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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第6章】初代勇者の学園生活►高等部編◄
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Ss.8-6 悠然たる少女

洞窟内は騒然としていた。


「おい!何があった!!?見張りは何をしているッ!」


先程までの楽しい雰囲気は完全に崩壊し、タドラの怒号が洞窟内に響く。弱い輩はそれだけで萎縮するほどに。


「落ち着いて入り口を確認しろ!」


幹部の一人が叫んだ。入り口近くにいた者達はその言葉にハッとし、すぐさま確認を始めた。


「ダメです!完全に埋まっています!」


「……どうします?リーダー」


「…出るのは俺の能力を使えば問題ない。問題は外の状況だ。この落盤が自然発生のものなのか人為的なものなのかはわからんが、面倒を考えるなら後者だ。だとしたら、外に何人いるかって問題になる。能力で無理矢理押し通すのも出来なくはないだろうが、後手に回るのは確かだ」


「では、このまま相手の出方を見る感じで?」


「それもアリだ。幸いにも、ここ以外に出口はある。少し距離があって入り組んでいるが、まあ、出られるだろう。だが、そっちに待ち構えられている可能性も大いにある。そうならば、籠城は寧ろ悪手になる。相手の準備を更に盤石とさせてしまう」


タドラは冷静に判断する。タドラの言った通り、この洞窟には出口が複数ある。万が一襲撃を受けたとしても、逃げられる道があるわけだ。だからこそ、最近はここを拠点に村を潰す準備をしていた。


「では、どうすれば?」


幹部は問う。待つか出口へ向かうか。


「三分だけ待つ。それで何もして来る気配がなければ、別の出口に向かう」


「わかりました」


「おい、お前ら!そこを退け!俺が見る」


タドラは落盤した入り口へと向かい、魔力探知を行った。外にいる反応を探ったのだ。


……一人だと?


反応に引っかかったのは一つ。人の形をした魔力の反応が見つかった。見た感じ、身長は高くはない。寧ろ低い。特別背の低い女か、子どもか…後はドワーフとかそれくらいだ。洞窟の入り口前すぐにただ立っている。


……罠か?


タドラは考える。てっきり騎士団的な集団が攻めてきたものだと考えていたので、その想定よりずっと少ないことに罠かと疑う。

だかしかし。この反応以外に魔力反応は見られず、集団ではないのかと考える。


いや、別の出口に集まっている可能性も…。


もしかすると、他の出口から侵入して来ている可能性もある。待ち構えているように見せかけて実は一人しかおらず、こっちが警戒して外の奴等の動きを待っている間に、出口から集団が押し寄せる。


という筋書きが見えた。

しかし、となればこの外で待ち構えている奴はそれを任せられるだけの実力を持っている可能性が高い。


大体読めたと考えたタドラだが、ここは慎重になり、一度洞窟の奥に戻り、他の出口の魔力反応を探ってみた。


……どう言う事だ?


タドラは一瞬混乱した。自身のあった己の予想は見事外れ、他の全ての洞窟の出入り口には一切の魔力反応は見つからない。更にはその外にも反応は無いという始末。


だが、同時にあることが確定する。


敵はこの入り口の前にいる者ただ一人。感じからして、自分達がどういう者なのか知った上で単独で挑んで来た、ということだ。


「…調子に乗りやがって。いい度胸じゃねェか!野郎共!敵は外にいる奴ただ一人だッ!俺達に喧嘩売ったこと後悔させてやるぞォ!!」


沸き立つ部下達。敵が一人だとタドラの口から言われたことにより、不安は全て吹き飛び、やる気満々である。こういう単純な所は可愛らしくもあり、同時に扱い易くて楽である。


ボキボキと首、指の骨を鳴らすタドラ。そして、入り口付近にいる部下を退かして、結界にて部下達を守りつつ一気に入り口を開けようと考えた。結界を強めに広く張っておけば、それによる落盤も防げるだろう。


そう思い叫ぼうとしたその瞬間。

向こうに動きがあった。


魔力反応越しに見る対象が口から炎を吐いたように見えた。アクションを起こすのはいいのだが、その威力がイカれていた。


技の出だしを見れば、熟練のタドラならすぐにわかった。

「今すぐ、守れ」と言う事に。


だが、結界は大きめのものを張ろうとしていたので準備は不完全。全員は守れない。それに、威力的にでかい結界だと破られる可能性がある。


タドラは即決めた。自身の周囲にいる幹部と守れる範囲の部下だけを結界で守った。その他は見捨てた。


結界で守った瞬間。業火が落盤した入口の向こうより押し寄せた。まるで地獄のような光景であった。結果以外にいた者は忽ち飲み込まれ、炎の中に消えていった。


「……な……」


「嘘だろ…」


結界内にいた者達は皆、呆然としていた。だが、タドラがただ一人が、入り口にいるその存在に対して注目していた。


炎によって引き起こされた煙は徐々に外へと抜けて行く。煙が晴れたその場所には、魔力反応通り一人の人間が立っていた。


「……お前は…!」


タドラはその姿に見覚えがあった。いや、見覚えしかなかった。何せ、その人物は先程自らが殺した筈であったからだ。


「生きていたのか?ガキィ…よくもやってくれたなァ!?」


ビキビキと血管が額に浮き上がる。身体から魔力が放出され、結界内にいる者でさえ震える程の圧を放つ。


「もう一度死ぬ覚悟は出来てるんだろうなァ!」


その少女は何も言わずにただそこに悠然と立っていた。ただ、その視線はタドラだけを強く捉えていた。



次回、ラスト。

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