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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第8章】現代の勇者
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Ep.126 認識の差

「いけッ!火炎爆弾(フレイムボム)!」


少年の明るい声と共に、一体の粘性魔物(スライム)が跡形も無く弾け飛ぶ。

後には、焦げた跡が地面に残るのみだ。


「うん、だいぶ使いこなせるようになってきた」


流星は、魔法の出来に喜ぶ。

ここ数日の訓練のおかげで、かなり魔法の練度が上がった。

弱い魔物であるスライム程度ならば、簡単に倒せるようになった。

他のみんなもそれなりに使えるようになっているみたいだが、やはり自分が一番威力が高そうだ。

このまま行けば、もっと高威力、広範囲の魔法を使うことだって出来るだろう。

そんな未来の自分の姿を思い浮かべるだけで、ワクワクが止まらない。


この世界の魔法は、想像していた魔法よりもずっと自由だ。

ある魔法を使うために、特定の詠唱があるのではなく、その魔法をイメージ出来るならば詠唱はわりかし何でもいいのだ。

それに、教科書に載っているような「世界共通の魔法」と言うものは、便利だからとか教え易いとか言う理由で設けられているだけで、そこから人それぞれが自身がより使い易いように改良していくのだ。つまり、さっき使った「火炎弾」も人の数だけのアレンジがあるそうだ。


また、中級者テクニックとして「無詠唱魔法」があるらしい。

こういう世界の小説で、転生者や転移者特権とも言える無詠唱が既にあって、それも中級者レベルなのはいい気はしない。

こういうのは、主人公(ボク)が最初にやって開拓者としてチヤホヤされるべきなのに。





「低級スライムばかりでは単調な作業でしょう。今日は、別の魔物を用意致しましたので、そちらを倒してみましょう」


教育係の男が、スライムで魔法の練習をしている勇者達にそう言った。


「いいですね、是非やりましょう」


一刻も早く強くなりたい流星は、それに強く賛同する。


「良い心意気です。本日はですね、こちらホーンラビットです。魔物化したウサギですね。こちらはスライムに並んで初心者冒険者達の良き相手になります」


檻に入れられた立派な一本角が生えたそのウサギは、その中から流星達を睨む。見てわかる通り警戒心マックスだ。それを見て、流星は思う。


ホーンラビット……。定番だ。

まさに最序盤で戦って、主人公の経験値となるような雑魚敵だ。


数多の異世界モノを見てきたが、ゴブリン等に並んでウサギは本当に定番中の定番だ。

スライムと来て、ウサギが続く。

これ以上に御誂え向きな組み合わせがあるだろうか。


「しかし、皆様が先程まで相手していたスライムと比べると危険度は高いです。交戦的で毎年人々への被害もかなりの数です。いきなり複数対相手するのは危険ですので、先ずは皆様全員とホーンラビット一体でやってみましょう」


若干一名勇者じゃないのがいるが、五対一。

ウサギ一羽に対しては些か過剰戦力である。


流星もそれを理解し、楽勝だな、と笑う。


「では、行きますぞ」


合図と共に檻が開かれる。

それとほぼ同時に、捕えられたことで怒り狂っていたホーンラビットは、偶々視界に映っていた流星に向けて、その鋭利な角を向けて突撃する。

その速度、実に時速百キロメートルを超える。

魔物となったことで、より発達したその脚力を以て、敵を排除するべく一直線に。


当たればタダでは済まない。即死もありうる恐ろしい一撃である。


余裕をかましていた流星は、その予想外の速さに対応できていなかった。

動物園などと言った、自然から隔離された世界で育ったウサギしか見てこなかった癖に、油断しかしていなかった流星はまともに魔法の準備もしていなかった。

とは言え、今から準備などというのは、今の彼の技量では到底無理な話であった。


防壁(シールド)!」


だが、結果として彼は無事で済んだ。

油断せず、ウサギの動きを予想してちゃんと防御の魔法を準備していた者がいた。

美春である。


とは言え、美春も技術不足でウサギの動きを追えているわけではない。

ただ、ウサギの挙動に注視して、動いたと思った瞬間に準備していた防御魔法を全員とウサギの間に展開しただけである。

だが、その判断は正解であり、ウサギは防壁に阻まれ流星を貫くことは叶わなかった、


防壁と激突した反動で、ウサギは派手に吹き飛び、地面でひっくり返っている。隙ができた。


火炎(フレイム)……」


何が起きたか理解出来ていない流星だが、明らかなチャンスだと判断して、魔法を唱えようとする。


しかしその瞬間に、これを放てばこの生物を殺めることに気が付く。

躊躇う。

ツノこそ生えているが、見た目は完全にウサギである。

このまま魔法を当てると、血が飛び出るだろう。

生物をこの手で仕留めるのか?他でもない自分自身が……?

わかっていた筈だ。わかっていた筈なのに、身体が動かなくなる。

ただ放つだけでいいのに、それが躊躇われる。

何で。スライムのときはこんな感情にはならなかったのに。


そんな思考をしてしまったため、魔法を放とうとするポーズのまま硬直する流星。


「……どいて」


それを見かねたのか、美春が流星を退けて前に出る。

差し出した右手に魔力が集中し、光を帯び出す。


風断(スラッシュ)


美春が魔法を放とうとしたその瞬間、横から風属性魔法による斬撃が飛んで来て、ホーンラビットを両断した。


「……アキ君……」


美春は、その魔法を放った人物を見る。


「こういうのをやんのは、俺等の方がいいだろ?委員長(コイツ)の尻拭いも兼ねてな」


「この後、複数相手することになるのに?」


「それでも、だよ」


「ふーん。まぁ、いいよ。ありがと」


流星は、呆気に取られながらも二人のやり取りを見ていた。

動けなかった自分とは異なり、この二人は難なく動けた。

二人にはあって、自分にはないものがあった。

それは……。


「委員長。期待に胸、膨らますんのはいいけどさ、最低限覚悟は持っとけ?ここは日本じゃないし、ゲームの世界でもないんだぞ?」


流星の肩にポンと手を置いて、そう言い残す秋楽。


「う、うるさい!わかってるって!」


自身が内心思っていたことを的確に突かれた流星は、ついカッとなって怒鳴り返した。

そのせいで、秋楽が続けて言っていた「そういうところだぞ」という台詞は聞き漏らした。




「春ちゃん、どうしよう……私生き物を……」


後ろで、立ちすくんでいた桜は、戻ってきた美春に対して不安を打ち明ける。

内向的な性格である桜は、先程秋楽が放っていた相手を殺めてしまうような魔法に対して抵抗を示していた。

流星と同じく、こと動物に対してはその抵抗は強いことが今この瞬間、強く実感した。


「大丈夫。桜ちゃんはトドメを刺す必要はないよ。桜ちゃんはアシストが上手だからそっちを伸ばすといいよ!みんながみんな、攻撃だけできるじゃ、意味ないからね」


「そっか、そうだよね。ありがとう」


そう言って、そんな彼女を美春は安心させる。


ここ数日でこの世界に慣れてきた美春は、魔王と戦いたくはないと思いつつも、ある程度の覚悟は決めていた。

そして、魔王と戦うことになった際、ここにいる人達と嫌でも協力して戦うことになる。

そのために、最低限の戦う覚悟と役割分担が必須である。

美春の言った通り、桜は補助魔法に適性があるようで、直接戦うのが苦手ならば長所を伸ばすべきだと美春は考えたのだ。

そして、桜を自分自身が徹底して守ることで桜の戦闘面をカバーしようと想定している。


だが、それは前衛があってこそ。

咄嗟の時、動けないと後衛が潰されて詰む可能性がある。前衛にはちゃんとしてもらわないと困ることになるのだ。

現状は、全く頼れない。まだ初めてのまともな実戦だし今回は目を瞑るが、今後も覚悟が決まらないようなら、魔王討伐は夢のまた夢だろうなーと美春は考えていた。




「最近大人しいけど、そのままだとダサいぞ。金髪君?」


美春と桜が話している間、秋楽はもう一人の立ちすくんでいた人物である皇次郎に話しかけていた。面倒なことこの上ないが、秋楽はこのままでは何もかもがうまくいかないと察していたのだ。


「あぁ?んだと、メガネ!」


「事実だろ?ま、今みたいに女子に守られたり、勇者でもない人間に助けられたりしてたら、ダサいどころじゃないけどな」


敢えて煽る。皇次郎の性質を普段の学校生活で何となく把握していた秋楽は、どうすれば皇次郎がやる気を出せるのかわかっていた。


「黙れ!次からやるわ!」


「はいはい」


結果は良好そうだ。沸点が低いから実に扱い易い。


「……なんだけど、何で俺が盛り上げる役になってんだよ……だる」


こういう役回りは、リーダーとかがするものだ。秋楽は、勇者でもない自分がやるのは心底面倒だと、心の底から感じる次第であった。













勇者達の動向をどこからか観察していた一人の人物がいた。


「ふむふむ、順応性が高そうなのは二名。他はまだ覚悟が決まっていないと言った具合……と。しかし、覚悟さえ決まれば、ここ数日の成長の幅からも能力次第で化ける可能性アリ……と。聖女の訓練合流もあるし、バランス力で言えば初代にも匹敵する可能性もあるか…。()()さんにお話しすることがどんどん増えていくなァ」


元々課されていた任務もあるというのに、勇者召喚のせいで忙しさは以前の比にならないぐらいまで膨れ上がった。

迷惑なこと極まりない話だが、今後の世界の為にも必須の情報ばかりなので、勇者達の力を見極めることは非常に重要なことなのだ。


「バレたら、拷問確定コース……相変わらずドキドキハラハラものだァ」


その人物は、任務を全力で遂行するが、同時に今の状況をひたすらに楽しむ。緊張感を持つことは大事だが、そのせいでミスってしまうと意味がない。何事も程よく楽しまないと損だと考えるのだ。


ラーテル王国国王直属特殊部隊『十色』の一員として、彼は今日も任務を続行する。


ふぅ、今週のノルマクリアっと。


さて、もし未来の私がやる気を出していたら、もう一話更新されているかも?ちなみに番外編の予定です。


個人的な話、番外編で一週間取るのはあんまりやりたくはないんですよね。ホラ、物語の展開スローペースじゃないですか。となると、当たり前ですが進むのが一週遅れる訳で。それはあんまり好ましくはないんですよね、個人的に。

……まぁ、と言っても普通に番外編で一週間取っているのですが。


そんなわけで、頑張れ未来の自分。お前ならできる!


……え?無かったら?

その時は申し訳ないですが、いつも通りの一話更新ということで。


果たして、当日「次へ」のトコが押せるのか!?

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