

でも、言われてみれば確かに、こういう解析系の仕事は戦闘専門的な立ち位置である冒険者よりも、研究者とかそっち系に強い人たちに任せるのが一番ではある。

まぁ、余波の調査も戦闘系かと言われると違うだろう。しかし、場所が比較的固定できる原因調査は魔物が襲撃してきても撃退する準備ができるのに対し、より広大な範囲を調べなければならないこっちの調査は、こちらが動き回るので魔物との遭遇するリスクが高くなるため、危険度は高い。

そこで、そのリスクを鑑みても、遂行していくれるであろうベテラン冒険者にこういう仕事がやってくる訳だ。


「そうだ。とある研究によると、星の魔力がある場所に溜まり、澱んだ結果、魔物が生まれる可能性があるというものがある。まだ、魔物発生のメカニズムは解明されていないが、今言った話が割と世間一般的な魔物発生の考え方だ。だから、今回、お前達には未開の樹林の調査に向かってもらい、魔物の状況を確認してもらい報告して欲しい」


この話は、ギルドマスターが言う通り有名な話である。学者や研究者でもない冒険者達でも一度は耳にした事があるくらいには浸透している魔物の見方である。

だが、実際そのような状況になっている場所を見つけても、魔物が発生したことを確認した……という報告はされていない。

なので、人の目がない場合に限り発生するのでは?等、様々な憶測が飛び交う説なのだ。


そのため、実際に見たわけではないので、この説が正しいと言うわけではない。

ただ、一番そうだとしたら納得が行く説である……それだけのものである。


「ちなみに討伐は?」


「勿論してもいいが、無理のない範囲でな。現状把握を優先したい」 


リーダーは、この依頼が調査だけで、魔物達は刺激するなみたいなものではないか確認する。

何が最優先事項で、どう優先順位をつけるのか考える上で、この確認は大事なのだ。


「了解しました」


「助かる。ちなみにリーダーはお前であっているか?」


「はい。ユルトです」


「わかった。メンバー分の許可証を発行しておくから、後で受付で受け取ってくれ」


どうやら話は纏まったようで、ギルドマスターは他の捕捉事項の説明を始めた。


「わかりました」


「よし、期限等は特に定めてはいないが、早い目で頼むぞ」


「ええ、勿論です。準備が出来次第、明日にでも」


こうして、Aランクパーティ『夢の守人』の未開の樹林探索が決定したのだった。


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