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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第1章】千年前の戦い
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Ep.11 魔王戦

「魔王はどこにいったの?どこにもいないね」

空中でマーヤが周囲を見渡しながら言った。


魔王が転移してから完全に姿が消失した。視界範囲内には完全にいない。逃げるなんてことは考えづらい。どこからか不意打ちの機会でも探っているのだろうか。


「魔法の準備の可能性も高そうね。魔王は魔法の技術も高いし」

ミューカがマーヤに続き意見を述べる。

「もしそうなら発動前までに見つけないと。それに固まっているのはよくないんじゃ…」


そんな時、オルウェルの一言で光が見える。

「…いたぜ。皆、まだ気付いていないふりしておけよ。奴はちょうど俺から見て後方五百後ろだ」


「ナイス!オルウェル。そうか、この手の戦い方はオルウェルの得意分野か」


「仕込みのおかげだがな。転移魔法には俺の能力が相性がいいみたいだ。それで、どう攻撃する?」


オルウェルの質問にミューカが答える。

「私が魔法を撃つわ。詠唱は済んでるし、十分射程圏内よ」


「わかった、それに合わせろってことだな」


ミューカが頷き、言った。

「行くわよ。十連続"獄炎"」


ミューカから帯状に撃ち出される十の上級魔法獄炎。それぞれが赤い光を垂らし螺旋を描きながら少しずつ上昇していく。その様はさながら一つの芸術品のようにとても綺麗であり、ずっと見ていたいと感じてしまう。

ある瞬間でゆったりと螺旋軌道を描いていた獄炎は急に螺旋軌道の中心に集まり、花火のように四方八方に広がった。広がった獄炎のうち魔王のいる方に広がった三つは最速で魔王の下へと進む。これと同時にミューカ以外が動き出す。

残りの七つのうち二つは、ワンテンポ遅れて魔王のところへ飛んでいき、うち三つは地面に沿うように低空飛行で魔王のほうへ飛び、残りの二つは逆にさらに上空へ上昇し上から魔王のほうへ飛んで行った。





魔王は、ミューカの獄炎を見た瞬間に自身の場所がばれている可能性が高いことを悟った。

(あの魔法は、そこそこ魔力が持っていかれる魔法だ。それをわざわざ周囲の地形破壊に使うわけがない。…!やはりな。一気にこちらに飛んできたわ。しかし、どうやって発見したのだ?奴らの現時点でのレベルではこの距離は探知できんはずなんだが…。…今は魔法の処理が優先か!)


魔王はそこそこの火力の魔法で真っ先に飛んできた三つを相殺しようとした。この獄炎は生半可な火力の魔法では飲み込まれてしまい、かえって威力が増してしまう。

そのため、魔王は自身の経験から最終的に中規模の爆発を起こす魔法を放った。


魔王の計算通り、魔王の放った魔法は飛んできた三つの獄炎を巻き込んで爆ぜた。


しかし、ここで一つ魔王にとって誤算が生じた。それは、爆発により生じた煙が想定より多く魔王の視界をふさいでしまったことだ。直感的に魔王はこれが策であったと思った。

そして、次の瞬間にはその直感が正解だと言わんばかりに煙を掻き分け赤い光が飛び出してくる。

ミューカは三つのうち二つを一時的に遅くすることで、そのままのスピードを維持していた一つだけが相殺されるように仕向けていた。結果うまく煙を発生させることに成功し、魔王の懐へと魔法を到達することができた。あのとき魔王がもっと完璧に対処していたら結果は変わっていただろう。


魔王は自身に迫る魔法を見て判断する。いくら強靭な魔王の肉体をもってしても、この至近距離で上級魔法が直撃すれば相当なダメージとなるだろう。加えて、かなりの技量をもった術師だ。進んで受けるのは阿呆の極みと言えるだろう。

魔王は上昇か下降かの二択で上昇を選んだ。今下に降りるのは相手に上を取られることになる。それに、頭の中で考えている作戦を成功させるには降りるという選択肢は論外であった。


魔王の上昇に合わせて当然のごとく追尾してくるミューカの魔法。

つくづく忌々しいと思う魔王であったが、同時に人間がここまでうまく魔法を操作できることに少なからず感心した。

魔王が上昇している間に残りの七発が合流し、実に九方向から魔王に迫る。


(成程…初めからこの形が狙いであったか。素晴らしい腕だ、小娘。…だが、多少のタイミングの差異こそあるがほぼ同時攻撃は失敗だったな)


魔王は上昇中に詠唱していた魔法を発動する。その魔法は、魔法をそこそこ使用できる者なら基本誰でも使用することができる魔法である結界魔法の一つであった。今回はひたすらに魔法耐久性を高くして、それを自信を中心にして膨張するようにした。通常の者の結界ならばこの迫りくる魔法を防ぎきることは敵わなかっただろう。しかし、今回は誰でもない魔王自身が使用するのだ。万一にも突破されることは決してありえない。


魔王は、ミューカの狙いに気付いた瞬間またも二つの選択肢を想定していた。


一つは今回魔王が行った結界に衝突させ離れたところで安全に爆発させる方法。


もう一つは転移を使用すること。転移を行い、術者つまりはミューカを直接叩きに行くことであった。しかし、遠目からでもわかるぐらい警戒している護衛が二人ついているため得策ではなかった。転移も所詮魔法の一種であるのであそこまで警戒されていたら感知される可能性が高い。その他のこちらに向かいつつある二人のどちらかに転移するという選択肢もあるにはあるがここまで戦ってみて、どいつもこいつもやけに攻撃を受け流すことがうまく、瞬殺できない。時間を稼がれるのがオチである。

かといって、変に転移したところで自身に迫る魔法は消えないし、どうせ再び追跡してくることは容易に想像できた。そのため魔王としてはさっさと、この鬱陶しい魔法を潰しておきたいというのが本音であった。


よって、この同時攻撃は魔王にとって嬉しいことであり、確実にここですべて潰しておこうと思ったのである。


素早く膨張する結界。魔王の目論見通り次々と結界に魔法が直撃した。魔法はそのまま爆発したり、二つ、三つと綺麗に裂け、結界に沿うように爆発した。


「ふ、所詮は人間の魔法よ。俺の結界の前には…!?」


魔王は目を疑った。ピシリという音と共に自身の結界に大きなひびが入っていた。そのひびからまるで雲から一筋の日の光が降り注ぐかのようにミューカの獄炎が突き抜けてくる。先ほどまで自身を追尾していたものよりサイズがかなり小さいが、色が先ほどまでの赤よりずっと白に近いことに気付き全身で危険を察知した。それに今は大きく展開しているが空間が限定された結界内である。しかも自身がせっせと防御力を高めた結界である。


「チィィィッ!」

魔王は咄嗟に手を出し、新たな結界を侵入してきた獄炎を包むように作った。その後すぐに爆ぜる獄炎。魔王の予想通り先ほどものより数倍威力の高かったようで簡易な結界は数秒後には砕け散り、結界内を光が包んだ。


しかし、当然魔王だ。これでは死なない。簡易結界が稼いだ数秒でダメージを最小限に留めることができた。回復もじき完了するだろう。

「ハァ、ハァ、やってくれる。まさか、俺の意思関係なく能力を使わされるとは。フハハハ、久々だ、この高揚感は!俺を殺しうる者との戦い。人間はここまで成長できるものなのか。人間を残しておいたのは正解だったようだなぁ!」


魔王の気分は最高だった。命の危険を実感する戦いの経験などこの身には少ない。モラゾールと戦った時以来であろうか。

魔王は少々余韻に浸っていたが、すぐさま思考を戻す。

今目の前は爆発により生じた煙で埋め尽くされている。魔力感知は働いているが、視界が潰されているのは先の例からでもわかる通り、非常によくない。それにこの煙、一言でいうならやけに粘着質だなと魔王は感じた。なかなか晴れる様子がなく、まるで自身の周囲にずっと張り付いている印象を受ける。自身の直感を信じるならば、この煙は魔法で作り出されたものの可能性が非常に高くなる。

仮にこれが魔法由来の煙ではなく自然なものであったとしても、連中は一人一人の実力が高い。魔力の扱いにも長けているみたいなので魔力感知をうまく誤魔化す術もあるかもしれない。もし、それがあるならば奴らの狙いはこの状況そのものである。

そのため、魔王は不要となった結界を解除し、風魔法を用いて煙をはるか上空へ追いやった。


視界がクリアになる。約五十メートルぐらい先に先ほど魔法攻撃が来る前に他三人と離れていた二人が後方より接近していた。

魔王はそれを見てやはりこの煙幕が狙いであったと確信する。先ほどの魔法は確かに素晴らしかったが威力が大きすぎたため支援は難しかっただろう。向こうとしてもさっさと消したかったかもしれないと思う魔王。

しかし、ここでふと疑問が浮かぶ。

(いや、待て、おかしい。煙幕など払うのが当たり前だ。それに煙幕の中から何かを飛び出させるなど同じことを二度も立て続けに普通行うか?…つまり、一回目は煙の中から奇襲すると思わせるための布石ッ!)

魔王は自身が初歩的な思想誘導にハマっていたことに気が付く。しかし、そのことに気が付いても既に後手に回っていた。


「グッッ!!?」

直後魔王は腹と両肩にまるでハンマーでたたかれるような感覚と槍で貫かれるような痛みを感じる。魔法が当たったところが一部炭化していたことから雷系の魔法で攻撃されたと推測された。背後の迫る二人は何もしていない。となると、答えは自ずとわかる。遠くから、残りの三人が魔法で狙撃してきたのだ。迫る二人に気を取られた瞬間に打ち抜いてきたということになる。


(こいつら、かなり距離がある癖に連携が絶妙すぎないか?しかし、魔法通話や念話を使っている形跡もない。…つまり、能力か?このうちの誰かが念話を可能とするような能力を所持している可能性が高いな)


あれこれ思案しているうちに迫ってきた二人が斬りかかってきた。


(いかんな、完全にこいつらの得意な流れにされている。この劣勢を翻すには、必要なものはやはり変化か!)





アルティオは魔王を翻弄して見せたミューカの魔法の腕を見ていつになく気分がよかった。

(よし、ここまでは順調だ。ナツト、行くぞ!)


ミューカの魔法により、アルティオ以外のメンバーも戦意が向上していた。

(了解。万一の時は僕が守るから思いっきりやろう!)


流れは、今完全にこっちに来ている。魔王の実力だけ見れば圧倒的に夏翔たちを超えている。魔王の調子が悪い今こそ最大のチャンス。立て直される前に王手をかけてしまいたいのが夏翔の本音であった。


しかし、腐っても魔王。どんなに調子が悪くても身体強化を施した夏翔とアルティオの剣をうまくさばいていく。魔法もうまく躱したり相殺され決定打は未だない。当然魔王も反撃してくる。

夏翔たちと魔王の攻撃力の差は比べるまでもない。こっちは一撃当てたところで時間がたてば回復される。もちろん夏翔たちも軽傷程度ならすぐ治せる、が魔王の攻撃など温いはずもなく一撃当たればほぼほぼ戦闘不能。当たりどころが悪ければ永遠にさようならもあり得る。


つくづく受けの訓練を積んで正解だったなと夏翔は感じる。そしてそれを仲間に共有しておいたことも。


しかし、膠着状態が続くのは夏翔達にはメリットである。遠くにいたミューカ、オルウェル、マーヤが戦線復帰できるからである。近くに集まればリスクが増えるが、援護がしやすくなるのもまた事実である。


普通ならばこの形になったらほぼ勝ちが確定するのだが、警戒しないといけないものがある。相手からすれば今こそ撃つ絶好のチャンスな筈だ。


唐突に魔王の姿が消え、夏翔達の剣が宙を斬る。魔王が転移を使ったのだ。


「そこだッ!」


オルウェルが指をさし叫んだ。オルウェルのさした方向の先には見るからにやばい魔法を撃とうとしている魔王がいた。否、魔王は見えなかった。魔王の身長以上ある大きな黒と紫の球がそこに浮かんでいた。紫の電気のようなものがその魔法の周囲に発生している。間違いなく規格外な威力を秘めていることがその魔法を見た瞬間感じ取れた。断固回避するべきだが全員が魔王との距離が近く射程内、撃たれたら確実に直撃する。相殺しうる可能性を持つ魔法など今からでは詠唱不可能であり、魔王との距離が近いと言ってもそれは近距離戦の距離ではなく魔法戦、遠距離戦の距離であった。つまり今更なすすべなし。不可避の状況であった。


夏翔はそれを見るや魔王に突撃した。


魔王はそんな夏翔をみて笑みを浮かべ、次の瞬間には魔法を撃ちだした。

この魔法には溜などない。それでいて威力は魔王の放つ魔法の中で最大の威力。欠点は魔力消費が大きいだけ。地形など簡単に抉りとれる。地図を書き換えることなどこの魔法の前には朝飯前だ。


確か以前モラゾールがこの魔法を真似て剣に乗せたものを作っていたなと魔王はふと思う。

滅亡の光線が視界の前方を埋め尽くし、消し去っていることだろう。その光はいかなる命も平等に死を与える。苦しまずに一瞬で逝けたことがせめてもの慈悲だと魔王は思う。


魔王が悦に入っている時であった。腹に痛みが走る。先ほどの魔法の効果がまだ残っていたかと思った魔王は自身の腹を見て驚愕した。

剣だ。魔法を付与された剣が腹に刺さっている。しかも柄には手がついている。


「ば、馬鹿なッ!」


その手は剣を魔王から引き抜くと、今度は魔王の左肩から斜めに魔王の体をその剣で両断した。




ミューカ強いゼ回。



主人公いつ転生すんだぁ!?と思っているそこのあなた。大丈夫です、作者もいつ転生するのかもわかんなくなってきましたw

書いてたら、あぁこれも追加しよう。あぁこれも、これも、これも…endless…となっちゃいまして…はぁ


ホントは十話で転生までいけるかなーって思っていたんですが無理でした。ホントドウシテコウナッタ。


いや、なんとか十五までにはもっていく予定。では。

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