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蛮族、宇宙を行く!  作者: モコ田モコ助
第一章 成り立ち

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9/20

*.ダークエルフ


 食事が終わると、ガイア人はそれぞれ幾つかのグループに分けてエルフの里を見学する事になった。


 フアンと従兄弟は機械とやらの見学。

 ヴォッシュとゲオル氏族と叔父さんは、町の見学。

 ミルケル氏族は、商店と美術館とやらの見学。

 アドルはエルフの礼儀作法について。

 ビアンは、お風呂と美容らしい。


 

 残ったベンドは、マリーマリア女王とリンナメンナに招かれ、不思議な部屋に通された。

 窓のない部屋。さほど広くない。松明やランプがないのに部屋が明るいのだ。


「ベンド陛下に、我等エルフの秘密を打ち明ける刻が来たようです」

 エルフ氏族の秘密とな?


「あっ!」

 ベンドは息を呑んだ!

 女王が手を振ると、照明が消えたものだから。

 夜になった! 全天に星が散らばっている。前後左右上下が夜空!

 足下に床が見えない。足は床を確かに捕らえているのに。

 まるで夜空に浮いている様だ。


 マリーマリア女王とリンナメンナは!? ベンドの横に立っている。


「ご安心を。これは機械的に再現した宇宙の映像。つまり”精密な絵”なのです」

「絵か。脅かさないでくださいよ」


 涼やかな女王の声でベンドは落ち着きを取り戻した。


 星々が、流星の様に糸を引いて後ろへ流れ、やがて一つの星の前で止まった。

 青い星に白い渦。朝方見せてもらったベンド達の大地ガイアにそっくりだ。


「ここがわたし共の古里、惑星エルフエルビーンです」

 惑星(ワクセイ)って単語をたびたび耳にするが、どうやらガイアの様な大地の事らしい。


 女王が軽く腕を振るう。すると、惑星エルフエルビーンに赤い光が走り、粉々に砕けた。


「なにがあった?」

(わたくし)どもの同胞が、エルフエルビーンを破壊したのです」

 解らない。なぜ自分たちの”星”を破壊する?


「あなた方は、自分たちの大地を破壊したのですか?」

「これから愚かな事実を説明致します」


 そして場面が変わる。


 霞になったエルフエルビーンを背景に、エルフの里であるボール型の宇宙船、ミュイ=ファン=ガランの全景が映し出された。


 地球で言うところのサッカーボール状球体を本体とし、先端が鳥の首みたいに飛び出している。

 ベンドは知り得ないが、球形本体の直径は1,000㎞。球形部分内側が生活区域で突起部分が各種航行関連設備である。


「当時、惑星エルフエルビーンの総人口は10億人でした。未曾有の出来事に、無事脱出できたのは、たった5千人だけだったのです」


 ここまで、蛮族の頭では、全くついて行けてない。


「エルフは平和主義者です。ですが、ほんの一握りの数、平和主義が過ぎて、平和過激主義に傾倒するエルフが存在しておりました。その者達の歪んだ行動です。彼らの組織の名は『(ダーク)エルフ』」

「ダーク……エルフ?」


「どのような思想でも『熱狂』が危ないのです。狂信は必ず異質なものを憎みます。悪いのは悪ではないのです。悪いのは、正義の側に立つと思ったときなのです。正義を標榜し、正義という暴力で悪を撃つ快感。それが悪の正体なのです」


 そして大きな力を持つ者は、その力の行使に見合う大きな結果が生まれる。

 俺たちなら敵の盾を砕くのがせいぜい。エルフの方々の大いなる力だと大地が粉々になる。

 それか!

 ベンドは何となく分かってきた気がした。


「彼らダークエルフは、エルフの存在が許せないらしいのです。エルフが存在するから、エルフエルビーンの生態系が崩れ、引いては全宇宙に害悪をもたらす。悪の根源がエルフなのだそうです。その者達の手で大勢のエルフが死んでしまいました。生まれたばかりの赤子も、お腹にいる胎児も。そして、ダークエルフたちも」


「そいつら、バカだろ?」


「高い水準の教育を受けた方が多かったと記憶しております」

「頭が良いから賢いとは限らないぜ!」

 過去、賢い氏族も居たが、今は居ない。ベンド達が暴力で滅ぼしたからね。


「不幸中の幸い。彼らが行動を起こすまでに時間がかかりました。我々は、阻止に全力を挙げつつ、万が一の為、エルフの里・宇宙移民船ミュイ=ファン=ガランと、千隻の無人護衛艦を建造したのです」


 ちなみに、ミュイ=ファン=ガランの規模は、太陽系の惑星・土星の衛星テティスに匹敵する。10億のエルフを丸ごと避難させる予定で建造された超大型の宇宙船だが、そうは上手くいかなかったようだ。5千人しか助からなかったのだから。


 映像が変わる。

 逃げるミュイ=ファン=ガランの後方に、光の矢が撃ち込まれていた。

 小さな船が盾となって守る。一隻、また一隻と砕けて消えていった。


「話は変わりますが、ベンド陛下の目から見て、わたしは何歳に見えるのでしょう?」


 リンナメンナより年は食ってるだろうが、顔に皺はないし体型もまったく崩れてない。一番年が見て取れる首筋や手にも老化の痕跡はない。

 見た目、20代後半。だがこの落ち着きと、歴戦のベンドすら圧倒する威圧感はどうだ?

 ……年を聞いてくるくらいだから、見た目より年食ってるのだろうと推測。


「では、遠慮無しに……30過ぎでしょうかな?」


 ベンドは当てに来た。……ホントに遠慮が無いんだ。

 外れても30後半。まさか40って事は無かろう。彼なりに無難に答えたつもりである。

 女心を考慮しないのが異界の蛮族たる所以。


 女王は優雅に首を左右に振った。


「千歳を越えておりますのよ」


 きっちり3秒の間を開けて――

「え?」


 ベンドはリンナメンナを見た。

 頷くリンアメンナ。


「わたしで200歳を超えています。エルフの平均寿命は1000歳です。なかでも女王は長命なのです」

「は、はぁ。さすが天界人」

 もう何を言われても頭から信じるぞ!


「どうやら、ガイアの英雄王の肝を抜いたようですね。少しばかり気分が良いです」

 女王は悪戯好きな少女の様に笑っている。


「千年の長きにわたり、ミュイ=ファン=ガランは宇宙を彷徨いました。母星エルフエルビーン型の惑星は幾つか発見しましたが、どれもこれも住むには大きすぎました。エルフエルビーンは、生存可能な惑星の平均質量より軽過ぎたのです」


 難しい言葉が沢山出てきた。千年、の所までは理解できたのだが。

 女王はベンドの表情からそれを読み取った。


「ベンド陛下は、ここ、エルフの里に下りて、体重が軽くなったとお思いになりませんでしたか?」

 

「確かに。体が軽い。身につけていた物が軽くなった。不思議なパワーで俺たちの力が増したのか? と思ったんだが?」

「それが重力なのです。ここは、ガイアより小さい重力なのです。これがエルフの古里の重力なのです。この重さの元で生を育んできたエルフにとって、ガイアの重力は大きすぎる。重すぎるのです」


 なるほどな。だからリンナメンナは地上で動きづらかったのだ。

 体に鎧を着けて動く様なモンか。そりゃ動きも鈍くなるわ!

 ベンドは、ガイアに降りたエルフに同情を覚えた。


「エルフィルビーンは、ガイアの月と同等の重さなのです」


 それで月を欲しがったのか。

 納得するベンドである。




 映像は、ガイアと月を映し、そこで終了となった。

 部屋に明かりが灯る。


「だが、まあ、なんというか、とにかくエルフの皆様方は無事、ここガイアにたどり着いたんだ。これからは落ち着いた暮らしを堪能してください」

「そうはいかないのです」

 女王は、悲しげに首を横に振った。




次話「ドワーフ」


おたのしみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 頭が良いから賢いとは限らない。 うん、その通り。
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