Ep.110 参戦
生徒チームの中でロックバードは誰よりも悩んでいた。
先程のノアラナチアの攻め。全く反応できなかった。開始の合図と共に、気が付いたら地に倒れ、剣先を向けられている自分がいた。
理解不能だ。まだ、混乱している自分がいる。
これまでの授業でノアラナチアの戦い方や、動きの速さなど基本的な事柄の把握漏れはなかった。実際問題、ノアラとロックバードの能力抜きでの戦闘能力はそこまで大差ない。しかし、能力が加わる事でここまで豹変するのか。その事実に戦慄する。
これが能力。体験するのは初であるが、確かにこれは理不尽を体現している。
能力を有さない人間は、それだけで不利と思える。魔法戦は如何に自分に有利な状況を相手に押し付けるかの戦いであるが、能力はそれを実に容易く実現する。そして、厄介なところが、相手が能力を持っているのか実戦ではわからないと言う事だ。今回は相手が持っているとわかっているのに、こうも容易く負けた。実戦でいきなり能力を使われた時の理不尽さと来たらこれの何倍も凄い事だろう。
そして、ルールこそ変わるが、もう一度戦うことになったが、情報が少な過ぎる。ノアラナチアの能力すらまともに見れてないのに、ウルヴァロは使ってすらいない。他の生徒達はこのことの重要性に気付けているだろうか?
大将戦でなくなったた以上、こちらの攻め方としては大きく二つ。守るか、攻めるかだ。しかし、前者は先程同様カウンター狙いとなる。そしてその戦法は容易く破られた。能力の詳細が出来ない以上、守りに徹するのは得策ではないように感じる。ならば、取るべきは攻めるか。
「お前達、ちょっといいか?」
考えが纏まったロックバードが発言し、考えを共有する。
ロックバードは、平民を見下すある意味貴族特有の驕りというものがあるが、それは徐々に薄れつつあり、代わりに競争心へと変わっていた。ナツト達など目の上のたんこぶである奴等のウィークポイントを探しているうちに、人一倍、生徒達の特徴を捉えられるようになった。
生徒達も彼の変化に驚きつつも、彼に信頼を寄せるようになった。
実際、考えをあやふやにせず、きちんと言い切る彼の言動には安心感がある。
「いい傾向だな!」
その様子を遠くから見ていた先生は言った。
「生徒自身が自ら考え、身分を隔てる事なく平等に意見し合う。コテコテの貴族様だったロックバードもいい感じに揉まれたものだ」
感慨深そうにロックバードを評価する先生を他所に、生徒チームの戦法が固まってくる。
三分後、準備時間が終わる。再び先生の合図が飛び、二度目の戦いが始まった。
生徒チームがとった戦法は、全員での突撃。
ノアラナチアの瞬間移動とも思える移動から、ロックバードは彼女の能力を身体能力をブーストするようなものと推測した。そのため、一度に全員は見られない。それにかけての特攻。
だが、万が一ウルヴァロの能力が一度に全員を倒せるような能力であった場合は悪手だが、混戦に巻き込めたら、可能性はある。
何人かの保険要因を残すと言う手もあったが、特攻組がやられたら結局はジリ貧になる。ならば、全員で特攻する方が勝率は高そうだ。
「特攻か」
「作戦通りね、出来るだけ耐えといて」
「わかった」
ロックバードが先陣を切りながら、全員が一斉に動き出したことから、ウルヴァロとノアラナチアは生徒達の作戦を特攻だと瞬時に見破った。
二人は、どうされるのかが一番自分たちにとって嫌なのか真っ先に考え、その時の対処法を既に決めていた。今回の場合は圧倒的人数不利ということで、ゴリ押しが一番怖い。
そういう訳で対策を立てたが、ここからは相手の対応力次第で勝敗が分かれそうだ。どれくらいの早さでこちらの突破法を見つけるか、すべてはこれにかかっている。
魔法を警戒してか、横に広がりながら生徒達は迫る。
というのも、魔法戦において縦一列に並ぶのは危ない。貫通力の高い魔法一つ撃ち込まれるだけで、甚大な被害を被るからだ。そのため、集団戦においては味方との重なりを極力減らすのは大事なことであるのだ。
しかし。
「ちょうどいい感じに広がってるわね。やり易いわ」
目の前にいたノアラナチアがロックバードの視界から声だけ残して消える。
さっきの移動法だ。
どこだ?と思うロックバードであるが、ウルヴァロを前にしてキョロキョロとする訳にはいかない。魔力探知でノアラナチアの魔力を探す。
いた。かなり後ろだ。
「成程、後ろの少し遅れて浮いた奴等から落とす作戦か!」
浮いた駒から確実に落としていく。戦術としては基本的なものだが、確かなものだ。
だが、これだとウルヴァロ及びノアラナチア両者はお互いの支援を得られないことになる。意図せずとも分断出来たのはこちらとしても好都合だ。
「対ノアラナチア戦力は、こちらに気にせず戦え!対ウルヴァロ戦力はこのまま私に続け!」
指示は短く簡単に。過度な注文はかえって混乱を招く。
ウルヴァロとロックバードの距離が縮まる。後、もう二歩踏み込めば、お互い剣の間合いだ。能力を使う暇は与えない。このまま打ち合ってくれるなら、後ろから続く仲間に隙を付いて貰えばいい。引くなら追うだけ、魔法ならこっちも魔法をぶつけて相殺する。
ゾワッと、ウルヴァロの魔力が高まり、周囲へ伝わる。
「雷電____ 」
雷属性の詠唱魔法!
ウルヴァロのとったのは魔法での迎撃だった。ならば、魔法で相殺するまでだ。
「魔法来るぞ、警戒!」
後続がウルヴァロの動きが見えていない可能性、何らかの要因で相殺できなかった場合を想定して、防御を固める事を促す。
叫びながらロックバードも攻撃用、防御用の魔法を組み立てる。ウルヴァロの詠唱速度なら、まだ間に合う。
だが、そんなロックバードの想定は次の瞬間音を立てて崩れた。
「何だこれは!?魔法が発動しない!?」
いつも使う魔法。よく使う魔法。今更発動をミスるようなことは有り得ない。だが、この瞬間ロックバード含め後続の生徒達誰もが魔法を発動できないでいた。
「そうか、コレがお前の能力か!」
ロックバードは察した。ウルヴァロの持つ力が妨害系の能力である事に。
だが、気付いたところでもう遅かった。
「__衝波!!」
地面に迸る麻痺効果をもたらす雷と、押し飛ばされるような衝撃波。
一才の防御手段無しに近くにいた者全員がモロに喰らう。
訓練なので、麻痺させて吹っ飛ばす程度で済んだが実戦なら死んでいただろう。
ノアラナチアに向かった戦力も次々に戦闘不能へ追い込まれている。
……ここまでか。……いや、待ておかしい。身体が痺れていない?
「それ、アリかよ?なー、シャック!」
「先生が行け、と言ったんだからアリだよ」
痺れない理由。それは生徒チームにナツトが参戦した事であった。
「ロックバード、行ける?」
「……誰に言っている。当然だ」
私がそう言うと、シャックは笑った。
「……じゃあ、このまま頑張ろうか」
いや、更新出来るんかい。
意外といけるものですね。




