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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第7章】歴史動かす最後の歯車
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Ep.109 高みの見物

「時間だ、始めよう」


ある筋肉隆々な男性が、目の前に集まった生徒達全員に聞こえるように大きな声でそう言った。この男性は、学園の教員の一人だ。魔法訓練の時にお世話になる、要は体育の教員みたいな感じである。


「今日から始める実戦型総合魔法訓練は、これまでやって来た魔法訓練を基礎として、より高度で、より実践的な魔法訓練を経験してもらう事を目的としている。そして、より高度な訓練のため、クラスを半分に分けて実施する。ここまでで質問は?」


実戦型総合魔法訓練。長ったらしい科目名であるが、騎士団に入団したい生徒にとっては非常に重要な科目となる。担当教員以外に三人ほど騎士団から補助指導要員として来ている上、そもそもの話、担当教員も元騎士団に所属していた人間である。


説明にあった通りこの科目では、これまでの魔法訓練以上に実戦を想定したものとなる。つまりは、対魔物戦や対人戦に関する技術や戦い方を学ぶものだ。特に無詠唱魔法の実践レベルまでの昇華、複数戦における陣魔法の使い方などを突き詰めていく。

危険故にクラスは半分に分けられ、ナツトはウルヴァロ、ノアラナチアと同じ組になった。チェルーティア、イアノン、ガルノラルクは残念ながら別の組である。


「ないようだな。では、説明を続けようと思うが、一点授業内容に変更点を設ける。本来ならば今日は、全学期までの学びがちゃんと身についているか確認するつもりだったが、別の事をやってもらう」


来たか。


周りは少しざわついているが、実はナツトを含め、ある一部の人間には事前に学園側から、ある事に関して承認可能かどうかと言う確認がされていた。


それは______


「取り敢えず今日は、みんなに能力というものがなんなのか、軽く体験してもらおうと思う」


ざわつきの様子が一変した。何をするのかと言う戸惑いから、「能力を持った人間と訓練が出来るのか」という好奇心に。そして、勘のいい何人かは察する。その能力を持った人間が誰かという事に。


「勘のいい奴は気付いたと思うが、この学年には何人か能力を持っているやつがいることは知っているな?同級生に能力を持った人間がいるなんて稀だぞ?彼らには能力を公にする事に対して事前に許可を貰った。皆の訓練のために使ってくれるそうだ」


「マジか!」

「やっとかぁ!」

「シャック君の能力、見れるの!?」

「先生、神か!?」


生徒達は、様々な反応を見せ、場はちょっとした歓声が上がる。

これまで、生徒達はナツト達が能力を持っているということは知ってはいたが、使っているところはおろか、聞いても教えてもらえなかった。しかし、今回でそれが初めて見ることができる。普通の人からすれば能力は所有者が少なく滅多にお目にかかれないのだ。

そういう訳で、彼らの反応はある意味当然の反応であるのだ。


そして、提供側となるナツト達であるが、本来ならば能力を公にするのは所謂手の内を晒す事になるので本来は控えるべきである。しかし、複数戦闘は経験してみたかったし、みんなの能力はまだまだ未熟。現段階の能力が知れ渡ったところで対して痛くないだろうと判断した。


「まーまー、落ち着け。興奮するのはわかるが、それだと始められん。……シャック、ウルヴァロ、ノアラナチア、お前らの中で、魔法でなくて、これが能力なんだだと知れるような能力を持ってる奴はいるか?」


「……それなら、ノアラかウルの方が適任ですね」


「そうですね、シャックのは何されたか解りづらいナンバーワンですし」


「確かに」


「成程。では、ウルヴァロ、ノアラナチア、二人共闘でやってもらおう」


おっと、意外だ。てっきり一人一人やるものかと。


「一人ではないのですか?」


同じ事を思ったのか、ノアラが聞いた。


「お前達の能力は聞いてはいるが、俺は見たことがない。どういう運用かは知らんから、多少なりとも連携が必要だと思ったのだ。だが、二人対シャックを除く十数人だ。厳しいのには変わりないだろ?」


先生は挑戦的に言う。

いきなり全員と戦うのか。中々無茶を言っているが、果たして二人の反応は……。


「ふふ、面白そうですね!」


「シャックが居ないのなら、やりようはありそうかな」


「……決まりだな!全員戦闘準備!ただその前に作戦会議時間を三分だけやる。お互いどう攻めるか確り考えろよ!」


先生は豪快に笑い、指示を出す。そして同時に、ルールを説明した。


ルールは簡単。

ノアラとウルは生徒チームの中で決められた大将を戦闘続行不可能状態にすれば勝ち、生徒チームは二人を戦闘続行不可能状態にすれば勝ちである。そして、勿論、試合開始まで一切の魔法詠唱を禁ずるものとする、である。


両チームはそれなりに距離を取り、お互いの戦法を意見し合う。


「シャックお前は、二人の戦い方と言うものを知っているからな。すまんな、見学だ」


「気にしないで下さい。見るのは好きな方です」


「そうか……なら、お前ならこの戦いどう見る?」


「そうですね、ノアラが僕と考えていることが同じならば勝負は一瞬でつきますね」


「ほぅ?普段は大人しいノアラナチアがか?」


「彼女は今でこそ落ち着いてると言う印象が強いですが、根っこの部分はまだまだやんちゃですよ」


そう、偶に素に戻る時があるがノアラは今はとても大人しい性格になった。中等部辺りの彼女はもう少しはっちゃけていたが、ナツトやチェルーティアと言ったクールキャラのせいか、素を知らない生徒からしたら、彼女は清楚な委員長みたいなイメージになっていた。成長を間近で感じるが、少し寂しいところもある。


対して、ウルヴァロであるが、彼はあまり変わっていない。強いて言えば、厨二病を発症しているかな。一部の男子生徒間では自分の魔法にカッコイイ名前を付けるのがトレンドらしい。その流行りに感化されて彼もハマっているのだとか。……まぁ、この世界では本当に魔法があるから厨二病というべきなのかはわからないが、覚えている限りのカッコイイと感じた単語を並べているので、きっと厨二病だろう。

一部を除くが、基本男子なんてそんなものである。


「作戦会議終了だ!大将は……オーケー、ロックバードだな!」


気が付いたら三分経っていた。先生が最終確認を行い、両チーム訓練用の武器を構える。大将はロックバードか。さて、どうなることやら。


両チームの距離はおよそ二十メートル程。間合い的には魔法の距離だ。


「それでは戦闘……開始ッ!」


戦闘開始の合図が訓練場に響き渡る。開始の合図を今か今かと待っていた生徒チームは開始の合図と共に、各自決めた行動を起こす。

能力がどう言うものなのかわからないからか、それとも大将戦だからか、生徒チームは守りに徹し、カウンターを狙うようだ。恐らくはロックバードの指示。数人を残して他全員が生徒達が無詠唱で結界を張り出す。まだまだ拙いが、何人も同時に結界を張れば最低限マシなものになる。そして、残った数人は魔法の詠唱、及び身体強化を施し、攻撃に備える。


三分で話し合ったにしては上出来な方だ。無詠唱魔法を積極的に試そうとしているし、人数の有利を理解している戦法だ。


だが、もう遅い。

一瞬で勝負が決まったと理解出来たのは、ナツト、ノアラ、ウルヴァロ、先生方、そしてロックバードだけだろう。


「え?」


生徒の誰かが無意識に声を溢していた。その顔に全く理解出来ないという気持ちをフルに詰め込み、ただ唖然とする。

他の生徒達もその声に釣られてロックバードの方を見て、そして混乱した。


転移魔法やその他の魔法を使わずに、結界が張られるよりも速く、ノアラはロックバードを地面に倒し、首筋に持っていた模擬刀の刃先を肌に触れるギリギリのところで寸止めしていた。


「そこまで!」


開始三秒で止めの合図が飛ぶ。生徒達の理解が追いつき始める。ノアラが最初立っていた場所と今立っている場所を見比べて、驚いている様子を見せる。


やはり、こうなったか。能力が何か知っていたらまた結果は変わっていたかもしれないが、初見でかつこのルールだと、やはりノアラの独壇場だ。


大勢相手にどこまで通用するか知りたかったノアラとしては大満足な結果のようで、ニコニコしている。一方で出番がなかったウルは不満そうだ。


「凄いだろ?能力と言うものは。ところで、ノアラナチア、あれどう言う技だ?」


「能力を使って移動しただけです♪」


「あくまで秘密というわけか。面白いな、よしそうだな…能力は見せるが詳細は言わない。そういう方向で行こうか。しかし、お前達、このレベルまで能力を昇華していたとはな。ちょっと見誤ってたな!」


この一言でナツト達は能力の詳細を説明しなくてよくなった。あくまで生徒達が頑張って推測するということになった。


そして、ノアラはさっきの動きをあやふやにしたが、あの動きは最近実用レベルに至った新技である。それ故に、こういう場面で通用すると知れたのは彼女にとって非常に有意義であると言えるだろう。


さて、軽く彼女が何をしたのか解説しよう。

まず、前提として彼女の持つ能力が鍵となる。ノアラナチアの能力は『権能:省略』である。察しのいい人間なら、ここまで聞くと何をしたのかわかる。そう、彼女は「戦闘開始地点からロックバードまでの移動を省略」したのだ。そのため、瞬間移動したように見える。なんなら今回のように条件次第では転移魔法より速く目的地に到達可能となる。

まだ、今回ぐらいの二、三十メートルぐらいの距離しか省略出来ていないが、実戦では十分過ぎるぐらいの性能だ。


ま、割とぶっ飛んでる部類の能力だな。押し付けられる方はたまったものではないことは確かだ。初見は特に、ね。


「今度は、大将を決めずにどちらかのチームが全員戦闘不能になるまでだ。準備開始!」


さて、たった三秒の情報から生徒チームはどう立ち向かう?


来週、更新出来たらしますが、多分無理っ!


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