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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第6章】初代勇者の学園生活►高等部編◄
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Ep.101 信じる事は反撃の糸筋

炎が消えた後に現れたその景色からその威力は笑えないものであったことがわかる。竜の前方四十五度に広がっていた木々はすべて燃やし尽くされ、灰すら残さなかった。


だが、そんな被害よりも腹の怪我の方が大変だ。

魔法で怪我を誤魔化し、無理矢理動いている状態である。魔法という力がなければ動けないぐらいにはキツいし、気絶していてもおかしくない。急所を貫通されていないことが幸いと言えるかもしれない。

いや、急所に当たっていたら死んでるな。


魔力が続く限り戦闘は出来るが、この連戦で予想以上に魔力を消費している。長期戦はまず無理だろう。

反撃の手はまだあるが、確実に当てなければいよいよ不味くなる。


正念場だ。


しかし、「権能:補正」…か。

名前しかわからないが、ここまでの戦闘内容からその力は引くレベルに理不尽なものであるのは確かだ。恐らくだが、自身の考えた事などを無理矢理起こさせるような能力なのだろう。


だから、先程は尻尾で突き刺すと言う行為において、ナツトにこれを行うというそのビジョンを忠実に実行したと言う事だろう。

これを達成するのにおいて障害となるあらゆる要素を突破して、だ。


それならば結界の方も説明がつく。守り切ると言う絶対的なイメージがあり、それが能力を通して発動されたと言う訳だ。


だが、これは自身が起こしたい事象の明確なイメージが出来なければ扱えない力だ。想像力豊かな人間ならまだしも、この力を有すのは魔物である竜だ。このことからも竜という魔物がいかに他と一線を画すのかよくわかる。





……いや、違う。何かおかしい。

何だ?この違和感は。何か一つ見落としている気がする。


ごく短時間の思考の中、僅かな引っ掛かりを覚えたナツトはそれが何であるかを全力で考える。と同時に、様子見が終わった白き竜が動き出そうとした。


だが、今度は竜よりも早くナツトが仕掛けた。突進しようとした竜に目掛けてナツトは手に持っていた帝を全力で投げた。

当然誘導の効果を乗せているので結界は突破できるだろう。当然それを知っている竜は突進を瞬時に止め、回避行動に移る。


しかし、帝を回避した竜は回避直後に腹に強い衝撃が走った。

そこにはナツトがおり、竜の腹に蹴りを入れていたのだ。ナツトは帝を少し高めに投げ、追加で「誘導」にて竜の視線を帝に誘導して、地面がギリギリ視界に入らないように仕向けた。

その後すぐさま、上体を低く保ちながら急速に接近し、帝に釘付けとなっている竜に対して誘導の効果を乗せるに乗せた蹴りを入れたのだ。


鱗のせいで蹴り自体のダメージはそこまで期待できない。だが、蹴り込まれた誘導付きのナツトの魔力が竜の体内で暴れる。本来ならば内臓を掻き乱す感じなのだが、純魔には残念ながら内臓はない。しかし、純魔の体内は魔力が満ち満ちているので、それらをぐちゃぐちゃに掻き乱し狂わせることは非常に効果的である。


魔力の流れが狂えば一時的に敵の攻撃防御ともに緩くなる。そこに追い打ちを加えるのだ。


「帝!」


投げた帝は事前に誘導を使っておけば、好きなタイミング好きな場所に持ってくることができる。


思考がクリアだ。追い詰められて逆に脳の処理能力が向上しているみたいだ。不要な情報は排除され、必要な情報だけが瞬時に処理される。


思い通りに手に収まる帝。勿論、そのまま蹌踉めく竜に斬りかかる。


「風…拓ッ」


今度は当てた。竜の左半身を広範囲に斬った。血の代わりに吹き出すのは体内にあった魔力だ。これでお互いにそれなりの攻撃を与え合った事になる。


「意外と浅いな」


だが、思ったより鱗が硬く傷が深くならなかった。


___ならば追撃だ、と返す刀で斬ろうと考えたが、次のアクションは竜の方が速かった。


至近距離での「竜息吹」だ。


やはりゼロ距離発射は可能なようだ。出が早い。回避は間に合わない。


振り下ろしている帝が間に合うが、果たして反らせるのか?


脳裏に過るのは先程の光景。ナツトの能力を突破し、腹に突き刺さる竜の尻尾。


不安になる。これを防げるのか、と。




……いや、違う。そうじゃない。そうか、そうだったんだ。自身も未熟だったが、相手もまた未熟で成長段階なんだ。


ナツトは今この瞬間に至ったその仮定が、真実であると信じ、己の権能を全開で解放する。一瞬、疑ってしまったが、それを頭の中で払い取り全幅の信頼を能力に寄せる。


「権能:誘導」なら斬れる_______と。


ゼロ距離での剣と竜息吹の正面衝突。


ナツトの至った仮定は、「この竜は己の権能の正体を完全に把握できていないのではないか」と言うことだ。権能の正体を知らないから、感覚で使っており、その真価をまだ発揮出来ずにいる。そうでなければ尻尾で突き刺す以前に竜息吹でナツトが結界で凌げるはずがない。


結界や物理的な攻撃は何度も何度も目にしているから竜もイメージはしやすい。だが、竜息吹などの超広範囲の魔法においては、使用中視界がそれらに埋め尽くされる。その際、敵が燃え尽きる、いや消し炭になるイメージが付かないのだろう。だからこそ、能力の乗りが悪くなる、そう考えた。


であるならば、より明確で強力なイメージを持って能力を使えば打ち勝てるはずだ。


魔法は想像力の戦い。相手より、より強く確かなイメージを持つことができる者こそが、戦闘を優位に進めることができる。

そして、それにおいてナツトは強い。戦闘では殆ど使用していない「権能:記憶」により、竜息吹を斬るイメージは容易に作れる。なんたってついさっき、「誘導」にて竜息吹を余裕で凌いだ記憶があるのだから。


息を止め、歯を食いしばりただ目の前に迫る業火を斬ることを考える。

遠くから見たらナツトが炎に呑み込まれたようにしか見えないだろう。しかし、その内部では確実に帝は炎を裂き、その刃が竜に迫っていた。


竜息吹が放たれたのはほんの数秒にも満たない間であった。しかし、ナツトにはそれがとても長く感じられた。


首を切断するべく放たれた斬撃は、その途中で完全に止められた。竜は竜息吹を突破した帝を反射で受け止めたのだ。竜は自身の歯で帝を受け止めている状況であり帝を噛み砕こうとするが、どうやらそれは叶わなかったらしい。

そうなれば力の対決になる。


当然の事ながら人間と竜ではその力の差は歴然である。だが、この世界には魔法がある。身体強化の練度次第では、一時的とはいえ竜とも渡り合えるぐらいには強化できる。


ほんの一瞬の膠着状態。そこで繰り出される竜の次の手は、爪による斬撃か尻尾による突き刺しである。


竜が選択したのは後者であった。僅かに宙に浮かぶ竜にはこちらの方がやりやすいようだ。先程同様鋭く速い突きが無防備のナツト目掛けて繰り出される。


だが、これは初見ではない。二回目だ。どれくらいの速さとかすべて知っている。


タイミングの戦いだ。


身体強化を全力で行き渡らせ、「誘導」にて身体の動きを補助する。足の裏に風属性魔法を発動させ、宙に丸まるようにして浮かび上がる。腹の高さに突き出された尻尾より高く上がる事でこれを回避し、足を浮かしたついでに竜の顔目掛けて膝蹴りを入れる。

当然先程の蹴りと同様、体内を掻き乱す効果を付与してだ。


純魔とは言え、急所とも言える場所にモロに攻撃を受け、その効果で竜は再び蹌踉めき、咥えていた帝を放す。これで再び状況はこちらが僅かに優勢になった。倒し切るまでこれをひたすら押し付ける。そして、今度は取っておいた光属性魔法を使えるだけの余裕がある。



ここで、決める…ッ!








100話到達に続き、祝pv10,000越え!


いやはや驚きです。

これだけの回数見に来た人がいると言う事が想像し辛いというか。


ただただありがとうございます…ですね。では、また次回。

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