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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第7章】歴史動かす最後の歯車
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Ep.113 充実

「姫様、お背中お流しします」


「ありがとう」


暖かいお湯が、身体に付いた泡と共に石の床を流れて行く。後ろに控える人物が、手慣れた手つきで私の金色の長髪を纏め、お風呂に浸かった時、お湯に髪が付かないようにする。


「終わりました」


「ん」


広い石の床を歩き、これまた広い湯船の中へと身体を入れる。ここは、城の地下にあたる場所に作られた大浴場。当然王族用である。……宙に浮かんでいる城に地下と言う表現は合っているのだろうか。いや、大地に建っていたら地下部分に当たる場所だから地下と言う表現は間違ってはいないだろう。


さて、そんな湯船へ浸かっているの彼女の名はチェルーティア・オル・ラーテル。王女である。


特殊な方法で魔素を多く含んだそのお湯は、仄かに魔法が付与されており、確実に疲れを癒す。過去はしっかりと魔法が付与されていたのだが、リラックスしすぎて眠ってしまうという危険性があるとかで、薄められたそうだ。従者が側にいるなら問題ないかもしれないが、何かのきっかけで一人で入っているときに寝たら危ないと判断され、薄められたのだ。


それでも、十分リラックスできるので、さして問題はないだろう。


「ふー、疲れた」


見上げる天井にも魔法が施されており、そこには満点の星空が見えている。この幻想的な景色を眺めながら、今日会ったことを頭の中で整理し、明日はどうしようか、と考えるのが彼女の日課である。少し遅れて、彼女の専属メイドもお湯につかった。


本来ならば許されない行為だが、他でもないチェルーティアがそうしろと言っている。自分自身が赤子のときから側にいるメイドである。名はメルリア。美人で、スタイルもよくて仕事は何でもこなす素晴らしいメイド。見た目は二十代中ほどに見えるが、絶対に実年齢と一致していない。でも、この国では割とそんな人多いし、大して気にはならない。いつも側にいてくれる。それだけで十分だ。





……少し、のぼせてきたかな。そろそろ上がろう。


ゆっくりと立ち上がると、お湯が体のラインに沿って落ちてゆく。急ぐこともなく、ただゆっくりと石の床を歩きながら出口へ向かう。メルリアもいつの間にか上がり、チェルーティアの邪魔にならないようち密に魔法を操り、チェルーティアの身体に付いた水滴を落としていた。


髪を乾かしたり、服を着たりとしていたら、お腹が空いてきた。

と言っても、いつものことだからそのまま食堂へ連れていかれる。


「あ、そっか。今日は父上も母上もいない日だった」


一週間の内、この曜日は絶対に二人とも一緒に夕食は食べない。その他は一緒に食べるように父上が手をまわしている。多忙なのに家族のコミュニケーションの時間は欲しいがために、空けているそうだ。


だから、今日は静かな晩餐。


「メル、ずっと気になっていたけど、結局二人は何をしているの?」


これまで、プライベートなことは例え両親でも聞かないでおこうと考えていたが、こう数か月も続けば流石に聞きたくなる。寧ろよくここまで聞かなかったものだ。


「はい、フィーディース様より聞いたのですが、何でも昔の仲間たちと模擬戦闘をしたところドはまりしたとか」


「昔の仲間達と模擬戦闘?昔………あ、三勇の二人ね」


マーヤさんとオルウェルさんか。確かにあの二人も騎士団で高い地位にいるし、この曜日ぐらいしか日が合わないから、この日なのか。それにしても、何か月も続くのは、きっと楽しいからだろうな。

その気持ちは、チェルーティアもよくわかっていた。中等部から行っていた能力訓練は今も行っている。今日まで続いているのは、能力が必要だからということもあるが、何よりも楽しいからという理由が一番だ。


今度、どのような内容なのか聞いてみてもいいかな。参考に出来そう。


「ご馳走様。美味しかったわ」


チェルーティアは、優しい笑顔でそう言い、席を立って自室へ戻っていった。
















額のできた切り傷から血が流れていた。

まったく。顔の傷は浅くても結構出血するから面倒だな。止血を急いで、と。

…ふう、よし次が来る。


「風拓」


縦に一太刀。何もないように見える空を切断する。その瞬間は斬ったその空間が安置である。だが、それも一瞬で終わる。更に不可視の追撃が飛んでくる。


「螺旋集約」


『権能:誘導』にて、馬鹿みたいに広範囲の技を一ヶ所にまとめる。それをそのまま、目線の先にいる目標に向けて飛ばす。目標はそれを回避。それを見越して自分は、地を踏み蹴り、距離を一気に詰める。


何重にも重ねがけした魔法を、手に持つ剣「帝」に付与し、迷わず振りかぶる。それに対し、目標も応戦するように、手に装備している、鉤爪のような黒い金属の武器に魔法を重ね合わせて応戦した。

起きるのは、爆発だ。高められた両者の魔法がぶつかり合ったために瞬間的にエネルギーが爆散して起きたものだ。


かなりの大規模だったが、お互い大した外傷もなくピンピンしていた。


「そこまで!」


お互いのことしか見えていない二人に、見知った声で終わりが告げられた。


「あれ、アル、もうそんな時間?」


「うん、そうだね」


「早かったねぇ」


「うん、マーヤありがとう」


「いえいえ~あたしも楽しかった!」


今日は、マーヤとの模擬戦闘訓練だった。いや、やはり厳しかったな。彼女の能力で延長された攻撃は不可視で、魔力探知を常に全開で行わないと、一瞬で敗北するだろう。しかも、その延長される攻撃のサイズがバグってるレベルで大きく、中途半端に誘導で逸らしても逸らしきれずに攻撃が当たってしまうのだ。彼女の攻撃は、斬ると言うよりかは抉り取ると言った感じなので、切り傷だったらラッキーな部類だろう。


だが、なんにせよ、『権能:誘導』を鍛えるにはもってこいの相手だ。



というもの事の始まりは、ナツトが魔の領域から帰って間もない時だ。

先の白い竜との戦いでナツトは自身の慢心を認識できた。学園で能力訓練を行っているが、あれはあくまで『権能:記憶』の訓練であり、勇者時代に一番使っていた『権能:誘導』はいつまで経っても使わないのだ。だが、それでは、この先対応できない敵が現れるかもしれない。

そう思ったナツトは、このことをたまたま会う予定をしていたオルウェルに相談していた。


オルウェルはその相談以降真剣に考えてくれて、アルティオに話を持っていき、城の最下層にあるこの技術をふんだんに詰め込まれた訓練場を貸してもらえることになった。そして、最終的に週に数回この集まりが出来るよう調整してくれたのだ。流石に全員揃う日は、一週間の内一日だけだが、忙しい彼らが時間を取ってくれることに唯々感謝しか湧かない。


かつての仲間は、皆途轍もないほどの実力を有しているし、こちらの求めている戦いを提供してくれる。遠慮もないし、本当にやりやすい。


恐らくだが、今が一番一週間が充実している気がする。授業を受け、ある日は学園で能力訓練、ある日は生徒会、ある日はサークルで魔道具作り、そしてある日はここで模擬戦。


あぁ、本当に充実したいい日々だな。







先週は申し訳ない。

予想以上に立て込んだのと、一度書いたヤツがちょっと納得いかなかったので間に合いませんでした。


さて、それはさておき、番外編を挟んで、飛ばすとしますか。数年ね。

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