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蛮族、宇宙を行く!  作者: モコ田モコ助
第一章 成り立ち

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2/20

*.始祖


 時は昔。

 お話は、ヴェンツの祖祖父、当時のゴラオン家当主・ベンドが20才の頃よりスタートする。




 惑星ガイアの環境は厳しい。


 南北両回帰線の外側は永久凍土。内側は高温多湿。重力は地球の1.5倍。

 住める土地は狭く、生物は凶暴。


 地球型惑星ではあるが、生きている生物には厳しすぎる環境である。

 毎年、多くの土地が不作。豊作でも隣人に分けるほどの余剰はない。


 食い物が無ければ死ぬ。分けてはもらえない。

 ならばどうすれば良い?


 お隣さんが僅かに溜め込んだ食糧を奪い取るしかない。隣人の財を奪える力がなければ生きていけない。


 生き抜ければ、人が増える。増えれば食料が不足する。この繰り返し。


 この世界の生物は、群れ同士の強奪戦から万単位の大戦まで、幾多の殺し合いを有史以前から続けてきた。

 現在、ガイアに存在している生物、たとえば、馬や豚、はては青菜や芋までが、過酷な生存競争の勝者達である。


 中でも金属武器を作る知識と、身分制による組織力という知恵を獲得した生物。すなわち人間は勝者共の上に君臨する勝者。つまり惑星ガイアの覇者である。


 そして、覇者同士も戦う。ただ一つの目的、勝者になる為に。

 その過酷な戦いの中、今も生きているベンドは強者と言えよう。


 ベンドは、大山脈の麓で一番大きな土地と勢力を持つ一族、ゴラオン家の当主である。


 その強者にして、地域の覇者ゴラオン家が滅亡の危機に瀕している。


 ベンドの本拠地、ゴラオン城が攻められていた。


 10人規模で抱えられた破城槌がゴラオン城の城門へ突撃を敢行。

 城壁上から放たれた矢が、雨の様に降り注ぐ。

 歩兵が倒れ、軍馬が嘶く。血飛沫が上がり、絶命した人が丸太の様に転がっている。


 攻め手は、草原の覇者ゲオル氏族。

 

 彼らが操る軍馬の体重はサラブレッドの2倍。足首の太さは、女性のウエストほどもある。


 魔獣と見まごうばかりの巨大馬に朱色の鎧を装備させ、さらに朱色の全身鎧を纏った戦士が跨がる。そのまま上り坂を時速50キロで駆け抜ける足を持つ。

 その突破力は、野戦で無敵を誇る。

 それは赤い重戦士、またはゲオルの赤備えと呼ばれている。


 ゴラオン家は草原を越えない、とこれ以上領土を増やせない。その野望の前に立ちふさがっているのがゲオル氏族だった。


「ヒヤッハーッ! 掛かれ掛かれ掛かれぇーっ!」

 攻めるゲオルも、とある理由で後がない。文字通り必死だった。


「引くな! 引くな! 引くなーっ!」

 ゲオルの猛攻を防げているのは、ひとえにゲオル氏族の騎馬が攻城戦に役立たなかったこと!


 長期戦の様相を呈した攻城戦は、粘りに勝るベンド達の勝利に傾きつつあった。


「今だ! 押し出せーっ!」

 ゴラオン城の門が開き、馬に乗った戦士が我先にと飛び出してきた。先頭はベンドだ!


「このっ! このっ! このっ!」

 あたるを幸い、長槍を振り回すベンド。近寄る敵歩兵は馬の蹄に掛けて頭を兜ごとかち割る。馬を下りたゲオルの戦士など如何ほどものか!


 彼は敵陣の渦中にいた。 

 秘密の抜け道を通って城よりでた別働隊とタイミングを合わせ、起死回生の反撃をする為、ベンド達ゴラオン軍が城から打って出たのだ。ちょっとした迂回挟撃である。


 この程度の小技は、割とよく使う。戦い慣れた蛮族どもの使う戦術・戦略のバリエーシュンは、数百以上にも上る。


「ベンド様ー!」

 敵を大根の様にさくさくと斬り捨てながら、ゴラオン軍一番の豪腕、ヴォッシュが走ってくる。


 ヴォッシは2メットルを超えの長身。遠くからでも大変よく目立つ。

(ちなみに、1メットルは、ほぼ1メートル。ガイアのキロロメットル大王が決めた単位である。略記号はmとKm)


「何だ! ヴォッシュは別働隊を任せたはずだが? サボりか?」

「バカヤロウ! 敵陣の中央まで入り込んでいるくせに何寝言言ってやがる!」


 大将が敵陣のド真ん中まで進出してはいけません。囲まれて討ち取られでもしたら、国が滅びます。


「別働隊の俺がここに来たんだ。作戦が成功したってことだ。敵は壊走しつつありますぜ!」

「そうか!? でかした!」


 あの重騎兵軍団相手によく勝てたな……。


「兵を纏めて追撃しますかい?」

「そいつは悪手だ。ゲオルは放っておいても滅ぶ」


 そう、滅ぶ。


「全軍をまとめ、城に引き上げろ」


「へぇ、へい」

 ヴォッシュの気力が目に見えて消えていく。


「おい、まさか?」

「へい、そうでさ。どうやら流行病にかかっちまった様で。戦が終わったようなんで、張り詰めていた気が緩んだらこの始末でさ……」


 歩くのも辛そうだ。


 今年に入ってからである。

 ゴラオンやゲオル、その他、大山脈地域に居を構える各勢力に、伝染性の死病が流った。新型の病なので、効果的な薬がない。


 ベンドは、ヴォッシュに肩を貸した。


「ベンド様、いけません。病がうつります」

「いいさ。早いか遅いかだ。俺もじき後を追うさ」


「面目ねぇ。俺ぁこの戦いで死にたかった。最高にハイの状態で死にたかった。ベッドの上で死ぬなんて。あんまりだぁ」


 勝利を掴んだベンド軍。城へ向かって列を成すが、その足取りは敗者の様に重い。


 ベンドは、物心つく前から人を殺してきた。

 出撃した戦は数知れず。滅ぼした氏族の数は憶えていない。従えた氏族は、大体なら憶えている。

 人との戦いで勝つのは容易い。病相手に勝つのは、とても難しい。


 ――俺も死ぬのか?――


「そのまえにもっと殺してやる。もっと犯してやる。もっと奪ってやる! みんなみんなブッ殺してやる!」


 ベンドは、ギラギラと目だけを光らせていた。





「兄上! ご無事でしたか!」

 迎えに出てきたのは、腹違いの弟フアン。


 生まれつき体が弱く、細身なので(とは言っても地球人から見れば細マッチョ)、後方を任せていた。2桁計算ができるガイア屈指の天才でもあった。

 裏切りが多いご時世、このフアンとヴォッシュは不思議と律儀である。


「ベンド様に付いていけば面白いことをさせてくれるからでさぁ」

「僕も同じですね」

 フアンとヴォッシュに裏切られればそれまでだな。そんな風にベンドは考えている。


「あれ?」

 フアンが斜め上の空を見上げた。


「どうし――」


 どうしたと言おうとして、ベンドも気づいた。生まれてこの方、聞いたことのない音が空から聞こえてくる。


 音のする方向を見上げると――


「なんだありゃ?」


 円盤状のナニカが空を飛んでいる。


 ――煙を吹き出しながら。




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