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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第8章】現代の勇者
159/214

Ep.127 本性

「キョウです!」


「…カンナ」


「サルビアですっ!」


「……では、自己紹介も済んだ事ですので、本題に移りたいと思います。皆様お察しの通り、本日から聖女様達を交えて実践訓練となります」


今日も今日とて、勇者の彼等は魔王討伐に向けての基礎訓練に励んでいた。

順調に強くなっていることから、予定より少し早いが聖女も交えたパーティとしての訓練を行う事になったのだ。

ここまでの訓練は割と一人で戦う場合を想定していることが多めであったが、彼等は集団で戦う事を前提に召喚されている。


ここからの訓練こそが本当の意味で大事だと言っても過言ではないだろう。


「先にお話ししておきましょう。魔王討伐には皆様に加え、聖女を二人パーティにつける予定です。本来ならば三人……と行きたいところですが、聖女はこの国でも必須の存在……。一人は残して、人々の治療や国家防衛の要にする決まりがあるのです」


聖女は聖国の象徴である。勇者よりも人々にとって身近な存在であり、日々の活動で人々を癒し助け、教会への支持を人々から集めるという重要な任がある。

言わば、国の顔でありイメージに直結するのだ。

勇者達のバックアップも勿論大事だが、国民を疎かにしていては反感の芽を生むきっかけにもなりかねない。

そこで、これまでは代々一人を育てていたところを変更し、同時期に聖女を何名か育て上げ、一人は国に常駐できるようなシステムに変更したのだった。


「これからの訓練は皆様と相性の良い聖女を見極めるためという目的があります。そのため、皆様には色々なパターンの戦術を行って頂く予定です。よろしいですか?」


全員がこくりと頷く。


「怪我などは心配されなくて大丈夫です。なんたって聖女が三人もいるのですから。安心して訓練に励んで下さい」


かくして勇者と聖女の合同訓練が開始されたのだった。






「綺麗な髪ー!」


「えへへ、ありがとごさいます」


最初の休憩に入る頃には勇者の女子組と聖女達は既に打ち解けていた。

美春がサルビアの綺麗でサラサラの銀髪を褒め、サルビアは照れ臭そうにしながらも、嬉しそうにしていた。


「チッ、女子ってのはすぐ仲良くなりやがる」


「ん?羨ましいん?」


「ウルセェぞ、メガネ!」


「コラ!君達、いちいち喧嘩するんじゃない!」


そして、その様子を少し遠くから眺める男子組。

皇次郎はその様子を好ましく思っていないのか舌打ちするが、割って入るような度胸は無かった。秋楽は適当な段差に腰掛けながら別にどうでもいいとばかりに皇次郎をおちょくるが、言い合いになりそうになった二人を流星が仲裁する。


「ま、召喚前にナンパしようとしていた何処かの誰かさんはあの中に入りたくなるんだろうな」


「……チッ!」


「お前のために言っとくけどな、変に夢見て吊り橋効果的なの狙うのはやめといたほうがいい。美春は彼氏がいるし、そういうノリが一番嫌いだからな。彼女達にそういう目的で突っかかったら、多分吹き飛ばされるぞ?」


「は?ここは地球じゃないんだぞ?彼氏とか関係ないだろ。それに一人である必要もないんだからな」


悪い笑みを浮かべる皇次郎に対し、その意図を察した秋楽は軽蔑の視線を向けた。


「……うわ、そういう考え方するんだ。脳筋なんかなって思ってたけど、もっと酷いかったか」


「……お前こそ、地球の考え方をここで出してくるなよ!臨機応変に対応できない奴がいちいち口出ししてくんな!」


「……碌なことにならんよ?」


「はっ何を根拠に……」


「今、彼女達のところに行けてない時点で無理だろ」


「……ッ…!…」


図星だったのか、皇次郎は何も言い返すことができないようだった。


「ホラね。はー、碌な奴がいやしない」


そんな皇次郎の様子を見て、秋楽は呆れ果てる。


女子達の楽しそうな雰囲気とは裏腹に男子達の雰囲気は最悪であった。

こっちとあっちでは、その雰囲気は雲泥の差である。


自分自身が始めた話題ではあるが、なんて品のない会話なのだろうか。

善意で忠告なんてするべきではないのかもしれない。

秋楽はそう思いかけていた。


「君達いい加減に……」


「委員長もだよ。鼻の下伸ばして、カッコいい動きをこれ見よがしにやろうとせずに、真面目に訓練しろ?世界を救う勇者サマなんだろ?」


「なっ!?そっ、そんなこと……」


それでも、秋楽は早めに釘を刺しておくことは大事だと考えた。

最初こそ余裕がなかった彼等だが、召喚されてから時間もそれなりに経過したことで、余裕ができてきた。

自分自身のことだけで切羽詰まっていた状況から、周囲に気を配ることができるようになったのだ。

そのため、余計な雑念も生まれてくるというもの。


向こうで楽しそうに話す女子達は正直言ってとても可愛い。

美春や桜は勿論のこと、聖女達も日本人とはまた異なる可愛さがある。


彼女達を守るためとまでは言わないが、余計な事をしないようには根回しをしておこう。

知り合い…というか、パーティ内で面倒が起きたら、それはもう色々と最悪である。


ここいらで一度、面と向かって言っておくことに大きな意味がある。


防ぐことが出来るのなら……出来ることがあるのなら、出来るうちにやっておく。


事が起きてからでは意味がない。

やらずに後悔より、やって後悔。


当たり前のことだが、これが大事なのだ。








「おっとっと……」


休憩も終わり、立ちあがろうとした聖女の一人サルビアは立ちくらみがしたのか、少しよろめいた。


「大丈夫ですか!?」


それを一番近くにいた桜が気にかけ、そばに駆け寄る。


「大丈夫よサクラ」


それに気付いたキョウも駆け寄って来て心配する桜を安心させる。

キョウは、サルビアの様子を見て何かに気付いていた。


「……はぁ…サルビア、貴方また隠れて訓練してたでしょ!」


「あう、ごめんなさい」


サルビアは、少し頑張りすぎるところがあるのだ。獣人ということもあって、体力や運動神経は聖女の中では随一である。

そのサルビアは周りに置いていかれないように、訓練時間外で過剰に自主訓練を行うことがあるのだ。


そして、そんなサルビアが目に見えて疲労するほど根を詰めている。

なりふり構わずやり続けられるのは彼女の長所であるが、短所でもあるのだ。


「もう、肝心な時に動けないとダメだって前に言われたでしょ?…でも、努力は大事よ、頑張ったね」


この事は前にもあったので、サルビアは怒られたことがある。

でも、これは彼女の頑張りであるので、その全てを否定するのは間違いだとキョウは考え、努力を褒めることにした。

キョウは労いの意も込めてサルビアの頭を撫でる。


「えへへ」


どうやらそれは正解だったらしく、サルビアは嬉しそうにし、キョウをギュッと抱きしめた。


「あら〜」


そして、その様子を見て満足している人物が一人いた。








「……どうしたの、秋楽。人のことジロジロ見て」


「ん?健在だったなって」


言いたい事を言い終えて暇になったため、遠目で女子達のやりとりを見ていた秋楽がその人物に向かって言った。


「当たり前でしょ?」


話しかけられた人物は、さも当然だと言わんばかりに返答した。


「……最近は真面目振りすぎてずっとそのノリで行くんかなって思ってたわ」


「あまり気にしない秋楽とは違って、私は世間体、大事だもん」


最近は、本当に秋楽の知っている人物像からかけ離れていたので、変わったのかと思っていたが、勘違いだったらしい。

でも、普通に考えたら素の部分を人に見せている人間の方が少ないよなと考える。


秋楽は、元々真面目君オーラを醸し出していたので、高校以降も中学のキャラやノリを特に変えずに通っていたので、色々と忘れていた。


小学校から持ち上がりだった中学の友達は割と気心知れているから、いつの間にか素で接していたが、高校に上がるとそういうわけにもいかなくなる。

秋楽は該当しないが、普通は外聞重視の印象の良い仮初の顔を作るのは当たり前と言えば当たり前な話である。


「……にしても、相変わらずの百合好きだな、美春」


「いや、ね、最高。あれからしか得られない成分がある。まさか、現実で拝めるなんて……」


美春は大層御満悦と言った様子だ。

ここ最近の様子から察するに、高校でも普段から、男子にも物怖じしないクール系の頼れる美人なのに、こう言うところが彼女の残念ポイントなのである。

百合の話になれば途端に駄目人間になる……そんな奴である。


普段の雰囲気との落差が凄いなと改めて感じる。

でも、これが中学時代ずっと見て来た彼女の平常運転なので逆に安心する。


「クール系は何処に行った?」


「いいじゃん、素でいられる場所なんて少ないんだからー」


「それもそうだな」


素でいられると言う事は、彼女も緊張が解れつつあり、余裕が生まれているという事。

良いことではある。


「で、そっちは随分いやーなお話をしていたね」


「聞いてたん?」


秋楽は少し驚いた。

それなりに距離があったので、まさか聞いているとは思わなかったからだ。


「ふふん、魔法は色々試しているからね〜」


美春は自信満々にそう言った。

そう言えば前に、魔法で何が出来るのか色々試しているとか言っていたことを秋楽は思い出す。


「成程。君の事だし、それもそうか。ま、そういう訳だから、アイツらは警戒しておけな」


「りょ。……それより、秋楽は彼女作らないのー?応援するよ?」


悪戯をするときのような、ニヤリとした笑みを浮かべながら美春は言う。

あぁ、美春らしくなってきたなと、秋楽は思いながらこう返した。


「まだ誰を信用していいかわからないこの世界だと作らんよ」


「じゃあ信頼できる人ができたら作るんだ」


「どうかな?」


「それ、言うと思った」


「美春は作らないのか?」


「え、何言ってんの?作らない」


途端に美春の表情が曇る。


「……ま、そうだよね」


これ以上踏み込むのは良くないと直感し、秋楽は話を切り上げ話題を変えようとする。


「後にも先にも私が好きになるのはナツ君以外ないから」


確たる意思を持って美春は言う。

それを聞いた秋楽は、本当に変わってないなと感じていた。

時間が少し経ち、あの時ほどではないが……。


やはりまだ、引き摺っているんだな……と。



取り繕った顔はいつかは剥がれる。





なんちゃって。


聖女関連のまとめは「まとめ⑦」に置いてます。


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