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「そういうわけですので、お引き取り下さい」
フライア様とナディア様がまた何か言ってるなぁと思いながら、出口はあちらですと掌で指しながら彼に再度伝える。その方向にはメリーと料理人がいるのだが、上手い具合に隠れてくれるだろう。
しかし、彼のグリーンの瞳は私ではなく私の背後に動いて驚愕に見開かれていた。
「何で……」
驚くよりも早く帰って頂きたいのだが……ため息をつきたくなるのを堪えながら私は振り返る。
振り返った先にここには相応しくない人達がいた。
「ねぇ……手に持ってるのってヘビっぽいんだけど……気のせいよね?」
「気のせいだと思いたいけど……見ないようにしましょう……またどっかで道草くってたんでしょうから」
ナディア様とフライア様が話している間に先頭の2人は近づいてくる。
確かに1人の人物が手にしているのはロープのように見えなくもないが……やっぱりヘビだろう。
うちの領地に毒ヘビは生息しないから大丈夫だとは思うけど……。
もう1人の背の高い人物は頭痛を堪える様にこめかみにぐりぐり手を当てている。
「おや? なぜキャンベル侯爵家のあなたがこんなところに?」
「久しぶり。エリーゼ嬢、このヘビは連れて帰っても大丈夫かな?」
久しぶりに見るゼイン・ブロワ様とアシェル殿下が同時に口を開く。
「やっぱりヘビ……」
「連れて帰るのね……」
ナディア様とフライア様が身を寄せ合いながら、アシェル殿下から距離を取ろうとしている。一方、元婚約者は驚愕が勝っているのかゼイン様の問いに答えない。
「キャンベル様はこれからお帰りです。ええっと、ヘビはですね……殿下がお気に召したのであれば持ち帰るのに何か入れ物を持ってこさせましょうか?」
「ありがとう、助かる」
「殿下がわざわざ馬車を停めてヘビを捕まえるから到着がかなり遅れたんですよ……」
「なんかエリーの対応が手慣れてない?」
「慣れとは恐ろしいわ」
ゼイン様は元婚約者への興味をすでに失ったらしく、殿下を呆れた目で見ている。
「お2人はなぜここに? 視察ですか?」
メリーに合図をすると、フライパンを大切そうに抱えたまま屋敷に足早に入って行った。
アシェル殿下は青いヘビを手に嬉しそうにしている。
「あれ? 聞いてない? 僕と君の婚約の話なんだけど」
「初耳ですね」
「ヘビ片手に言う事じゃないわよね」
「フライア、ツッコんだら負けよ。私たちは背景の一部になるのよ。ほらブロワ様みたいに」
「木に頭をくっつけて、こんにちはをしてるようにしか見えないわよ」
「そういうツッコミはいいから。エリーがビックリしすぎて逆に冷静になってるのを心配して」
「とりあえず、屋敷の中に入らない? 風が冷たくなってきたわ。元婚約者も邪魔だし」
「それがいいわね」
ひとまず、外野が騒々しい。私もゼイン様みたいに木に頭をくっつけようかしら。




