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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第2章】王国に向けて
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Ep.15 転生中の地獄

…ふと、何かに入ったような気がした。


意識はある。

ゆっくりとまぶたを開けてみようと試みる。目の前には青白く光る膜なようなものがあった。その膜はどうやら繭のようなものらしく体全体を包んでいるようだった。体はどうやらまだ動かないらしい。なんとなく手足があるというのはわかるが、動けと思っても微動だにしない。どうしようもないのであきらめることにし、別のことを考えることにした。


しかし、ここは一体どこだ?顔も動かせないので視界には青白い膜しかない。ちなみに自分は仰向けに寝転がっている姿勢と取っていると思う。多分。膜に隙間はなかったので外の景色は不明だった。


そうだ、記憶確認だ。

僕は夏翔。召喚されてアルティオ達と一緒に魔王を倒した。それで邪神戦で死んだ。

よし、大丈夫だ。記憶に問題はない。転生魔法は前世の記憶を引き継いでくれたみたいだ。


しばらく目を動かしていたら唐突に眠たくなった。抗うこともできず眠りについた。



(ぐうぅぅ~)

それから暫くしてただひたすらに悶えていた。

何にって?

それは痺れだ。いきなり体全体に耐え難い痺れが襲ってきたのである。そう例えるなら、まさにうってつけの例がある。それは負担をかける正座をしたときに後から襲ってくるあの何とも言えない痺れ。あれの最高に痺れている状態のものに似たものが今全身に広がっているのだ。唯一異なる点は、正座のやつは動かなかったり時間経過で収まるが、今夏翔を襲っているのはそんな気配は一切ないのである。

当然まだ体は一切動かないのだが、そんなこと関係ないなと言わんばかりに痺れが続く。

痺れで寝ることすら敵わない。孤独な地獄が始まった。


それがおそらく数日続いた。

比喩なしで死ぬかと思った。

数日経過したことで、痺れは少しずつ緩和されていった。この頃になると多少の痺れごとき大したことないなと感じるようになったが、ふと不意打ちのようにでかい痺れが来るので、その節心の中で叫んだ。


さらに数日たち、遂に痺れとの死闘に幕が下りた。

あの世の地獄のような日々が終わった。多大なる精神的ダメージを喰らった。しかし乗り切ってやったぞという達成感はとんでもなく大きかった。ここまで達成感を感じたのは人生初めてだ。

そして、そのまま眠りに落ちた。

ああ、寝れるってなんてすばらしいことなんだろう。転生は完全に住んでいないのにそうそう思い知らされたのであった。



次に目が覚めたとき、夏翔はふとあることを思った。

目を開ければ目の前は当然膜がある。膜に一つ変化があって、青白い光から白い光になっていた。それをボーっと見ていてなんだか虫の繭みたいだなと思ったのがきっかけであった。

夏翔は思った。今の自分は本当に人間として生まれるのか?人間に生まれるだろうという固定概念があったのでそれにすぐには気づかなかった。全力で焦る。


そんな時、体が動くことに気が付いた。恐る恐る右手を動かす。膜内は手を動かす程度には隙間があった。首もできる限り曲げ、その手を見る。

果たしてそこには…肌色の右手があった。


全身から力が抜け落ちる。大きな安堵の溜息をこぼし、とりあえず安心する。左手右手同様だったのでこれまた安堵する。

しかし、一つだけ思ったことがあった。なんか手が小さい。


それからしばらく膜が強く輝いた。寝ていた夏翔は眩しさのあまり目を覚ます。とそれと同時にパリンというガラスが割れるような音を立てて膜が弾け飛ぶ。


「ぐえっ!?」

なんとその膜は地面から一メートルほどの高さに浮いていたらしく弾け飛んだ瞬間夏翔は重力にしたがって落ちた。

「いったぁ」

宙に浮いてたのなら割れる前に教えておけよ。内心文句を言いながら手をつき上体を起こそうとする。すると手に何か固いものがぶつかる。

「ん?」

何だと思い振り返ると、そこには自分が死ぬ瞬間まで持っていた愛剣「帝」が落ちていた。

「おお、帝ぉ!いや、でもなんでこんなところにあるんだ?いやそれよりも…」

帝を手にしようとしたときわかる。剣がでかい。否、自分の手が小さい。

ハッとし、立ち上がり体を見下ろす。肌色の肌、いや前より少し白めの肌だ。体を見る限り人間で男だ。しかし、やっぱり身長が低いうえに体が何か子どもっぽい体つきをしている。


鏡、鏡はどこかにないか。そう思い、周囲を初めて見渡した。周囲は風化してひび割れた石のレンガで囲われた個室のような場所だった。推測で古い遺跡のようだと感じ、小さな四角い部屋である面にだけ出口と思われる扉が付いていた。石のレンガには光る苔のようなものが付着していたため、十分明るかった。


周囲を見渡した結果、鏡など当然なくがっくりとなる。

しかし、今剣を持っていたことを思い出す。綺麗な刀身を鏡代わりに使い自身の姿を見る。顔のベースは基本的に前と同じだった、が髪の色がなぜか灰色になっているうえに目の色も近くでよく見てみたら黒ではなくとても黒に近い紫色だった。体を見て結論を下す。小学生ぐらいの肉体年齢だ。大体八歳といった具合だろうか。八歳と言えば小三ぐらいか。全く見事に若返ったものだ。


「あ、あー。おーホントだ。よく聞くと声が高い気がする?あ、そうだ」

声を改めて聞いてみるも声が高くなっているような気もするが自分の声って意外とどんな感じかわからなかったので耳珠を抑えてもう一度声を出してみる。

「あー。あいうえお。ドレミファソラシド。おぉ!確かに声が高い。裏声が出しやすいな」

結果声も声変わり前まで戻っていることが判明した。


「…さて、と。誰もいないからいいけど服着ないとなぁ」

そう、今は完全に生まれた状態のままである。流石にそれは子どもでも許されない。

しかし、問題は服をどうやって得るのか。少し考える夏翔。

「あ、そういえば収納魔法は使えるのか?あれの中にサイズは合わないけど服をいくつか入れていたハズ…」

そう考えたが、待てよと思う。そもそもここは”イストヴィラス”なのか。周囲が壁なせいで全く見当がつかない。なんならまったく別の星の可能性もある。というか今、魔法使えるのか、それに能力は。


目を閉じる。困ったときは心に聞いてみようじゃないか。

アルティオ達に教えてもらったあの心に聞くを改めて行う。そして知る。

「うん。魔力は確かにあるし、能力も確かにある。魔法は多分、使える。でも魔力がほとんどすっからかんだな。…どうしようか、回復を待つか…いやでも、収納魔法を発動するだけだし。…よし!」


迷ったが、収納魔法程度なら多分大丈夫だろう。右手を伸ばし、収納魔法を発動する。すると目の前に大きな黒い窓が開く。それを見て魔法が使える事実と収納魔法が引き継がれていたことを内心喜んだ。しかし、すぐに異変に気付く。

「あれ!?こんなに大きく開けたつもりないのに…。うっ!不味い!魔力が尽きる!服、服ぅ!」

意識が朦朧として体がふらっと倒れそうになる。消えていく意識の中全力で収納の中にあった服を一つ引っ張り出した。そして、そのまま魔力が尽き、完全に気を失ったのであった。

今日になってアクセス解析機能を初めて発見し、見てみたところ想像の何十倍もアクセス数があって吃驚。とても嬉しい限りです。


さてようやく転生したわけなんですが、ここで出てきた収納魔法。そういえば説明していなかったなと思うのでこれの一つ前の「登場人物まとめ&その他」に付け足しておくことにしますね。収納魔法が気になった方は是非そちらを見てください。

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