Ep.91 きっかけ
約束の時間まではあと少し。予定通り二十分ほど早くに受付ロビーに到着したナツトは、ロビーを探検していた。当然と言えば当然だが、ここ「冒険者ギルド総括管理指令組織」は人類未踏の超がつくほど危険な『魔の領域』の最前線基地でもある。ここにいる人々は皆、一流の冒険者ばかりだ。見たこともない如何にも強そうな装備はそこにいる冒険者たちの実力を表しているようであった。
さて、そんな場所の依頼というものはやはり『魔の領域』に関するものばかりである。興味があるが故に食い入るようにそれらを見ていたナツトであったが、どれもAランク以上が前提の依頼であった。Bランクのナツトでは残念ながら受けることはできなさそうだ。
それに加えて、必ず三人以上で依頼を受けるように注意書きがされており、それだけで『魔の領域』と言う場所が如何に危険な場所であるのか推し量ることができる。
依頼は基本的に調査がメインである。いかんせん、わからないことだらけの場所だ。魔物を倒すことは最小限にしてリスクを減らせということだろう。
どうやら、最近は魔物の数がパッタリと激減したエリアと急増したエリアが出ているそうだ。前者ではその調査を、後者ではどのような種類の魔物が多いのかという調査依頼や、その溢れた魔物が人類に影響しないように数を減らす討伐依頼が出ている。
「はい、シャック様。手続きが完了いたしました。こちらへどうぞ、総帥がお待ちです」
約束の時間となり、受付にて取り継ぎをお願いした。その様子は周りの冒険者たちに見られていたが、そこに込められた感情は侮りや軽視のような蔑むものではなく、目の前の総帥に会おうとする男の子がどのような者なのかという単純に興味がほとんどであった。
それにここの人たちはとても弁えている。
と言うのも、無許可で人に対して鑑定魔法を行うのは御法度とされている。しかし、そのあたりを弁えない輩も一定数存在し、鑑定魔法を行使してくるのだ。ナツトも何度か経験がある。だからこそ、偽造魔法を常に施しておくことが大事であるのだ。
対してここの人達はそんな失礼なことは一切しない。一般常識であるからというのももちろんだが、自身が戦場で培ってきたその目でナツトを見極めているのだ。
何も、鑑定魔法を使うなという訳ではない。有用な魔法だし、日々更新されて便利になる。但し、使い所はよく考えろ、ということだ。
さて、そんなどうでもいい話は置いておくとしよう。
ナツトは受付の女性に案内され、転移魔法にてギルド本部内のどこかの部屋の前に転移した。
受付の女性が荘厳な木の扉を三度ノックする。すると中から「入りなさい」と一言聞こえた。
受付の女性は扉を開け、ナツトを中に入れると、「失礼します」とお辞儀をしながら言い残し扉を閉めた。
正面を見る。
重厚感漂う立派な焦茶色の机には何やら重要そうな書類が積み重なっていた。
その机に向かって椅子に座る女性が一人。頭のてっぺんにあるアンテナのような癖毛が特徴的な、長く濃い金髪を靡かせ、まるで見る者を惹き込むように輝かしい金の瞳がナツトを捉える。また、彼女の髪の隙間から普通の人にはない特徴的な長い耳が彼女がどのような存在であるのか告げる。
彼女こそ、残り少ないエルフの一人にして、冒険者ギルド総括管理指令組織の総司令官、ティアメシア•サーラ•アーティアゴである。
「初めまして、ナツト様。ようやくお会いできましたね」
その微笑みはとても優しいものであった。彼女とはこれまで会ったことがないにせよ、彼女もナツトと同様千年前の闘いを知る者の一人だ。それに書物や伝聞のみであるが、ナツトの死後の世界の動き、暗黒戦争での出来事は知っているつもりだ。彼女の最初の挨拶のには、遠い過去を思い起こすような「響き」が感じられた。
お互いに挨拶を済ませた後、ナツトは机の隣に設置されたソファに案内された。
「まずは、感謝を、ナツト様。魔王戦争時、世界を救っていただきありがとうございました」
「っや、止めてください!」
開口一番、深々と頭を下げてそんなこと言われるとは思わなかった。急に礼を言われ、焦るナツト。
「いえ、ずっとこの一言を貴方様に言いたかったのです。千年前、魔王そして邪神を倒して世界を救った英雄である貴方様は間違いなく私の恩人の一人なのですから」
「そ、そうですか。あ、でも“様”と敬語は止めてください。慣れないので」
「ふふ、そうですか…わかりました。では、ナツトさん、と」
「まぁ、それなら…」
「ありがとうございます」
少しの間、簡単な世間話をした後、話題は冒険者ギルド関連のものになった。
「この冒険者ギルドという組織は多くの国の支援のお陰でこの世に生まれました。以来、過去の私と同じような悲劇を被る人が現れないようにと、努めてきました。ラーテル王国からの支援は大きく、暗黒戦争後の混乱した世界の中でこの組織が生き抜くだけの力を与えてもらいました。でも、あの頃はアルティオさんもミューカさんもみんなどこか無理していて、なんだか申し訳なくて…」
そう語る彼女の表情は暗かった。確かに暗黒戦争後はアルティオ達が祖国を失った直後であったため、彼女の感じたことは間違いないだろう。アルティオ達は、人前で隙を見せることはしない。本心を押し殺し、いつも通りを演じるのだ。そのとき、傍にいることができたらどれほどよかっただろうか。場の雰囲気につられ、ついそんなことを考えてしまう。
「ですが、つい数年前。ナツトさんが転生を果たし、ギルドの会員になったときは心臓がひっくり返るかと思いました。実はあのときすぐに私はアルティオさんに連絡を取って、その旨を伝えたのですが、通話越しでもわかるぐらい声が喜んでいました」
そうだったのか。自身が転生して当初の頃は裏でそのようなやり取りがあったのか。ちょっとそのときの彼の表情を見てみたかったと思ったのは内緒である。
それから少し時間が経ち、二人はそれなりに打ち解けていた。ナツトはティアメシアは「基本的にきっちりとした人だけど、気が抜けたときなどでたまに天然っ気がある人」と認識した。一方でティアメシアはナツトのことを「アルティオから聞いた通り、真面目で少し堅いけど、意外とノリもいいし話せば内容が膨らみ楽しい人」と認識した。
「そういえば、アルティオさんが来るまでかなりの日数あるけど…どうするの?」
「魔の領域に興味があるからちょっと見るだけ見てみようかな、と。入るにはAランク以上である必要があるみたいだから、入らない程度に散策でも」
「…あ、そっかナツトさんは今Bランクだったね」
「そうです」
「あ、宿泊は気にしないで。こっちで____ 」
その時だった。部屋の扉が勢いよく開けられた。入り口の前に控えていた女性が制止しようとしていたようだが、叶わなかったらしい。
「ティア婆!!まだか!???」
入ってきたのは、細身だが見るだけでもわかるほど強そうな三十代ほどの男性だ。“婆”と言っているが、エルフではなさそうだし、関係が見えてこない。
「んなッ!婆さんじゃないです!」
このときはこの出会いが、ナツトにとって更なる運命的な出会いに繋がるとは思ってもいなかった。
この前、機会があって超がつくほど久しぶりにUSJに行ってきました。
最後に乗った絶叫系は一体いつだったのかと思うほど久しぶりでした。
で、その中で「ザ・フライング・ダイナソー」ってありますよね?あの倒れるヤツ。
絶叫系はいけるクチなので楽しかったのですが、乗ってるときふと「飛行魔法ってこんな感じなのかな」とか「なろう系ってみんなビュンビュン飛び回っているけど、みんな絶叫系余裕なのかな」とか考えちゃうんですよね…。
普段からこういうものを作っている手前、仕方のない事ですね。
というか、他の作者さん達も同じこと考えているのかな?と思って見たり。
でも、こういう体験ってとても書く上で参考になるんですよね。やはり実際に体験するのが一番効果的だし早いってね。
ではでは。




