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貧血と言われてから兄や使用人たちはやたらレバーを食べさせようとするが、レバーだけは無理!
最初こそ涙目で食べていたが、すぐに戻してしまった。
それからはプルーンやパセリ、ココアがメインになった。
「今日はお時間をありがとう。体調は大丈夫?」
ふわふわの金髪を結い上げた美少女が目の前でにっこり微笑んでいる。
今日は曇りのはずなのになんだか眩しい。おかしい、晴れてきたにしても窓は反対側のはずなのに。これが美人・美形のオーラというものなのね。
羨ましくなるくらいふわっとした金色の髪、たとえ天気が雨でもその金髪は輝いていそう。私の髪は同じような種類の色と言っても、白に近いくらい薄く、酷い剛毛だ。こんなふわっとした可愛らしい巻き毛にはどうがんばってもならない。この髪質さえなんとかなれば私も年上に見られたり、どストレートな髪で冷たい印象を与えたりしないかもしれないのに。
うわー、目も大きい。快晴の空のような青色のぱっちりした目は金色の睫毛に縁どられている。そして睫毛長い……目に入ったら痛そう。
「ふふふ。そんなに見つめられたら恥ずかしいわ」
「はっ! すみません!」
「やっぱりエリーゼ様って面白い方ね」
上品に笑う美少女は、ナディア・バイロン公爵令嬢だ。
彼女から訪問のお伺いの手紙が来たときは何度も差出人の署名を見直した。悪戯かとも思った。
学園でお話するのも恐れ多い、作法もなにもかも完璧な彼女がうちの屋敷になぜいるのか全く分からない。
とりあえず手紙がきてから、うちの使用人たちがいつもの5倍掃除をしていたことだけは確かだ。
「あなただけだったの。婚約者がルルに夢中になっているのに私にどうにかしてほしいって言ってこなかったのは。だからお話してみたかったの。もちろん、今日は他の用事もあるんだけどね」
ちょっと照れ臭そうにナディア様は微笑む。学園ではクラスも違うので廊下でごくまれにすれ違うくらいだったが、なんだか以前より綺麗になった気がする。もちろん、以前も美少女だったが。
しかし……他の3人のご令嬢たちが婚約者についてナディア様に助けを求めていたのは意外だった。だって、一番大変なのはナディア様なはずなのに、なぜどうにかしてほしいなんて言えるのだろうか。
「私は……他の方々と違って魅力がないので……彼に愛想をつかされたのだと思っていました……ルルはその……可愛らしい容姿でしたから」
そう、私がルルに勝っていた点は家格だけ。内面は知らないが、ルルの外見は非常に可愛らしかった。ただ、これだけは言える。ナディア様には及ばない。第3王子は呪いにかかっていたらしいが、ナディア様よりルルを取るなんて頭がおかしいとしか思えない。呪いでもありえない。
「そう……。ルルの処分はもう聞いた?」
「はい。彼がわざわざ知らせに来ました」
「エリーゼ様のところは婚約はそのままなのね。クロエ様は婚約を解消されたわ。浮気をする男なんて信用できないってね。あ、私も婚約は解消になったけどね」
クロエ様のところはお相手の家格の方が下だった。それが余計に解消にむけて働いたのかもしれない。
「ブルックリン様のところは、何とか仲直りしたみたい。あそこは幼馴染で最初からお互い好きな者同士だからよかったわ。でも結婚式を急ぐ事態になりそうね」
「? 何か事情があるのですか?」
「お互い一線を越えてしまったみたいで。妊娠している可能性もゼロではないから気が変わらないうちに式を挙げるそうよ。彼女は学園を途中でやめるかもしれないわ」
「そ……そうですか……」
ブルックリン様は気性の激しい方だが、仲直りできたなら相思相愛同士、良かったのかもしれない。
「フライア様のところはまだ揉めてるわね。あなたのところも……かしら?」
「父が婚約を解消しませんでしたから。父の決定に従うだけです……」
「そう……」
ナディア様は思案するように紅茶のカップに視線を落とした。それもつかの間、すぐに私と目を合わせると、1枚の招待状を差し出した。
「今日の本題はね、これなの。開けてみてくれる?」
上品な装飾が施されている封筒をメリーの持ってきたペーパーナイフで開ける。
「……仮面舞踏会ですか?」
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