Ep.114 回り出す歯車
今更何を……って感じだが、僕が今いる世界は地球で言うところの「ファンタジーな世界」である。
そしてそんなファンタジーな世界の学校は日々トラブルやイベントが起きるのだ……と言うわけではない。
過ごしてみてよくわかったが、根本的な部分は地球の学校とそう変わらない。
取り扱う知識は地球には無かったものがあるものの、その日常というのは結局は反復。日々、同じような事の繰り返しである。
毎日学園に来て、講義を受け、放課後はサークル、自治的な活動、街のどこかへ行き、夜は帰る。
そう、やってる事は変わらないのだ。
そして、そんな捉え方次第では淡々と言える日々というものは気が付けばあっという間に過ぎ去って行くものだ。
白永歴1999年、世紀末。
この年、ナツトは第6学年(高等部でいうなら高等部第3学年)であり、ナツトの見た目の年齢が15歳となる年であり、最高学年まであと一つというとき。
これから先の記憶というものは、これまでの年とは比べ物にならないくらい鮮明に残ることになる。
というのも、世界が動いたのはこの次の年に、間違いなくあれがあったからだろう。
とは言え、いきなりその話になるのも急展開すぎて説明し辛い。順番に話していくとしよう。
このとき、世界という大きな歯車は、全体として見たらそれは大きなものであるが、よく見れば部分毎に独立して回っており、一緒には回っていなかった。
ここ、ラーテル王国でも小さな歯車は回り出していた。
「あれ?修学旅行の説明会って今日だっけ?」
「ガルノ……もしかして忘れてた?」
この日ナツトは、朝からガルノラルクといた。というか、学園に登校したら偶々会ったのだ。
いつの間にか過ぎた年月で、まだまだ成長期ではあるが、二人は身長がだいぶ伸びていた。ナツトは170弱だが、ガルノなんて175を超えていた。今更身長差でどうこうと言うわけではないが、ガルノはこのまま行けば180は余裕で超えそうだ。
あとそうだ。声変わりだが、ガルノは少し声が低くなって、声に重量感が加わり、なんだか頼れそうな声になった。一方のナツトはなぜか全然変わらない。そんなこともあるのか、と思うが実際そうなんだし、そう言うものなのだろう。
そんなことはさておき。
今日は一限目から高等部修学旅行の生徒向けの説明会である。保護者はまた後日にやるそうだ。
「おう。お前は忘れないと思うが、普通は優先度低めのイベントは忘れるもんだぜ」
「……低め、なのか?」
疑問符を浮かべるナツト。修学旅行は、一番といっても過言ではないほどのビッグイベントではなかろうか。
「修学旅行自体は高いけど、その説明会は低いだろ?そんなことより……これで一限目飛ぶな、ラッキーだ。課題が面倒な教科が消えた」
いい笑顔で喜ぶガルノ。だが、ここでナツトの余計な一言が飛んで来る。
「後で振り替え日に入るけどね」
「うげ……ま、そりゃそうか。仕方ない。……で、シャック、場所どこか知ってる?」
「中央大ホール1」
「……あそこか。あそこの椅子、座り心地良くて好きなんだよな。快眠できる」
中央大ホール。その名の通り、学園の中央に位置する数個のホールが一緒になった、巨大な施設である。コンサートホールみたいな感じであり、椅子が途轍もなくふかふかで安眠の椅子と生徒間では言われている。
「生徒会の一人として、寝たらダメ……って言うべきだけど、気持ちはすごーくわかる」
経験が何度かあるナツトは、思い出しながらそう言った。
「ははは、だよなー!よし、早めに行って寝ようぜ。シャックお前、最近やけに眠そうだしな」
「あれ?バレてた?そうそう最近夜更かし気味でね……」
気付かずうちに疲れが行動に出ていたのか。ぎくりとしたナツトは、適当に流しながら会場へと向かった。
「時間ですね、それでは生徒向けの修学旅行の説明を始めます」
始業のチャイムが鳴り止むと同時に修学旅行の説明は始まった。
最初は、修学旅行の意義とか学ぶべきことなど、生徒にとってはあまり面白くはないお話から始まった。
「さて、今年ですが、昨年度とは少し異なります」
少しざわつくホール内。そのざわつきは生徒達の期待によるものだ。
「静かに。……昨年度と同様、先ず聖国へ行きます。七日間ある内、四日は聖国にて現地の文化や歴史について肌で感じてもらいます。そして残りの三日間ですが、獣国へ行くことになりました」
先生のその言葉に盛り上がるホール内。
複数の国へ行けるというのは嬉しい事のようだ。
「数年前から検討中でしたが、遂に今年実現に漕ぎ着けました。費用は例年より二万ほど高くなる予定ですが、たったこれだけで皆さんにとってよりよい体験へ繋がるならば安いものでしょう。では、ここからは実施にあたり皆さんが行わなければならない各種手続きについて説明します。よく聞いておくことですね。私としては、メモを取ることをお勧めします」
一年ほど先の話のせいか、内容までは決まっていないようだ。
壇上に立つ先生は、現段階で言える限りの説明を行った。
「……海外かぁ〜、楽しみだな。俺、何気に前世も含めて初海外だぜ?」
いつにもなく、その期待が表情に表れているガルノがナツトに話しかけた。
「へぇ〜、そうなんだ」
「俺さ前世は、高校公立だったからな、修学旅行先は国内だったんだ」
「そうなんだ。ちなみに何処だったの?」
「……確か、長野県だったかな?中学の友達はみーんな海外に行ってたからちょっと羨ましかったけど、それを忘れさせてくれるくらい楽しかったのを覚えてる。自然を体感できるスケジュールで、いい場所だったな。山の方だったから空気も綺麗だったし、不思議と落ち着けたのを覚えてるな。シャックは?」
「……あー……行く前に死んだかな」
実際は死んだではなく、転移したの間違いなため厳密には違うが、大体そんな感じだろう。
「え?そ、そうだったのか、スマン…こんなこと聞いてしまって」
触れていけないとこに触れてしまったのではないか、そう思ったのかガルノは少し焦る。
「いいよ昔の事だし、気にしなくて。因みに行けてたらオーストラリア」
ガルノはその言葉に安堵する。同時に、ナツトが高校生でこの世界に来たと言う結構重大なカミングアウトがあったが、それよりもガルノはその行き先に驚いていた。
「……はぁ!?オーストラリアぁ!?遠ぉ!?うらやま過ぎだろ!?」
面白い具合に良い反応を見せるガルノ。自然と頬が緩む。
「一応私立だったもので」
ニマニマしながら言う。実際には行ってないが、どこか気分がいい。ガキっぽいなと思いつつも楽しいから続ける。
「マジかよ、実は…お金持ちだったのか?」
「いや、事情は色々あったけど、金銭面だけで見たら多分一般的な家庭。制度を上手く使ってた感じ」
実は両親行方不明で、祖父母に育てられた……とは流石に言えない。言っても仕方のないことだし、余計な同情なんて欲しくもないし。
「そうなのか。……でも、オーストラリアって言ったら英語だろ?喋れたのか?」
オーストラリアは歴史的背景から英国式の英語の影響を受けているが、独自に昇華し発展した英語となっている。今日を表す単語である「today」を「トゥダイ」と呼ぶのは割と有名な話である。
「全然。だから、楽しみな反面、意思疎通ができるか怖かったのを覚えてる」
「まあ、そーだよな。……でも、この世界はその心配はないよな」
「そうだね、行く国は同じ言語だし…仮に違う言語だとしても魔法を応用すれば意思疎通は可能だ」
「そうそう、あれな!ゴニョゴニョ言ってて訳がわからないはずなのに何言ってるか理解できるヤツ」
魔法を上手く使えば、別の言語でも意思疎通は可能である。極端だが、「あーあー」言っていても、何を伝えたいか明確に思い魔素に伝える事で相手には伝わるのだ。
ついでに言語翻訳の魔法陣も開発されている。性能としてはそこそこだ。
…という風な背景があるためか、言語の壁というものが割と簡単に乗り越えられるこの世界は、人々の海外旅行における敷居というものは低めなのだ。
「お互い初の海外旅行、楽しもうぜ」
「勿論。やるからには全力でだよ?」
「ああ!」
やるからには全力で取り組んでみる。
ちょっと逸れるが、何かを目指し、それに伴うことを全力で取り組んでみて、結果を得る。例え成し得なかったとしても、全力で取り組んだ結果だから納得できる。
ナツトは、この事をあまり言わないが、これがナツトの行動原理の一つだったりする。
お久しぶりです。
気が付いたら3週間?も休んでしまいました。(申し訳ない)
ようやく落ち着いてきたので、更新再開していこうかなと。
さて、今週からですがやっと話が動き出したな〜ってのが書いてて思った事ですね。
数週間も空くと、それまで考えていた構想が「ソレ、別に要らなくね?」ってなってしまい、結局これでいいじゃんとなったのが今週のお話。
どうやら、3週間後の私は物語を手早く始めたいらしい笑。
時系列は多分間違ってないと思うので、物語の山場の一つ、進めていきましょう。(仮に間違っていてズレてても、内容的には大丈夫なので)
ではでは、また。




