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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第7章】歴史動かす最後の歯車
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Ep.117 遺跡へ

あの返事は、僕的には遊びのつもりだったけど、彼女には随分と引っかかったらしい。


ナツトは歩きながらそう思っていた。


「君と同じ理由で下手に誰かと付き合えない」


こう答えたら、どんなふうに捉えるかな…と割とその場で考えた事を言ったのだが、チェルーティアにとっては気になって夜も眠れなくなる案件だったようだ。


思ったより真剣に考えてくれている事は何と言うか予想外だったけど、これをきっかけに彼女が僕の正体に気付く事になるかもしれない。


でもまぁ、正直な話。転生して数年が経ち、この身体もだいぶ慣れて来た。

なので、もう王族であるチェルーティアに自身の正体がバレても別に構わないと考えている。

彼女の立場からして、どうせいずれは知る事になるだろうし、それがいつになるかは彼女の情報収集能力次第…と言った具合だろう。


聞いた話では、彼女の側にいるメイドが探りを入れて来ているそうだ。彼女は情報収集の達人とのことなので、「今回は」どこまで探れるかだな。

記憶では、僕が学園に入学する年にも僕に対して探りを入れていたはずだ。その時は「この国の頭」によってごく普通の人間だと仕組まれた「シャック・クルシャウト」という人物の表面を探り、知った。

今回彼女はその仕組まれた情報の違和感に気付いて真実を掴めるか、また仮に掴んだとしたら、それが国によって隠されている事実を知る事になる。その時、彼女は王女に何と言うだろうか。


いずれにせよ、王族の側に居続ける存在の腕の程が見られそうだ。


……あ、因みにこの情報は僕の家にいる自称出来るメイドこと、シュリアからのものだ。

というか、僕が帰る前までは王城に居たというのに、よくも身バレしないものだ。

そこは普通に不思議だが、バレていないので上手くやっているのだろう。担当場所が違っていたのかな?

まぁ、どうでもいいか。


「だあああ〜、あっぢいぃ〜〜初の海外があっぢぃぃ」


おっと、そろそろ現実に思考を戻さねば。

今は、ガルノラルクとそのギルド仲間のリアムとゼクタの計四人でギルドからの依頼を受けている。


場所は、ラーテル王国……ではなく、海を挟んだ隣国ワカヌーア王国である。


何でもここ、ワカヌーアはリアムの出身で、最近気になる事があったので、ワカヌーア出身でそれなりに有名なリアムへそれに関する調査という体で依頼が来たわけだ。

……で、そうなれば同じくメンバーであるゼクタの参加も決まり、丁度予定があったナツトとガルノの二名も一緒に行く事になった。


ラーテルからワカヌーアまでの移動は国際間転移魔法を使い、実質移動時間ゼロで現地へ来た。入国審査とかそう言った手続きや待ち時間の方が時間がかかってしまうが、そこは仕方のないことだろう。

しかし、このフットワークの軽さは、流石魔法のある世界と言ったところだ。


そう言うわけで、ワカヌーアへ赴いた一行は依頼をこなすため、青々とした草木が鬱蒼と繁茂する熱帯林へ来ていた。


「なぁ、なんでこんなに蒸し暑いんだ?」


「そりゃ、赤道直下だからさ」


ガルノの呻くような問いにゼクタの明るい返事が返ってくる。そんな彼をガルノは何でそんなに元気なんだよ的な目線を送りながら、怠そうに続けた。


「それはそうなんだけど……ラーテルのブエムンドラとかキュリオウラとか、同じぐらいの緯度だろ?あそこはこんな暑くないぞ?」


確かにその通りだ。ラーテルでも指折りの大都市である、それら二つの都市は位置的にも大体赤道付近である。しかし、それらは全然蒸し暑くなく、一年を通して快適な温度である。

その理由は僕が答えるとしよう。


「ラーテルは巨大な魔法装置があるからだね」


「魔法装置……?」


わかりやすいぐらい頭に疑問符が浮かんでいるな。


「黒いヤツだ」


リアムのフォローが入る。

それを聞いてか、ガルノはピンと来たようだ。


「あぁ!街を囲ってるアレ!?」


彼の言う黒いヤツとは、主に大都市に設置されている壁であり、都市をぐるっと一周囲い込む真っ黒な巨大装置のことである。見た目が物騒な兵器にも見えそうなそれに与えられた効果というものは見た目を裏切らず凄まじいものだ。


「そうそう。多分だけど、あれは街を魔物や兵器から街を守る結界としての役割や天候・温度・湿度調整とかの役割も担ってる」


「へえ〜そうだったのか……」


「今言ったのが常時発動しているような効果の一例だけど、他にもあるだろうね」


「……なんて言うか、やり過ぎじゃね?逆に怖いわ」


「それは、そう」


その点に関しては同意である。流石は技術力世界一。やる事が飛び抜けている。

まぁ、城を浮かせようとか考える王のいる国だ。絶対に何かヤバい仕掛けでも施してそうだ。


そして、そんな無茶苦茶な装置がないこの国は当然あるべき気候通りの暑さをしている訳である。


「ていうか、みんなは暑くないのか?」


「俺は慣れてる」


リアムはここ出身とだけあって、流石である。


「慣れた」


そして、リアムによく付き合うゼクタも同様のようだ。


そして、僕はと言うと……。


「結界魔法とか応用して快適空間を作ってる」


結界を作って、紫外線や熱を極力遮断し、内部で涼しい空気を循環させる。こんな暴力的な猛暑の中でも汗一つかかない素晴らしい魔法である。


「……おい、シャック。ズルくないか?」


失敬な。使えるものは使うに決まっているでしょう。


「真似する?教えるよ」


だが、自分一人だけと言うのはよくないかもな。

特に不都合はないので、教える事にする。


「無茶言うな。お前の技術を今すぐ真似できねーよ。それにお前みたいにアホみたいな魔力もないし、回復効率も高くないんだよ」


「じゃあ、これ貸してあげる」


そう言うと思っていたので、予め用意していたものを差し出す。


「魔石をはめたネックレスか……おぉ!スゲェ!涼しい!」


「僕のヤツを簡素化した魔法陣を組み込んでおいた。ついでに虫除けとかも込み。魔石はストックもあるし、これならいけるでしょ。あ、皆さんの分もありますよ」


「……慣れたんじゃないのか?」


気が付くとナツトからネックレスを受け取っているリアムとゼクタ。

それを見たガルノが呆れた様子で言った。


「何を言っているんだ、ガルノ。ある物は有り難く使うに決まっているじゃあないか!」


「付けるのは、あたりめぇだろ!」


リアムはゼクタの意見に全面から賛同した。


「……このっ、都合の良い奴等め!」










「さて、ここらが目撃情報があった場所だ」


時は進み、一行は目的地周辺へと辿り着いた。道中を飛ばして瞬間転移で来ることも案にあったが、道中に痕跡がある可能性も否定できないので、地道に歩いてきたのだ。

まぁ、何もなかったが。


「というか、どんなヤツなんだ?その目撃情報って」


「あれ?ガルノお前、知らない?道中言った気がするんだが…まあいいか、もう一回言っておくぞ!依頼によると、とある考古学者が遺跡を調査中、人型の機械物らしきものがいたそうだ。今回はそれに関して調査し、もし脅威となるならばその排除を任されている」


「それって実は遺跡の守護者でしたってオチは?」


「おそらくないだろう。その考古学者が言うには、かなり現代的な造形をしていたそうだ」


「へー、銃でも付いていたのかな?現代のゴーレムと言った感じかな」


「何にせよ、見たらわかるだろう。取り敢えず、遺跡の近くから見ていこう。遺跡の近くにいたと言うのは、何かしらの調査で来ていた可能性も十分考えられる」


想像での話合いでは埒が開かないので、一行は取り敢えず、その遺跡とやらに向かう事にした。







「でか」


「これは…圧倒されますね」


「ああ、俺も直接見たのは初めてだ。入り口からこんなに大きいのだな」


目の前にある遺跡。それは、天然の洞窟に作られた太古の文明の名残であった。一部ヒビ割れたり崩れたりはしているものの、殆どが綺麗な状態で残っており、歴史的な価値は非常に高そうだ。


「おい、これを見ろ」


何かに気付いたリアム。すぐに全員がそれを確認する。


「足跡…だな」


「人間のものではないですね」


「これ、遺跡の中に向かっていないか?」


「確かに……」


これは遺跡の中に何かしらの手掛かりがある可能性が非常に高そうだ。

だが、こんな歴史的な建造物に素人が勝手に入って良いものか。


「一応だが、遺跡に入る許可は取ってある」


「え!?良いんですか!?」


素で驚く。まさか、入って良いと許可が降りているとは思っても見なかった。


「ああ、外はアレだが、内部は非常に強固な造りになっていると聞いた。ちょっとやそっとの衝撃や爆発でもびくともしないそうだ。ギルドとしては、このまま調査出来ないことの方が嫌らしい」


「成程…最悪内部での戦闘も視野に入れる必要があると言うわけか」


ギルドが、ゼクタの言った通りのことを言ったのであればそう言うことなのだろう。頑丈と言われてはいるが、どれくらいでアウトなのかもわからない上、試すことなど出来やしない。それに、崩落の危険性もあるので、出来たら戦いたくはないのが本音ではある。


「これ、中に罠とかない?」


確かにそうだ。いかにもな場所であるし、ありうる話だ。


「それについては心配いらない。先人達がその身をもって全ての罠を無効化してくれた」


「素直に喜べねぇ話だが……感謝だな」


リアムのその言葉が全員の気持ちを代弁していた。


「行くぞ!」


ゼクタの掛け声と共に、未知なる遺跡へ足を踏み入れた。








「内部はかなり涼しいな」


「ああ、遺跡自体が……それにヒカリゴケか?十分な光源があって明るい。これは助かるな」


遺跡内部は、確かに古くなっている感じはする。しかし、崩れそうだ…みたいな雰囲気は感じない。壁や床には光る苔のようなものが付いており、また、遺跡自体も所々光源が設置されていた。道の両端には水路があり、綺麗な水が流れていた。


……この構造……似てる……


「かなり大きな遺跡だな。想像以上だ」


「魔物の痕跡一つも無いな。不思議な場所だ」


警戒してはいたが、内部は魔物の反応が見当たらないため、一行の警戒心は小さくなる。遺跡内部も落ち着くような雰囲気であり、何と言うか戦意が削がれる感じだ。


「なぁ、ゼクタ。そう言えば、ここの遺跡って何年前のものだ?」


ただ歩くだけで暇になったガルノが質問した。


「俺もそこまで詳しくないが、分析の結果およそ八千年から九千年前のもの…だそうだ」


八千から九千……随分と古いな。


「そんなに昔の物がこんなに綺麗な状態でか!?」


想像以上の古さに驚きを隠せていないガルノ。

ゼクタは警戒を続けながら、話を続ける。


「見つかったのは割と最近だ。森林のかなり奥地だし、見つかった要因も地殻変動で入口付近の岩盤が崩れた結果見つかったと言うわけだ。内部に状態保存の魔法陣も多く見つかっている。人の手が長く付かなかったこと、遺跡内の魔法陣が上手く作用し続けた事がここが綺麗に残っていた要因だろう」


「成程…あり得るな。……しかし、なぜ大昔を生きた彼等がこの遺跡をそこまでして残そうとしたんだ?」


リアムの言う通り、そこは気になる


「学者でもそこは最大の謎として盛り上がっているらしい。考えられるものとしては……文明の証を残そうとした…とか、そうだな…何かを伝えようとしていたのか…ぐらいか?」


「伝える…何をだ?」


「さぁ?」


「……ここが最新部か」


話しているうちに一番奥まで来てしまったらしい。道中小部屋のようなものがいくつかあったが、先ずは奥から見ると言うことで無視して歩いてきた。


「地図からもそうですね」


最新部は開けた円状のホールになっており、ただだだっ広い空間が広がっている。


「みてぇだな」


「……と言うことは、アレ何?」


この部屋で終わりのはず。そのはずなのに一行には壁の一角が破壊されているのが見えていた。そして、その破壊された壁の向こうにはここと同様の壁が続き光源もあった。


「……様子からしても何者かが無理矢理開けたってところだな」


「奥、続いてますね。しかも地下の方へ」


そこは地下へ続いていた。招くような雰囲気が一行の緊張感を高める。


「どうする?……って、聞く必要はないか!」


一瞬振り返ったゼクタだが、全員の顔を見て、その言葉は要らないと察したらしい。


「行くぞ。気を引き締めろ」


怪しさ満点のその先へ、踏みしめるように一歩ずつ歩き出す。

その先には一体何があるのか。そして、感じた違和感の答えを得るために。


ちょっと長かった?

まぁいいか。

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