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蛮族、宇宙を行く!  作者: モコ田モコ助
第一章 成り立ち

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15/20

*.蛮族


「むちゃですよぅ!」

 スキャニキャミーが悲鳴を上げた。


「文句は帰ってから聞こう。ヴォッシュとゲオルに精確な位置を伝えろ! 続けぇー!」


 全滅した50隻の戦艦と金の指揮艦は全部無人。オートパイロットだ。

 ドワーフの母艦をあぶり出し、正確な位置を特定する為、全艦隊を囮にしたのだ。


 敵が如何に強くとも、大軍であろうとも、頭を潰せば瓦解する。キモは、如何にして敵の本陣を知り得るか。

 小軍を犠牲にして大軍を生かす。

 ベント達ガイアの蛮族が、少数で大軍を相手に戦うときの常套手段だ。


 ドワーフの母艦の位置、つまり頭の位置が判明すれば、そこを全軍で一気に攻める。

 幸いにも、ジャンプ航法という、超便利な移動法をエルフの方が持っていた。


 ただ、武装や推進装置だとか、外に出ている大部分がオシャカになるという、ちょっとした欠点があるそうだが――。まあ、沈むワケじゃないし。ってことで採用した。


 エルフの里に格納してあった200メットル級指揮護衛艦を引っ張り出し、目立たぬよう黒く塗装し、遙か彼方の後方で息をひそめて待っていた。

 ご丁寧にも、かろうじて稼働していたインビジビリティ装置を持ち出してまで、ひっそりと隠れていた。


「第2陣、ジャンプ・サーフェスですよぅ!」


 派手に爆発炎とショート電光を纏わせながら、フアン乗艦の指揮護衛艦が亜空間より出現!

 ベンドと反対側。ドワーフ母船の右横っ腹へ、ハデに突き刺さる!


「やるな! フアン!」


 両側に戦闘艦が突き刺さってしまった!


「勇みすぎですよぅ! 缶切りですよぅ!」


 キャミーキャミアの表現は的を得ていた。右から突っ込んだ指揮護衛艦は、突き刺さっただけでは止まらず、スラスターを噴かしながら、ジャックナイフよろしく缶切りの要領で、横方向へ穴を広げた!


「第3陣、第4陣、続いてジャンプ・サーフェスですよぅ!」


 表面を爆発光で飾りながら出現したのは2隻の400メットル級、兵員輸送艦だ。

 それぞれ左右から、ベンド艦とフアン艦が開けた穴に、頭から突っ込んだ!





 ドワーフたちは混乱していた。こんなこと初めてだ。


 空母の心臓部の一つである機関室が、衝突の衝撃により被害を受けていたのだ。

 大勢のドワーフたちが、ダメージコントロールの為、忙しく動き回っている。


「何が起こった!」

「隔壁緊急閉鎖! 気密を保て!」


 重金属音をたて、耐圧隔壁が降りていく。各ブロックが独立し、気密が保たれた。

 ダメージコントロール要員のドワーフが、ホッと一息をつく。


「これで安心――」

 ズドン!


 遠くで腹に響く重低音がした。


「なんだ?」

 ズドン! 


 また同じ音が聞こえる。


 音は、先ほどより近くで起きた。

「か、隔壁が破られています」

「なんだと!?」


 ズドン! ズドン!

 何度も聞こえてくる。都度近づいて来る。


 ズドン!


「ギャーッ!」

 目の前の隔壁が、ドワーフを巻き込んで吹き飛んだ。


 壊れた隔壁の向こうから煙が勢いよく流れ込んでくるのも束の間。どこかで気密が破られたのだろう、空気の流れで煙が晴れる。


 煙の向こうから現れたのは――


 パイルバンカー式破壊槌を抱えた生物が後ろへ下がる。慣れた仕草だった。


 代わって前に出てきたのは、弓隊。

 幾十の矢が放たれた!

 次々とドワーフに突き刺さっていく。


「敵か?」

 壁にへばりつき矢を逃れたドワーフが、目を見張る。


 弓隊が左右に分かれ、道を開く。

 中央から何十本もの槍が突き出された。


「かかれぇーッ!」

「ウオォォーッ!」


 密集した槍衾が突進してきた。

 流れる様な敵の連携に、手も足も出ない。

 片っ端から串刺しになっていくドワーフ。


「ヤロウ共! これが歴史上最後の大戦だ! 敵を殺しまくれぇーっ!」


 大男が大剣を振るう。

 防刃宇宙服の上から愛用の金属鎧を纏ったベンドだ!


「オラオラッ! 手応えのある者はいねぇのか!」

 出合う尻から一撃で屠っていく大男がいる。こやつも全身鎧だ。

「我が命の恩人であるエルフの方々に報いる為! ヴォッシュ参上! どんどんこーい! ウワハハハハッ!」

 豪腕から繰り出される剛剣。ヴォッシュの一振りで、二人分の血肉が宙を飛ぶ!


「てめぇ! 恩に報いるとか言ってるが、本当のところは憂さ晴らしだろうが!」

「ちげぇねぇ! ウワハハハハッ!」

 

 ベンドは各氏族選抜隊に命令を発した。

「一人も逃すなっ! 皆殺しにしろッ!」

 長槍を構えた重装歩兵密集隊形(ファランクス)がドワーフを踏みつぶしていく!





 一方、ドワーフ艦の反対側はもっと悲惨だった。

 もう一つの心臓部、広大な中央格納庫の隔壁が破られた。


 大きな影が、一人のドワーフを覆う。


「へ?」

 ドワーフが見上げると――


 血走った目の魔獣が見下ろしていた。


 太いドワーフの胴ほどもある足が四本。自重だけで1トン(サラブレッドで4-500㎏)を越えている。

 全身を真っ赤な金属鎧で覆った「馬」という動物だ。

 重装戦闘馬に跨がる真っ赤な全身鎧の巨人。馬と巨人の目が共に狂気の色を帯びていた。

 ゲオル氏族の赤備えである。


 それを目にしたドワーフに新しい感情が浮かんだ。その名は「恐怖」。


「蹴散らせェーッ!」

「ヒャッハーッ!」

 ドガガガガッ!


 ゴラオン家を散々に苦しめた、ゲオル氏族が誇る重装騎兵団が一気に駆けた!


 ドワーフが四本足なのは重厚な胴体を支える為。とは言っても、所詮は0.15Gの世界。惑星ガイアの生物は、1.5Gの世界を生き抜いてきた者。

 ガイアの生物が、10分の1の重力下に置かれた。ただでさえ有り余る蛮族共の体力(パワー)は(相対的に)増幅され、超人的な活躍を見せる!


 ドワーフたちは蹄に掛けられ、大剣で頭をブチ砕かれ、片っ端から肉片となって飛び散っていく!


 ドワーフも手をこまねいて蹂躙されてはいない。バリケードを築き、重火器を撃つ。

 たしかに何発か、騎兵および馬に命中しているのだが、一向に突進が止まらない。


 血だらけになった騎兵が、馬ごとバリケードにブチ当たる。時速50キロで、1トン超の重量物が!

 ドワーフを巻き込み、もんどり打ってから止まる。


 誤って戦闘機へぶつかる重装騎兵もいた。転けたり凹んだりしたの方は戦闘機の方だった! 


「かかれぇー! かかれぇーッ!」

「遠慮をすンなー! ここを逃したら、もう暴れるところはねぇぞー!」

「ヒャッハー!」

 ドガガガガッ!


 1500メットルの船を揺らしながら400騎の重装騎兵軍団が駆けていくッ!







「なんだ! 一体何が起こっている!」

 ここはブリッジの二階部分・メインオーダールーム。ドワーフ幹部は混乱していた。


 艦内各所よりの連絡が、次々と途絶えていく。

 ドワーフ達に、白兵戦で追い詰められるという概念が無い。想定が欠如していた。

 なので、まさか! である。予想はされても理解が付いてこない。


 そして混乱は最高潮を迎えた。


 サッカーコートほどの広さを誇るブリッジ一階に、邪悪な生物が躍り込んできたのだ。

 一番乗りはゲオル氏族の重装騎馬軍団!


「殺せ殺せぇーぇっ!」


 重戦闘馬が、ブリッジをグルグルと走りまくる。騎兵は長剣を巧みに操り、ドワーフの頭をかち割っていく!


「ヒーィヤッハァーッ!」


 目が完全に逝ってる。口から泡を吹いている。

 血に飢えた狂人の集団だ。

 こうなったガイア人は疲れと理性を忘れてしまう。 

 ブリッジに血と汚物の匂いが充満していった。


「敵の大将はどこだぁーっ! 出てこーい!」

 声の限りに叫びまくり走りまくるゲオル氏族族長。脳内麻薬に酔っている!


「そこかぁー!」

 族長が見つけた。10メットル上で張り出したテラス状の二階部分。


 そこへ至る道はどこだ! 階段は無いのか!


 ドチャッ!

 首と胴が別々に落下し、湿った音を立てて床で跳ねる。


 なんだ?

 ドワーフの死体だ!


「グハハハッ! 大将首はゴラオン家の勇者、ヴォッシュ様が頂いた!」


 二階から顔を覗かせたヴォッシュ。実に嫌らしい笑顔だ。


 隣には返り血を浴びたベンドが、乾ききった表情で剣を拭っている。


「遅かったな、ゲオル。大将首は頂いたぜ!」

「ちっ! 賭は俺の負けだ。潔く負け分を支払うぜ!」


 金を賭けていたのではない。

 頭を制圧した後、残党を探し出し燻り出し、チマチマと殺していく面倒くせぇ戦後処理の役割だ。


「ドワーフの船は制圧した! 者共! 勝ち鬨の声をあげよー!」

「うぉぉぉーっ!」

 ベンドの音頭で、雄叫びが上がった!






「連中、やりやがったですよぅ! 初めてエルフが勝ったのですよぅ! ドワーフの宇宙空母を拿捕したのですよぅ! ダークエルフとドワーフの情報がごっそり手に入るのですよぅ!」


 間もなくスキャニキャミーの絶叫が、エルフの里でも知れることとなろう。


 

 

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