*.サイドストーリー はじめてのえんせい 2-1
「交代の時間だニャー」
「動きはまだないニャー。どうせ殺るんなら、戦力が集中してからの方がいいのニャー」
彼らはフェリス氏族。
ベンドをもって「戦うにめんどくさい氏族」だの、「足音を拾って戦う変な生き物」だのと呼ばせた一族。
それだけあって、見た目も変わっている。
頭頂に三角に尖った耳。毛が生えた長い尻尾。
俗に言う獣人。狭義でのネコ耳族。
ベンド達一般ガイア人とは、進化過程において遠い過去の何処かで枝分かれした一族だ。
獣人と呼ばれるだけあって、独特の戦い方をする。特に、待ち伏せからの襲撃には定評がある。
待ち伏せに、数日はおろか十日でもじっとしていられるのが脅威だ。戦場予定地、或いは行軍予定進路に何十日も前から潜まれていては、物見も役に立たない。
そして一撃を加えた後の逃げ足は天下一品。馬の足でも追いつけない。
ゴラオン氏族が、エルフの支援を受け草原に足を踏み出そうかという絶妙なタイミングで降伏と臣従を願い出てきた。おまけに露払いの役割を申し出てきた。
強者を嗅ぎ分ける鼻も良き武器と言えよう。
そんなネコ耳氏族、もとい……フェリス氏族にぴったりの任務と艦が与えられる。
ステルス艦による敵地侵入、偵察任務である。
その船、見た目は真っ黒な100m級宇宙艦。武装はほぼ無いが、代わりにステルス性を強化している。
インビジリビティ機器こそ搭載されていないが、艦の形状やコーティングにより、ドワーフが持つ探知システムから逃れることができる。
加えて、エルフの技術の粋を集めた探知システムを搭載。
向こうからは見えないが、こちらからは丸見えというタチの悪い侵入偵察艦である。
フェリス氏族は我が意を得たとばかりに生き生きと働いた。
そんなフェリス氏族が操る艦が潜むのは、惑星ガイアが所属するアテン恒星系のお隣、4.5光年離れた赤色矮星アルゲラン。
そのなかでアルゲランを周回する惑星、アルゲランβ。アテン恒星系の惑星ラノウス(海王星とだいたい一緒)と同程度の質量を持つガス状惑星である。
そこの第4衛星がターゲット。
岩石型衛星で、ガイアの月に比べて3分の1の大きさ。
「ベンド陛下の仰る『農場』と違うニャー。ガイアに攻め込む為の前線基地だニャー」
あの後、アテン恒星系はもう一度ドワーフの襲撃を受けた。
ギリギリ戦力の補充が間に合ったので難なく撃破したのだが、エルフの方々がある点に気づいた。
初回、二回、共にアテン恒星系への侵入方向が同じ。
それをガイアの蛮族の長にして、ゴラオン帝国皇帝の皇帝ベンドに相談した。
ベンドとそのブレーン(エルフ組織の真似っこ。帝国は封建主義)が、検討の結果、どこかに侵攻の拠点があるのでは? との結論に達した。
最も疑わしいのは、侵入方向に存在し、最もアテン恒星系に近い恒星系アルゲランだった。
エルフからの宇宙3次元マップを見せられ、ガイア人達は知ったかぶりをしながら、例え話を多用した説明を鵜呑みにしつつ聞いていた。
――あとで3次元マップを手書きで2次元に落として再検討。これは2桁にも及ぶ加減算能力を誇る、ガイア一の天才痩せマッチョ・ファンの尽力による(フアンの右腕が死亡)。
地図で見るとすぐ隣だった。
この距離だったら、馬で3日ほどじゃね?(距離が光年とか全く理解していない)
でもなぁ~、そんな解りやすいところへ砦とか築くか? ガイアでそれしたら、みんな喜んで攻め落としにいくぞ?
まあ試しにフェリス氏族を派遣しようか? 最新鋭艦の実地テストを兼ねて。
任せてくださいニャー。
といった気軽な理由で派遣したのが大当たりだった。
大量の食糧及び嗜好品を積み込んで、いそいそと出かけていったフェリス氏族は、その日のうちにドワーフ基地を見つけた。
二隻組の特務艦隊は、まさに目が点の二度見状態であったという。
「ネズミの方が強敵だニャー」
「こういうのを『想定外』って言うんだニャー」
「ま、ま、まず規定通り、2番艦には報告に戻って貰うニャー」
喜び勇んで出撃した2番艦は、耳とシッポを垂れて帰還の途についたという。
さて――、ベンド配下のガイア艦隊は再編されていた。
第一次ゼスタ星域会戦で、100m級護衛戦艦は全滅した。そこで新たに、200m級指揮艦型護衛戦艦を元に、主力護衛戦艦が整備された。
火力、防御力、機動力を各々30%ずつアップ。
取り敢えず感は否めないが、対ドワーフ宇宙空母対策を多数盛り込んだ。
艦首に衝角が取り付けられたのもその一つだ。
ちなみにだが、武器開発庁から格上げされた武器開発省のキャミーキャミア評議委員(昇進)が中心となり、現在も第二世代型護衛戦艦の開発が進められている。
開発されるのは、「護衛戦艦」だ。あくまでも自分の身を守る為の専守防衛用護衛兵器なのである。
さて、フェリス氏族2番艦の報告により、ガイア艦隊は出撃準備を急進する事となる(まさか! と思っていたので油断していた)。
総大将はガイア皇帝ベンド。この頃、ベンドは壮年の域を超え、老域へ一歩踏み込もうとするお年頃であった。
舞台は、またまたアルゲラン星域アルゲランβの第4衛星へ。
フェリス氏族の侵入偵察艦は、ジャンプ・サーフェイス反応を関知した。
「ドワーフのジャンプ着地の波動だニャ!」
「カゲロウ型空母1確認ニャ!」
「進行方向はアルゲランβの第4衛星前線基地どんぴしゃりニャー」
ドワーフ前線基地に空母が配備された。
翌日、ガイア艦隊100隻がアルゲラン恒星系へ到着。
それは直ちにドワーフの知るところとなる。
ドワーフのカゲロウ型空母が前線基地より出撃。ガイア艦隊を迎え撃つ。
会敵予想位置は、第7惑星アルゲランη軌道上。
侵入偵察艦と綿密な情報交換を行ったガイア艦隊は、艦隊を主と副艦隊の二つに分けた。
主力艦隊はそのままドワーフ空母と激突。
取った戦術は前回前々回とほぼ同一。囮艦隊でドワーフ戦闘機軍を引きつける。
空母の搭載機数は把握済み。
ベンド達の戦いは巧妙に尽きた。全機を空母から引っぺがしてしまったのだから。
丸裸になった空母に、迂回した別働隊が文字通り突入!(通常航法で)
新装備の衝角が大活躍!
華麗な接近戦で有名なフランソワー氏族が内部に乗り込み戦闘開始。稼働状態の空母が手に入るのも時間の問題だ。
一方、前線基地を攻める別働隊は、と言うと――
「あいつらバカだろ?」
「空飛ぶ戦艦相手に固定された城で対抗するとは!」
「前近代的だな!」
蛮族に前近代的呼ばわりされるドワーフである。
蛮族共がとった戦法とは――さほど斬新な戦法じゃなかった。まともに戦をしたことの無いフェリス族が情報を添えて具申してきた戦法と同一であった。
衛星という岩塊に固定された砦。それも宇宙船から見れば眼下・谷底である。
谷底に陣を張るバカには、石を落とすに限る。
そこら辺に漂う小惑星・デブリ(フェリス氏族が位置を調べておいた)を重力アンカーで沢山引っ張ってきて落としまくる。少々の加速を添えて。
人は(ドワーフは)逃げたかもしれないが、設備や集積した物資は無事に済まない。粉々に粉砕されてお終いだ。
攻略は事程左様に順調であったが――
「大変ですニャ! 星系外にジャンプ・着地反応ですニャ!」
侵入偵察艦からの緊急連絡!
フェリス氏族は索敵系に適性がある様だ。
「カゲロウ型空母1。接近中ですニャ!」
想・定・外 !




