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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第7章】歴史動かす最後の歯車
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Ss.11 不思議な繋がり

騎士団のとある訓練場。

貸切にされたその場所で、ウルヴァロとノアラナチアはある二人の人物に訓練されてもらっていた。


その相手は、この国で三勇と呼ばれるうちの二人、オルウェルとマーヤであった。

彼らはまさに雲の上の存在そのものであった。


……はずだったのだが。

何故か、二人はよくわからぬままこの二人の訓練を受ける事になっていた。


「どうした、終わりか?」


場に響き渡るオルウェルの声。今はウルとノアラは共闘して、オルウェルと戦っていた。マーヤは観戦である。


「まだ行けます!」


「私もっ!」


心臓がバクバク言って、汗だくになりつつも、模擬刀を握りしめてオルウェルに仕掛ける。

疲れている筈なのに、二人の技のキレは少しずつ上がっていく。


「いいぞ、そのままだ」


オルウェルはニヤリと笑い、二人の猛攻を完璧に捌く。


「……………よし、一度休憩だ」


満足そうな表情を浮かべ、オルウェルは終了を宣言する。

終わった瞬間、疲れがどっと押し寄せたのかウルとノアラは、地面に倒れ込んだ。


無理もない。

朝一から基礎的な訓練を行なった後に、マーヤとオルウェルとの順番での全力戦闘訓練を二サイクル行っている。


全力戦闘は、一秒でも気を抜けないマジの真剣勝負である。

日によって一対一か二対一か変わるが、いずれにせよ体力の消耗が凄まじい。

最近では、マーヤとオルウェル共に能力も交えた戦闘を解禁しており、死ぬんじゃないかと何度思っただろうか。


「お疲れさま〜、ドリンク飲む?」


「の、飲みたいです」


「欲しいです!」


マーヤから渡されたスポーツドリンクを飲む二人。よく冷えたそれを飲めば飲む程渇いた喉を潤す。


生き返るような感覚に浸る。


疲れで少しぼーっとしていたウルは、ふと、過去のことを思い出していた。








「なんで、三勇のお二人が何でもない私達を鍛えてくれるのですか?」


それは、この不思議な訓練が始まった頃の事。休憩中、ノアラが意を決して二人に尋ねた場面であった。


当時意味もわからず、唐突に始まったこの訓練にウルとノアラは困惑していた。

確かに自分達は騎士団志望ではあるが、騎士団でもない単なる学生である自分達がなぜこの二人から色々と教わっているのか。


嫌なんてことはない。寧ろ有り難さしかない。実は最近、能力の訓練が行き詰まっていた二人にとって、この誘いは願ってもないものであった。

断る理由が見つからなかった。

この国、いやこの世界でも知らない者はいないであろう伝説の存在である二人から戦闘のノウハウを教えてもらえる。しかも、自分達だけ。

全身が震えたのを覚えている。

それに、そんな損得勘定を抜きにしてもこんな光栄な事は将来一度でもあるだろうか。

そんなことを考えていた。


だが、同時に謎であった。自分達が二人と会ったのは、過去の騎士団体験学習みたいな学園の授業の一環のただそのときだけ。

他にも優秀な人間がいた筈なのに何故自分達なのかということ。

能力訓練組のいつものメンバーに内緒で打ち明けたときも、みんなその理由はわからないと言っていた。

誰よりもこの二人を知るチェルーティアでさえ、「あのお二人は、意外と気紛れな方々だから」というぐらいには二人の行動の意図というものは不明であった。

ずっと疑問であったが、聞こうにも聞けなかった事。


そんな質問をノアラは遂に投げかけたのがその日であった。


そして、その答えは二人がまったく想像しなかったものであった。


「それは、お」


「恩返しだね」


「おい、俺のセリフ……」


「……恩返し…ですか?」


聞いたノアラが誰よりも困惑していた。てっきり、自分達を鍛えたかった的な方面の答えが返ってくると思っていたからだ。

だが、実際は恩返し。……だれに?


「まー、お前らはまだわからんだろうな。騎士団をやってる俺達からしたら、お前達を強くすることはきっとアイツの為になる。そんな気がしたからだ」


オルウェルのいうアイツとは当然ナツトのことである。

世界を救ってもらったのは当然だが、それ以外の事でも恩義を感じていた二人は、何かナツトのために出来ることは無いかなと考えていた。

そんなとき、学園に通うナツトの友にこの二人がいることを学園の行事のときに知った。


ナツトは強い。

それは間違いないことである。そして、突出して強い存在はどこかで浮いてしまう。そんな彼を孤立させないため、彼と対等にいられる存在は必要である。勿論、自分達三勇は今度こそ彼と共にいるつもりである。

だが、それはあくまでナツトとして関わるのであって、シャックとして関わるわけではない。

ならば、彼がシャックとしても生きる上で一人でも多く彼と対等に関わることができる人を育てよう。

それが、オルウェルとマーヤがこの二人を育てようと決めた本質的な理由である。


初めて会った以前から、訓練のことは考えていたが、あの時はまだ身体が成長しきっていなかった。そこで、ある程度成長するまで待って、満を辞して声を掛けたという訳である。




だが、そんなことは知らない二人は困惑していた。

自分達が強くなることで、誰かが得をする?


理解不能だった。この二人が恩義を感じるような相手に対して自分達を育てることがそのお返しということである。

見当がつかなかった。自分達二人に関係する人間とこの二人がどうしても繋がらなかった。


黙って聞いていたウルも終始頭の上に疑問符を浮かべていち。


「あいつとは……?」


どのみち、ここまで来たら聞くしかない。

そう思い、ノアラは聞いた。


「それは、スマンが言えない。けど気にするな、いずれ知ることになる」


そう、いずれは知ることになる。

そのときは必ず来るはずだ。


「……わかり、ました」


スッキリしないが、これ以上聞いても何もわからないと察したノアラはそれだけ言って引き下がった。









訓練が始まって一年以上になる。

色々二人で考えたが、千年も生きている二人がいつどこで恩を感じたかなんて調べるのは不可能であった。


だが、オルウェルは確かに「いずれわかる」と言った。

それならば、その時まで待とう。

二人はそう決めた。


自分達が強くなればなる程その恩返しは、その謎の相手にとってより大きなものとなるのだろう。


なら、強くなろう。

訓練に必死に取り組んで三勇のノウハウを学び、昇華し、己が力へ還元しよう。


それこそ、実力で遥かに勝る他のみんなが吃驚するぐらいに。









ふと、空気がいや大気がぞわりとした気がした。


考え事をしていたウルはその不思議な感じを感じ取り、空を見上げた。


が、特に変化はなかった。

気のせいかな、と思いノアラを見ると、彼女もまた空を見上げていた。


「……これは、マーヤ」


「うん……二人とも、早いけど今日はここまでだね。ごめんね」


オルウェルとマーヤはどうやら心当たりがあるようだ。

一分後、一人の騎士が転移してきた。


「オルウェル様、マーヤ様。王よりお話があると連絡が」


「わかった、すぐに向かおう」


「はっ」


「スマンな二人とも。雑な終わり方だが、気を付けて帰ってくれ。ああ、次の訓練はいつも通りの日だ」


オルウェルはそれだけ言い残し、マーヤを連れて足早にその場を去って行った。


「……帰ろっか」


「そうだね」


ちょっと状況についていけてなかった二人は、しばらくその場に棒立ちになっていたが、このままここにいても仕方がないので、言われた通り帰ることにした。


もうすぐお昼というのに、訓練場に流れている風が、いつもより冷たく乾いているような気がした。






ささっと書いたので、変なとこあるかも!

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