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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第6章】初代勇者の学園生活►高等部編◄
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Ep.99 灰色の髪の勇者と、純白の竜

ナツトの目の前に現れたのは体長約三メートルのスラリとした純白のドラゴンであり、頭部に琥珀色に輝く立派な一本角を有している。また、尻尾も長く体長と同じぐらいの長さだ。とぐろを巻くように丸め、邪魔にならないようにしているようだ。


一目見てナツトはこのドラゴンの正体を察した。記憶の中に、ギルドの指定警戒魔物のリストに入っていたのを思い出したのだ。あれは、ナツトが中等部であったときにニュースとして世界各地に知らせがあった。

それは伝説であるオリジンドラゴンが生まれたという知らせだ。報告者はSランク冒険者のシヴという者。そのドラゴンの特徴は白い体に燃えるように真っ赤な瞳である、と。

そして、目の前にいるドラゴンは白い体をしているし、その両眼は真っ赤である。ツノが生えていたという報告はなかったと記憶しているが、幼体である、とあったし成長なり何なりで生えてくることもあるだろう。


そして、何よりも大事な事は、何かしらの能力を有しており、魔法も対象となるような「強化系の能力」であるとその冒険者は予測していた。


ただでさえ、ドラゴンは強いのにその力を底上げする強化系能力とは面倒な事この上ない。厄介である。


しかし、この個体がそのドラゴンならかなりの距離を移動している。報告があった場所はこの魔の領域よりずっと東の方角だ。途中にいくつもの街があるし、一切の発見がなくここまで到達するのはなかなかに不自然である。


…もしや、別個体か?

いや、こんなに特徴が一致するドラゴンなんてそうそういるものなのか?


そうだ。確か通常の鑑定魔法はギルドにて日々更新されているんだったな。このドラゴンに関する情報もあるかもしれない。


ナツトは手早く鑑定魔法を発動し、これを確かめた。


結果は見事ヒットし、鑑定魔法にこのドラゴンの魔力情報が登録されていた。


成程確かにこの個体は数年前に東の方で見つかったものと同じ個体らしい。となってくると、やはりここまで誰にも見つからずやってこれた経緯を知りたくなるが、どうやら様子見は終わりのようだ。







白き竜がナツトに興味を持ったのは偶然であった。


この森に来たのもただなんとなくであった。


ドラゴンは確かな意志を持ち、人と同じく思考する。だが、その知能は人を凌駕する。更にドラゴンは純魔である。体は周辺の魔素で構築されており、アルティオ達と同じように体自体が魔法のような存在なのだ。違う点は生まれた時からそうであったか否かだけである。そのため、魔力の扱いというのも人を遥かに凌駕する。


数年前シヴと交戦したこのドラゴンは、幼いながらも明確に物事の判断ができた。戦闘後、ドラゴンは考えた。

先刻まで戦っていた人間は強さこそ差があるが数が多かった。彼らはどこかに逃げたようだが、そこにはきっとたくさんの人間がいるはずだ。そこにはさっきの奴のような自分と戦える個体もいる。森の中では大した脅威はもういないが、人間たちの住処には自分と戦える個体が沢山いるかもしれない…と。だとすると面倒だ。戦闘経験を積むことは大事だが、下手に巣を刺激するのは万が一のことがあるかもしれない。


ドラゴンはそう判断して、人の街を見つけたらその遥か上空、雲の上を飛ぶか、シヴから見て盗んだ転移魔法で見つからないように移動してきた。幸いにも人間の街というものは目に付きやすく、回避が簡単であった。


そのまま転々と、居心地の良い住処を探しているうちに気が付けばこの森に辿り着いていたのだ。


この森の生き物は他の場所よりずっと交戦的であった。数多の魔物が自身のテリトリーに突如として現れたドラゴンに戦いを挑んでは圧倒的な力の前に敗北した。

世界最恐の場所の魔物でさえ、このドラゴンに勝つ事は叶わなかった。ここの魔物たちは人間とは異なり大した群れは作っていないのが殆どであるので、戦闘訓練の相手としては上々であった。


気が付けば、ドラゴンのいる場所から魔物は居なくなっていた。縄張りを放棄する事を魔物たちは選んだのだ。


しかし、ある魔物だけはドラゴンのいる領域に残り、更にはこのドラゴンを喰らおうとして何度も何匹もやって来た。


それはスライムであった。種類にもよるが、ここの魔物の中では中の下程度の魔物である。しかし、不意を突いて上位の魔物を喰らう事でその評価は一変する。より多くのより強いものを食べる事で力を付けていく魔物。それがスライムであった。その習性のせいか、スライムたちはこのドラゴンを必死に食べようとした。

この辺りの魔物を意図も容易く追いやったこのドラゴンを食べることができたら、更なる力を得られる。スライムたちはそう本能で決断し何度も何度も向かっては消し飛ばされていた。


ドラゴンもこのスライムの生態には興味を持っていた。毛頭食べられるつもりはないが、獲物を喰らい、その姿に擬態するというスライムのその特性が気になったのだ。

ドラゴンはスライムを見て、理解する。体の構成成分は自身と殆ど変わらない。違うのはスライムとして生まれたのか、それともドラゴンとして生まれたかというだけ。

ならば、この特性を真似る事が出来るのではないだろうか?


それは通常ならばあり得ない話であった。ドラゴンはプライドが高く、自身より劣る種族には見向きもしないというのが一般であった。だが、このドラゴンはそれを知らないでここまで成長した。目に映るもの全てに興味を持ち、得るものがないか探す。

性格、という要因もあるだろうが、この好奇心こそがこのドラゴンが幼くともここまで強力な個体にした理由であった。


さて、スライムの特性を真似ようとしたが、これがなかなか上手くいかった。先ず、鱗が中々に厄介であった。鱗は自身の膨大な魔力が結晶化したいわば魔石である。これが体を変化させる上邪魔になる。

そして何より何に擬態すればいいのかわからない。スライムの擬態も厳密には魔法の一種である。スライムの場合、対象を食べる事でその対象が持つ魔力の残滓から情報を得るので綺麗に擬態できるが、ドラゴンはそうではない。そもそも擬態するために獲物を食べようとした事がないので、そんな獲物の情報とか姿とかいちいち覚えていなかった。


今度何か食べる機会があったら、魔力の残滓をしっかり意識しながら食べよう。

ドラゴンは、そう考えていた。






そして今日。

最近ずっと粘着して来ていたスライム三体が討伐された。一匹は地竜を喰らい戦闘相手として楽しかった。残り二匹はそこまでであったが、連携が珍しくよく取れていたと記憶している。


その二匹が人間を食べたのだ。ドラゴンは楽しい戦いが出来ると無意識ながら期待した。

しかし、その少し後にやって来た人間三体によって彼らは討伐されてしまった。


楽しみが潰されたので少し不機嫌になるドラゴンであったが、スライムを倒した人間のうち一人が見たことのない魔法で倒していたのが気になった。


派手な魔法で二体倒した人間は、確かに強そうだけど興味はそこまで湧かなかった。それなら自分でも似たような事を出来るからだ。

しかし、もう一人の方の魔法は派手ではなかったが、確かにスライムを倒した。


いつもちょっかいをかけてくるスライムを日々討伐していたドラゴンは、その討伐の面倒臭さを理解していた。完全に蒸発させないと死なないスライムを倒すのは意外と神経を使う。


それを知っていたからこそドラゴンはナツトに興味を持ったのだ。派手な攻撃をせずに面倒なスライムを倒す魔法使い。戦ってみたいと思ったのだ。


そこからはナツトに向けて熱線を飛ばし、追いかけ回した。


しばらくして、その人間だけが残り自身を待ち構えた。




ドラゴンもナツトも直感で理解していた。

この戦いは、この人生において最初に経験する重要な戦いとなる事に。


一人と一頭の初めにして、運命を決めた戦いがここに始まった。


まさかの戦闘始まらないという。


ナツトを追いかけ回した理由で一話取るとは…。

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