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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第8章】現代の勇者
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Ep.141 高等部修学旅行⑧-獣国の学校-

結局、探し物は見つからずで終わり、少しモヤモヤしながらナツトはみんなのところに帰って来ていた。

予定集合時間十分前なので、教師陣には特に怪しまれることなく戻ることが出来た。


「あ、シャック」


「ウル」


戻るや否や近くにいたウルヴァロがナツトに気付いた。


「チェリーが探してたよ!"集団行動が出来ないの!"って言ってた」


「あ、あはは……」


それに関しては本当に申し訳ない。

側から見れば、迷惑極まりない奴であるのは自覚している。







学園一行は、小一時間程移動して獣国の学校へ着いた。

その学校の見た目は一言で言うならば、「木」だ。視界に全貌を収めるのが不可能な程、超巨大な木だ。

実際には木を模した巨大な建造物だとは思うが、木を上手い具合にくり抜いた印象を受ける。


なんか、世界樹です、と言われても納得しそうな感じだ。


「あら、これはこれはシャックさん。どちらに行ってたのかしら?」


その学校を見上げるようにして眺めていたら、後ろから話しかけられる。


「これはチェルーティア王女殿下。……失礼ながら口調がいつもとは異なるようで……」


一応公の場なので畏まって返す。そして、ナツトに対する話しかけ方が若干異なっていたので、つい聞いてみたが……。


「誰のせいと?」


余計な事をしたものだとすぐに後悔した。


「すみませんでした」


初手から謝っておくべきだったか。


「……まあ、いいわ。貴方の独断専行は今に始まった事じゃないし。……それに、事情があるみたいだしね」


「お気遣い感謝いたします」


「他の人は私が説得させておいたわ。貸一つね」


「…………はーい」


なんだろう。チェルーティア相手に貸し作っておくのは不味い気がする……が、仕方ない。

こちらとしても、この国にいる間に出来ることはしておきたいのだ。

後になって、あの時やっていればと思いたくないのだ。

嫌な事はいつまでも覚えていると言うが、ナツトの場合記憶の好き嫌い問わず絶対に覚えているのだ。

そしてそんな記憶はふとしたときに嘘偽りなく想起される。ああしておけばよかった、こうしておけばよかった……と記憶がまるで囁いてくるみたいな、そんな感じだ。

長い時間の末、風化して一部脚色が入ってくれた方が幾分楽な記憶だってある。でも、忘れる事はできない。


……っと、話が逸れたな。


まぁ、だから後悔は可能な限り残したくないと言う事だ。


……つい先程したばっかりだが。


「じゃ、行きましょ?確か貴方も座学希望でしょう?」


「あぁ、うん」


交流に際して生徒達は二つのプログラムのどちらかを選択して、この学校の生徒達と一緒に授業を受ける事になっている。

その二つとは「座学重視」と「実技重視」である。

チェルーティアの言う通り、ナツトは前者を選択しており、その名の通り語学や歴史、実験等と言った室内で机に向かって学ぶ内容が多いプログラムだ。

一方の「実技重視」は、勿論訓練場での戦闘訓練が主体のプログラムだ。お互いの生徒が全く戦ったことのない種族の人達と戦う経験が積める。学園の生徒だと将来騎士になりたい生徒達が多く志望している。


ちなみに学園の座学と実技の志望比は大体四対六である。


「……であるからして、これらの歴史的背景から見てもこの技術は、この獣国を古くから支えてきたものなのです」


熊のようなケモ耳の男性教員が熱弁している。


最初の講義は獣国特有の技術を長い歴史と共に紐解いていくことで、獣国の理解を深めようというものであった。


魔法道具をサークル活動等で作っているナツトからしたら、この話はとても興味深いものであった。

この話には勿論魔法も絡んで来るので、どんな感じの魔法があって、どのように培われ、発展してきたのか。

歴史を見ると言う事は、つまり国の記憶を見ると言う事だ。過去の積み重ねを知ることは、人類が発展する上で必要不可欠なものの一つに違いないはずだ。


「それでは、この技術を用いて今後どのような応用法が挙げられるか……簡単なものでもいいので、グループ毎で話し合ってもらいましょう」


本題が始まったようだ。

ラーテルでもそうだが、この世界は魔法という想像力が密接に関わる絶大な力が存在する為、学校ではその多くが想像力を鍛えるカリキュラムを組んでいる。


今回の交流も全く境遇の異なる人達と意見を交わし合える絶好の機会である。

ただただ淡々とした教員が一方通行で喋る授業ではなく、こうしたみんなで考える授業を取るのはある意味必然だろう。


「……と言う感じだと、私は思う」


「うーん、もう少し効率化した物になるんじゃないかって思うけど…」


体感だけど、獣人は積極的に会話に参加しようとする意欲が強い気がする。

言うなれば……協調性が高いと言うのだろうか。

何度も体験してきた授業であるというのも勿論あるとは思うが、必死で考えて意見を出す。

当たり前な事なのかもしれないが、ここの生徒はそれが非常に良くできている印象を受ける。


これは、負けてられないなぁ。


「僕は……」


ウカウカしていて会話に入れず、置いていかれるのは御免だ。


会話の隙間を見極めて、参加する。


獣人特有の考えや、長く議題の技術に接して暮らしてきた彼等の捉え方等、学ぶ事が非常に多く、新たな知見も得られた。


時間があっという間に過ぎ、「もう終わりか!」と感じてしまうくらいに楽しかった。








「おい!実技組白熱してるってよ!!!」


授業が終わり、獣人の彼等と談笑していたら誰かが叫んだ。

とっくに授業時間は過ぎているのに、まだ続いているとはよっぽどだ。


周りに流されるようにナツトも実技組が訓練を受けている訓練場の観戦席に行った。


訓練場は熱気で溢れかえっていた。

今尚、そこいらで学園の騎士希望の者と獣人の彼等が一対一で白熱した戦闘を繰り広げていた。

授業時間が終わっているので、担当教員は教師としてはダメだな。でも、面白いものが見れそうだ。


そしてそんな中、一目見るだけで、明らかにレベルの高い組がいた。


あれは……。


「イアノンね。実技を志望していたなんて珍しい」


「チェルーティア王女殿下」


いつの間にか隣に座っていた。


「ノアラやウルも頑張っているわね。……能力は使わないで戦っているのかしら?」


「みたいですね」


少し離れたところにノアラナチアとウルヴァロがそれぞれ戦っていた。

こちらも他とはレベルが一つ上の戦いを繰り広げているようだ。


だが、それでも……。


「やっぱり、注目を集めているのはイアノンのところか」


「そうね」


ノアラ達には悪いが、イアノンの組が一番白熱している。明らかに戦闘スピードが違う。


その理由は、わかっている。ノアラやウルのところよりイアノンの相手のレベルが高い。

焦茶色のピンと立った耳が特徴的な男子生徒。百八十は超えているであろう高身長に服越しでもわかるほどにはよく鍛えられた身体……恐らくはこの学校の生徒の中でもトップクラスだろう。


……見てわかったが、獣人は身体強化魔法のレベルが軒並み高いな。

身体強化の結果、空中を一時的な足場として空中を駆け回っている。


……成程、獣人の中でも強いヤツは身体強化と併せて体内で風や雷属性魔法を発動しているのか。

自身の体内で魔法を行使して、その力を移動に転用しているわけか。

しかし、かなりの無茶な運用法だ。

一歩間違えれば、体内で魔法が暴発し、身体が内から壊れる。

そのリスクを踏まえた上でここまでのレベルにまで昇華しているとなると、相当な努力があってこそだろう。


イアノンの相手の獣人は雷属性魔法を併用しているな。彼の通った場所には稲妻が残り、その移動の速さを物語る。


だが、一方のイアノンは定位置で仁王立ちしており、あらゆる方向から襲い来る彼の攻撃をいなしている。


見ればわかる。明らかにカウンターするタイミングを待っている。

カウンターが決まればイアノンの勝ち。決まらなければ、獣人の彼の勝ち。

何れにせよ、勝負が決まるのは一瞬だ。


気が付けば、周りの戦闘は終わりを迎えており、残すところイアノンのところのみとなっていた。


「決まる…….」


不意にチェルーティアが呟いた。

そして彼女の言葉に合わせるかのように直後、轟音が訓練場を包み込んだ。

同時に多くの砂塵が巻き起こり、戦っていた二人はそれに呑まれ一時的に見えなくなる。


「どうなったんだ?」


そんな声がそこいら中から聞こえる。

場が騒然とする中、少しずつ土埃は消えて行く。


地に伏せていたのは…………獣人の彼だ。

彼の首にはイアノンの持っていた剣の鋒が向けられていた。


勝負は見事決した。イアノンの勝ちである。


「おぉ!!!」


「スゲェェェ!アイツに勝ったぜ!??」


土埃の代わりに今度は歓声が巻き起こる。かなり集中していたのか、終わってようやく二人は周りからとても注目されていたことに気付いたようだ。

二人は互いを認め合うかのように固い握手を交わした。


ナツト達も拍手をして歓声に混ざる。


「イアノンがあそこまで熱くなるなんて珍しいわね」


「……確かに」


つい言葉遣いを気にするのを忘れ、素で返してしまったが、この歓声の中だ、聞こえやしないだろう。


獣人の戦い方……か。

知れてよかったな。



急に寒くなるのやめてぇ……

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