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お読みいただきありがとうございます!

ランキングに震えております…


ブクマ・評価ありがとうございます!

嬉しいです!

机の上に置かれた招待状を(いたずら)に何度も手に取ってため息をつく。


「ねぇ、メリー」


「はい」


「ナディア様がうちにいらっしゃったのは夢かしら? それとも現実?」


「紛れもなく現実でございます。あれほど必死で皆で家具を磨き上げるのは大掃除の時くらいです」


年季の入った家具は磨き上げられて鈍い光を放っている。


「仮面舞踏会、出席されますか?」


メリーの問いにまだ答えることは出来なかった。





「やってみたかったの! 仮面舞踏会! 良かったら来てね」


ナディア様はふわっと笑った。

美少女の微笑が眩しい。


「この仮面舞踏会の費用は全て王家持ちなの。だから凄く豪華にやるわ。王家からの賠償金ね」


「え、処罰が決まったのですか?」


確か兄の言う不毛な会議では処罰は決まらなかったはず。一晩中議論しても、厳重な処罰を求める貴族達とこれからの行動を見て決めるべきという貴族達の考えが交わることはなかった。


「ええ。仮面舞踏会の費用を出してもらうだけ。スチュアート殿下は幽閉もされないし、平民に落とされたりもしないわ。今まで通り第3王子のまま。学園の中庭で婚約破棄を宣言されそうな雰囲気だったけどその前に騎士団が踏みこんでくれたし、重い処罰にするとスチュアート殿下に逆恨みされそう。遠巻きにされて私の次の婚約者も決まりにくくなりそうだし」


ああなったのは呪いのせいだって言うけど、周りの目は冷たいから針の筵状態でこのくらいが丁度いい罰なのかも、とナディア様は言う。



あの日―


突如、昼時の学園に乱入した騎士達は中庭にいた第3王子たちを躊躇いもなく捕縛した。

ほとんどの生徒達は何が起きたかわからず怯えて悲鳴をあげた。一部の生徒達は鮮やかな無駄のない騎士の動きに感嘆していた。


私はというと、教師に授業の質問をしていたので他の生徒達より教室を出るのが遅れた。急いで食堂に向かう途中で、中庭から第3王子の大声が聞こえた。婚約者であるナディア様を詰るような内容だったので、眉を顰めながら中庭に足を向けると、人垣の隙間から見えたのはルル、第3王子そして私の婚約者を含む令息達が捕縛されるところだった。私はぽかんとしたまま彼らが引っ立てられていくのを見ていた。

あの日以降、学園は騒ぎが落ち着くまで全学年休みと発表された。しかし、その休みもまもなく終わる。





「来月から学園が再開するじゃない? だからその前にやろうと思って。どうせしばらくは学園でも社交界でも嫌味を言ってくる人達がいるわ。せっかく懸念がなくなったんだから今くらい楽しまないと! 私も早速新しい婚約者を探さなきゃね」


懸念とはルルのことだろう。第3王子との婚約も含まれていそうだが。


「ナディア様にはたくさん縁談がくるのでは……?」


バイロン公爵家と繋がりを持ちたい貴族は掃いて捨てるほどいるはずだ。


「実は陛下から次の婚約者にアシェル殿下をすすめられたわ。もちろん断ったけど。呪いにかからずルルに夢中になってなかったから、最近では株がうなぎ上りだそうよ。確かにそれは素晴らしいわ。でも……私、カエルは無理だわ」


分かるでしょ?とばかりにナディア様は困ったように笑う。


アシェル殿下。第2王子のお顔は非常に整っている。王族は美形揃いだ。あの第3王子も顔は良い。

そんなアシェル殿下に婚約者はいない。婚約者が決まっても次々に辞退してしまうのだ。

それは彼が異性よりも、爬虫類と両生類をこよなく愛しているためだ。

彼の部屋にはトカゲやヘビが飼われており、学園では休み時間に池でカエルを探している。

王子の婚約者になるようなご令嬢は、大抵トカゲやらカエルはダメだ。悲鳴をあげて逃げ出したり卒倒したりする。

これは又聞きだが、アシェル殿下の婚約者になり辞退したご令嬢は、顔合わせの時に飼っているヘビを撫でるように言われたらしい。ちなみにヘビの名前はオランジェット、トカゲはフィナンシェらしい。なぜ菓子の名前をつけたのかは謎だ。


「舞踏会は豪華にやるけど、招待するのは厳選した方々よ。クロエ様とフライア様にも声をかけているわ。もちろんあなたやフライア様の婚約者、クロエ様の元婚約者は招んでいないわ。エスコートなしで参加だしね。料理は期待してね!」


彼は招待されておらず、エスコートも頼まなくて良いことに少し安堵する。

ナディア様に気にかけて貰っているようで少し嬉しいが、直に招待状を持って来て頂いても急に舞踏会に行きたいとは思えなかった。


いつまでもウジウジしていてみっともないと思う。でもルルに対する彼の態度を思い出してしまう。学園の庭で木に隠れるように寄り添う姿も、優しく髪や頬に触れる仕草も、熱に浮かされたような甘い表情で何か囁く様も、度々の贈り物も。全て私に向けられてきたものと違った。同じ人なのかと疑ったくらいだ。呪いであそこまで変わるのだろうか。

なぜ私もいる学園でそんな事をするのだろう。出来るのだろう。

どこか別の場所、私に見えないところでやってくれたら……彼のことを何も知らなければ……彼が私に興味さえない態度をずっと取ってくれていたら……私はこんなにショックを受けなかっただろうか。



「ねぇ。ルルがつけていた魅了の呪いのブレスレット、今は王立研究所預かりなのは知ってる?」

やっと第3王子の名前が出せました。


誤字脱字報告ありがとうございます!助かります!

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