*.サイドストーリー はじめてのえんせい 2-2
「ちっ! 仕方ねぇ! 空母突入隊に連絡とれるか!?」
「繋がりましたですよぅ!」
今回もスキャニキャミーが付いてきて、やこしい操作を一手に仕切ってくれている。
……光年単位で離れた本体との結合はどうなっているのだろう?
「どうしました?」
出てきたのは返り血がべっとり付いた鎧武者。接近戦で右に出る者無しのフランソワー氏族族長である。
「空母が一つ出てきた。ちょっと行ってくる。そこは自分たちで何とかしてくれ」
「承知! みんな持って行ってください」
血の気の多い蛮族は話が早くて良い。
護衛用の艦艇すら残さず、残り全数が第二の空母へ艦首を向けた。
「第二空母の捕獲は諦めよう。野郎共! ゲオル氏族お得意の騎馬戦で行く! 全員着席!」
「全艦隊! 着席! ……って? 着席ですかよぅ?」
「バルデロ氏族の盾艦を先頭に三角円(注:三角錐の意味)の陣を組ませろ!」
そう言い放ったベンドは、対Gシートに腰を下ろした。
ガイア人達もシートに座り、ベルトで体を固定する。こいつらは理解している。
意味を理解し切れていないスキャニキャミーに向け、ベンドは命令を追加した。
「最高速度を出すぞ! 潰れたくなければ椅子に座って正面を向け!」
ドワーフの唯一の武器と言える高速戦闘機は、小型&無人故の急加速、急転回が可能。これまでその優れた機動力を使ってエルフ戦艦を翻弄してきた。
戦闘機の欠点を上げると、エルフ戦艦に比べ最高速度の最大値が低い事と、航続距離が短い事。
逆を言えば、エルフ戦艦はドワーフ戦闘機に比べ、最高速度の最大値が高い事と、長い航続距離を持つこと。
今回、こちらでその長所を選ばせてもらう事にした。
ドワーフ高速戦闘機群までの距離はまだまだ。この位置から加速を開始した戦艦は、接敵予想空域までにドワーフ戦闘機の速度を超えるだろう。
ちなみに、空気抵抗の存在しない宇宙空間で、Uターンは難しい。
最高速度から速度ゼロに落とし、再加速を行わなければ二撃目を放てない
今回のパターンだと、すれ違ったら最後。ドワーフ戦闘機に二撃めのチャンスは無い。
いかに両艦隊ナンバーワンの加速度を誇るドワーフ戦闘機といえど、最高速度を出している戦艦に追いつくことはできない。
さて――、
亜光速にまで達した(出し過ぎ!)ガイア艦隊は、円錐形の頂点をドワーフ戦闘機群に向け突っ込んでいく。
火力を前面にのみ集中して使用。ドワーフ戦闘機を一機たりとも近づけさせなかった。
ここで戦闘機をパス。
ドワーフ第二空母へ迫るガイア艦隊。
ここで、ドワーフ第二空母に新しい動きが出た。
「大将! 敵艦首になにやら大きな数字が集まってますぜ!」
「やはりそう来るよな!」
捕獲した空母を徹底的に分析した。
結果、これは空母と呼ぶには些か支障がある。戦闘機の運搬船と呼ぶのが相応しい。
(便宜上、これまで通り空母と呼ぶが)
空母は攻撃力を高速戦闘機に頼っている。空母に高火力砲は存在しない。
たった一つ、艦首の大型砲を除いて。
口径100センチメットルのビーム砲。
絶大な破壊力は、自身をも傷つける代物。
一発撃てば、砲身を交換しなければならない不完全品。
だが、密集隊形で迫る相手には有効だ。
ドワーフはこれに賭けた模様。
一対のアギトが左右に開き、でかい砲身が迫り出してきた。
「バルデロ氏族の盾艦に連絡!」
「へい! バルデロの族長、ルトスです! 連中、あれ撃ちますかね?」
「撃つ前兆をとらえた」
「ならば、お任せを」
ドワーフ空母の高出力砲のエネルギーから換算して、盾に使う空間バリアは一回しか持たない。エンジンから汲み出されたエネルギーをすべて盾に回す。力で相殺するエネルギーの盾だ。
一度大口径ビームを受け止めるだけで、すべてのエネルギーが消費されるだろう。
再起動に時間がかかる代物だ。
こちらも不完全な兵器である。試作艦を引っ張ってきたのだから仕方ない。
「一回こっきりだからな! しくじるなよ!」
「誰に物言ってンですか?」
バルデロ氏族は空間バリアを艦前面に展開する。ガイアの艦隊をカバーする大きな盾である。
ベンドとバルデロ氏族とのやりとりがあった直後。大口径砲が発射された!
先頭を走るバルデロ氏族の艦に直撃あり――
――斜め後方に流された?
未だバリアは健在。一度しか使えないはずだが?
「こんなものですかね? 正面から捉えて盾を壊されるより、受け流して盾を温存する方がいいでしょ? それに、敵に二撃目は無い」
バルデロ氏族、当たりの才能持ちだった。
「よし、叩くぞ!」
あたふたするドワーフ空母(いまさら戦闘機第二陣を出そうとしても……)を鎧袖一触。
秒単位で沈黙させた。
空母に再接近(180度回頭して、エンジン噴かして、相対速度をゼロにしてetc……)してとどめを刺そうと近寄った時だった。
ドワーフから通信が入ってきた。
「聞きたくない!」
ベンドは一蹴した。聞けば後悔しそうだ。
「兄上、お待ちください」
別の艦で指揮を補佐していたフアンから横槍が入ってきた。
「内容が降伏なら受け入れるべきです」
「こいつらが降伏など……。まあ、お前が言うなら。勝負は既についたし」
ベンドは、嫌な顔をしながらもフアンの提案を受け入れた。
こいつは優しすぎる。……でも、その優しさに何度救われたことか。
ちょっとだけ。ちょっとだけ、ベンドの心に暖かいものが通った。
ドワーフ艦から流れてきた通信内容は――
『悪鬼羅刹の無慈悲なる小エルフに与する者共よ! 小エルフは我等が進化させた人工の生物である!』
ここまで黙って聞いて、ブリッジに詰める蛮族共の間で殺意が飛び交う。
「聞いててなんだか気持ち悪くなってきたですよぅ!」
「ああああ、またいつもの身勝手な言いぐさが!」
頭を抱えるベンド。フアンのいう事を聞かなければ良かったと、後悔の念しきり。
『製造者が失敗した製造物に罪を与え「ズドン!」――』
何らかの衝撃音っぽいのが流れて、通信が切れた。
「なんだ?」
「ドワーフ空母に誰かが攻撃したですよぅ!」
「だれだ、攻撃したバカは!?」
「……フアン殿の戦艦が加速しながら主砲を撃ち込んだのですよぅ!」
あの冷静で温厚なフアンが、走りながらグーで殴った!
「攻撃命令を待たずに攻撃したですよぅ! 重大な軍規違反ですよぅ!」
勝手な行動は軍の規律を歪める。ましてや勝手な攻撃は死罪に相当する場合がある。
この場合、弟のフアンに重罰が科せられるだろう。
「いや。俺はあいつに攻撃命令を出したはずだが?」
「記録に無いですよぅ」
「おい、そこのお前!」
「ヘイなんでしょう?」
ベンドは、ブリッジ要員の一人に声をかけた。
「俺、フアンに攻撃命令を出したよな?」
「ヘイ、出してますよ。俺たちにも早く撃たせてくださいよ!」
「そういう事だ」
「そう言うことですかよぅ!」
第一回、外宇宙遠征軍戦果。
ドワーフ集積基地破壊。
ドワーフ空母一隻捕獲。
ドワーフ空母一隻撃沈。
フェリス族による侵入偵察艦運用は成功。
被害。
ガイア軍戦艦5隻、中~大破。
気分が悪くなったエルフ一人。
以上。
この戦いの後、ベンドは意を決し、ドワーフの異常性をエルフの方々に報告した。
それを重く受け止めたリンナメンナ女王は、エルフ評議会に議会の開催を命じる。
評議会はいろんなパターンをテーブルに逐一上げ、対処方法や解決方法を一つ一つ検討していった。
実に長い日時をかけ、じっくり話し合った。
その結果……
何を言っても、どんな行動をとったとしても、ドワーフの思考や主張の是正は不可能。
そのように判断をくだした。
エルフは、これまでずっと平和主義を貫いてきた。戦いから逃げてきた。それは争いごとを真に嫌悪する種族だったから。
それをドワーフに対してのみ諦めた。
もう逃げることを止めた。
正面から問題に向き合う決意をした!
この決定を元に、エルフはガイア人の協力を求める。
これに嫌がる者や反対する者は居なかった。戦いはガイアの蛮族にとって、食欲、性欲、睡眠欲に次ぐ、第4番目の欲求なのだから、むしろウエルカムであるッ!
蛮族は、エルフの為に戦う騎士になることを誓う。
ベンドは、戦う為の方策を奏上した。
専守防衛だけではエルフの方々を守りきれない。ガイア人の被害も増えると。
この件により、ガイア宇宙軍が正式に設立される。
続いて、これまでの護衛戦艦構想、ならびに第二世代護衛艦開発を廃棄。火力、防御力、機動力、艦種を充実させた新世代攻撃型戦艦の開発・配備に入ることとなった。
第一章 成り立ち 終了
作者病気療養につき、
今回で一旦「完」とさせて頂きます。
再び、皆様と会えることを祈って――




