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お読みいただきありがとうございます!
日間ランキング3位!!??に目を疑っております!
ブクマ・評価をしてくださった皆様、本当にありがとうございます。びっくりやら嬉しいやらです。
相変わらず設定ゆるゆるですが、頑張ります!
倒れて寝ていた上に、ホットミルクを飲んでさらに朝までぐっすり眠ってしまった。
私って寝ているだけの役立たずよね……と自己嫌悪に陥る頃、兄は言葉通り会いに来てくれた。
しばらく話はしたが、まだ会議が終わらず父から戻ってこいと使いがきたらしく、執事のオズワルドに無理矢理急き立てられて王宮へ戻って行った。
「もう第3王子も王立研究所送りすればいいのに。長時間会議やったって意味ないんだから。それにしてもおじさん達も元気だよねー」
オズワルドに半ば引き摺られながら笑顔で言っていたのが恐ろしい。兄は有能だが空気を読まないところがあるから会議であんな発言をしないか心配だ。さすがに王子の王立研究所送りは無理だろうし、国の重鎮たちをおじさん呼ばわりもいただけない。
第3王子のしたことといえば、割り振られた公務や生徒会の仕事を他人に押し付けてルルといちゃついていたことと、他人がやった仕事を自分がやったことにしたこと、王太子である第1王子を押しのけて自分が王太子になると吹聴したこと(主にルルに)、婚約者であるナディア・バイロン公爵令嬢に酷い扱いをしたり、婚約破棄を迫るあまり脅迫まがいのことをしていたこと。
挙げてみると案外たくさんあった。細かいことはまだまだある。
致命的にマズイことはしていないが、王族としても貴族としても許されることではない。
バイロン公爵はかなりご立腹だ。
ちなみに、第3王子とナディア様の婚約は既に解消されている。
第3王子や私の婚約者を含む、呪いでおかしくなった令息達が騎士達によって強制的に学園から回収されたその日のうちにバイロン公爵は婚約を白紙に戻していた。
現在は賠償か処罰を重くするかでその辣腕を振るっている。
「お嬢様……あの方からお見舞いの品が届いております。どうされますか」
メリーが無表情で薔薇の花束を持ってくる。花を束ねるリボンは彼の瞳を連想する淡いグリーンだ。
急に胃のあたりがきゅっと痛くなる。腹に思わず手を当てると、メリーはハッとしたような顔で花束を放り投げて駆け寄ってきた。
「大丈夫よ」
「大丈夫な顔色ではございません! さぁ横になって下さいませ。お医者様を呼びます」
メリーの後ろでは花束を他の侍女がナイスキャッチしていた。昨日、最初に私を呼びに来てくれた侍女だ。メリーが振り返り彼女に向かって頷くと、彼女も頷き返して花束を持ったまま小走りに部屋から出て行くという素晴らしいアイコンタクトを披露した。
「お嬢様……昨日私があんなことを言ってしまったから……申し訳ございません」
「メリーのせいではないわ」
どうもメリーは1発殴れと焚きつけたことを後悔しているらしい。
メリーは悪くない。悪いのは……呪いの道具のせいで浮気をした彼なのか、浮気くらい何?と寛容になれない心の弱い私なのか。
貴族社会では夫が浮気したり、愛人がいたりすることは珍しくない。
「よく考えなくても1発どころか何発か殴っていいはずだもの。贈り物を突き返さずに貰っておいて売りさばいてもいいかもね。そういえば、ウワサで聞いたけれどウォーカー伯爵夫人はご主人が浮気する度に新しい宝飾品を買ってもらうそうよ。私もそうしてみようかしら」
メリーは悪くないと伝えるために努めて明るく話してみる。
「お嬢様……」
「それかロビンソン子爵夫人みたいに浮気の度に実家に帰るのもいいかもね。まぁあそこは夫人の家の方が家格が高いからこそできることよね。でも、お兄様も一生ウチにいてもいいって言って下さったし」
「お嬢様……もう泣かないでくださいませ」
そっと頬を拭われる。耐えきれなかった涙が零れ落ちていたようだ。
「あんな方のためにお嬢様が悲しまれる必要はありません。いくら呪いの道具だといっても……呪いにかかっていない方々もいらっしゃいます。1つ上の第2王子殿下や、同じ学年のブロワ公爵家のご子息は……普通だったではありませんか」
「あのお二方は特殊ケースじゃない?」
「ええっと……それはそうかもしれませんが……特殊と片付けるにしても呪いにかからない方もいらっしゃるのです。あの方のお心が弱かったのです。とにかく、お嬢様。あの方について悲しまれる必要も、罪悪感を抱く必要もありません。私共、使用人はそう考えております」
「……ありがとう」
「花束はひとまず突き返しておきます!」
拳をぐっと握りしめてメリーはさきほどの侍女を追いかけるように出て行く。
確かに高位貴族の令息達が全員魅了の呪いにかかっていたわけではない。
もちろん、ルルは伯爵位以上の見た目のいい令息達に近づいていた。
ルルが近づいた中でおかしくならなかったのが、アシェル第2王子殿下とブロワ公爵家の次男ゼイン・ブロワ様だ。彼らは傍から見ていても異性に興味がなさそうなので呪いがきかなかったのではないかと思う。
そういえば、呪いでおかしくなった私の婚約者のことを、お兄様はアイツと呼び、使用人たちはあの方とか婚約者様と呼ぶようになった。私もあの件以降、彼の名前を呼んだことはない。
「ザカリー様……」
婚約を結んでから頻繁に口にしていた彼の名前を、久しぶりにポツリと口にしてみる。耳に馴染んでいたはずのその音は、まるで知らない言葉のように奇妙に響いた。
「お嬢様。お手紙がきています」
意外な人から手紙が届いたのは、医者に診てもらい貧血とストレスだと言われた後だった。
他にもちょこちょこ連載を書いています。
最近更新できるようになってきたので、他も更新しております。