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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第6章】初代勇者の学園生活►高等部編◄
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Ep.104 報告と説教と反省を

靄がかかったような見知らぬ空間の中にナツトはいた。上も下も左も右もわからなくなる様な無限の如き空間。

そして、視線の遥か先に、誰かがいる。だけど

よく見えない。遠すぎるのもあるが、なぜかよく見えない。













ナツトが目を覚ましたのは、あれから三日後のことだった。


目を覚ますと、目の前には見知らぬ天井があった。どうやらどこかの建物の中の様だ。


身体を起こすと自然にかけられていた白い掛け布団がずれ落ちた。

ナツトのいる部屋は広過ぎず狭過ぎず、ナツトがちょうど過ごしやすい広さの部屋で、木で作られた装飾品や家具が置かれており、どこか落ち着く。暖房もついている様で少し暖かい。


「起きたのね」


「ミューカ」


キョロキョロと部屋を見て回っていたら、扉からミューカがやって来た。

となるとここはラーテル王城の中なのだろうか。


「ここは城の中?」


「違うわ。ここはギルド本部の中よ」


「あ、そっちか」


ギルド本部にこんな部屋があったんだ。少し意外だなと思いつつ、今度は何でミューカがここにいるのか気になる。ナツトは取り敢えずその旨を聞いてみた。


「居るも何も、最初からアルと来る予定だったわよ。一応夫婦だし。対外的にもね」


「それもそうか」


「取り敢えず、今日はもう遅いし、食欲があるなら簡単なものを食べて、後は大人しく寝てなさい。貴方の身体は普通の生まれ方をしていないから特殊みたいだけど、一般的な人の身体と大して変わらないのだから。あ、オハナシは明日たっぷりとアルと二人でするからそのつもりで」


「あー…ハイ」


何となく怒られる事を察した。まぁ、かなり無茶をしていた自覚はあるし仕方がないか。

ここは何も言わず甘んじて受け入れよう。


食欲はあったので、消化に良いものを取り敢えず食べた。準備はしていたようで、頼めばすぐに出てきた。

歯磨きをして、身体に清潔魔法と呼ばれる魔法を施して、身体を綺麗にする。こういうとき魔法って本当に便利だと再度実感させられる。


これまでずっと寝ていたはずなのに、ベットに横になって少ししたら熟睡することが出来た。

と言うか、ベットが凄まじくいいヤツだ。安眠が約束されている、そんなベッドであった。






さて、次の日。

スッキリと起きられた僕は、室内に置いてあったケトルに水を入れ、お湯を沸かした。そして、収納魔法の中に入れておいたスティックコーヒーを適当な容器に入れ、飲む。


「あっっま」


微糖を選んだのだが、当然と言うべきかかなり砂糖が入っていた。


「もう少し少なくてもいいんだけどなぁ…」


などと、誰かに言うわけでもない文句を一人ブツブツと言いつつ、火傷しないように少しずつ飲んでいた。   


怪我は大丈夫そうだ。腹に空いていたはずの穴は綺麗さっぱり無くなっているし、意識がない時に誰かが治療してくれたのだろう。

後で、誰がやってくれたのか聞き出してお礼を言わねば。


そう思っていたら、不意にドアがノックされた。


「どうぞ」


許可を出すと、優しくドアが開き外にいた三人がゾロゾロと部屋に入ってくる。

その三人は、アルティオ、ミューカ、そしてティアメシアである。


「体調はどうかな?」


「お陰様で。心配かけてごめん」


「本当にね。ティアから連絡を受けた時は特に心配したのよ。また勝手に死なれたら本当に許さないから」


「………ごめん」


その言葉は心に突き刺さり、またその重みというのはずっしりとかかってきた。


「その辺りの話は後でするとして、先にティアから用件を済ませようか」


「はい」


若干話し辛くなった空気はアルティオが切り出すことで解消された。


ティアメシアの用件は、何があったかの事実確認である。

先ずは、当時のギルド側のお話からだ。


ギルド本部としては、あのときシュルベルトから緊急の連絡が入っており、怪我人がいた事、死亡者もいた事、そして何かに追われていたことも把握していた。

シュルベルトさん、ナイスである。


…で、問題はその後。

二手に別れたことも安全圏まで逃げたシュルベルト達によって報告されている。

そして、担当していたギルド職員はマズイと思った訳だ。怪我人が危険な状態であるが、安全圏まで来た事はいい報告であった。だが、ターゲットとなっていたもう一人が残って安全圏まで逃げられる時間稼ぎをしているというのは危険極まりのない行為であるのは確かだ。

しかも、端末の様子から見るに残ってているのは成人すらしていない冒険者。

この時は何に追われているのかすらわからない状況。尚更大変な事態である。それに、もしこの何かが魔の領域の魔物の行動域に影響を及ぼしているものなら余計に危険である。


危険に危険が積もりまくっている状況。一人の手には負えないと即判断した職員はすぐにこれを上に報告した。


そして、その報告はティアメシアにも届く。そしてすぐ残っているのがナツトであると理解する。当然、ティアメシアもこの事態は流石にマズイと感じた。自身が尊敬する存在の一人であるナツトであるが、身体はまだ完全に成長しきってはいないだろう。そのため、かつてのような百パーセントのパフォーマンスが出来るとは言えない。今は無事であることを祈るしかないのだが、もしこれでナツトが死んでしまったりするものなら、アルティオ達に殺されても文句が言えない。

自身がちゃんと止められなかったせいで世界に必要な英雄が「また」死んでしまう。自分のせいで。到底受け入れられない事である。

ティアメシアはすぐにアルティオに連絡を入れて、事の次第を伝えた。そしてすぐに準備を済ませ、近くにいた職員に「ちょっと出る」とだけ言い残し、全速力で魔の領域へと突き進んで行った。


大体の方向はわかっていた。長年魔の領域を見てきたティアメシアは大体のマップがインプットされているのだ。特殊な端末を持ち、ナツトの端末を探す。そして、ある時急激に周辺の魔素が揺れ動くのを感じだ。思わず足を止め、その中心を探した。間違いなく何者かの魔法の前兆だと察するのと同時にこの位置も危ないと直感で感じる。

とにかく後退し、安全と感じる場所まで下がった。そして、遠方の空に強く輝く光を見た後、その地点から激しい爆発が発生した。


爆発が完全に止まり安全が確認された後、ティアメシアはそこの中心に向かって走り出した。

中心に来ると、そこには腹に穴が空いたナツトがぶっ倒れているではないか。

今はもうない筈の心臓が止まるのではと錯覚しそうになるが、ナツトが生きているのに気付き、安堵の溜息が出たそうだ。すぐに処置を施し、ナツトを連れて帰った。


そこからはナツトの知る通りだ。


「成程…ありがとうございます、助かりました」


助けてくれたのはティアメシアだったのか。一人で魔の領域へ突っ込むのは非常によろしくのない行為であるが、助けられたのは事実。本当にありがとうございます、だ。

しかし、あそこまで一息にかけて来るというのは一体どれ程の速度で来たのやら。

流石はギルドの頭というべきか。それだけでも相当の実力を持っているのが窺える。


「いえ、私は当たり前のことをしたまでです。……それで、あそこには何がいたんですか?私が着いた時には既にいなかったので…」


「…ドラゴンがいました」


「ドラゴン、ですか。では、例を見ないほど強力な個体でしたか。魔の領域にも翼のない地竜などの低級のドラゴンは居ますが、あれだけの攻撃を……あ、確認ですが最後の爆発ってドラゴンの攻撃ですよね?」


「そうです」


「と、いう事はかなり上位の個体のようですね…何か…こう……特徴とかありますか?今後、誰かがエンカウントする事態がないとは言えませんし」


要点をメモしながら、ティアメシアは話を進めていく。


「特徴というより、ギルドが既に見つけていた個体でした。あ〜、数年前に見つかった白い竜です」


「白い……あっ、あのオリジンモンスターですか!なら、強力であるのにも説明がつきますね。ちなみに確定ですか?」


「はい…鑑定魔法で引っかかりましたし…あ、そうだ記憶を共有した方がわかりやすいかな。アルティオ、お願いしても?」


「勿論だ」


気付くのが遅れた。今この場にはアルティオがいるのだし、彼の能力で簡単に情報の共有ができるのだった。口で言うより、記憶を直接見てもらう方が何百倍もわかりやすいだろう。


「…報告より成長してますね」


ティアメシアはナツトの記憶を見ながら自身の記憶と照らし合わせ、違うところを書き記す。


「凄いわね、ナツトの誘導を突破するなんて」


そう言うのはミューカである。記憶のシーンはちょうど脇腹が持っていかれる所。自ら見せていることであるけど、己の力を過信していた所をやられたシーンであるのでただただ恥ずかしい。ここにいる人達はどちらかと言うと慰めるよりかは問題点を真っ直ぐ突きつけて来るタイプだし。


だが、丁度いいのでここでこの竜の能力について言及した。


「直前にティアメシアさんから教えてもらった特殊な鑑定魔法を試したんだけど、結果が「権能:補正」だった」


そのことに対する各々の反応は様々であった。 


「補正…か。相性次第では完封されるな」


「厄介ね」


「補正!?ずるくないですか、ソレ?」


ナツトの能力を突破したと言うことからもその強さを推し量れる。アルティオは流石の着眼点で、実際に戦ったナツトと同様に、能力次第では何も出来ずに一方的にやられてしまうことに気が付いたようだ。ミューカの感想はまぁ普通な感想と言った感じで、ティアメシアの感想に関してはナツトの感じたことそのままである。


「今回は相手もまだ使いこなせていないって感じだったけど、次戦う時には使いこなしているかもしれない。戦闘センスも高かったし、多分だけど吸収も早いタイプだと思う」


「了解。ギルドの情報更新の作業をして来るので、これで失礼します!ナツトさん、お大事に!」


忙しなくティアメシアがお辞儀をして部屋を去っていく。


「あの子はいつまでも変わらないわね。芯のしっかりした子で、とても真面目」


まるで我が子を見るかのようにミューカが彼女の去った後に言った。

昔からそうだったんだ、と彼女の幼少期を知らないナツトは内心そう思っていた。でも、同時に納得もできた。


「さて、と。一番大事な話が終わったし、始めようか」


「そうね。正座してもいいわよ?ナツト」


「…………はい」


和やかな雰囲気が一瞬にして崩壊した。二人の顔には素敵な笑顔が張り付けられているが、それが愛想笑いであることくらいナツトにはわかっている。笑顔の裏に隠れた怒りを強く感じる。


「一度、強く言うべきだと考えていてね。この機会に言わせてもらうよ」


お手柔らかにお願いします。


自分の立ち位置、及び命の価値を見誤るな、とか命の危機が容易に想像できる場所にはせめて事前に連絡しろなど色々なことを、実に長い間怒られたので、その旨は省略させて頂こう。


正直な話、自分自身の命の価値が高いとか考えたくない。でも、今の僕は単なる一般人ではないのは確かだ。地球ではちっぽけな存在でもこの世界では、己の名…存在もか、それら影響というものはかなりでかい。より慎重に振る舞うためにも、今一度肝に銘じないといけないかな。


「最後に、オルとマーヤも心配していたからちゃんと会いに行くこと」


「はい、わかりました」


一応、説教後の心の中を一言で表しておこう。「猛省」である。





説教も終わり、ひと段落したので暇になった。

説教は昼前からだったので、午後は丸々空くこととなった。アルティオ達はお仕事があるので、ナツトは一人という訳である。


流石に今外に行くとは言い出せないので、全然見て回れていないギルド本部を探検することにしよう。折角だしね。

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