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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第6章】初代勇者の学園生活►高等部編◄
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Ep.98 ファーストコンタクト

「おい!いい加減当たれよ!」


苛立ちを隠せないのはマトラスであった。目の前にはご馳走が転がっている。それらを食べるのを邪魔するのがシュルベルトであった。


シュルベルトは負傷している二人を風魔法にて浮かしながら、マトラスの攻撃をすべて躱すか、持っている盾で無効化していた。完璧に距離を管理し、付け入る隙をまるで与えなかった。


他の人型と竜型のスライムはチェザンとナツトが受け持ってくれたので、集中して二人を守ることに徹していた。チェザンと同様に魔の領域に関して言えばベテランである彼は、マトラスの挙動から次にどのような攻撃が来るか完璧に把握し、それを防ぐ。

一度も間違えることなくそれをやってのけるあたり、シュルベルトは化け物のレベルにいると言えるが、それをされているマトラスからしたらたまったものではない。

自身の手が完璧に防がれる。マトラスは口でこそ強気な姿勢を見せているが、内心は目の前にある大盾の男をいかにして突破すればいいのかわからない状態となっていた。

しかし、シュルベルトからの攻撃は全くと言っていいほど飛んでこない。怪我人二人を守ることに全力を徹しているためだとマトラスは判断している。

確かに攻めあぐねているが、自分だけが攻撃できることこそがシュルベルトに対しての唯一の優位であるとわかっていた。


だが、マトラスが攻め切る前に戦況は動いた。遠くの方で轟音がした。


「チェザンの奴、またでかい音を立てやがって。魔物を呼んだらどうするつもりだ」


その轟音がどういうものなのか知っているシュルベルトは顔を顰めながらそう言った。


マトラスは嫌な予感がした。頭の中ではそんなはずはないと思っているが、嫌な予感はどうしても払拭できなかった。


「地竜の方が消滅したな」


「ふん、でまかせを言うな。アイツは俺たちの中で最強なのだからな」


「チェザンの方が強かった。それだけの話だ。魔の領域にいるだけあって世間知らずのようだな。その人間の記憶を知ってもそれなら余程の阿呆だぞ」


「ふっっっざけるなァァァ!!」


戦闘の中でシュルベルトはマトラスが一見クールに見えるもの沸点が低いことを何となく理解していた。試しに軽く煽って見たら予想以上に怒った。


マトラスが怒りで一瞬周りが見えなくなった瞬間、何処からともなく金に輝く杭が四つ、マトラスの周りに正方形を形作るように地面に刺さった。


「何だこれは!?」


「雷杭牢」


直後、杭間に電気が流れ、内側にいたマトラスは感電し、動けなくなる。


「お前!サハリィの餌!?」


槍を刺したのはナツトであった。サハリィを討伐後、一番負担をかけているシュルベルトのもとへ駆けつけ、参戦のタイミングを窺っていた。それを察したシュルベルトが、挑発によりナツトに気付かないように仕向けたのだ。


止めの魔法を発動させようとしたナツトを、シュルベルトは制止させた。


「必要ない」


その瞬間ナツトたち上空が影で覆われた。そこには何やら大きく球状の結界を展開したチェザンがいた。


「よくやった!シャック、後は俺に任せろ!」


「退避するぞ!」


シュルベルトがナツトに声を掛ける。言われるまでもなく、ナツトは退避の準備をした。間違いなくここにいたら巻き込まれる。


「行くぞ!隕石落下(メテオアタック)!」


結界が炎に包まれ、凄まじい勢いでマトラスのいた地点に激突した。轟音と共に落下地点に大きな穴を作り出した。再生力が高いスライムであっても、これには耐えられなかったらしい。


煙の中から堂々と出てきたのはチェザンは、すぐに本部へ戻ろうと提案した。


「予定ではあと数日潜るつもりだったが、こいつらの毒もあるし、切り上げるぞ。今の音で魔物が寄ってくるかもしれないしな」


「撤退は賛成だが、魔物の件は完全にお前のせいだ」


「なんのことやら、だな。シャックもよくやったな」


「どうも。…あ、そうだ。一つ気になる事が」


「何だ?」


「戦闘中、敵が気になる事を言ったんです」


「気になること…?何だ___ 」


そこまで言ってチェザンは不意に話すのをやめた。三人ともあることに気付いたのだ。


「なあ、シャック。それって何かしらの生物を指すような話か?」


「……そう、ですね。スライムが明確に食べたいと思う存在がいるみたいだと言うつもりでした」


「成程。シュルベルト、帰る準備は?」


「とっくに出来ている」


「よし、ではてっ____たいの前に回避ッ! 」


チェザンの声がかかる前に全員は回避行動をすでに開始していた。

移動後すぐに、元いた場所に赤い熱線が通過する。それは、燃えるよりも早く木々を溶かし、地面を黒く焦がす。


明らかにナツトたちを狙った魔法による攻撃だ。見たところ熱線照射だと思うが、発射地点はナツトたちより五百メートルほど離れた所である。


「エグいな、魔物でこれほどのレベルの魔法を使うのはレアだぞ。もしかして人か?」


その威力を見て素直な感想をこぼすチェザン。


「わからん、だが負傷者がいる今だと不利だぞ」


「そうだな、やはり撤退一択…。シャック、来るぞ!」


また同じ熱線が今度はナツトに向かって飛んできた。ナツトは他とは別方向に回避していたので、一人であった。


風拓(かざびらき)


一閃。熱線は二つに裂かれ、ナツトの左右を通り過ぎて行った。


「無事だったか!何かしらの魔物のテリトリーに入っていたのかもしれない。急いで離れるぞ」


完全直撃して死んでしまったのではないかと内心思ったチェザンは、ナツトが無事で安心すると共に、的確な指示を伝える。

ナツトもこれに従い、迅速にかつ最速でこの場を移動した。


シュルベルトは一足先に負傷者二名を連れて移動を開始していた。負傷者二人は気を失っているらしく、一刻も早く専門の者に見てもらわないといけないようだ。

二人はすぐに追いつき、共に周囲を警戒しながら走った。


しかし。


「まだ追ってきてますね」


移動開始から十五分ほど。謎の存在はかなりの速度でナツトたちを追跡して来ていた。


「みたいだな。道中仕掛けた魔法陣(トラップ)も効き目が悪く、しかもあちらの方が少し速いな。スピード上げるか?」


「それだと周囲の警戒が疎かになるぞ」


「そうしても、ギルドまで着いてきたらもっと面倒な事になりますよ」


「……厄介だな。おっとまた来たぞ。躱せ!」


またしても、熱線が飛んで来る。

熱線はそれなりの頻度で飛んできており、どれも狙いが完璧である。たまには外れて欲しいのだが、どれもナツトのいるところばかりに…。


…ん?


「二手に分かれませんか?」


それはある意味、賭けの提案であった。こちらのペースが向こうに劣っているのはシュルベルトが回復を施しながら走っていることにある。敵に警戒しながら、回復して、走る。この三つの事を並行して行っているため、結果的にペースは遅くなる。


だが、敵を引きつけることができれば、その警戒するという事に対する意識が減少する。


ナツトは自分が敵を引きつける役になり、二人はその間にギルドへ直行する。シュルベルトは走りながら回復処置に全力を尽くし、チェザンがシュルベルトの分も周囲の警戒を行う。これが今取れうる最善だと判断した。


敵は何やらナツトに焦点を当てている感じがするし、この作戦の成功率としては高いと思われた。


「悪くないが、シャック。お前は生き残るのか?死ぬつもりならリーダーとして認められん」


リーダーとして、チェザンはナツトに言った。そう、この作戦は当然引き付け役が最も危険である。普通の場所であってもこの役は死に役である。しかもここは魔物の絶対的な領域である『魔の領域』だ。死亡確率は段違いである。


追ってきている存在は何かしらの妨害魔法かでその姿もよくわかっていない。そんな道の相手に対して一人だけ残るというのは無謀でしかない。


「死ぬ気は毛頭ないですよ。時間を稼いだら全力で離脱します」


そう言うナツトの顔をチェザンは真剣に見た。次の瞬間には、チェザンの判断は決まっていた。


「行ってこい。後で御馳走してやる」


「はい、行ってきます」


許可が降りた瞬間、ナツトはもうそこにはいなかった。瞬間的に切り返し、二人から離れていた。


そして、その瞬間ナツトに向かって熱線が飛んできた。

これで確信である。謎の存在はナツトに対して明確に攻撃を繰り出している。


「お、ここがいいな」


走っているうちにかなり広く開けた場所に出た。ここなら見通しが良く向かい打つのに丁度いい。


「…さて、何が出るか」


ナツトが止まったことで、謎の存在との距離はどんどん近くなっていく。次第に木々を薙ぎ倒す音が聞こえてき、そして遂にそれは森から現れその姿を晒す。


「これは、また随分と大物が出てきたな…」






そこにいたのは純白と銀の鱗を持った、神秘的な竜であった。




死亡フラグが割と立っている主人公。


さて、本来ならば、2章で出会うはずだった両者。

随分と遅くなったものです。


というか、コイツ。去年も新年明けて少ししたら出ましたね。一年周期で登場するつもりなのかな?

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