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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第6章】初代勇者の学園生活►高等部編◄
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Ss.8-1 少女と竜

「行ってきまーす」


「コァ、これお弁当ね。…夕方までにはちゃんと戻るのよ」


「はーい」


とある長閑な村の中。一人の少女が、家から飛び出し、走っていった。少女の母親はやれやれという表情で少女を見送る。


少女の名前はコァ・ダイアモンド。年齢は八歳である。肩ほどの長さに伸ばし、僅かにウェーブがかかった癖っ毛は、かなり珍しい薄水色である。癖っ毛は母親譲りであり、色は父親譲りである。少女は母親手作りの魔法を仕込まれた特別製のワンピースを着ている。肩からは小さなポーチをぶら下げていた。


ダイアモンドという名は中々インパクトのある名前であるが、彼女は決して貴族ではない。この名は、彼女の祖父にあたる人物が少女の住む国の危機を見事救ったのだ。この名前はその時の褒美として王より賜ったものである。そして、このダイアモンド家は祖父の代より前から、この村を護ってきた住民から絶大な信頼が寄せられている一族なのだ。


彼女の住む地域は、一時は魔物が多く現れる魔境とも言える場所であった。位置的にも「魔の領域」がそう遠くない場所にあるので、それは仕方がないと言えば仕方がない事であった。しかし、技術力の発展により、結界技術が向上。それにより、村の安全性も向上。近頃は魔物の被害というのは殆ど無い程平和になった。



さて、そんな村の少女コァであるが、先ほども言ったように、彼女は八歳である。

八歳という年齢はこの世界では非常に大きな区切りとなる年齢である。と言うのも、ギルドに登録できる年齢が八歳からであるからだ。


ダイアモンドの名に恥じぬ鉄壁の強さを持つ父のような冒険者になりたい。今よりずっと幼い頃から父の背中を見てきた彼女が、父親のその姿に憧れるのはある意味必然であった。


だからこそ、彼女は八歳の誕生日を迎え、ギルドに登録をした時の嬉しさと言うものは底知れないものであったのだ。

また彼女は、魔法の才に恵まれ村の中の同年代では既に敵なしであった。それに加えて好奇心旺盛で、父親が街から持ち帰ってきた本を何度も何度も読み返し、八歳を逸脱した知識を蓄えていた。


コァは今日も村の近くにある薬草の群生地に足を運んでいた。

ここは、魔物の被害などここ十年以上ない場所だ。コァのような初心者冒険者にはうってつけの場所と言える。


「えっと…これは毒草……あ、これはお薬になる。これも、あ、これも……」


黙々と取捨選択を行い、肩にかけた収納袋に薬草を入れていく。この収納袋は八歳の誕生日に両親から貰った大事なものだ。博識な彼女はこれがどれぐらいの値段のものなのか大体知っていた。貰った時は勿論吃驚したが、それよりも両親が自身の立派な冒険者になるという夢を応援してくれている事に対してとても嬉しく、涙を溢した。


「………よし!今日も沢山げっと!珍しい薬草も手に入ったし、またお父さんと街に行かないと」


小さい両手でガッツポーズをする少女は、ふと思った事を口にした。


「だいぶ早くに終わっちゃったな…このまま帰ってもいいけど、まだお昼だし…」


悩むコァ。本来ならば、もっと時間のかかる想定であったのだが、自分自身だいぶ慣れてきたためか、作業効率がだいぶ上がっていたのだ。


取り敢えず、忘れないうちに母から渡されたお弁当を食べたコァは決断した。


「よし、行ったことのないところに行ってみよう」


村周辺の地形は大体知っている。どこまでが安全で、どこからが危険なのかも。だが、知ってはいても、行ったことのない場所は当然ある。折角出来た時間なのだし、そう言うところを確認しておいて損はないだろう。コァはそう考えた。


「もしかすると、珍しい植物があるかも知れないしね!」


未知の場所に行くのは少し怖い。だが、同時に自分の世界が拓けていくような感覚がして好きだ。そこにはどんな世界が広がっているのか、今から楽しみだ。


それから小一時間ほど経ち、目的の場所に着いた。先程の草木が生い茂る場所とは異なり、ここは凸凹とした地形で、高低差がそれなりにある所であった。少女の身長では進むのは難しいが、魔法を使えば問題ないレベルであった。


行けそうな場所を見つけては進み続けて更に三十分。コァは気付いた。


「何か引きずったようなあとだ…」


彼女の見下ろしている地面には細い何かを引きずった様な跡が残されていた。それは地面の柔らかさの影響のせいで途切れ途切れになっていたが、十分見たそのままで追えるぐらい明確な痕跡であった。


ゴクリ…とコァは喉を鳴らした。

魔物がいるかも知れない。コァはそう考えた。


そして彼女は再び迷う。ここでUターンして村に帰って大人に伝えるか。……それとも、自分自身が確認しにいくか。


怖い、とても怖い。でも、この跡を辿ってその主の正体を確かめたい。

そうだよ。何かちゃんとわかれば、大人にも伝えやすい。見るだけ。一目見るだけ……。


静かに音を立てないようにコァはゆっくりと地面の跡を辿り始める。彼女の心臓は体内で大きな音で鼓動を響かせていた。





「ど、洞窟…だ」


少し進めば、木々に隠れた洞窟が見つかった。入り口の大きさは大人二、三人が並んでも入れるくらいの大きさ。地面の跡はこの洞窟に向かっていた。


頭では危ないとわかっているが、彼女の足は徐々に洞窟へと向かい出した。物陰に潜むように静かにそしてゆっくりと彼女は洞窟を進み始める。当然、内部に灯りはない。そのため、コァは父に教わった暗視魔法を唱え、視覚を補助しながら洞窟を進んだ。内部は少し進むと広くなっていき、やがてホールのような開けた場所に出た。


コァはハッとする。


何かがいる_______。


暗い洞窟のその奥。自身より大きな体を持つ何かがいる。それは過去に父親が倒した魔物より小さいが、コァに気付いたのか途轍もない威圧感を憶えさせる。


だが、その威圧感は数秒後には解かれた。全身にかかった重力が途端に無くなったかのような感覚。詰まっていた息も、落ち着いて出来るようになる。


何が何だか困惑するコァであるが、遂にその何かの正体が分かった。


「ドラゴン……だ」


そう目の前にいたのは、白き竜。ナツトとついこの間まで戦っていたあの個体である。尤も、そんな事は知らないコァは、書物でしかその存在を知らなかった竜という生き物に圧倒されていた。


だが、流石名のある一族の末裔なのか、すぐにその竜が大怪我を負っていることに気が付いた。

その竜は、その立派な翼に深い傷を負っていた。いや、それよりも明らかに尻尾が欠けていた。


その瞬間、コァは悟った。この竜はこの傷を癒すためにここにいたのだ、と。

博識な少女は知っていた。竜は純魔に該当し、身体を構成するのはほぼ己の魔力によって形を成した魔素であると。そのため大抵の傷はすぐに治る。だが、この竜はそうはなっていない。つまり、この竜は、それ程の傷を負わすことができる存在と戦闘していた事である、と。


今の所、この竜はコァを襲おうとはしない。コァに構うより、傷の治療を優先しているようだ。少し悩んだ末、コァはゆっくりと竜に近付き始めた。

今からやろうとしている事は、完全に自己満足なことかも知れない。それにいまこの瞬間に殺されるかも知れない。でも、彼女は目の前で怪我を負い倒れる存在を見なかったふりはできなかった。


予告通り今週からは少し番外編です。

一応5話を想定していますが、最終的な話数は例に倣ってわかりません。できるだけ5話に収めたい。


まぁ、どこまで書く気が起きるかって感じです。ここは白き竜にとって、かなり重要になってくる部分なので長くなりそうな気はしますがね。では。

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