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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第6章】初代勇者の学園生活►高等部編◄
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Ss.8-4 一夜の悲劇に空は泣いて

何あれ何あれ……こわいこわいこわい。


コァは、家の近くにある深い茂みの中のそれまた更に窪みになっているところに息を潜めて震えていた。


先に家に帰ったはいいものの、何やらみんなのいる場所が変に騒がしくなった。次第にそれが悲鳴だということに気がついた。更に、村の人じゃない人達が手に武器を持ってみんなの家のドアを蹴破っているではないか。


このままだと、この家にも来る。


遠くに逃げる時間はない。だが、一刻も早く避難しなければ。


コァは、外の人達が来るまでに裏口から出て、影になってて分かり辛い場所にある、子どもが通るので精一杯の小さな穴から家の敷地外に出た。そして、そこに鬱蒼と生えている茂みの中に隠れたのだ。

普段、友達とかくれんぼするときに使う場所で未だ見つかったことがない場所だ。何せ、家と家に挟まれており、コァが行った道以外、高い塀を越えないと来れない場所であるからだ。


そして、今の所見つかっていない。どうか、このまま見つからないで。


両手指を組み、強く握る。ひたすらに無事を願う。


その時だ。


誰もいなかったこの辺りにまた新たな足跡がやって来た。その足跡は真っ直ぐこちらに向かってくる。


「さーさー、あいつらの娘はどこにいるんだろうなぁ?聞こえているんだろ?大人しく出てこい。今なら苦しまずに送ってやるからよ」


タドラである。第一目標である復讐を達した今、次の目標であるコァを探しに来たのだ。


コァはタドラの言葉で狙いは自分だと完全に理解した。恐怖で震え、その場から動けなくなる。


「あ、そうそう。お前の両親は俺が殺したぞ?お前の前で見せてやれないのは申し訳ないがな」


タドラは絶望を叩きつける。


嘘だ。そんなはずはない。お父さんは、お母さんはとっても強い冒険者なんだ。殺されるはずがない。そんなことありえない。


頭の中ではそう叫ぶが、嫌な予感と不安は増すばかりだ。


「ホラ出てこいって。五秒待ってやる。ホラ、い〜ち…にぃ…さ〜ん…よ〜ん……ご。そうかそうか。苦しんで死にたいんだな、わかった。そうしてやろう」


一瞬男が立ち止まった。コァの嫌な予感はこの瞬間、最大にまで達した。


塀が切断され、そしてコァのいた茂みも丸ごと切断された。コァの身を隠すものは全て取り除かれ、丸見えの状態となった。


タドラはそのままコァの首を掴み、宙に浮かした。


「動揺で魔力が荒れに荒れてたぞ?こんなんも見つけられないとは使えない奴等だ。全く。…さて、初めましてだなぁ?ゼルトの娘」


まだ殺す気がないのか、首を掴まれているが魔法で絶妙に調節し、コァは息が出来ていた。


「このままやってもいいが、何でお前をやるのかぐらい理由を教えてやろう。冥土の土産にな」


タドラは嗤う。ここまで思い通りに進み好機嫌であった。


「俺はなぁ、昔お前の父親に嵌められたんだよ。Sランク冒険者としてこの村にいた俺は、当時こそお前の父親と一緒に切磋琢磨してたんだぜ?だが、ある時、俺が女を強姦してるだの無理矢理言い掛かりをつけて村総出で俺を追放しやがったんだ。酷いよなぁ?俺は依頼を受けてその報酬として同意の元やってたんだぜ?ガキにゃわからん話だろうがな。追放された後は地獄だったぜ。ダイアモンドって名前は無駄に有名だからな。そこの村から追い出されたとあって俺は各地で迷惑被った。何の職も得られず、すべて門前払いだ。わかるか?社会的にも経済的にもSランク冒険者っていう俺という存在はお前の父親に殺されたんだ」


「違う!」


「あ?」


「お父さんがお酒に酔ったとき言ってた。まちがいなく、やりすぎだったって!」


「…ガキが調子こいてんじゃねぇぞ!親の言うことが百パーセント正しいと思い込んでんじゃねぇぞ!」


コァを地面に投げタドラは叫ぶ。痛かったが、地面が柔らかかったので、思いの外痛くはなかった。タドラが長々と話していたので、コァは少し冷静さを取り戻していた。


「それってオジサンの話でも言えるよね?」


「このッ、ガキャ!!?」


ビキビキと血管が額に浮かぶタドラ。まさかこんな子どもに反論されるとは思っておらず、思わぬところで見事なブーメランを喰らったようだ。


「流石は、あの二人の娘だなァ!覚悟できているんだろうな?」


怒りの余り途轍もない力で剣を握りしめているのは明確だ。

幼いながら賢いコァはわかっていた。相手を怒らせて冷静さを欠かせたところで、実力差が明確であり、とても逃げられないと。


走馬灯のようなものが脳裏に過ぎる。


コァは思った。


……あぁ、ドラゴンさんにもう一度会いたかったな。












白き竜は目が覚めた。いつもなら起きることのない時間だ。外はまたまだ夜の闇に包まれている。朝まではまだ何時間もある。


だが、妙に変な感じだ。もう一度眠りにつこうとしてもどこか眠れない。まるで、何かに呼ばれているような感じだ。


竜の脳裏に毎日のようにやってくるヒトの幼体が浮かんだ。





竜は身体をモソリと起こした。そして、洞窟をゆっくり進み、入り口へと向かいそして外に出た。

外は僅かに雨が降っていた。一滴一滴の大きさは小さく細かい雨だ。しかし、どれも異様に冷たいように感じた。

外に出るのは怪我を治すためここに入った時以来だ。随分と昔な感じがするが、実際は数日しか経っていない。

竜は翼を広げ、そのまま上空へと舞い上がる。ナツトによってもたらされた怪我は完治している。翼も尻尾も完全に元通りになり、全ての動作において支障はない。


竜はコァがいつもやって来る方向を見た。

そして、目には真っ赤な炎が見えた。雨の勢いでは到底太刀打ちできないほどの火事だ。ヒトの村は燃えていたのだ。


その時竜が何を考えたのかはわからない。だが、竜は燃える村に向かって飛んで行った。






竜は村がよく見える木の上にそっと降り、翼を閉じて村の様子を見た。丁度竜のいる場所の反対側から沢山の荷物を持って、村を出ていくヒト達が見えた。そして、村の中にいるヒトの魔力反応は殆どが消えていた。


竜はその内、消えかかっているヒトの反応に注視し、一つの反応を見付けた。

再び翼を広げ、竜はそこに向かって一直線に羽撃き、向かっていった。


竜は優しく静かに舞い降りた。

目の前には地に倒れたコァがいた。その命の灯火はもう消えそうになっていた。

多少の傷は治せるが、ここまでの傷となると今の竜には治せなかった。


少しすると、竜が来た事にコァが気付いた。

コァはにっこりと笑い、言った。


「来てくれたんだ…ドラゴン、さん」




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