表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第6章】初代勇者の学園生活►高等部編◄
120/214

Fp.102 天に煌めくは破壊の冠

これで決める。


ナツトの強い決意を示すかのように帝は強く握られる。

天から取っておいた光属性魔法が「誘導」により降って来て再び帝に付与される。


そう、先程投げた帝を手に戻したように、帝に纏わせた光属性魔法を一度切り離し、遙か上空に飛ばし、温存しておいた。それを呼び戻し再び付与したと言う事である。


この距離、このタイミング。行ける。


極限まで集中しているナツトの視野は広く、竜の挙動一つ見逃さない。ナツトと竜の距離感は完全に剣の間合いで、渾身の一撃を見込める位置である。


だが、世の中そう狙い通りうまく行かないものだ。

ナツトの視界の端。いや、ナツトの足元。僅かに地面が隆起するのを確認した。


不味い!と思う前に反射で身体は動いていた。

誘導で多少強引に回避した。


直後には竜を取り囲むように地面が針のように隆起した。針の一つ一つは人を串刺しにするには十分な太さと長さであった。



こいつ……!頭の中を掻き乱したことで周囲の状況は把握出来ていないけど、自分が来ると予測して魔法を撃ったな。



人間に同じ事をやったらこの反撃はまず出来ないだろう。それぐらいあの攻撃はヤワなものではない。竜はやっぱりと言うかタフだ。


竜が翼を大きく広げ、強く羽ばたく。とても速く上昇する竜を囲むように色様々な光が現れる。そして、それらは竜に吸収されるように取り込まれ、竜自体が純白に輝き出す。




この光り方は、光属性魔法だ。竜の纏う光は、ナツトも今使っているそれと全く同じ輝きである。

違いは剣に纏わしているか、己に纏わしているかということだけ。純魔ならではの使い方だ。何度も言うように純魔の体を構成しているのは殆どが魔素である。

あの竜は自身の体を魔法の媒体として用い、自身に光属性魔法を付与する事で、体を構成する魔素を励起させ、己を魔法と化したのだ。


光属性魔法は、速さ、貫通力に長ける。あの竜がそのことを知っているかはわからないが、「補正」の効果が乗ったほぼ光の速さでの突進はちょっと考えたくない。



…と思っていたら、竜は上空で大きく円を描きながら高速回転を開始した。


どうやら突進というわけでは無さそうだと、ナツトは内心ほっとしたが、逆に竜が何をしようとしているのかわからなくなった。


その間にも竜は空を回り、竜から溢れた光が糸のように宙に漂い始める。

細い一本の光の糸が、竜が何度も回転する事で徐々に紡がれていき、次第に太い輪となる。

さながらそれは天使の輪っかのようだ。


……あれは、ヤバい。

上空に形成されつつある光の輪に内包されるエネルギーは洒落にならない量である。王都レベルの街さえ消し飛ばせそうなぐらいのエネルギーが込められている。


これは、うかうかしてられない。輪っかの完成までにこちらも出来る限りの対抗手段を用意しなければ。


……アレを使ってみるか。光属性魔法と闇属性魔法の混合技を。


闇属性魔法。回りくどいが、光属性魔法を作る際に僅かに発生する闇属性魔法の元になるモノを転用する事で使用可能となる魔法だ。

その元となるモノの一度に生じる量と扱い辛さから多くが使われずに放置される。その場合は自然分解して無くなる。

だが、これを上手く扱えれば非常に強力な手札となる。


闇属性魔法はイメージとしてはネットリと纏わりつくような感じだ。光属性魔法が速さと貫通力に長けるのに対し、闇属性魔法は目的地までの到達が遅く、対象を飲み込み、侵食するような魔法である。


ナツトはこの両者のいいとこ取りをする術に成功させていた。

それ即ち、光属性魔法の速さで進み、対象を貫通する勢いを持ち、また同時に侵食する魔法を開発していた。

シンプルに光闇(こうあん)魔法と呼ぶことにしている。


さて、この肝心となる闇属性魔法だが、これは先程の光属性魔法生成時に作って、光属性魔法同様取っておいた。

早速呼び戻し、光と闇を練り混ぜる。光と闇。対極にある両者は当然普通の魔法のようにしても決して混ざらない。

水と油のような関係であるが、これらを混ぜるには乳化剤がいる。そして、この光と闇を混ぜる場合にそれに当たるものが、毎度お馴染み「誘導」という訳だ。これにより上手く混ぜ合わせることを可能とし、灰色にも銀色にも見える光玉を手にする事が出来るのだ。

これを用いた魔法が、光闇魔法である。


今回は単純にこれを帝に纏わせている。元々銀に光る帝の刀身が、灰色寄りの銀色に光る。後は攻撃の余波を受け流すと信じて、結界の準備を済ませる。


よし、準備完了、だ。


そして、ほぼ同じタイミングで竜の準備も完了したようだ。空には凄まじい輝きを放つ巨大な光の輪が展開されていた。

これからこれが落ちてくることは想像に難くない。狙うタイミングは落とす瞬間。最も敵が魔法に集中する瞬間であり、ここが最大の好機。居合のような姿勢を取り、その一瞬を全神経を集中させ、ただ待つ。


放つ瞬間は本当に一瞬だった。

半径百メートルはあった光の輪は一瞬にして、輪の中心に止まっていた竜の目の前に凝縮し、小さな光の輪となった。

それが地に落とされるその瞬間、ナツトは帝を斬り上げ、そして振り終えた。


太虚斬拓(たいきょきりびらき)


風拓の完全上位互換技。風よりも圧倒的に速く空を駆け抜け、光の輪を真っ二つに切断する。そしてそのまま直線上にいた竜に迫り、斬る。その名に込めた意味通り、空に切断の痕を広げ、まるで空間が切断されたように見せる。


僅かに狙いがずれたか。光の輪を両断できた事はいいが、その後の竜を斬る位置が思ってたよりも外れてしまっていた。切断箇所は右の翼。それなりに深く傷を入れる事ができたが、決定打にはならない場所だ。竜において飛行魔法を制御しているとか聞いた事があるが、片翼削いだ程度では落ちないらしい。


だがしかし。竜には決定的な一撃は与えられなかったが、竜の放とうとした攻撃には決定的な一撃を与えていた。


高密度のエネルギーの塊であった、光の輪を両断した事で、絶妙に保たれていた力のバランスというものが完全に失われたのだ。


つまりどうなるか。答えは簡単だ。地面で爆ぜるはずであった光の輪は空中で爆発する事になる。

「補正」の効果が乗っているのかどうかは知らないが、自身の大技が至近距離で暴発するとなれば、相当なダメージが見込める。なんなら、これで倒せてしまっても不思議ではない。


とにかく、最優先はこの爆発に耐える結界を作り、それを維持することだ。

元々辺り一帯を消し飛ばす威力を秘めた魔法だ。空中で爆発したと言っても、その爆発範囲の違いなど殆ど変わらない。


爆発が起きる迄の僅かな時間であったが、ナツトは想定通り全ての準備を完了した。


そして、それとほぼ同時に破壊の光輪が爆ぜ、その光と爆風が大地を飲み込んだ。



次回で一先ず幕引き。

そして、そのまま番外編へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ