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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第8章】現代の勇者
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Ss.13-1 古の記憶-聖戦-

「魔法」とは何か?

身近にありすぎて忘れがちだが、それはこの世界の根本的な質問である。

異なる星より喚ぶ勇者の世界には魔法がない事は既に知られていることである。

だが、なぜかこの世界には存在する。


魔法とは、魔素を魔力を介して扱う物。

それも一つの解である。


だが、ここでいう魔法とは理論めいたものではなく、どういった経緯で魔法という人にとって都合の良すぎる力が生まれたのか、という事である。

魔法は魔物も使うので、人間だけが使える力ではないが、明らかに理性を持つ生物が得をするような力である。


その起源は?誰が最初に見つけた?


そのことに迫るヒントが、最近得られた。






ティアメシアとのお話から数日が経ったある日。

聞いていた通り、エルフの歴史について綴った本の内容をデータ化したものが、ラーテル王国へ極秘に送られた。

また、同時にエルフが使っていた言語の翻訳表も添えられており、ナツトはそれをすぐに記憶した。これで、以降エルフにまつわる遺跡に出会った時、すぐに翻訳が可能となった。


さて、極秘に送られたデータだが、全体の内、後ろ三分の二程は真新しい情報は無かった。

いや、こう言う言い方は語弊があるな。

言うなれば、この三分の二に該当する部分は既に知っていたというのが正解だろう。


と言うのも、この部分は魔王に滅ぼされたティアメシアの故郷についての部分である。

つまりは、太古のエルフの文明崩壊後に各地に散ったエルフが再び国を興してからのお話なのだ。

個体差こそあれど、総じてエルフは寿命が果てしなく長い。そのため代替わりのスパンも長い。寿命が長いと言うことは、年若き者が長きを生きる者から直接話を聞く事ができると言うこと。

前置きが長くなったが、要は当時幼かったティアメシアが数世代前の人から話を聞いていたのだ。

本の内容とティアメシアが聞いた内容は表現の仕方、内容の詳細などの差異はあるが、概ね同じであるため、「既に知っていた情報」なのだ。


だが、有益なのは間違いない。


既に知っていた情報と一緒に、エルフの滅びからの再興の様や文化の移り変わり、その時の流行、他国との関わりなども知る事ができるので、歴史を紐解く上でこの上ない参考書となるのは間違いないだろう。


そして、肝心の前の三分の一だが、これがまぁ壮大な話で。

遺跡の壁に書かれた文字から概ねの流れは知っているが、そのより詳しい情報が開示されたわけだ。

言いつけ通りなら、歴史を綴った本を書いたのが代々のエルフの長。

各地の遺跡に文字を書いたのが、エルフ文明崩壊後各地へ散ったエルフ達。

そりゃ、長の方が色々知っている訳だ。


何なら遺跡の話よりこっちの方を先に優先すれば良かったのにと思うほどだったのだが、翻訳作業はコンピューターにさせていたため、分厚く読み取りも面倒な本より、ずっと読み取りやすく文字の量が少なかった遺跡の文字の方が先に翻訳が終わったのだ。

短い方が早く終わる。まぁ、当然の話だ。

そして、その内容を見て本の翻訳が終わるより先に、ティアメシアが早く知らせねば!……となっていたそうだ。


だから、この前会った時点ではティアメシアは本の内容を十分に把握できていなかったのだ。


……と言う感じで、背景事情はそんなところで、その内容を思い出すとしよう……。

一字一句思い出していたらキリがない上、三分の一と言ってもそれなりの長さである。なので今回はさらにその半分程の内容の中で大事そうなところだけ切り出すとしよう。


……さて、出だしはこうだったな……。











未来の王である子孫達よ。

我が名はトシュ・ゼラ・アーティアゴ。

偉大なる我が国、アーティアゴ王国の3代目国王である。

世界中の同胞を纏め上げ、先導して国を興した偉大なる初代アーティアゴ。

国を引継ぎ、既に長き歳を重ねていた初代の世界統一という夢をその類稀な才能で叶えてみせた2代目アーティアゴ。

そして、その最も偉大な国を引継ぎ、更なる発展を目指している3代目の我、トシュ・ゼラ・アーティアゴ。

そして、この偉大な国は永遠に在り続け、世界に安寧をもたらし続けることだろう。


だが、我等エルフが長命とはいえ、過去の偉大な功績というものはやがて薄れるだろう。

だから、我はこうして我等一族の偉大なる功績を後世へ伝えるべく、一冊の書として書き記すことにした。この書は、我を始めとして、代々継承する事で、我等の功績、文化は廃る事なく在り続け、我等の子孫が我らの記録を見てより良い国へ発展させる事ができるだろう。


この書は我等エルフの魔法という神より与えられた奇跡を研鑽し、その成果を集約して作った特殊な物である。

よって、この書は我等一族……つまり正統なる後継者しか触れない神聖なるものである。


よいか、子孫達よ。

知識とは力だ。知識に貪欲であれ。如何なる暴力は知識という崇高な力の前に平伏すものなのだ。

しかし、子孫達よ。

知識を得て、それで満足するな。それをよく知り、完全に己がものとする事で、初めて知識はお前のものとなる。過去に知識だけ得て有頂天になっていた愚かな"ヒト"と言う種族がいた。彼の者達はそれで満足していたから、知識を育み、己が力とした我等に負け、今の地位にいるのだ。


さて、昔話をしようか。

初代……いや我が祖父が如何にして国を纏め上げたのか、その術は遂には語られなかった。

彼の方は厳格なお方であり、孫の我がいつ訊いても「知らなくて良い」と仰っていた。

父にも言わず、数十年前に我等が神、"テルトゥーアス"様の元へ還って行ったのだ。

祖父はそんなお方であった。

だが、父は我が生まれるよりも前のお話を何度も教えてくれた。

この書に記す最初の歴史の一頁は、この父より受け継ぎし話から始めることとしよう。



黒天暦485年。エルフの歴史に大きく影響することとなったこの年。


「ふん、ヒト共め。下等なくせして随分と調子に乗っているようだな」


黄金に装飾された玉座にどっしりと座る。着ている服にも沢山の宝石が付けられており、事あるごとにキラキラと輝く。

眼下には、首を垂れる部下達がいた。


「左様でございます、我らが王よ」


彼等は従順な者達だ。王の決定に異議を唱えず、王の欲するままに命令を全うする。


「奴等は危険だ。放置すればいずれ我等の神がお創りになったこの世界をも脅かしかねん」


「なんと!」


この日の最大の議題は、最近目覚ましく発展している"ヒト"と呼ばれる種族のある国についてだった。世界各地にヒトの存在は確認されているが、どれもまだまだ文明レベルが低く、知的生命体と呼ぶのも烏滸がましい。

だが、この国に住むヒトだけは他のヒトとは一線を画し、高度な文明を築いている。

出来たのは百年ほど前……黒天暦400年ぐらいだが、その当時はまだまだと言ったレベルであった。しかし、二十年前に全てが変わった。


我等が神が彼等の文明を認め、智慧を授けたのだ。

我等が神は自由なお方で、永く智慧を与えるに足る種が現れるのを心待ちにされていた。

五百年前、我が父である初代王がエルフを纏め上げ大国を創り上げられたのは、他でもない神の智慧のお陰であった。


神は我等の文明のレベルに感激し、我々に「魔法」と「権能」いう天上のお力についてその智慧を授けた。

この魔法によって我等エルフの技術は更なる進化を遂げたのだ。

もう一つの権能の方は、選ばれた者のみが有する特殊な力である為、一般に使われることは少なかった。

また、智慧を与えた時、神はこう仰ったと父は言っていたそうだ。


「ワタシはね、嬉しいんだよ。野生の魔物や竜のように本能で魔法を使うのではなく、理性で魔法を使える種が生まれた事が。ワタシの持つこの知識を理解し、発展させることができる種の誕生に祝福を」


我等の「エルフ」という種族の名はこの時神より賜ったと聞いている。

そう、我等は神が待ち望んでいた存在なのだ。


そして、例の国に住むヒトは我等より四百年程後に神から知識を与えるに足る存在だと判断された訳だ。

ヒトは我等より遥かに寿命が短い。既に何代も王が代わり貧弱な事この上ない。

魔法とは経験だ。長く扱い続けるほど研鑽され、素晴らしい使い手となる。

だが、ヒトはその寿命ゆえそれは不可能である。その代わり彼等は後世に記録を残すのだ。記録を残し、次代はそれを基盤として更に積み上げて行く。

初めは感心したものだ。寿命が短いなりに工夫しているのだなと小動物を見るような感覚であった。


だが、二十年前。

あの国の現国王、エレシオン。奴が余計な事をしてくれた。

通称『エレシオンの定義書』。名の通り書物なのかは不明であるが、奴の特殊な能力である『権能:定義』を以てして、「魔法言語」という特殊な文字が定められた。


これにより、魔法陣という未知の魔法が開発された。出来た当初こそは軽視していたが、この二十年でその有用性と危険性が示された。

ある時、空が見たこともない色になり、数ヶ月もの間、凄まじい嵐が世界中を襲った。

我々はその危険性を危惧して、放置はできないと判断した。そして同時に、あることを悟ったのだ。この力は、このまま行けば我等の技術をも上回る悪魔の開発となる事に。


例え神の意思で与えられた知識であっても、何人たりとも「最初に智慧を与えられたエルフの魔法技術」を超えることは許されないのだ。


野放しには出来ない。直ちに排除するべきである。


「そうだ。二番目がこの世で最初に神より智慧を賜った我等を脅かすなどあってはならないのだ!」


「その通りで御座います。しかもその智慧を以て世界の平穏を脅かすなど言語道断。不遜極まりない!我等が管理すべきでしょう!」


「それに奴等の国は主大陸を制覇する上でも肝心な地になりましょう。先代王の宿願である世界統一も視野に入ってくることでしょう!」


流石は従順なる部下達だ。よくわかっているではないか。


「如何にも。我等エルフの夢を叶える為にも奴等は即刻排除するべきである!皆の者!戦の準備を始めろ!開戦は二週間後とする!忌々しいヒトを潰すぞォ!」


拳を強く握り、決意を露わにする。


『おおぉっっっ!!』


やる気は十分。実に良いことである。


「ふっ良い返事である。お前等の働きに期待する」


やる事が決まれば、話は早い。

総力を持って叩き潰すのみ。


奴等がいるのは、我等の国からざっくりと見て西の方である。


地続きなので、進軍には大した影響はないだろう。だが、気候や環境の違いには十分に注意が必要だろう。

だが、それまでだ。あの国は軍事力で見れば遥かに劣っている。魔法があるとはいえ、白兵戦主体のヒトでは、我等の兵器には及ぶまい。


そして、結果は想像通りであった。

奴等は我等の技術の前になす術もなく、逃げることもできずに敗北したのだ。

我等の強みは兵器だけではない。

全エルフを仕切っているのだから、その兵力も凄まじいのだ。

国一つに対して何方向からも攻め込む。逃げ道を塞ぎつつ、多方から仕掛ける事により敵を排除する。

戦い以前のお話だ。同じヒト相手ならいざ知らず。まだ魔法の技術がずっと上で、兵器的な技術も進んでいた我等エルフにはどんな幸運があろうとも戦況は変わらない。

警戒していた魔法陣も、一部の者しか扱えない上にまだまだ発展途上らしく、こちらに大した被害はなかった。


こうして、ヒトの築いた国は二つの夜も数えぬ間に滅び、その技術、土地そして人材はアーティアゴ王国のものとなった。


明けましておめでとう御座います。


今年初は番外編でお届けしました。

本編扱いでも良かったのですが、本編の内容とはまだ関わり合いがない話なので、一旦他所にしときました。


この話の続きはまた少し後でポンっと投稿すると思います。


さて、番外編のことはさておき。

今年は余程のことがない限り、予定通り勇者様達の戦闘に入れる事でしょう。主人公も卒業してるはず……。


さぁて、昨年と変わらず、ちまちま進めていくとしましょう!

今年も宜しくお願いします!

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